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2020年6月11日木曜日

2020年バークシャー株主総会(22)世界衛生安全保障指標(Global Health Security Index)

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バークシャー・ハサウェイの株主総会より、今回はパンデミックなどに対する国家レベルでの各種体制の話題です。前回分の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)

<ウォーレン・バフェット> ここで話題に挙げておきたいことがあります。きょう持参してきた分厚い300ページのこの本は、2019年の10月に出版されたものです。ジョンズ・ホプキンズの..

この国で高い名声を集めている機関のひとつであるジョンズ・ホプキンズ大学と、核脅威イニシアティブ、そしてエコノミスト誌の情報グループが共同で、パンデミックに対する世界各国の準備体制上の問題点を評価したものと言えます。

2019 Global Health Security Index [PDF] (NTI)

サム[・ナン]がアーニーと連れだって、11月にわたしのところへ来てくれました。アーニーは少し前の連邦政府エネルギー省長官だった人物で、今はNTIのCEOを務めています。またサムとアーニーは共同会長でもあります。この報告書をまとめるのに尽力したベス・キャメロンも、わたしのところへ来ました。たしか去年の11月だったはずですが、この評価報告書を頂きました。ページをめくると、次のような書き出しがあります。300ページになる大著のはじめの一文です。「どの国から生じる生物的脅威であっても、自然的・作為的・偶発的を問わず、世界的な衛生や、国際的な安全保障や、世界中の経済に対してリスクとなり得る」 。

この本は、各国の準備状況を評価して順位づけるためにまとめあげられました。米国はかなり良い順位に付けています[第1位]。しかし、だれにも不合格がついていました。基本的にすべての国が不合格でした。

ジョンズ・ホプキンズやエコノミスト誌の高い評判を考えれば、またサムやアーニーのような人物がかかわっていることを考えれば、一定の関心を集めたことでしょう。次のスライドに進みますと、サムや関係者が2019年10月24日付でYouTubeの映像に登場しています。彼らは注目を集め、数日前の段階では閲覧回数が1,498回になっていました。


(Warren Buffett 01:07:42)

Now, I can't resist pointing out that in October of 2019, a large 300-page, I've got it right here, a book was brought out, and Johns Hopkins ...

(Warren Buffett 01:08:03)

And Johns Hopkins, one of the most respected institutions, country, Nuclear Threat Initiative, NTI, and the Intelligence Group at The Economist collaborated to evaluate the problems of the worldwide preparedness for pandemics, essentially.

(Warren Buffett 01:08:31)

And I think in November, Sam came out to see me with Ernie, more recent former Secretary of Energy who now is the CEO of NTI. He and Sam are co-chairmen, and Beth Cameron who did a lot of work on this report came out to see me. And they gave me in November I believe of last year, they gave me this appraisal. And the opening line, if you'll turn the page, this is the opening line of this 300-page tome: "Biological threats - natural, intentional, or accidental - in any country can pose risks to global health, international security, and the worldwide economy."

(Warren Buffett 01:09:24)

And this book was prepared in order to evaluate the preparedness of the various countries and rank them. We ranked pretty well, but all of us got a failing... All of the countries got a failing grade, basically.

(Warren Buffett 01:09:39)

Now, you would think with the prestige of Johns Hopkins and The Economist, along with people like Sam and Ernie, etc., that this would've gotten some attention. And, again, Sam... Turn to the next page. Sam and the others went on YouTube on October 24, 2019, and they have racked up, as of a couple days ago, 1,498 views.

なお、文中であげたPDFファイルには、日本国の順位も掲載されています。

2020年6月10日水曜日

2020年バークシャー株主総会(21)バークシャーの危機管理

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バークシャー・ハサウェイの株主総会より、今回取り上げる文章は短いです。ウォーレン・バフェットやチャーリー・マンガーが、パンデミックなどの危機に対してどのような心がまえをしていたのかが、わずかながらうかがえます。前回分の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)

<ウォーレン・バフェット> わたしたちは、まさしく最悪の事態が起こることを想定しながら、バークシャーを経営してきました。問題がひとつ発生する場合だけでなく、複数の問題が同時に起こることも考えてきました。その際に、1件目の問題がつづきを引き起こすこともありますが、1件目とは独立して発生することも考えられます。みなさんは学校でゼロ(零)のかけ算を習ったはずです。何年生のときだったか覚えていませんが、おそらくわたしが通っていた時代よりも学習時期が早くなっているかと思いますが、5,6年生でしょうか。「いくつかの数字をかけ合わせるときに、ゼロを一つかけるだけで、解はゼロになる」という教えです。アメリカに吹く追い風をつかめるわけですから、借入金を使う理由はありません。しかし、その風に乗るための理由は、他にいくらでもあるはずです。

(Warren Buffett 01:06:58)

And we run Berkshire that way, we run it so that we literally try to think of the worst case of not only just one thing going wrong, but other things going wrong at the same time, maybe partly caused by the first, but maybe independent even of the first. You learned in, I don't know what grade now, probably earlier than when I went to school, but in fifth or sixth grade, that you can have any series of numbers times zero, and you just need one zero in there and the answer is zero, and there's no reason to use borrowed money to participate in the American tailwind, but there's every other reason to participate.

