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2013年2月1日金曜日

白いものでも、黒に見える方法(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーによるハーヴァード・ウェストレイク高校での講話、その4です。前回はこちらです。今回の話題は、身に覚えのある人も少なくないかと思います。しかし話の聞き手として、高校生も参加しているのでしょうか。(日本語は拙訳)

経済学のことはいろいろ話しましたので、企業財務の話題に戻りましょう。こちらも、てんでお話になりません。価格変動の大きな株式を買えば、年間7%の超過利益が得られる。そんなことを信じている人には、こう聞いてみたいですね。子供のころに教えられた歯の妖精をいまだに信じているのですか、と[抜けた歯の始末のこと]。そのボクちゃんたちですが、7%を達成するために、それ以上精を出そうとしない。これではまるで[不思議の国のアリスの]「いかれ帽子屋のお茶会」です。しかし実際に、頭のいい人たちがたいそう馬鹿げたことをしているのです。その手の人たちの多くが、強力な慣習の下で働いていることも関係しているでしょう。法務に携わるろくでなしが、新グレシャムの法則に直面するのと同じです。同じような圧力に負けてアホなことをやらかしている例は、他でもみられます。よくあるのが学術界ですね。シカゴ大学の例をあげてみましょう。この学校では、自由市場を奉じるオーソドックスな経済学を教えています。ある友人の子供さんがその経済学部で先生をやっていますが、市場というものは大学が教えているほどには完璧ではない、と彼は信じていました。しかし、その見方は隠さざるを得ませんでした。わざとたわごとを信じているならばともかく、この高名な大学の経済学部で[音声不明]できるチャンスは皆無だったからです。たしかに雇用関係というのは、こういったことばかりですね。雇われて働くということは食い扶持のために必要なことですが、これは一般的にいって他のどんなものよりもお粗末な認識を招きかねない要因です。作家のアプトン・シンクレアによる発言が白眉です。「食っていくには黒だと信じなきゃならない人を、実は白なんだよと覆すのはすごくむずかしい」。こうなってしまうのは、潜在意識の段階で脳が自分自身をだまし、かわいい自分にとって良いことならば、それは信じるべきと考えてしまうからです。誤った認識を起こしているのは、人の心の中にある目には見えない現実であって、悪意があってやっているわけではありません。それゆえ、この問題は対処するのが非常に難しいのです。

Well, I've done enough for economics, let's go on. Corporate finance is beneath contempt. Believing just by buying volatile stocks you make an extra 7 percentage points per annum, I mean those people still believe in the tooth fairy and yet it is taught to the children. On the other hand, the children don't have to work very hard to get there so it's a Mad Hatter's tea party -- but this is the real world as [it] exists. You have these extremely dumb things being done by these smart people. But a lot of them are under big institutional pressure like the poor bastard in the law department who has to face the new Gresham's Law. Of course, that kind of pressure is on all these other people that are doing these dumb things, many in academia. I had a friend who had a child in the economics department at Chicago, very free market orthodox economics, and [the child] didn't believe the markets were quite as perfect as they thought at the University of Chicago and he had to hide his views. There wasn't the slightest chance he could do [audio unintelligible] at the economics department at a really great university unless he pretended to believe twaddle. Of course, employment is full of this sort of thing. Generally, the employment relationship - the need for money - causes more terrible cognition than any other single factor. Upton Sinclair said it best of all. He said, ‘It is very hard to get a man to believe non-X when his way of making a living requires him to believe X.' On a subconscious level, your brain plays tricks on you and you think [that] what is good for the true little me is what you should believe. Of course, it's very hard to deal with since it's not conscious malevolence that's causing the bad cognition -- it's the subconscious reality of the human mind.

2013年1月31日木曜日

2012年の投資をふりかえって(3)新規・追加投資編(マイクロソフト)

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前回に続いて3件目の企業です。

<当社の概要>
当社の主力製品WindowsやOfficeは日常的に使われているものなので、細かくはとりあげません。ここでは事業部門ごとの営業利益の推移をみておきます。事業部門は5つあります。Windows、サーバー及び開発ツール、ビジネス向けシステム、娯楽(Xbox)及びデバイス(Phone)、オンライン広告(Bing, MSN)です。


要約すると、Windowsは横ばい、サーバーやビジネス向けシステムは成長中、娯楽はKinectのヒットで浸透し累積損失を取り戻している段階、オンライン広告は赤字継続の上に巨額の買収評価損を計上、となります。

