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2012年7月18日水曜日

P/Lは見るもの、B/Sは読むもの(スター精密社長佐藤肇)

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前回とりあげた売掛金のような話題となると、実情が生々しく伝わってくるのは実際の経営者の言葉です。そういうわけで、もうひとつ手にとってみた本が『社長が絶対に守るべき経営の定石』です。著者はスター精密社長の佐藤肇氏で、創業者だった父親から受け継いだ経営上の定石を実践咀嚼した上で、具体的な数字を使って簡明に説明しています。題名が示すように、経営で悩む社長向けに書かれた本ですが、投資家の参考になる話題もあちこちにみられます。

今回は、貸借対照表の重要性を説いた部分をご紹介します。個人的には、企業分析の際には損益計算書だけでなく、貸借対照表やキャッシュフロー計算書にも目を通してきました(過去記事)。今回の引用文を読むと、そういったやりかたが有益なことを感じさせてくれます。

P/Lは見るもの、そしてB/Sは読むもの、というのが私の持論である。

P/Lは一番上にある売上高から下に目をやっていくだけで、いくら経費を使って最終的にいくら儲かったか、単純な引き算である。したがって、見ればすぐわかる。

一方、B/Sをただ眺めていても、会社の実態は一向に見えてこない。しかし、会社の実態というのはB/Sにこそ示されているものであり、B/Sの体質が良くなったのかどうか、経営としてはそれが重要である。利益は出たがB/Sが良くないというのでは、優れた経営とはいえない。利益が出て、なおかつB/Sが良くなり、会社が効率のいい会社に生まれかわる、ここにこそ、経営の定石を守る意義があると、前頁で申し上げたとおりだ。(p.374)


B/Sというのは、会社創業以来の蓄積の結果をあらわしたものである。言ってみれば、創業以来10年も20年もかけて蓄積してきた会社の力量、会社が現在有している体力のすべてを示しているのがB/Sなのである。

そこには、事業の歴史と社長の折々の判断が、良いも悪いも含めて、すべて凝縮されたカタチであらわされている。例えば、B/Sの右側は、その会社が持っている自分のカネ、利益、それと信用の累計であり、結局はこれだけの資金を使って会社経営ができるという「資金の調達力」をあらわしている。いわば、何十年もかけて蓄積してきた、会社の現時点における体力をあらわしているといっていい。

このように、B/Sの右側は資金の調達力をあらわしたものだが、それだけではない。さらに、どういうところから資金を調達しているのか、自分のカネなのか銀行からの借金なのか、信用によって仕入先から買掛債務として調達しているカネなのかといった「資金の調達先」もあらわしている。

一方のB/Sの左側は、右側で調達した資金をどのように使っているか、「資金の使い道」「資金の使途」をあらわしている。つまり、調達した資金を売掛金や手形でもっているとか、機械設備や土地でもっているとか、あるいは投資勘定でもっているといったことをあらわしている。そして、必要以上に在庫が多いとか、売掛債権が多いとか、自己資本以上に固定資産を持っているとか、万一不渡りをくらったときに、手元にすぐ金になるものがいくらあるとか、創業からこれまで資金をどう調達して、どう使ってきたか、いわば会社の体質、体力、もっといえば社長の性格、経営のやり方そのものが、B/Sには示されているといっていい。

だから過去3期分なり5期分なりのB/Sを拝見すれば、「売上の割に儲からない体質」とか「万一のときにどの程度の抵抗力があるか」だとか、その会社の実態が読み取れるのだ。

こういうことはP/Lだけ見ていても、決してわからない。基本的にP/Lで出る利益というのは、つくられた数字、いわば帳簿上の数字であって、利益が上がったからカネが増えるわけではないからだ。はっきり言ってしまえば、実際のカネと利益というのは直接関係がないのだ。(p.348)

2012年6月29日金曜日

レストランを品定めするように(ジョン・テンプルトン)

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ジョン・テンプルトンの「投資で成功するための16のルール」から、今回はルールその5「株式を買う際には、優良企業の中から割安なものを選びなさい」の説明文です。引用元はこちらです。(日本語は拙訳)

どういう企業であれば質が高いといえるのでしょうか。例えば、成長市場で売上のリーダーとして足場を固めていたり、技術革新を要する分野において技術面でリードしていたり、過去の実績に裏付けられた強力な経営陣がいたり、新規市場に最初に踏み入れた企業の中でも十分な資本を有していたり、有名かつ信頼のおけるブランドで消費者向け製品を提供して高い利益を得ている、といった企業があてはまるでしょう。

当然ですが、そういった様々な「質」を個別に考えるべきではありません。たとえば、低コストが売り物の企業であっても、自社の製品が顧客の望むものではなくなっていたら、質の高い株とはいえません。同様に、ある技術面でリードしていても、事業を拡大したりマーケティングを進めるのに必要な資本が不足していれば、あまり意味がないのです。

株の質を見極めるには、レストランを品定めするように考えるとよいでしょう。完全無欠というのは難しいですが、優れたところがなければ3つ星や4つ星はあげられない、といった具合です。

Quality is a company strongly entrenched as the sales leader in a growing market. Quality is a company that's the technological leader in a field that depends on technical innovation. Quality is a strong management team with a proven track record. Quality is a well-capitalized company that is among the first into a new market. Quality is a wellknown trusted brand for a high-profit-margin consumer product.

Naturally, you cannot consider these attributes of quality in isolation. A company may be the low-cost producer, for example, but it is not a quality stock if its product line is falling out of favor with customers. Likewise, being the technological leader in a technological field means little without adequate capitalization for expansion and marketing.

Determining quality in a stock is like reviewing a restaurant. You don't expect it to be 100% perfect, but before it gets three or four stars you want it to be superior.