2020年6月9日火曜日

2020年バークシャー株主総会(20)病原体に国境はない

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バークシャー・ハサウェイの株主総会より、 今回はパンデミックなどの危機管理の重要性を啓蒙してきた人物の話題です。前回分の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)

<ウォーレン・バフェット> つづいて最近のニュースのなかから、みなさんがどこか興味を持つかもしれない話題を取り上げます。YouTubeに投稿された、ある映像の話です。投稿日が2015年6月17日付と、4年以上前のものです。サム・ナン氏という人物による映像です。彼は、米国に限らず世界的にみてもわたしがもっとも称賛してやまない人物の一人です。米国に対してかぎりないほどの献身をしてくれた、途方もない上院議員でした。議員を引退してからは報われぬ仕事に打ち込み、「核脅威イニシアティブ」(the Nuclear Threat Initiative)と呼ばれる団体を設立して率いてきました。ほとんどの方がその団体を知らないとは思います。実はわたしも少しだけ関わってきました。


「核脅威イニシアティブ」は、次のことに尽力したいがためにサムが共同で設立した団体のひとつです、それは、「核や化学や生物、そしてサイバー的なものも加えた、悪意的あるいは偶然その他を問わず、数百万ものアメリカ人を死に至らしめる可能性のある事象を低減させること」です。設立後に組織の要となったのは彼自身でした。彼は核の脅威と同様にパンデミックの恐ろしさについても、数十年間にわたって説き続けてきました。彼はウォー・ゲーム(軍事演習)に参加したこともあります。そこではさまざまなシナリオが試されました。そのなかには、911の少し後に炭疽菌入りの手紙を送りつけてきた類の狂信者が起こしかねない、悪意によるパンデミックも含まれていました。サムはプレゼンテーションを短くまとめてYouTubeに投稿しています。わたしが視聴したもの以外にも彼は登場しているはずですから、パンデミックの危険が語られているものはどれも視聴してほしいと思います。当時の彼は、「病原体に国境はない」と表現していました。まさしくわたしたちがこの数か月間に学んだことです。次のスライドに進みますが、YouTubeでその映像を開くと、視聴回数が831回と表示されます。この数字はわずか数日前に検索したときのものですが、数日あるいは数か月間のうちに一気に増えたのかはわかりません。パンデミックに対する興味から、こんな風に言うべきではないのでしょうが、「まだ起こっていないことを事前に考える」というのは難しいものです。しかし、「今回のパンデミックのようなことが起きたらどうなるか」という視点で考えるのはむずかしいことですが、実際にわたしたちは身をもって経験することができました。それゆえに、少なくともわたしとしては、「借入金を使って投資をしてはならない」と考えています。

(Warren Buffett 01:03:16)

I would like to context to the present news, point out something you may find kind of interesting. If you go to YouTube, you'll find on June 17th, of 2015, four-plus years ago, you'll find Sam Nunn, that was one of the people I admire the most in the United States and in the world, enormous patriot and tremendous senator, and he's carried on thankless work since leaving the Senate, and heading something called the Nuclear Threat Initiative, which most of you haven't heard of, but I've been slightly involved in it, Sam Nunn founded that.

(Warren Buffett 01:04:12)

And, the Nuclear Threat Initiative is simply organizations that are devoted to trying to reduce the chances of something of a nuclear chemical, biological, and now cyber nature, from either malevolent or accidental or whatever may be, from causing deaths to millions of Americans, and among the things that Sam co-founded it, but he's been the heart and soul of the organization subsequently, and he's talked about, worried about pandemics along with the nuclear threat for decades, and he's participated in war games where they play out various scenarios, including malevolent pandemics that could be started by the same kind of nut that sent the anthrax letters around the 9/11, a little after. Sam paired down this YouTube presentation, and I'm sure he's been on many others I just happened to look this one up, and talked about the dangers of a pandemic, and anybody should listen to Sam Nunn anytime he talks. So he said at that time, "Germs don't have borders," which we certainly learned in the last couple of months, and when I clicked on YouTube, if you'll go to the next, I found out that basically it had 831 views, and this was only a few days ago, I looked it up, but I don't know whether most of those views have just been the last few days or the last few months, I shouldn't say, because of the interest in pandemics, but it is hard to think about things that haven't happened yet. So we can experience, and when something like the current pandemic happens, it's hard to factor that in, and that's why you never want to use borrowed money, at least in my view, and then buy into investments.

