「投資家が自信に満ちているときはリスクが大きく、おびえているときはリスクが小さい」。ここまでの8ページはまぎれもなく、このことをわかってもらいたいがために書いたものです。今日の状況は言うまでもないでしょう。遅々として進まない景気回復や不均衡なままの財政、機能不全となったアメリカの政治情勢、それ以下のヨーロッパ、成長できない日本、中国の減速、新興国市場における派生的な問題、そして地政学的な緊張状態と、不確実な要素があることを投資家はよく認識しています。リスクに対して無知だったことがグローバル危機を招いた主犯だったと私は確信していますが、リスクのことをわかっているかという点では、今日の状況は心配無用でありましょう。
投資家が慎重な姿勢をとるのであれば、良ききざしとみるべきです。というのは、普通の状況であれば彼ら自身が資産価格を魅力的な水準まで引き下げると予想されるからです。しかし今日の状況には問題があります。強気に考えている人はほとんどいないにもかかわらず、多くの人が強気な行動をとっています。そのようにリスクをとっていれば、たとえリスクを望むと考えていなくても、市場に対しておきまりの悪い影響を及ぼすことでしょう。ここ数ヶ月の間、私はこの矛盾についてますます考えるようになりました、これこそ、投資家が現時点で対処すべきもっとも重要なことだと思います。
では、考えていることと行動していることが矛盾しているのは、一体なにゆえでしょうか。単純なことです、買いたいから買っているのではなく、買わねばならないと感じているから買っているのです。過去に同じことがあった際に、私はこう表現しました。「進んでお縄にかかる者」と。
Arguably the eight pages of this memo leading up to this point are there for the sole purpose of establishing that when investors are sanguine risk is high, and when investors are afraid risk is low. Today there's no question about it: investors are highly aware of the uncertainties attaching to the sluggish recovery, fiscal imbalance and political dysfunction in the U.S.; the same or worse in Europe; lack of growth in Japan; slowdown in China; resulting problems in the emerging markets; and geopolitical tensions. If the global crisis was largely the product of obliviousness to risk - as I'm sure it was - it's reassuring that there is little risk obliviousness today.
Sober attitudes on the part of investors should be a source of comfort, since in normal times we would expect them to bring down asset prices to the point where they're attractive. The problem, however, is that while few people are thinking bullish today, many are acting bullish. Their pro-risk behavior is having its normal dangerous impact on the markets, even in the absence of pro-risk thinking. I've become increasingly conscious of this inconsistency in recent months, and I think it is the most important issue that today's investors have to confront.
What's the reason for this seeming inconsistency between thoughts and actions? The answer is simple. These people aren't buying because they want to, but because the feel they have to. In the past I've referred to them as "handcuff volunteers."
2013年1月16日水曜日
進んでお縄にかかる者(ハワード・マークス)
Oaktreeの会長ハワード・マークスが新しいメモDittoを公開していました。今回の話題は強気と弱気のサイクルについてです。これは他でもよくみかける話題ですが、彼の文章は地に足がついているだけでなく、読ませる構成になっています。今回はその中から、投資家が現状のリスクをどのようにとらえているか描写した箇所を引用します。(日本語は拙訳)
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