アメリカのファンド・マネージャーは、しばしば「質が高い」(high quality)という表現をします。本ブログでもgonchanさんがコメントして下さっていますが(過去記事)、具体的に何をさしているのだろう、とわたしも気にはなっています。今回ご紹介したテンプルトン卿は大御所だけあって漠然とした感もありますが、噛みしめてみるとなかなか味わい深いですね。

2012年6月19日火曜日

成功している投資家とそうでない人の違い(ジョン・テンプルトン)

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ジョン・テンプルトンの「投資で成功するための16のルール」から、今回はルールその11「自分の過ちから学びなさい」の説明文をご紹介します。引用元はこちらです。(日本語は拙訳)

(ルールその11) 自分の過ちから学びなさい

失敗を避ける唯一の方法、それは投資をしないことです。が、実はそれこそ最大の失敗ですね。ですから、落ち込んだりしないで、失敗した自分を許してやってください。なにより、損した分を取り返そうとして、より大きなリスクをとらないことです。そうではなくて、失敗を教訓として学ぶのです。なにがまずかったのか正しく把握し、同じ失敗を繰り返さないためにどうしたらよいのか見定めてください。

「今回はこれまでとは違うんだ」と力説する投資家がいます。それは、投資の歴史においてもっとも高くついてきた言葉を口にしていますね。実のところ、過去に起きた顛末が、また繰り返されているのです。

成功している投資家とそうでない人では何が大きく違うのか。それは、成功している人は自らの過ちや他人の失敗から学んでいるという点なのです。

No. 11 LEARN FROM YOUR MISTAKES

The only way to avoid mistakes is not to invest - which is the biggest mistake of all. So forgive yourself for your errors. Don’t become discouraged, and certainly don’t try to recoup your losses by taking bigger risks. Instead, turn each mistake into a learning experience. Determine exactly what went wrong and how you can avoid the same mistake in the future.

The investor who says, “This time is different,” when in fact it’s virtually a repeat of an earlier situation, has uttered among the four most costly words in the annals of investing.

The big difference between those who are successful and those who are not is that successful people learn from their mistakes and the mistakes of others.


よく聞く話だとお感じになった方、たしかにその通りです。同じような助言を過去に何度か挙げています(「投資で成功するのに大切なこと」「注意!この先危険」)。ここで重要なことが2つあると思います。ひとつめは、著名な投資家が口をそろえて指摘していること。もうひとつは、この助言を受けて自分がどのように行動しているかです。

2012年6月6日水曜日

いつ株を買うのですか(ジョン・テンプルトン)

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以前にジョン・テンプルトンの「投資で成功するための16のルール」を取り上げましたが、今回はルールその4「安く買うこと」の説明全文をご紹介します。転載されたものですが、原文のファイルはこちらにあります。(日本語は拙訳)

(ルールその4) 安く買うこと

あたり前だと思われるでしょうが、しかし市場ではそうなってはいません。株価があがると、大勢の投資家がどんどん買いにまわりますし、買い手が少ないときは株価は低いものです。投資家が手を引くと、みんな失望して悲観的になります。

ほとんどの人がいっせいに悲観するときには、市場全体が落ちこみます。特定のセクターの銘柄だけが下落するのはよくあることですし、自動車メーカーや損害保険といった業界は定期的な周期で動いています。ときには貯蓄組合や大手の金融機関のような株全体が不人気になることもあります。まあ、理由は何であれ、そんなときに投資家は財布のひもをしめて身を引くのです。人はこう言います、「安く買って高く売れ」と。しかし、そういう人の大半は、高く買って安く売っているのです。「では、いつ株を買うのですか」と尋ねてみてください。たいていはこう返ってくるでしょう。「アナリストが明るい見通しに同意した後ですね」

愚かしいことですが、これが人の常なのです。流れに逆らって進むのはすごく難しいのです。誰もが売っていたり、お先真っ暗だったり、市場全体やある業界やある企業を指して、今買うのは危ないと専門家が口をそろえている、そんなときに株を買うのはすごく難しいことです。

ですが、みんなと同じ株を買うのであれば、成績も同じです。マーケット全体を買うということは、定義上はマーケットの成績を超えることはできません。またみんなと同じものを買うということは、既に割高になった後に手を出していることになります。偉大なる証券アナリストの先駆者ベンジャミン・グレアムの言葉に耳を傾けましょう。「専門家も含めたほとんどの人が悲観的なときに買うこと。そしてすごく楽観的になったら売ること」

大統領の政治顧問だったバーナード・バルークは、もっと簡潔に言っています。「大衆の向かうほうへ進んではならない」。かんたんなことですが、そうするのは難しいものです。

No.4 Buy Low

Of course, you say, that's obvious. Well, it may be, but that isn't the way the market works. When prices are high, a lot of investors are buying a lot of stocks. Prices are low when demand is low. Investors have pulled back, people are discouraged and pessimistic.

When almost everyone is pessimistic at the same time, the entire market collapses. More often, just stocks in particular fields fall. Industries such as automaking and casualty insurance go through regular cycles. Sometimes stocks of companies like the thrift institutions or money-center banks fall out of favor all at once. Whatever the reason, investors are on the sidelines, sitting on their wallets. Yes, they tell you: "Buy low, sell high." But all too many of them bought high and sold low. Then you ask: "When will you buy the stock?" The usual answer: "Why, after analysts agree on a favorable outlook."

This is foolish, but it is human nature. It is extremely difficult to go against the crowd - to buy when everyone else is selling or has sold, to buy when things look darkest, to buy when so many experts are telling you that stocks in general, or in this particular industry, or even in this particular company, are risky right now.

But, if you buy the same securities everyone else is buying, you will have the same results as everyone else. By definition, you can't outperform the market if you buy the market. And chances are if you buy what everyone is buying you will do so only after it is already overpriced. Heed the words of the great pioneer of stock analysis Benjamin Graham: "Buy when most people…including experts…are pessimistic, and sell when they are actively optimistic."

Bernard Baruch, advisor to presidents, was even more succinct: "Never follow the crowd." So simple in concept. So difficult in execution.