なお、上記のYouTubeリンクが表示されていない方は、こちらからどうぞ。
Innovating an End to Pandemics (NTI)

2020年6月8日月曜日

長期投資を心がける際の売却方針について(2)なぜ長期投資なのか

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このシリーズの前回分の投稿で、トシユキさんのご質問にはひとまずご回答したつもりです。しかし彼がそもそも知りたかったことは、長期投資銘柄の売却についてだととらえています。もっと言えば、「長期に保有してきた銘柄を、どこかの値段で売却する必要があるのか。そうだとすれば、いつが売り時なのか」と問われていたように感じました。

その問いに対しては、トシユキさんのコメントから始まるやりとりでご紹介したフィル・フィッシャーからの引用が端的に答えています。「ときが経つほど大きな価値を生み出してくれる株は決して売らない」。さらに言えば、その条件を満たさない銘柄は売っても差し支えないことを意味していると受けとめています。

その答えを踏まえて元の問いを書き直せば、「離れるほどに漠然とする将来を、どのように値踏みすればよいのか」といった問いになると解釈しました。

この問いに対する包括的な答えを持っている人は、少なくともわたしは知りません。当然ながら、わたし自身も答えられません。それゆえに、これにて幕を引くべきなのでしょう。そうだとしても最低限のことは、たとえば先人の知恵をまとめたり、自分の経験を書くことはできるので、もう少し進んでみたいと思います。

<なぜ長期投資の方針を選ぶのか>
長期投資という方針を選ぶ理由は、その人が「他の方針と同じか、それ以上の成果が期待できる」と少なからず信じているからだと想像します。「ウォーレン・バフェットのような成功した投資家がそうしてきたから」「S&P500インデックス・ファンドに投資すれば、アメリカの成長を享受できるから」などのきっかけがあったかもしれません。たしかにそれらは過去に素晴らしい成績をあげています。しかしそこで一つ言えるのは、前者のやりかたでは個別株を選別する眼力が必要ですし、後者では「アメリカ大企業」というセクターに賭けている点です。つまり「何に投資するのか」を決めることは投資家自身に任されています。そしてその選択が長期的な当たりであるゆえに、長期的な成功をおさめられる..、さきほどのフィッシャーの引用に戻った形になりましたが、つまりこういうことでしょうか。「私には、長期的な当たり銘柄を探し当てることができる」、だから「私は長期投資をえらぶ」。

<長期投資に適した銘柄を選ぶ方法の一例>
その場合、どのようにして「長期的な当たり銘柄」を選ぶのでしょうか。見通しのきかない将来をみわけるにはどうすればよいのでしょうか。単純な戦略が一つ思い浮かびます。「好調な業績が継続中の銘柄をえらぶ」方法です。そして事業環境や競争力が、今後も継続あるいは拡大強化されること。そのような見通しを容易に立てられる銘柄があれば、候補に挙げることができるでしょう。ただし、その場合に問題となるのが「株価」です。見目麗しき銘柄には人気があつまり、将来の大きな成功を織り込んだ株価が付けられがちです。行き過ぎた株価になった銘柄をえらんで、そこから長期投資をはじめるのは難しい仕事だと思います。「買値にふさわしいほどに、将来予測の信頼性が高いこと」が要求されるからです。つまり、この戦略をとって長期投資を進める場合には、「買値及びそれに伴う投資規模」が重要な要因となってきます[参考記事]。 

今回のまとめです。

・長期投資をする際には、「長期的な当たり銘柄」を選ぶこと。(これは前提条件) 
・その買値や投資規模に見合った水準で、将来が予測できること。 (これは難しい)

結局のところ、上の文章は反語的な意味で記しましたが、救いの意味も含めてチャーリー・マンガーがウォーレン・バフェットに授けた教えを再掲します。

長続きする競争優位性を見極める
「すばらしい企業にそこそこの値段がついているほうが、そこそこの企業にすばらしい値段がついているよりも良い」

(つづく)

2020年6月7日日曜日

幸福な結末(GMOベン・インカー)

