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2012年1月24日火曜日

どのようにして相対性理論に到達したのか(アインシュタイン)

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ウォーレン・バフェットやチャーリー・マンガーは、年次報告書や株主総会でお勧めの本を紹介することがあります。伝記マニアのチャーリーがアインシュタインの伝記を紹介するのは順当なところでしょう。チャーリーお勧めの本の邦訳『アインシュタイン その生涯と宇宙』が昨年出版されましたが、下巻について出版事情のすったもんだがあったようなので、ようやく手にとっているところです。今回ご紹介するのは、アインシュタインが相対性理論を発見するに至った経緯や背景を数段落に要約した箇所です。

「新しいアイデアが突然頭に浮かんだ。それもかなり直感的なやり方で」とアインシュタインは語ったことがある。ただし次の言葉を直ぐに付け加えた。「直感とはそれ以前の知的経験の結果にすぎないのだが」

アインシュタインの相対性理論の発見は、一〇年に及ぶ知的思索と個人的経験に基づく直感から生まれたものである。最も重要で明らかなことは、著者の私が思うには、理論物理学に対する深い理解と知識である。彼はまた目に見える形の思考実験を行う能力にも助けられた。その能力はアーラウ時代の教育で培われたものだ。それから彼には哲学の基礎がある。ヒュームとマッハの哲学から、彼は観測できないものに対する懐疑精神を育てた。そしてこの懐疑精神は権威を疑問視するという彼の生まれつきの反骨精神に根ざしていた。

以下に述べるいろんな要素の混合が、物理的状況を可視化する能力、概念の核心をえぐり出す能力を増強し、彼の人生における技術的背景になっている。たとえば叔父のヤコブが発電機のなかの運動するコイルと磁石をよりよいものにするのを助けたこと。時計あわせに関する特許申請に溢れていた特許局で働いた経験。懐疑精神を推奨した上司。ベルンの時計塔近く、駅近く、電報局の近くに住んでいたこと。ヨーロッパでは時間帯内の時計を合わせるために電気信号を使っていたこと。話し相手としての技術者である友人のミケーレ・ベッソの存在。彼はアインシュタインとともに特許局で働き、電気器具の特許を調べていたのだ。

これらの影響の順序づけはもちろん主観的なものだ。結局アインシュタイン自身もどのようにして問題を解いたか、はっきりしなかった。「どのようにして相対性理論に到達したかは簡単には言えない。私の考えに動機付けをあたえた非常にたくさんの隠れた複雑な要素がある」と彼は語っている。
(上巻 p.181)


チャーリーが主張するところの「ほとんどの人より、うまくいくやりかた」と重なるように思えます。

ところで、本書(原著)はWescoの2007年株主総会でチャーリーから推薦されたものです。参加したファンド・マネージャーのティルソンがノートをとってくれています

I read the new biography of Einstein by Isaacson [Einstein: His Life and Universe]. I’ve read all the Einstein biographies, and this is by far the best - a very interesting book.(p.20)


2012年1月23日月曜日

誤判断の心理学(4)人はなぜ疑わないのか(チャーリー・マンガー)

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当たり前と考えていた仮定が実は落とし穴だった、という経験を数多くしてきました。あとになってから甘さを指摘するのは簡単ですが、前もって気がつくのは、なかなか難しいことです。今回も、個人的には身につまされる話題です。

人間の心理学的傾向その4
疑いをもたないようにする傾向
Doubt-Avoidance Tendency

人間の脳には、結論をみつけるといつまでも疑念を抱かないようにする仕組みがあります。

動物が長きに渡って、速やかに疑念を振り払う方向へ進化してきたのは言うまでもないでしょう。つまり、捕食者に狙われている獲物にとって、どうしたらよいか決めるのに時間をかけるのは、明らかに非生産的なことの一つだからです。ですから人間にとっても、疑いを持つことを避けようとするのは、ヒト以前の古きご先祖様の系譜をたどれば納得のいくものです。

結論に達して早々に疑念を払う傾向が強すぎるため、判事や陪審員にはそれを抑えるよう強制されています。すなわち、判決をきめる前には時間をおくこと。さらには、結論を出す前に、客観視という「仮面」をつけているように振舞うことを要求されます。この「仮面」が、正しく客観視するのを手助けするのです。この件は、次の話題である「終始一貫しようとする傾向」でも取り上げます。

The brain of man is programmed with a tendency to quickly remove doubt by reaching some decision.

It is easy to see how evolution would make animals, over the eons, drift toward such quick elimination of doubt. After all, the one thing that is surely counterproductive for a prey animal that is threatened by a predator is to take a long time in deciding what to do. And so man's Doubt-Avoidance Tendency is quite consistent with the history of his ancient, nonhuman ancestors.

So pronounced is the tendency in man to quickly remove doubt by reaching some decision that behavior to counter the tendency is required from judges and jurors. Here, delay before decision making is forced. And one is required to so comport himself, prior to conclusion time, so that he is wearing a “mask” of objectivity. And the “mask” works to help real objectivity along, as we shall see when we next consider man's Inconsistency-Avoidance Tendency.

