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2018年2月27日火曜日

2017年度バフェットからの手紙(2)10年越しの賭けの結果

2017年度「バフェットからの手紙」からの引用が続きます。今回からの話題は、ウォーレンが前年度にとりあげた「賭け」の続きです(日本語は拙訳)。やはり今回も、この話題が一般(=非株主)向けのメイン・テーマだと思います。本シリーズの前回分投稿はこちらです。

なお、前年度分を紹介した投稿は以下のとおりです。未読の方は先に読まれることをお勧めします。

2016年度バフェットからの手紙(3)100歳になっても生きているだろうか
2016年度バフェットからの手紙(4)S&P500ファンドの威力
2016年度バフェットからの手紙(5)手数料は眠らない
2016年度バフェットからの手紙(6)アクティブ勢VSパッシブ勢
2016年度バフェットからの手紙(7)あのサルのように運が良ければ
2016年度バフェットからの手紙(8)金持ちはどう感じているのか
2016年度バフェットからの手紙(9)金持ちが熟練者と出会うとき

終わりをむかえた「例の賭け」から得られた、投資に関する意外な教訓

2007年12月19日にわたしが始めた10年越しの賭けについて、9割がた進んだ昨年の段階で、詳細な報告をしました(年次報告書に含めたその全文は、今回の年次報告書[PDF]の24-26ページに再掲してあります)。そして今では最終的な数字がそろいました。さまざまな観点において目を見張る結果でした。

賭けを始めた理由は2つありました。ひとつめは、わたしが拠出する31万8,250ドルをもとに、不相応なほど大きな金額に増やしたかったためです。わたしの予想する通りにものごとが進めば、2018年の初めにガールズ・インクのオマハ事務所へ寄付されることになる資金です。ふたつめは、わたしが確信していることを広く知ってもらいたかったからです。つまりそれは、「アクティブな運用者が関わらないS&P500のインデックス・ファンドを選ぶことで、実質的に費用のかからない投資となるわたしのやりかたが、ほとんどの資産運用のプロよりも優れた成績を、いずれは達成する」という考えです。ただしその「助力者」たる方々は、敬意を払われた上に、金銭面での見返りも厚遇されるとは思いますが。

この問題に取り組むことには、はなはだしく重要な意味があります。米国の投資家は毎年多額の費用を投資助言者へ支払っています。さまざまな階層にわたるがゆえの費用が課されることもよくあります。そのような投資家を全体としてとらえたときに、はたして支払った金額にふさわしい対価を受けているのでしょうか。実際のところ、助言者に対する総支出に対してなにかを受け取っているのでしょうか。

賭けの相手となったプロテジェ・パートナーズはS&P500の成績を上回ることをねらって、5本の「ファンド・オブ・ファンズ」を選択しました。彼らが選んだこの数が、少ないということはありません。ファンド・オブ・ファンズを5本選んだということは、結局のところ200本のヘッジ・ファンドへ投資することになったからです。

ウォール街では投資助言会社として知られているプロテジェは、実質的に5名の投資専門家を選んだことになります。さらには各々がヘッジ・ファンドを運営している、投資の専門家を数百名抱えたことになります。これは、「頭脳とアドレナリンと自信に満ちたエリートからなる要員のそろった集団」ということになります。

5本のファンド・オブ・ファンズそれぞれを運営するマネージャーには、さらに有利な点がありました。みずからのポートフォリオに含まれているヘッジ・ファンドを、10年の間に入れ替えることができた点です。実際のところ彼らは、新たな「スター」へ資金を投下し、その一方で運用者の神通力が失われたヘッジ・ファンドからは資金を引き揚げました。