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本サイトでは何度か、資産運用会社GMOの創業者(の一人)ジェレミー・グランサムの文章を取り上げてきました。最近の彼は気候変動などの大きな課題に注力し、第一線的な職務からは離れていたようです。その彼が直近四半期の顧客向けレターで筆をとっていたので目を通しましたが、後任的存在のベン・インカー氏が書くところと主旨は変わらないため、今回はそのベン・インカー氏による文章をご紹介します。この波乱の時期にあって、いかにもバリュー志向のファンドらしい内容です。(日本語は拙訳)

1Q 2020 GMO QUARTERLY LETTER (GMO)

要約

3月につけた安値の時点では、今後予想される厳しい景気後退によって生じる平均的な悪影響を各種資産の適正価値へ反映したとしても、ほとんどのリスク性資産に対する市場評価は、適正あるいは割安だと思われた。そのため我々が運営している「多種資産ポートフォリオ」では、その安値近辺の数週間のあいだに株式および債券の保有割合を増加させた。経済における不確実性が非常に高い水準にあること、さらにそれら不確実性のほぼすべてが下落を招くものだという事実を考慮すれば、市場は今後も変動しつづけ、厳しい前進の時期が度重なるものと、我々は予想した。ところがその後の6週間を超える期間において、リスク性資産の価格は大幅に上昇した。特に株式は顕著で、2か月に満たない間に4-6年間分の「標準的な」リターンを実現した。その一方で、グローバル経済面での下落リスクは、我々が評価するところでは目を引くほどには減少していなかった。そこで我々は高値の機会に乗じて、「多種資産ポートフォリオ」における株式の実質配分比率を大幅に縮小させた。そして、その資金の一部をロング・ショート戦術に投入した。具体的には、相対的に割安な株式を継続保有する傍らで、市場全体の価格変動に対する感応度を低下させた。これらの施策を講じたのは、今後の市場の方向性に確信を持ったからではない。「最良のシナリオに近い状況が将来到来することを市場が想定し、現在の価格を形成している」と判断したためである。そのようなシナリオが実現する可能性は、たしかに存在する。Covid-19に対する有効なワクチンが広範に流通するか、あるいは顕著な効果を発揮する治療法が速やかに開発されるのであれば、なおさらそうだと言える。しかしそういった幸福な結末に至らない場合、ほとんどの株式市場において大幅に下落する可能性が高いと、我々は考えている。そのような魅力に欠けたリスク対リターンを比較対照した結果、我々が顧客諸氏のためにできることは、市場が提供してくれている稀有な株式選別の機会をとらえる一方で、今後何か月間において市場が実際に向かう方向に関するリスクを低減させることだと判断した。それがために、「ベンチマーク無比較資産配分戦略」における実質株式配分比率を、55%近辺から約25%へ低下させた。

Executive Summary

At the March lows, most risk assets appeared to be fair value or cheap, even assuming a moderate hit to fair value from a severe recession. In our multi-asset portfolios, we added to our holdings of equities and credit over the few weeks around the lows. Our expectation was that markets would continue to be volatile and would have a hard time making too much headway given very high levels of economic uncertainty and the fact that most of that uncertainty was to the downside. Instead, over the following six weeks we saw a massive rally in risk assets, particularly equities. We got four to six years of “normal” equity returns in the space of less than two months. Meanwhile, our estimate of the downside risks to the global economy have not notably lessened. As a result, we have taken advantage of the higher prices to significantly reduce the effective equity weight in our multi-asset portfolios, turning some of it into long/short trades where we maintain exposure to relatively cheap stocks but reduce the portfolio’s sensitivity to overall market direction. We are not doing this out of a sense of certainty as to the market’s direction from here, but due to a belief that at current prices, markets seem to be pricing in something close to the best-case scenario. Such a scenario is certainly possible, particularly if an effective and widely available vaccine or strikingly effective treatment for Covid-19 were to be developed quickly. But if we do not get that happy outcome, we believe substantial losses would be likely across most equity markets. In the face of that unattractive risk/reward trade-off, we believe we can do better for our clients by taking more risk on the extraordinary relative stock selection opportunities the market is offering and less on the direction the stock market actually takes over the coming months. To that end, we have reduced our net equity exposure in our Benchmark-Free Allocation Strategy from around 55% to about 25%.

備考です。同氏へインタビューした少し前の記事が、Barron'sのサイトに掲載されています。日本語サイトの翻訳記事は有料のようですが、本家のサイト記事は無料公開されているようです。

Stocks Are Too Risky. What GMO’s Inker Says to Buy Instead. (Barron's)