<投資に至った背景>
本ブログで何度か取り上げているファンド・マネージャーに、アーノルド・ヴァンデンバーグという方がいます。読みごたえのある彼のレターは、何年か前から目を通してきました。当社に興味を持ったのは、最近の彼の文章を読んだのがきっかけです。大企業にはあまり投資しない時期が続いていたので、当社の経営状況を確認したのは初めてでした。PERが10倍前後で配当率が3%強と、単純に割安だと感じました。当社の利益の伸び率を調べてみると、グーグルやアップルからは離されていますが、2006年度から2011年度の5年間でEPSは倍増しています(2012年度は多額の評価損があったので対象から外しました)。当社の株式が不人気なのは、人気企業とくらべて低調だからか、それとも将来を見越したせいなのか。どちらにせよ、調べて考える価値のある企業だと判断しました。

当社の業績動向をみるさいに、さきに挙げた5つの事業分野ではなく、顧客種別に分けて考えてみます。消費者向けと企業向けの2つです。

消費者向け部門: Windows、娯楽(Xbox)、オンライン広告(Bing, MSN)
企業向け部門: Windows、サーバー及び開発ツール、ビジネス向けシステム(Office等)、デバイス(Phone)

当社の将来において実現性が高いと考えられるシナリオは、「消費者向け事業は伸び悩むが、企業向け事業は成長する」ものと考えます。この組み合わせであっても、一定の利益を株主に還元してくれるだろうと判断しました。当社が大きく成長したきっかけはMS-DOSやWindows、Officeといった企業向け製品であり、企業向けの商売には強みがあります。反対に、消費者に対するマーケティングや政策は、競合他社とくらべて優れているとは言えません。生え抜きの経営者が指揮をとる間は当社のDNAは変わらず、この傾向は今後もつづくものと予想します。

企業向けの需要が期待できる理由はいくつかあります。第一に、企業におけるIT化は米国で大きく進展していますが、他の国でも同様の道をたどる可能性は高く、マーケットは今後も拡大するものと考えます。当初は低コストの類似製品を選ぶかもしれませんが、組織の規模が大きくなり、対外的な取引が多くなるにつれ、当社製品のようなデファクト・スタンダード的なITシステムに移行するとみます。新興国が先進国を追いかける際にITの利用は梃子として働くため、教育水準の高い国のマーケットはいっそう期待できます。

第二に、当社の製品戦略がITツールの進展やデータ増大の潮流に乗っていることです。主要顧客である大企業や大規模な組織には、規模の大きさが持つ利点があります。IT武装化によって生産性を向上できることも、そのひとつです。規模の経済が効く上にネットワーク効果が働くことで、大きな組織ほど統一的にIT化することで利益を享受できます。当社は先駆者的な製品を開発販売するのではなく、社会的にある程度認知された情報ツールを企業向けに製品化してきました。過去数年分の10-Kを読むと、LyncやSharepointといった企業向けの情報インフラ的製品が売れていることが示されています。これらのシステムの裏側ではデータベース製品SQL Serverが稼働しており、これも毎年のように売上が増加しています。これらに付随して、サーバーOS製品Windows Serverやシステム管理製品System Centerも売れています。とどめはサポートサービスで、これも前述の売上増に従う形で伸長しています。このように、芋づる式に売上をあげられる製品構成がとられています。最後に、これらの製品間あるいはメール製品Exchangeとは連携的に機能しており、他社製品への乗り換えを難しくしています。

その他の増収の機会としては、以下のようなものが考えられます。
・サブスクリプションやライセンス料金の値上げ
・違法コピーから正規品への移行

<リスク>
1. 消費者向けWindowsのシェア低下
各種タブレットが出現したことで、消費者のWindows離れが進みました。この流れが継続し、一定の地点までシェアを失うリスクがあります。すでにWebブラウザーIEのシェアは大幅に低下しており、消費者向けOSの将来を暗示しています。Windowsは企業向けを強く意識した製品なので、守勢に回ると消費者にアピールしにくい側面があります。当社が消費者向け市場で戦い続ける当面の戦略は、タブレットPCを強く推し進め、キラーアプリケーションを開発したり、自陣営にひきつけることと考えます。また当社の持ち味である長期戦を戦いぬき、相手のミスをねばりづよく待つことも必要でしょう。しかし、ITツールに慣れた消費者の移り気を考えると、このマーケットでOSを独占できる時代は終わったようにみえます。さらに当社は、IT業界を席巻した時期に悪いイメージを確立してしまい、消費者に好かれていない歴史を背負っています。本丸である企業向けOSのシェアをある程度守ることができれば、後退もやむを得ないと考えます。