2012年6月4日月曜日

株価が上がりそうだから買うのではない(ウォーレン・バフェット)

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アメリカの経済誌Forbesの1974年11月1日号に掲載されたウォーレン・バフェットのインタビューは、次の有名な言葉で締めくくられています。「今こそ投資をして、お金持ちになりましょう」(Now is the time to invest and get rich.)。今回は同記事の中から、株を買うときにはどうしたらよいか、ウォーレンの助言をご紹介します。(日本語は拙訳)

常識的なものになりますが、あきれるほど安値になっている株を買うことです。どういう基準で安いのかというと、以前から使われているような、純資産、簿価、継続価値[DCF等]といった指標があります。あまり手を出しすぎるのではなく、自分の知っているものにこだわることです。自分で理解しているビジネスだけに的をしぼり、さきほど挙げた評価額や、よい経営者がいるか、厳しい時期でも深手を負わなくてすむかといった点で評価し、基準に達しないものは除きます。わたしの場合はハイテク企業やコングロマリットは理解できないので、手を出しません。そして、株価が上がりそうだから買うのではなく、自分で所有したいと思う企業を買うのです。

Just commonsense ones. Buy stocks that sell at ridiculously low prices. Low by what standards? By the conventional ones of net worth, book value, the value of the business as a going concern. Above all, stick with what you know; don't get too fancy. "Draw a circle around the businesses you understand and then eliminate those that fail to qualify on the basis of value, good management and limited exposure to hard times." No high technology. No multicompanies. "I don't understand them," says Buffett. "Buy into a company because you want to own it, not because you want the stock to go up." (p.41)

以下の図は、この記事が掲載された頃のS&P500のチャートです。赤の矢印は、掲載号の発売日を示しています。さすがはウォーレン、どんぴしゃりです。








一方の日本市場、株価の底がいつやってくるのかわかりませんが、個人的には5月から株を買い進めています。先走ってしまったので、このところは手綱をひいていますが、アメリカ大統領選の11月に向けて、機をみながら買い続けるつもりです。

2012年5月8日火曜日

急いでお金持ちになりたい人は(ウォーレン・バフェット)

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前回の続きで、学生の問いかけに答えるウォーレン・バフェットです。今回はバリュー投資についてです。

<質問>
優れたバリュー投資家になるにはどうしたらいいのでしょうか。またバリュー投資家が他のプロの投資家とは何が違うのでしょうか。

<バフェット>
バリュー投資家は長期的な視点で考えるようにしています。ですから、よりうまく考えたいと思いますし、明日にでも儲かることを考えるのではなく、10年先を考えるようにしています。

バリュー投資家は明日にでもお金持ちになれるとは考えていません。急いでお金持ちになろうとする人は、けっきょくはお金持ちになれないのです。時間をかけてお金持ちになるのは、ちっとも悪いことではありません。

わたしもみなさんと同じ布団で寝ていますし、同じ食べ物を食べてますよ。

いつだっていろんなことを楽しむようにすれば、何でもかんでも買うことはできなくても、人生はすばらしいものになります。金銭的には裕福でなくても幸せに暮らしている人ならば、たくさん知っています。反対に、お金持ちなのに幸せでない人たちも知っています。

<Q>
What makes a good value investor and how different are value investors from other professional investors?

<A>
Value investors always take a long-term perspective, we want to think we are superior and are not concerned about getting rich tomorrow but over a period of ten-years instead.

Value investors are not concerned with getting rich tomorrow. People who want to get rich quickly, will not get rich at all. There is nothing wrong with getting rich slowly.

Remember we both sleep on the same mattress and eat the same food

Always remember to have a lot of fun, you may not be able to buy as much, but your life will be pleasant. I know lots of people who are not rich in financial terms but they are still happy. I know plenty of unhappy rich people.


5月5日の年次株主総会でのウォーレンの様子。子会社の出店で新聞投げのイベントを楽しんでいます。あいかわらずのナイス・スローイングです。



こちらは投げ方を指導中。ビル・ゲイツも列に並んでいます。



2012年5月6日日曜日

成功するのに必要なこと(ウォーレン・バフェット)

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バークシャー・ハサウェイの年次株主総会も終わり、各所に投稿されたレポートを読み始めています。ウォーレン・バフェットもチャーリー・マンガーも健在で、まずは何よりです。それらのレポートの中から近日中にご紹介したいと考えておりますが、今回は少し前の3月30日に行われたウォーレンと学生の会合でのやりとりから引用します。引用元は、西オンタリオ大学のビジネススクールのサイトに掲載されているインタビューノートです。(日本語は拙訳)

<質問>
あなたが初期の頃に手がけていたのは、情報の格差を利用したアービトラージ[サヤ取り]だったと存じます。今では世の中も変わり、情報はそれこそ光の速さでいきわたっています。どうすればすばらしい成功をおさめ続けられるでしょうか。

<バフェット>
今の時代は情報の面ではよくなりましたが、人がとる行動は非合理的なままですね。

わたしが最初の仕事として証券アナリストについたころは、公開株に関する情報は2つしかありませんでした。ムーディーズかS&Pのマニュアルです。ですから私が文字どおり一日中やっていたのは、その本を1ページずつ読みすすめて、割安なものがないか探すことでした。

あるとき、1株当たりの純利益が13ドルの会社が、株価22ドルで取引されているのをみつけました。PERが2倍、すごいお買い得ですね。ところが株主は全部で400名ぐらいだったので、買おうにも買えなかったのです。そこでわたしはその会社の本社がある町へでかけて新聞広告をだしました。「株、買います」。

よい取引をするには、少しぐらいは一生懸命にやらなければならないこともあります。ここ最近も、韓国株のマニュアルを読んで同じようなお買い得をみつけました。ですが、成功をおさめるのに本当に必要なのは、情緒が安定していること、これに尽きると思います。

お金持ちになるには、知能指数が高い必要はないのです。

<Q>
The key to your early career was essential information arbitrage. Given the changes in the world and that information now moves at the speed of light, how do you continue to have such great successes?

<A>
People have better information now, but they still act irrationally.

When I took my first job as a security analyst there were only two sources of information on public equities; the Moody’s manual or the S&P manual. So I would literally spend all day looking through this book page by page, looking for undervalued securities.

