<質問者> あなたはバークシャー・ハサウェイを非常に効率的な組織として運営されています。大きく成長したというのに、どうすればそれほど贅肉が少ないのでしょうか。
<バフェット> いい質問ですね。現在の従業員は[グループ全体で]2万2千名か3千名、もしかしたら2万4千名になっているかもしれません。20年前にはたぶん千名ほどでしたが、今でも本社は10名か11名だけしか雇っていません。なるべく単純にするのが私の信条です。ですから社内には弁護士や広報はいません。守衛もいませんし、カフェテリアもありません。そのように運営するのは、実はすごく簡単です。ずばり言えば、上司に報告するような人の階層がいくつもあるよりもずっと仕事が進むと思います。ほとんどの会社にはムダがたくさんあります。一度ついたムダを取り除くのは非常に大変です。まったくそうしないのはすごく簡単です。相方のチャーリーはこんな言い方をします。「自分が死すべき場所はどこか知りたいね。そこには決して近づかないことにするよ」。巨大な組織というものに対して、わたしはそれと同じように感じています。つまりわたしに関する限りでは、それは事業の死を意味しています。ですから、わたしたちはそこに近づくつもりはありません。人を増やさないのは難しいことではありません。ただ誰も雇用しないだけで、今後もそうするつもりです。株式の売買もすべて自分でやっています。次のような質問を受けることがあります。「業務の上で、あなたに報告する立場にある人は何名いますか」。それが標準的な組織管理のやりかたなのでしょう、彼らは「最適な人数はこうです」といったことを教えてくれます。わたしからの答えは「正しい人を雇っているならば、たくさん人がいるのと同じ」です。その人たちが自分のしていることを理解し、喜んで仕事に臨んでいるのであれば、何十人何百人がいるも同然です。しかしくだらない人を雇ってしまえば、たとえ一人であっても多すぎです。悩みの種となるでしょう。つまり大切なのは「正しい人を雇うこと」です。きわめて有能な人たちといっしょに仕事ができて、わたしたちは非常に幸運でした。
当社は3年前に作業用靴のH.H.ブラウン社を買収しました。従業員はおよそ4千名で売上げが2億5,000万ドル程度です。同社のどの工場にも行ったことはないですし、他のだれも行っていません。もしかして存在していないのかもしれません。つまりは、同社の人たちは毎月こんな風に話し合っていると思います。「今月はウォーレンにどれだけ送ったらいいだろうか。280万ドルでどうかな。そうだな、たぶん彼はそれでいいと思ってくれるだろうから、送っておこう」。このように正しい種類の人を得たのです。ブラムキン一族がファニチャー・マートなどを経営している以上、一体わたしに何ができるでしょう。そこへ出向いて、「これの小売価格は398ドルではなくて498ドルにしたほうがいい」と彼らに忠告すべきでしょうか。そういったことは、わたしにはまったくわからないのですが。
子会社の経営者のうちの4分の3は、経済的に独立した人たちです。何億ドルもの資産を持っている人ばかりで、朝起きて仕事に行く必要はまったくありません。ですからわたしとしては、今日も明日も仕事に行くことが彼らにとってのいちばんの楽しみだ、という雰囲気をつくりだしたり、維持しなければなりません。そこで「自分ならどうすればそう感じるだろうか」と自問してみました。自分自身のショーを自分で運営していると感じられれば、そのひとつと言えると思います。もしわたしに対して一日中とやかく言う人がいたら嫌気がさして、「なぜこんなことをやる必要があるのだろうか」と考えるでしょう。わたしが子会社の経営者に対して後ろ向きなことばかり言ったり、仕事のやり方を指示していたら、 彼らもちょうど同じように感じるでしょう。良き人たちがいれば、わずかの人数でやっていけます。わたしたちのやろうとしているのは、そういうことです。