2012年1月21日土曜日

実に愚かしい罪(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーは人の生き方について指針となる発言をすることがありますが、なかでも妬むことを厳しく戒めています。おなじみの「Poor Charlie's Almanack」からの引用で、チャーリーの発言をティルソンがメモしたものです。(日本語は拙訳)

普通の投資アドバイザーなら賛成しないかもしれませんが、自分の資産がまあ満足できるほどになっていて、誰か他の人が、たとえばリスキーな株式に投資して、より速くお金持ちになろうとしていても、そんなことは気にしないのが正しいのです。自分より速く金持ちになる人がいるのが当たり前のことで、別に悲しむことではありません。

Here's one truth that perhaps your typical investment counselor would disagree with: If you're comfortably rich and someone else is getting richer faster than you by, for example, investing in risky stocks, so what?! Someone will always be getting richer faster than you. This is not a tragedy.


自分より速く金を稼ぐ人のことを気にかけるのは、大罪の一つです。この「妬み」というのは実に愚かしい罪で、これだけが、[7つの大罪のうち]自分にとって何も楽しいことがないものです。つらいばかりで、ちっとも楽しくない。そんな思いを抱えている人たちに加わりたいとは思わないでしょう。

The idea of caring that someone is making money faster [than you are] is one of the deadly sins. Envy is a really stupid sin because it's the only one you could never possibly have any fun at. There's a lot of pain and no fun. Why would you want to get on that trolley?


2012年1月18日水曜日

雑音には耳を貸さず、何が起きているかをみきわめる(ブランデス)

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ブランデス(Brandes Investment Partners)はアメリカの著名なファンドで、運用資産は2.5兆円(=329億ドル)にのぼります。日本株にも積極的に投資しています。そういえば、小野薬品工業の大株主になっていたのを覚えています。EDINETをみると、少し前に同社の持ち株比率を5%未満に下げていたようですね。

今回は日本株に対する彼らの見解(How have Brandes' Japan holdings performed since the earthquake and tsunami in March 2011?)をご紹介します。あっという間に終わる1分半の映像ですが、強気の姿勢です。

・地震と津波は日本にとって確かに大きな出来事でしたが、長期投資家としては雑音には耳を貸さず、何が起きているかをみきわめる必要があります。企業によって、それぞれ事情は異なっているからです。

・今回の地震と津波以後、日本の企業は以前よりも環境の変化に強くなっています。また、この2年間で日本企業の株価は世界中で最も割安になりました。

・いま日本株でお買い得なのは、世界規模で通用する企業なのに、どの評価基準からみても割安なものがあります。その生産能力や技術は、世界で通用するものです。また日経[平均銘柄]の半数以上はNet cashの金額で取引されています。財務状況はきわめて強固です。

(Net cash: 現預金 + 有価証券 - 有利子負債 - 退職引当金のことか?)

東日本大震災以降の日本は、一般の欧米人には危ない国だと思われているでしょうから、日本株を推奨するマネージャーはそれなりに大変でしょうね。

2012年1月17日火曜日

TOPIX Core30ひとかじり(3)信越化学工業

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株式市場で人気の高い企業だったのでこれまで近づかないでいました。昨年、書店で平積みになっていた金川会長の新刊を手にとる機会がありましたが、自信や義務感にあふれた言葉が連ねられていました。こうして当社の事業成績を振り返ってみると、それも納得できます。

さて、当社の有価証券報告書や事業報告書を一読して印象に残った点を挙げます。

1. 各事業部門がおしなべて高収益体質
当社の中核事業は5つで、塩化ビニル樹脂・化成品、半導体シリコン、シリコーン、機能性化学品(セルロースなど)、電子・機能材料ですが、おしなべて営業利益率が10%を超えています。2011年度の上半期では、鹿島工場が被災した塩ビ事業は8.3%と低調ですが、そのほかは順に17.0%, 24.7%, 16.6%, 24.5%となっています。各事業の年間売上規模は1,000-3,000億円であり、成長余地が残されています。

2. 赤字を出さない
下の図は1997年度からの一株当たり純利益と配当の推移を示したものです。それ以前の年度は、当社のWebサイトには掲載されていませんでした。一目瞭然ですが、景気後退の時期でも黒字を継続しています。しかもそれなりの水準を保っています。配当も増配基調です。ここ10年間では減配していません。








3. 10年以上前から事業が継続している
原材料に近い川上の産業では製品ライフサイクルが長いものですが、当社の中核事業も10年以上前からのもので、高収益を維持し続けています。1997年度の決算短信をみても、塩ビ、シリコーン、セルロース誘導体、半導体シリコン、合成石英製品、希土類磁石等のように、現在も主力の製品がならんでいます。それらの既存事業は、生産規模の拡大、企業買収、不採算事業からの撤退等によって収益を拡大してきました。なかでも塩ビ及びシリコン関連製品では原料部門を強化しており、垂直統合によって規模拡大と利益率維持をめざしているように見受けられます。

財務や事業内容を簡単にみた上で現時点の株価3,700円を判断すると、半額まではいかないにしても割安な水準だと感じます。10年チャートをみると昔の株価に戻っていますが、純資産はこの10年強で倍増しています。生産能力も増強されており、次の好況期に備えています。前回のテンプルトン卿の教え「優良企業の中から割安なものを選びなさい」がよくあてはまる企業の一つではないでしょうか。