I found a company with around $13/share in earnings, and was trading at $22. So at a 2 times P/E it was a great buy. But there were only 400 shareholders and I couldn’t actually buy a piece of it. So I went to the town where the company was headquartered and ran an ad in the newspaper to buy shares.

Sometimes you have to work a little bit hard to get the good deals. And looking through the Korean stock manuals I’ve found some of these same opportunities today. But ultimately, the key to success is emotional stability.

You don’t need a high IQ to get rich.

2012年4月6日金曜日

マクドナルド、いただきます(モーニッシュ・パブライ)

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ウォーレン・バフェットはチャリティーの一環として、自分とランチを楽しむ権利を売りに出していましたが、バフェットを信奉するファンド・マネージャーが、大枚はたいて手にしたことがありました。彼の名はモーニッシュ・パブライ。その対価は約5,000万円でした。

カナダの大手新聞The Globe and Mailのサイトで、彼のやりかたをとりあげた記事The case for being a copycat investorがありましたので、ご紹介します。(日本語は拙訳)

よいアイデアを盗むのは後ろめたい? アメリカのファンド・マネージャー、モーニッシュ・バブライはそうは考えない。資産を築くにはすばらしいやりかたなので、著名な投資家をもっとまねしたほうがよいと説く。そういう彼の本からアイデアを借りて、あなたも自分のポートフォリオを見直したくなるかもしれない。

パブライ氏は先日、オンタリオ州ロンドンのリチャード・アイヴィー・スクール・オブ・ビジネスで学生を相手に「他人をまねることの楽しさ」について話をした。よく知られた話だが、彼はマクドナルドが新しい店をどこに開くか手間ひまかけて調べる例をあげた。「立地のよしあしが成否につながるので、そうするだけの価値があるのです。ところが競合のバーガーキングのほうは、ずっと安上がりにすませています。そう、単にマクドナルドの向かいに店を開くだけです。ライバルが調べたおいしいところを、ただで手に入れてしまおうというわけです」。

Is purloining good ideas distasteful? U.S. fund manager Mohnish Pabrai doesn’t think so. He says it’s a great way to make money and urges people to copy notable investors more often. You might want to take a page out of his book and improve your portfolio.

Mr. Pabrai recently talked about the joys of being a copycat with students at the Ben Graham Centre for Value Investing at the Richard Ivey School of Business in London, Ont. He pointed to the case of McDonald’s, which is well known for spending a great deal of time and effort on selecting locations for new restaurants. The effort is worth it because a good spot can make the difference between success and failure. But rival Burger King has a less expensive approach. It simply puts its restaurants across the street from existing McDonald’s locations, thus getting the benefit of its rival’s research for free.


まねる場合には、情報公開時期の遅れに注意するよう触れています。

ただし、注意する点がひとつ。頻繁に売買するマネージャーは、持ち株の状況を報告してもすぐに他の株へ乗り換えてしまうことがある。その手の報告書に載っている株に飛びつくと、すでにマネージャーが手放した株を買うことになるかもしれない。

だから、他人のまねをするとしたら長期投資家をまねるべきだ。となると、バリュー投資家をまねることになるだろう。不人気の証券を買って何年でも持ち続ける人たちを、だ。

But there’s another hitch. Managers who trade frequently may have swapped into different stocks soon after they filed their list of holdings. Someone who jumps into stocks on the basis of those regulatory filings could be purchasing stocks the manager has already discarded.

For that reason, copycats should focus on investors who hold stocks for long periods. By and large, that means copying value investors ? money managers who buy out-of-favour securities and hold onto them for several years.


パブライのランチ代は高額でしたが、それゆえメディアでも取り上げられました。ファンド・マネージャーとしては名前が売れて、おそらく本人が予期したような、よい投資になったのではないでしょうか。

2012年4月4日水曜日

底値で株を売却する投資家をばかにはできない(ロバート・ルービン)

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引続き、ロバート・ルービンの『ルービン回顧録』です。この本は投資家にとっても学ぶところのある一冊ですが、特に第12章の「上げ相場の終焉をめぐって」には忠告や助言が多くみられます。どれもまっとうなものばかりで、ウォーレン・バフェットが「よく書けている」と推薦するだけのことはあります。今回も同書からの引用です。

私自身のこれまでの投資を振り返ってみると、市場というのは予想や勘や期待どおりにはいかないものだと痛感する。したがって、常に株式投資には危険がつきものだと心にとどめ、多額の投資をしないように心がけている。ゴールドマン・サックス時代の投資経験から、市場の性質を思い知らされたためでもある。しかし、1973年に市況がかなり悪かった頃、私が基礎的条件を熟知している企業の株が下落し、その長期的な経営見通しに比べてかなり割安になった。買い時だと判断し、そうした企業の株を購入したのだが、その後も株価は下落し続け、翌1974年の底値の時には購入時から50パーセントも下がっていた。

この話は、熟練した手堅い投資家にとっても、市場の底やピークを見きわめるのは難しいことを物語っている。もう少し幅広い観点から言うならば、目先の市場の動きは予測不可能なので、投資家は長期的なリスクやリターン、リスクに対するみずからの忍耐力に基づいて、資産運用を行うべきである。しかしながら、かく言う私もこのささやかな教訓を忘れ、短期的な市場の動きに関心を奪われがちである。1998年から2000年にかけてのように好調だった時期だけに目を向ければ、私はすばらしい投資実績を記録していると言える。しかし、これまでの投資判断を正直にすべて振り返ると、おそらく短期市場予測の正答率は、せいぜい五分五分であり、それ以上の判断のできる投資家はいないと思う。1973年の経験は、何事にも絶対主義は禁物だというよい警告となるだろう。それは反対思考の株式投資運用者にも言えることだ。ある方向の長期的なトレンドを目にしたときには、それが賢明な判断であるかどうか常に疑念を持つべきである。とくに1973年に私がしたように、市場全体の動きに反する判断を下す場合には、総崩れした際には長い間痛手を負うこともあると覚悟するべきである。かつてゴールドマン・サックスのパートナーだったボブ・ヌーチンがよく口にしていたように、底値で株を売却する投資家をばかにはできない。問題は現実に目の前にあるが、結果はどうなるかわからないからだ。あとから振りかえってみて初めて、最悪の事態がすぎたことがわかるものなのである。 (p.457)