Q. You keep a very lean machine going at Berkshire Hathaway. How do you keep it so lean when it grows so much?
A. Well, that's a good question, because now we have 22,000 employees or maybe 23,000 or even 24,000, I guess. We probably had 1,000 twenty years ago but we've still got 10 or 11 people in headquarters. I really believe in keeping things simple. We have no inside counsel. We have no public relations people. We have no guards. We have no cafeteria. And, it's a lot easier to run that way. Frankly, I think way more gets done than if you have floor after floor of people that are reporting to people on the floor above them. I see so much waste in most companies and once it gets there, it is very hard to get rid of. It's much easier never to get there. My pal Charlie says that, "All I want to know is where I'm going to die, so I'll never go there." And, that's the way I feel about a large organization. I mean, that would be business death as far as I'm concerned; so we're not going to get there. It's not a problem keeping it down. We just don't hire anybody and we won't. I buy and sell all the stocks myself. Some people say, "How many people can you have reporting to you in a business?" That's standard organizational management stuff. They say, "The optimum number is this" or something like that. The answer is, if you've got the right kind of people, you can have tons of people. You can have dozens and dozens and dozens of people, if they know what they are doing and they like their jobs. But if you have somebody who's a clown, one is too many. They will drive you crazy. The trick is having the right people. We have been very fortunate in getting in with people who are extremely able at doing their jobs.
We bought H. H. Brown, which is a work shoe company, three years ago. It has probably 4,000 employees, and two hundred and fifty million dollars in sales. I've never been to one of their plants. No one ever has. Maybe they don't even exist. I mean, maybe those guys sit there every month and say, "What figures should we send Warren this month? $2.8 million, will he like that? Yeah, he'll probably like that; let's mail it to him." I've got the right kind of people. If you've got the Blumkins running the Furniture Mart or something, what can I do, you know? Should I go out there and tell them we should price this stuff at $498 retail instead of $398? I don't know anything about it.
Three quarters of our managers are independently wealthy. They don't need to get up and go to work at all. Most of them have tens and tens of millions of dollars. So, I've got to create or I've got to maintain an environment where the thing they want to do most in the world is to go to work that day and the next day. And, I say to myself, "What would make me feel that way?" One way is to feel you are running your own show. If I had people second-guessing me all day, I would get sick of it. I would say, ‘What the hell do I need this for?" And, that's exactly the way our managers would feel if I went around second-guessing them or telling them how to run their business. So, you can get by with very few people if they are good people. That's what we try to do.
備考です。バークシャーの2013年度の年次報告書によれば(p.107)、現在の従業員は33万名で、そのうち本社には25名とのことです。その本社一同の集合写真が、今回の「株主のみなさんへ」に載せられていました(最終ページ)。残念ながらチャーリー・マンガーの姿はみられません(カリフォルニア在住のため)。
4 件のコメント:
== No title ==
こんにちは。
いつも参考になる記事をありがとうございます。
??大切なのは「正しい人を雇うこと」です。~
この言葉は私の大好きな言葉です。
ビジネスを成功させるための1つの原則ですよね。
古くから言われ、今なお通用することに原則が隠れているとつくづく感じます。
これからも更新楽しみにしています。
== 遠藤たつやさんへ ==
遠藤たつやさん、コメントをありがとうございました。
ウォーレンやチャーリーに限りませんが、いろいろな分野で成功している人は力を抜くべき時や場合をよく理解し、実行しているように感じます。「正しい人を雇う」という原則によって面倒や余計な労力を避けることもそうですし、「正しい経営陣」を備えた企業を買うことも同じだと思います。
原理原則とは「言うは易く、行うは難し」だと感じています。しかし先人の果たした具体的な事例を見聞きすると、心のハードルが少し低くなるような気がしますね。
いつもありがとうございます。またよろしくお願いします。
失礼致します。
== No title ==
正しい人を雇うことができれば、あとは「4割バッターに対してスイングに文句ををつけるようなことはしない」を実践するだけですね。
バフェットは正しい人を雇うという面でも本当に幸運に恵まれていますね。
かと言って幸運だけで正しい人を雇ってきたわけではないのは明らかです。
「運は準備を怠らないものに味方する。」の言葉の通り、正しい人を雇うために「信用を棄損するようなことはしない」、「一度手に入れた会社は売却しない」、「素晴らしい人と出会うチャンスを逃さないために予定を詰め込まない」といったことを長年行っているからこそ幸運が巡ってきたときにそれをモノにできるのでしょうね。
== 原理原則の連鎖(ブロンコさんへ) ==
ブロンコさん、コメントをありがとうございます。
ブロンコさんがまさに書かれたように、数々の基本的な原理原則に従っているからこそ、より高次の原理原則が実行できたり、大きな幸運をつかめるのでしょうね。直前のコメントで「言うは易く、行うは難し」と書きましたが、それらを階層的・連鎖的に考えることで、何が基本となる原理原則なのかがわかりやすくなると感じました。当たり前のことを書いているだけですが、ブロンコさんの言葉をきっかけに自分なりに再確認できました。どうもありがとうございました。
それでは失礼致します。
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