プロテジェ側の役者諸氏は、成功に対する大きな見返りを約束されていました。ファンド・オブ・ファンズの運営者だけでなく、選択された各ヘッジ・ファンドの運営者も、儲けの大幅な部分が分配されることになっていたのです。たとえそれが単に市場全体が上昇したときであっても、です。(わたしたちがバークシャーを経営し始めた以降で10年にわたる期間を考えたとき、1年ずつずらすと都合43回ありましたが、S&P500はそのすべてにおいて、プラスだった年数がマイナスだった年数を上回りました)

成功に応じて受けられるそういった見返りは、本来は強調すべきところを、おいしくて巨大なケーキの上に塗り伸ばされていました。たとえファンドが10年の間に投資家の資金を失ったとしても、運用者諸氏は大金持ちになることができたでしょう。資産額に対する割合が、平均にして「驚きの2.5%前後」にのぼる固定手数料を、ファンド・オブ・ファンズへ投資する者が毎年支払うとなれば、それも実現する話です。その手数料の一部はファンド・オブ・ファンズ5本の各運用者へ、そして残りは下位にあたるヘッジ・ファンドの200名超にのぼる運用者へとわたったのです。(PDFファイル10ページ目)

(この節、つづく)

“The Bet” is Over and Has Delivered an Unforeseen Investment Lesson

Last year, at the 90% mark, I gave you a detailed report on a ten-year bet I had made on December 19, 2007. (The full discussion from last year’s annual report is reprinted on pages 24 - 26.) Now I have the final tally - and, in several respects, it’s an eye-opener.

I made the bet for two reasons: (1) to leverage my outlay of $318,250 into a disproportionately larger sum that - if things turned out as I expected - would be distributed in early 2018 to Girls Inc. of Omaha; and (2) to publicize my conviction that my pick - a virtually cost-free investment in an unmanaged S&P 500 index fund - would, over time, deliver better results than those achieved by most investment professionals, however well-regarded and incentivized those “helpers” may be.

Addressing this question is of enormous importance. American investors pay staggering sums annually to advisors, often incurring several layers of consequential costs. In the aggregate, do these investors get their money’s worth? Indeed, again in the aggregate, do investors get anything for their outlays?

Protege Partners, my counterparty to the bet, picked five “funds-of-funds” that it expected to overperform the S&P 500. That was not a small sample. Those five funds-of-funds in turn owned interests in more than 200 hedge funds.

Essentially, Protege, an advisory firm that knew its way around Wall Street, selected five investment experts who, in turn, employed several hundred other investment experts, each managing his or her own hedge fund. This assemblage was an elite crew, loaded with brains, adrenaline and confidence.

The managers of the five funds-of-funds possessed a further advantage: They could - and did - rearrange their portfolios of hedge funds during the ten years, investing with new “stars” while exiting their positions in hedge funds whose managers had lost their touch.

Every actor on Protege’s side was highly incentivized: Both the fund-of-funds managers and the hedge-fund managers they selected significantly shared in gains, even those achieved simply because the market generally moves upwards. (In 100% of the 43 ten-year periods since we took control of Berkshire, years with gains by the S&P 500 exceeded loss years.)

Those performance incentives, it should be emphasized, were frosting on a huge and tasty cake: Even if the funds lost money for their investors during the decade, their managers could grow very rich. That would occur because fixed fees averaging a staggering 2.5% of assets or so were paid every year by the fund-of-funds’ investors, with part of these fees going to the managers at the five funds-of-funds and the balance going to the 200-plus managers of the underlying hedge funds.

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

いつも記事をありがとうございます。
ことこの時期のバークシャーハザウェイの翻訳は特にありがたいです。
妻は英語が出来ますが、この手紙はやや単語力不足の模様で翻訳はやってくれません。笑
お礼が言いたく、コメントしてしまいました。

betseldom さんのコメント...

匿名さん、コメントをありがとうございました。

ご夫婦のやりとりが思い浮かぶようなコメントで、微笑ましく拝見しました。当ブログを折に触れてお読みくださり、ありがとうございます。また何かありましたら(何もなくても)、コメントをお寄せいただければ幸いです。

それでは失礼します。