2012年4月3日火曜日

私がウォール街で見てきたこと(ロバート・ルービン)

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ロバート・ルービンがゴールドマン・サックスに転職する前は、ある法律事務所に勤めていました。そこで株式公開の仕事に携わったことで、投資に興味を持つようになります。分析手法のよりどころとしたのは、ベンジャミン・グレアムの『証券分析』。今回は株式投資に対する彼の見方をご紹介します。前回と同じ『ルービン回顧録』からの引用です。

今日でも、私はこれ[ベン・グレアムのやりかた]が株に投資する唯一の賢明な方法だと考えている。企業活動全体の経済的価値を考えるときと同じように、株の経済的価値を分析すべきなのだ。製鉄所であれハイテク企業であれ、その企業が将来見込める収益に、ほかの基本的要因 - リスクやバランスシートに載らない資産など - を加味した現在の価値に相当する。長期的に見れば、株価はこの経済的価値を反映しているのだが、長い間その価値から大きく乖離することもある。投資家はときどきこの現実を見失ってしまうらしく、その結果、当然ながら予測しうる事態を招く。最新の例では、2000年と2001年にインターネット業界と通信業界の株が暴落したとき、多くの投資家が価値判断ではなく流行にしたがった結果、多大の損害をこうむった。このことと関連しているが、もうひとつ別のポイントとしてあげられるのが、最大のチャンスは往々にして時流に逆らうところにあることである。

市場のとらえ方として、グレアムとドッドのアプローチも、私のハーバード時代からの懐疑主義に合致していた。市場を眺めて、価格が市場の大方の見方を反映していない証券を見つけようとすることに、私は大きな魅力を感じた。市場は効率的だというのが、不動の学術的原則である。つまり株価は、その株に関するあらゆる既知の情報や判断を織り込んでいるというのである。この効率的市場論に付随して、長期的には誰も市場の効率に勝てないということも指摘される。しかし私がウォールストリートで見てきたことのすべてが - そして金融理論に関するもっと最近の考え方の多くが - そうではないことを物語っている。当然ながら大半の投資家は、いや、たいていの専門家でさえ、市場に勝つことはできない。しかし、よりよい分析、よりよい判断、より強い自制心を兼ね備えていれば、一部の者にはそれが可能だろう。 (p.100)

2012年4月1日日曜日

わたしなら、こう考えます(ロバート・ルービン)

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ひきつづきロバート・ルービンの話です。彼はクリントン政権時代に財務長官として名をあげましたが、その前にはゴールドマン・サックスで共同会長を務めていました。ハーバードやイェールで法学を学んでいた彼が、なぜゴールドマンで活躍するようになったのか。彼自身は哲学に興味を持ったことを大きな要因としてあげています。そういえば、バフェットやマンガー、ソロスといった著名な投資家が、哲学や数学といった論理を追究する学問、あるいは物事の本質に迫る物理学のような学問を重視しているのと通じるものがあります。

今回は、物事を分析するときのルービンのやりかたについて、前回と同じで『ルービン回顧録』から引用します。

まずは学生時代をふりかえって。

デモス教授は証明可能な確実性があるというプラトンらの哲学者を尊敬していたが、私たちに教えたのは、人の意見や解釈はつねに改訂され、さらに発展するという見解だった。教授はプラトンなど哲学者の思想を取り上げて、いかなる命題でも最終的あるいは究極的な意味で真実だと証明することは不可能である、と説き明かしていった。私たちには、分析の論理を理解するだけでなく、その体系が仮説、前提、所見に拠っている点を探し出すことが求められた。

絶対的な意味で何も証明できないという概念をいったん自分の心に取り込むと、人生をそれだけますます確率、選択、バランスで考えるようになる。証明可能な真実がない世界で、あとに残る蓋然性をいっそう精密にするためには、より多くの知識と理解を身につけるしかない。 (p.84)


次は、クリントン政権1期目の補佐官時代です。

大統領首席補佐官室で、予算案を手渡されたことがあった。私はサマーズとともにその仕事に取り組んだ。数値を丸で囲い、クエスチョンマークを走り書きし、余白におおよその見積もりを立てて書き込んだ。サマーズは、あとになって、予算数字の並んだ紙を手渡されたときの反応には二通りあるといった。ひとつは、ざっと目を通し、それを既知の事実として、そこから検討を始める方法。もうひとつは、まず数字を疑ってかかり、矛盾点を探し、数字の意味や根拠の説明を求めたり関連性を追求したりする方法。私とサマーズはともに後者の性向をもち、数字だけでなく確かだという前提そのものも見直すほうだった。 (p.393)


「既知の事実として、そこから検討を始める方法」といえば、投資家がやってしまいがちなのは、決算短信や四季報に載せられている業績予想をうのみにしてしまう例でしょう。それらの数字にひきずられるのは心理学でいうアンカリングで、その危険性をルービンは冷静にみつめています。そもそも短期的業績の変動に左右されやすいのも、直近のことばかりに目がいく我々の傾向ですね。

余談ですが、本書『ルービン回顧録』は、ウォーレン・バフェットの2003年度の推薦図書です。「株主のみなさんへ」で取り上げられています。

A 2003 book that investors can learn much from is Bull! by Maggie Mahar. Two other books I'd recommend are The Smartest Guys in the Room by Bethany McLean and Peter Elkind, and In an Uncertain World by Bob Rubin. All three are well-reported and well-written. Additionally, Jason Zweig last year did a first-class job in revising The Intelligent Investor, my favorite book on investing.

