自社株買いおよび業績報告について
バークシャーでは自社株の買戻しを折に触れて行うつもりだと、前のほうの文章で記しました。まさにわたしどもの狙いどおりに、当社の本源的価値より安い値段で買い戻すことができれば、その自社株買いは、当社の株主をやめていく人たちと、これからも株主であり続ける人たちの、どちらにとっても利益となります。
実際のところ、売却組の方々にとって自社株買いによる恩恵はごくわずかです。わたしどもは注意深く購入するため、バークシャーの株価にはわずかな影響しか与えないと思われるからです。そうだとしても、買い手が市場に加わることは、売り手にとっていくらか好都合となります。
一方で継続株主にとっての利点は、はっきりしています。去り行くパートナーが市場に示す価格を、たとえば1ドルであるべきところを90セントとするならば、継続株主にとっては当社が自社株を買うほど、1株当たりの本源的価値が実際に増していきます。当然ですが、自社株買いは価格にうるさい必要があります。割高な株をむやみに買うことは、[自社の]価値を破壊する行為です。これは派手好きあるいは終始楽天的な多数のCEOが犯してきた事実です。
「自社株買いを熟慮検討する」と企業が言及するときには、パートナーたる全株主に対して、企業価値を適正に評価するために必要な情報が、提供されなければなりません。チャーリーおよびわたしが本文書で果たそうとしているのは、そのための情報を提供することです。「誤解を招く情報や不適切な情報を知らされたがために、当社の株式を売り戻す」、パートナーたるみなさんには、そのような事態にはなってほしくありません。
しかしながら、わたしどもによる価値算定に同意できない売り手の方がいるかもしれません。また、人によってはバークシャー株よりも魅力を感じる投資先があるかもしれません。後者の方々のなかには、その選択が正しい方もおられるでしょう。当社よりもはるかに大きな成果をあげる株がいくつもあることに、疑う余地はないからです。
さらにはただ単純に、「資本を蓄積し続けるのではなく、自分や家族が使う側に回る時期だ」と決断する株主もいるでしょう。チャーリーもわたしも今のところは、そういった人たちのなかに加わるつもりはありません。あれこれと消費するのは、もっと年老いてからにしたいと思います。
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バークシャーで54年間にわたって経営上の判断を下してきた際に、わたしどもが念頭に置いていたのは、去り行く株主のことではなく、今後も共にありつづける株主の観点でした。それゆえにチャーリーともども、今四半期の業績のことはまったく意識しておりません。
実際のところバークシャーは、Fortune 500社のなかで月次の売上報告書や貸借対照表を作成していない、おそらく唯一の企業だと思います[Fortune 500最新の順位では、バークシャーは第3位]。もちろんですが、ほとんどの子会社が出してくれる月次の財務報告を、わたしは都度確認しています。しかしバークシャー全体としての収益や財務状況は、チャーリーもわたしも四半期ごとにしか把握していません。
さらに言えば、バークシャー全体を統括する予算は立案していません(ただし各々の子会社としては、それを有用とみなす会社が多々あります)。そのような道具が存在しないということは、つまり四半期の「目標値」達成など親会社では気にかけていないことを意味します。当社の各経営陣はその手の数値目標を忌避するやりかたを、重要なメッセージとして受けとめてくれます。そして、わたしたちが大切にしている社内文化を強めることにつながっています。
チャーリーとわたしは幾年月にわたって、企業におけるあらゆる悪しき行為をみてきました。会計面だけでなく事業運営においても同じで、「ウォール街の期待に応えたい」との経営上の欲望に誘われたゆえの所業でした。たとえば四半期末の押し込み販売や、保険金等支払増加に対するお目こぼしや、秘密積立金の取り崩しといった例があげられますが、「金融街」を失望させまいとの「罪のない」偽りで始めたつもりが、「徹頭徹尾の偽装」に向けた第一歩を踏み出していたのかもしれません。CEOとしては「今回だけ一度きり」のつもりで数字を触ったのかもしれませんが、それで打ち止めになることは滅多にありません。さらには、「不正と言ってもわずかだから」と上司が容認するのですから、部下においても同じような行動がたやすく正当化されてしまうでしょう。
バークシャーのわたしどもが披露すべき相手は、アナリストでもなく、解説者でもありません。チャーリーとわたしが働いているのは、わがパートナーたる株主のみなさんのためです。わたしどもの手元にあげられてくる数字は、みなさんへそのままお送りします。(PDFファイル6ページ目)
Repurchases and Reporting
Earlier I mentioned that Berkshire will from time to time be repurchasing its own stock. Assuming that we buy at a discount to Berkshire’s intrinsic value – which certainly will be our intention – repurchases will benefit both those shareholders leaving the company and those who stay.
True, the upside from repurchases is very slight for those who are leaving. That’s because careful buying by us will minimize any impact on Berkshire’s stock price. Nevertheless, there is some benefit to sellers in having an extra buyer in the market.
For continuing shareholders, the advantage is obvious: If the market prices a departing partner’s interest at, say, 90¢ on the dollar, continuing shareholders reap an increase in per-share intrinsic value with every repurchase by the company. Obviously, repurchases should be price-sensitive: Blindly buying an overpriced stock is value-destructive, a fact lost on many promotional or ever-optimistic CEOs.
When a company says that it contemplates repurchases, it’s vital that all shareholder-partners be given the information they need to make an intelligent estimate of value. Providing that information is what Charlie and I try to do in this report. We do not want a partner to sell shares back to the company because he or she has been misled or inadequately informed.
Some sellers, however, may disagree with our calculation of value and others may have found investments that they consider more attractive than Berkshire shares. Some of that second group will be right: There are unquestionably many stocks that will deliver far greater gains than ours.
In addition, certain shareholders will simply decide it’s time for them or their families to become net consumers rather than continuing to build capital. Charlie and I have no current interest in joining that group. Perhaps we will become big spenders in our old age.
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For 54 years our managerial decisions at Berkshire have been made from the viewpoint of the shareholders who are staying, not those who are leaving. Consequently, Charlie and I have never focused on current-quarter results.
Berkshire, in fact, may be the only company in the Fortune 500 that does not prepare monthly earnings reports or balance sheets. I, of course, regularly view the monthly financial reports of most subsidiaries. But Charlie and I learn of Berkshire’s overall earnings and financial position only on a quarterly basis.
Furthermore, Berkshire has no company-wide budget (though many of our subsidiaries find one useful). Our lack of such an instrument means that the parent company has never had a quarterly “number” to hit. Shunning the use of this bogey sends an important message to our many managers, reinforcing the culture we prize.
Over the years, Charlie and I have seen all sorts of bad corporate behavior, both accounting and operational, induced by the desire of management to meet Wall Street expectations. What starts as an “innocent” fudge in order to not disappoint “the Street” – say, trade-loading at quarter-end, turning a blind eye to rising insurance losses, or drawing down a “cookie-jar” reserve – can become the first step toward full-fledged fraud. Playing with the numbers “just this
once” may well be the CEO’s intent; it’s seldom the end result. And if it’s okay for the boss to cheat a little, it’s easy for subordinates to rationalize similar behavior.
At Berkshire, our audience is neither analysts nor commentators: Charlie and I are working for our shareholder-partners. The numbers that flow up to us will be the ones we send on to you.
2019年2月27日水曜日
2018年度バフェットからの手紙(3)自社株買いおよび業績報告について
2018年度「バフェットからの手紙」より、「自社株買いと業績報告」に触れた一節を取りあげます。おなじみの話題と言えるでしょうが、ジョークのほうはあいかわらず軽快で楽しめます。なお、本シリーズ前回分の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)
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