2012年3月26日月曜日

100年の大計が進められない?(信越化学工業金川会長)

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この週末は図書館で日経新聞の縮刷版を読んできました。新聞をとっていないので(過去記事)、情報を集めたり関連付けたりといった点で、新聞を読んでいる方には水をあけられていると感じています。また、年末年始にひととおり目を通した四季報からもあまりアイデアが得られず(過去記事)、最近は八方ふさがり気味です。そんなわけで初心にかえってみたところですが、半月分の紙面にざっと目を通したところで、都合のいい記事が待っているわけはないですね。

さて、今回ご紹介するのは1/5の日経新聞9面から、信越化学工業の金川会長の言葉です。「経営者」に対する辛口の批評ですが、投資家の視点で語ってくれています。

「市場が短期的な収益を求めるので『100年の大計』が進められないという経営者もいるが、ごまかしだと思う。長期的な成果は毎日毎日の積み重ねだ。今がちゃんとできない経営者は先もだめだし、私が投資家でも信用しない」

「研究開発投資などはしなければ先がないのでする。株主に説明して『今は負担だが、将来のためだ』と分かってもらえればいい。それにはまず利益という実績を示す必要がある。不信の言い訳に長期的な戦略を使ってはならない」

2012年3月13日火曜日

辛抱できなくて、何かしたくなったときには(チャーリー・マンガー)

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2000年に開催されたWesco年次総会でのチャーリー・マンガーの発言を引用します。おなじみ「Seeking Wisdom」からの孫引きです。(日本語は拙訳)

我々はより柔軟になりましたし、単にいろいろやっているというだけのアホなことをしでかさないように、ある種の原則を身につけました。じっと辛抱していられなくて何かしたくなれば、それこそやらない、という原則です。

We've got great flexibility and a certain discipline in terms of not doing some foolish thing just to be active - discipline in avoiding just doing any damn thing just because you can't stand inactivity. (p.100)


発言の時期は、ちょうどアメリカでITバブルが峠を越した頃です。この発言の文脈が想像できます。

余談ですが、当時のナスダック指数は4,000-5,000あたりで、今は3,000弱です。ダウ平均は逆に上昇しています。一方の日経平均は当時にピーク20,000円をつけて、現在は10,000円です。

2012年3月9日金曜日

もうかってますか?(ベン・グレアム)

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このところは日本の株式市場が好調ですね。そんなときには、この引用をどうぞ。ベンジャミン・グレアムのThe Intelligent Investor第8章からです。ちなみに、この章はウォーレン・バフェットも目からうろこが落ちたやつです(過去記事「2011年株主のみなさんへ」)。手元に翻訳版がないので、日本語は拙訳です。

真剣な投資家は日々や月々の株価がどう動いたからといって、もうかったとか損したとは、思い込んだりしないものです。

A serious investor is not likely to believe that the day-to-day or even month-to-month fluctuations of the stock market make him richer or poorer.

2012年2月20日月曜日

50年間待ちました(ウォーレン・バフェット)

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前々回にご紹介したウォーレン・バフェットのインタビューで、IBMの株式を購入するきっかけについて、やりとりがありました(5分過ぎ)。原文のトランスクリプトは"Person to Person": Warren Buffettから引用しています。

そうです、チャーリー[・ローズ]。IBMの年次報告書はだいたい毎年読んできて、50年になります。今年のを読んでいて納得できるものがありましたので、8,000億円ほど投資することにしました。

Yeah. Charlie, I'd been reading IBM's annual report, literally, every year for 50 years. And then this year...I saw something that sort a clicked in terms of adding to my-- feeling of confidence. And -- so we spent $10-plus billion. (CLEARS THROAT)


ウォーレンの答えはさすがです。50年前というと1960年過ぎです。IBMが大ヒット作のメインフレーム・コンピューターSystem/360を出したのが1964年ですので、ウォーレンは絶頂期の頃からずっと同社を見守ってきたことになります。1987年にCoca-Colaの株式を買い始めたときも、長く待ち続けた後のことでした。彼らの辛抱強さや継続して取組む姿勢は、そっくり見習いたいものです。

2012年2月14日火曜日

偉大な投資家からの、最高の助言(ボブ・ロドリゲス)

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極めつけの慎重派」として以前に取り上げたファンド・マネージャーのボブ・ロドリゲスが、FortuneのインタビューBob Rodriguez: The best advice I ever gotに応じていました。個人的には同氏の言行に注目しており、ファンドのWebサイトは度々訪れています。今回は若い頃に同氏が受けた助言についてです。(日本語は拙訳)

1974年の秋には、USCの大学院で投資上のポートフォリオ管理のコースを受講していました。金融市場は厳しい時期で、なぜそんなにひどい値段で証券が売られているのか、私にはわかりませんでした。グレアムとドッドが書いた著書『証券分析』に出会ったばかりの頃で、外部からきた講師の話をきくことになりました。チャーリー・マンガーという名のその人は、バリュー投資について熱心に語ってくれました。講義が済んだ後、チャーリーに近寄り、優れた投資のプロになるには何をしたらよいのか、たずねました。彼はこう答えました。「歴史を読むこと。読んで、読みまくるのです」。そんなわけで私は、歴史一般に限らず、経済史や金融史も読み、いっぱしの歴史家となったわけです。

私は、危機に直面した人々について学ぶことができました。ですから、2008年に金融危機がおきた時は、昔なじみのように思えました。1907年の銀行危機とよく似ていたからです。チャーリーの助言に従って歴史に親しんできたおかげで、類似点を文脈の中で捉えられました。

In the fall of 1974 I was in graduate school at USC taking a portfolio-management investment course. The financial markets were in difficulty, and I didn't understand how securities were being sold at such depressed levels. I had only recently discovered Security Analysis by Graham and Dodd when we had a guest lecturer come in named Charlie Munger, who went on about this idea of value investing. After the class was over, I walked up to Charlie and asked him if there was one thing that I could do that would make me a better investment professional. His answer was, 'Read history, read history, read history.' And so I became a good historian, reading both economic and financial history as well as general history.

What I learned is that people relate to the crises they have experienced. So when the crisis of 2008 came, it felt like an old friend to me because it had so many similarities to the banking crisis of 1907. Asking Charlie's advice and then reading history allowed me to put those things in context.


同氏は現在、USCのビジネススクールに設立されている投資関連の研究所で、アドバイザーを務めています。同研究所の学生は、実際にファンドを運用しながら学んでいるようです。

歴史から学ぶといえば、ジム・ロジャーズもどこかで書いていましたね。

2012年2月13日月曜日

ゴルフと同じです(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーは幾度となく、学ぶことの大切さにふれていますが、今回は未経験の投資分野でも通用すると説いたものです。おなじみの「Poor Charlie's Almanack」からの引用です。

とんとん拍子で大投資家になった人は皆、学んでいます。ウォーレンに知り合ってからいろんな優れた投資家がいましたが、彼は飛びぬけた一人ですね。このゲーム[=投資]は、すなわち学び続けることなのです。学んで習得する過程自体を好きにならなきゃね。

ウォーレンの様子を何十年もみてきましたが、彼は多くのことを学んできました。だからこそ、ペトロチャイナのような企業に投資できるまでに、自分の守備範囲を広げられたわけです。

投資を始めると、全然経験のない分野に投資することもでてきます。しかし、少しずつでも前進し続ければ、ほぼ確実に好成績をおさめられるような投資を始められるでしょう。大切なのは、規律を守り、勤勉に努め、実践を積むことです。ゴルフでうまくなりたいのと同じです。せっせと励まなければなりません。

学ぶのをサボっていると、他の人に追い越されますよ。

I don't know anyone who [learned to be a great investor] with great rapidity. Warren has gotten to be one hell of a lot better investor over the period I've known him, as have I. So the game is to keep learning. You gotta like the learning process.

I've watched Warren for decades. Warren has learned a lot, which has allowed him to [expand his circle of competence so he could invest in something like PetroChina].

If you're going to be an investor, you're going to make some investments where you don't have all the experience you need. But if you keep trying to get a little better over time, you'll start to make investments that are virtually certain to have a good outcome. The keys are discipline, hard work, and practice. It's like playing golf - you have to work on it.

If you don't keep learning, other people will pass you by.

2012年2月3日金曜日

チャーリー・マンガーによる投資対象の評価手順

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ウォーレン・バフェットはバークシャー・ハサウェイの年次報告書を通じてビジネスや投資に関する示唆を行ってきましたが、一方のチャーリー・マンガーはそのような場を積極的には求めていません。本ブログでご紹介しているような講演が主な発言の場ですが、その内容も投資やビジネスには限定されず、より一般的で抽象度の高い、いわば「とっつきにくい」ものが多くみられます。今回ご紹介するのはチャーリー自身の企業分析のプロセスですが、実はこの文章は本人によるものではなく、引用元の「Poor Charlie's Almanack」の編者ピーター・カウフマン(Peter D. Kaufman)が著したものです。だからといって価値が低いかというと、そうではありません。ピーターは非公開の製造業のCEO及び会長を務めるかたわら、チャーリーが会長を務めるWesco Financialの取締役に2003年から就いています。同様に、チャーリーが会長を務めるデイリー・ジャーナルの取締役にもなっています。ですから、チャーリーとは親交が深く、彼の意思決定や思考プロセスになじんでいることは容易に想像されます。ですので、この文章はチャーリーのやりかた全てをあらわしたものではないでしょうが、目のつけどころを学ぶきっかけにはなるかと思います。(日本語は拙訳)

チャーリーは包括的に評価を行っていくが、データに盲従しているわけではない。対象企業及び業界について内外問わず、互いに関連する全ての観点を考慮にいれる。特定しにくいとか、測りにくいとか、数値化しにくくてもだ。しかし完璧にやるからといって、彼のエコシステム的な主題をおろそかにするわけではない。ときには、ある要因を最大化したり、最小化したり、(特筆すべきは、彼が好んで指摘するコストコの低価格倉庫店のような「特化」)、そういったことを行う。すると、その要因が大きく取り上げられ、重要なものとなる。

チャーリーは、財務諸表やその前提となる会計に対して、中西部人らしく懐疑的にみる。企業の本源的価値が計算しきれるものではなく、せいぜい初めの一歩になるものと捉えている。彼の調べる要因は他にも延々と続く。たとえば、今後の法規制の風向き具合、労働環境、供給者や顧客との関係、技術の進展による潜在的な影響、競争優位性や弱点、価格決定力、拡張性、環境問題。潜在的な脅威がないかは、特に注意している(もちろん、チャーリーはリスクのない投資候補などありえないことは承知しており、容易に理解できるリスクがほとんどない企業を探している)。彼は財務諸表上の数字を、自身の目にうつる現実にあてはめなおす。例えば、フリー・キャッシュ、在庫、運転資金、固定資産、のれんのような過大評価されがちな無形資産といったもの。またストック・オプション、年金給付、退職者向け健康保険給付が実のところどう響いてくるのか、将来をみすえて評価する。貸借対照表の負債についても同じように精査する。例えば、適切な環境下ではフロートを債務とみるのは適切でないとし、資産とみなす。フロートとは、[保険業界において]支払い請求がされるまでは何年間も払い戻す必要がない準備金のこと。さらに経営陣に関しては、よくやるような数字の解読以上に厳しく精査する。現金をどのように使ったのか、株主のために賢く使ったのか、それとも自分自身に過大な報酬を出したのか、あるいはエゴを満たすような、成長のための成長を追求したのか、という風にだ。

結局のところ、彼はあらゆる観点を考慮して競争優位性とそれがいつまで続くのかを評価し、理解しようとつとめる。観点には、製品、マーケット、商標、従業員、物流チャネル、社会的トレンドなどが含まれる。チャーリーは企業の競争優位性を「堀」とみる。侵入しようとするものに対して築かれている、目に見えない物理的な障壁だ。優れた企業は深い堀をもち、いつまでも守り抜けるように、それを広げ続けている。同じように、チャーリーは破滅的な競争に至る道も注意深く考慮する。長期的にみると、ほとんどの企業が囚われてしまうからだ。マンガーとバフェットはこの問題を注視する。ときには痛い目にあいながらも、長期にわたるビジネス上の経験で彼らは学んできたのは、何世代にもわたって生き延びるビジネスはほとんどないということだ。そういうわけで、その厳しい選別をくぐりぬけられそうなビジネスをみわけ、それだけを買うように力を注いでいる。

Throughout his exhaustive evaluation, Charlie is no slave to a database: He takes into account all relevant aspects, both internal and external to the company and its industry, even if they are difficult to identify, measure, or reduce to numbers. His thoroughness, however, does not cause him to forget his overall “ecosystem” theme: Sometimes the maximization or minimization of a single factor (notably specialization, as he likes to point out regarding Costco's discount warehouses) can make that single factor disproportionately important.

Charlie treats financial reports and their underlying accounting with a Midwestern dose of skepticism. At best, they are merely the beginning of a proper calculation of intrinsic valuation, not the end. The list of additional factors he examines is seemingly endless and includes such things as the current and prospective regulatory climate; state of labor, supplier, and customer relations; potential impact of changes in technology; competitive strengths and vulnerabilities; pricing power; scalability; environmental issues; and, notably, the presence of hidden exposures (Charlie knows that there is no such thing as a riskless investment candidate; he's searching for those with few risks that are easily understandable). He recasts all financial statement figures to fit his own view of reality, including the actual free or “owners” cash being produced, inventory and other working capital assets, fixed assets, and such frequently overstated intangible assets as goodwill. He also completes an assessment of the true impact, current and future, of the cost of stock options, pension plans, and retiree medical benefits. He applies equal scrutiny to the liability side of the balance sheet. For example, under the right circumstances, he might view an obligation such as insurance float ? premium income that may not be paid out in claims for many years ? more properly as an asset. He especially assesses a company's management well beyond conventional number crunching ? in particular, the degree to which they are “able, trustworthy, and owner-oriented.” For example, how do they deploy cash? Do they allocate it intelligently on behalf of the owners, or do they overcompensate themselves, or pursue ego-oriented growth for growth's sake?

Above all, he attempts to assess and understand competitive advantage in every respect ? products, markets, trademarks, employees, distribution channels, societal trends, and so on ? and the durability of that advantage. Charlie refers to a company's competitive advantage as its “moat”: the virtual physical barrier it presents against incursions. Superior companies have deep moats that are continuously widened to provide enduring protection. In this vein, Charlie carefully considers “competitive destruction” forces that, over the long term, lay siege to most companies. Munger and Buffett are laser-focused on this issue: Over their long business careers they have learned, sometimes painfully, that few businesses survive over multiple generations. Accordingly, they strive to identify and buy only those businesses with a good chance of beating these tough odds.


2012年1月31日火曜日

私を認めてくれない人(ウォーレン・バフェット)

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おなじみの「Poor Charlie's Almanack」より引用で、今回は「自分できちんと考えること」について、ウォーレン・バフェットの発言です。(日本語は拙訳)

自分をごまかさないようにするには、論理的に考えるのがいいでしょう。チャーリーは、私が言ったからというだけでは認めてくれないのです。他の人だったら、まずそんなことはないのですが。

Apply logic to help avoid fooling yourself. Charlie will not accept anything I say just because I say it, although most of the world will.


このフレーズは、教訓の部分よりもウォーレンの絶妙なジョークのほうが頭に残りますね。

蛇足ですが、チャーリー・マンガーからウォーレンに対するジョークもご紹介しておきます。2004年のバークシャー・ハサウェイ年次総会にて、チャーリー・マンガーのあいさつです。出典は同じです。

今年で80歳になりましたが、この年になっても壇上にあげられているのは、[となりに座る]ウォーレンを若くみせたいからなのです。

The main reason they have me up here, at age 80, is to make Warren look young.

[ウォーレン・バフェットは当時73歳。高齢になる彼が死んだ後の同社を不安視する見方がある]

2012年1月29日日曜日

10秒ください(ウォーレン・バフェット)

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以前ご紹介した本「Seeking Wisdom」の第4章で扱われているのが「よりよい考え方(Guidelines to better thinking)」。12の話題が取り上げられていますが、その中の一つが「ルールとフィルター(Rules and Filters)」というものです。使い方は簡単です。白黒を判断できる質問をいくつか用意して順に並べ、答えが「はい」であれば次の質問に進み、そうでなければそこでおしまい、つまりフィルターされます。ウォーレン・バフェットが投資アイデアを評価する際にこれを使っているとのことなので、ご紹介します。(日本語は拙訳)

「案件の9割以上には10秒以内でノーと答えています。というのもフィルターがいくつかあって、単にそこでふるい落としているのです」

We really can say no in 10 seconds or so to 90%+ of all the things that come along simply because we have these filters


具体的にどんなフィルターかですが、以下のとおりです。6つのうち、最初の4つがウォーレンが語ったものです。一方、フィルター5と6は本書の著者Peter Bevelinが読者向けに追加したものですが、チャーリー・マンガーならば納得するでしょう。ただし、フィルター5や6まで到達する場合は、10秒でノーと答えるのは難しいと思いますが。

フィルター1 そのビジネスを理解しているか。高い確度で予測できるか。
フィルター2 長続きする競争優位性をなにか持っていると思われるか。
フィルター3 経営陣は有能かつ誠実な人たちか。
フィルター4 価格は適切か
フィルター5 反論してみる[自分の論理をたたく]
フィルター6 判断が間違っていたら、どんな結末をむかえるか。

Filter 1 - Can I understand the business - predictability?
Filter 2 - Does it look like the business has some kind of sustainable competitive advantage?
Filter 3 - Is the management composed of able and honest people?
Filter 4 - Is the price right?
Filter 5 - Disprove
Filter 6 - What are the consequences if I'm wrong?


一見するとたわいもない仕組みですが、この手のものは手を抜かずに毎回使うことが重要だと思います。固い表現でいえば、このフィルターシステムは投資におけるリスク管理プロセスそのものです。そういえばウォーレンも、自分のことをChief Risk Officerと称していましたね。

なお、上記のフィルターは2001年にウォーレンが語ったもので、それより一昔前のときは以前取り上げた「投資家が見極めるべき5項目(ウォーレン・バフェット1993年)」のリストになっています。内容はほとんど変わっていません。