2. ビジネス向けシステムのシェア低下
グーグルにOfficeの顧客をとられ、またクラウドシステムのシェアも獲得できない。このようなシナリオを想定することはできますが、現段階では大きなリスクには至っていません。その理由の筆頭にあげられるのは、よく言われるように、取引上の都合を考えると自社だけが別システムに移行するのは難しい点です。第二に、一般的に企業はITシステムの乗り換えには消極的な点です。製品の印象やマーケティングに反応しやすい消費者とは違って、移行にかかる工数やコストやそれに伴う機会費用、運用開始後のリスクを重視するからです。また従業員(すなわち被雇用者)の立場からみても同様で、たとえば自分の作成したファイルやノウハウから離れたくないといった心理的傾向が働きます。第三に、同等の製品やサービスを当社も提供できることです。なおOfficeの売上の多くは企業向けで、消費者向けは小さな規模にとどまっています。

3. 新市場参入の逸失から始まる、既存事業への脅威
過去をふりかえると、グーグルやアップルといった勢いのある企業は、適切な戦略にもとづいて攻勢をかけてきました。つまり、強者に対して正面から戦うのではなく、周縁を切り崩しながら中央に向けて進出するやりかたです。アップルがWindows向けにもiTunesソフトを無料配布したのはトロイの木馬的な戦略で、消費者向けの新市場を攻略する礎となりました。グーグルはIT技術の進展によって得られた果実を活かして消費者向け市場を身軽に攻め、Web検索や強力な電子メールサービスといった領域を短期間で席巻しました。いずれも、かつて当社が飛躍しはじめた頃の姿と重なるものがあります。一方の当社は守る立場で、周縁で戦うゆえに地力をいかせず、身重なままの戦いを強いられてきました。従業員の質も、相対的に劣ってきているのかもしれません。当社がこのような問題に再び直面するリスクは、ほぼ間違いないでしょう。

<売買記録>
大半は2011年に購入しましたが、2012年の後半にも少し買い増ししました。平均購入単価は26.5$で、現在の株価は28$です。


<おわりに>
当社に投資する理由を書き連ねてきたものの、当社の競争優位性がどこまでつづくのか、確信はもっていません。隆盛を極めたIBMが波から落ちるまでの期間をふりかえると、当社が衰退しはじめる時期もそれほど遠くないかもしれない、という想いはあります。テクノロジー業界ではいつまでも独走できない。当社に向けられた市場の評価は、このような不安が積み重なったものだと思います。

2013年1月27日日曜日

人は水でできている(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーの講話『実用的な考え方を実際に考えてみると?』の第3回目です。前回の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)

私がグロッツさんを説得するのでしたら、次のようにやります。ただし説明で使うのは、さきに話した有用なるアイデアと、聡明な人が大学の2年生ともなれば知っておくべきことだけです。

それではグロッツさん、出された課題を楽に考えるために、肝心でわかりきったことからとりかかりましょう。2兆ドルの価値を持つものを創造するには、無印の飲み物のままでは絶対に無理です。そこで、まずはお望みの「コカ・コーラ」という名前を商標登録し、法的に守られた堅固なものとしておきます。次に我らが飲み物を売ることで2兆ドルを目指すにしても、アトランタを手始めにして、国内全体、そこから一気に全世界へと広めていくほかはありません。それには、我々の製品が幅広く受け入れられるよう開発する必要があります。この狙いにむけて、根源的かつ強力な力を活かしていくのです。そういった力は、基礎的な教科の中で主要な話題として取り上げられているものから借りてくるのが適切でしょう。

では、我々の目標がどのような意味を持っているのか、数字を駆使してわかりやすくしてみます。飲料を買って飲む人が2034年には世界中で何人ぐらいいるか見積もると、80億人程度だと合理的に予測できます。1884年とくらべると、平均的にみれば実質ベースでも余裕ができているでしょう。ところで人間の体はほとんどが水で構成されているので、1日あたり約1.8リットルの水分を摂取しなければなりません。1回250ミリリットルとすれば、飲み物をとる回数は8回になります。人が摂取すべき水分の25%を風味のつけられた飲料、つまり我が社の新製品や他の類似製品を飲むことでまかない、さらには新たに登場する世界的な飲料市場のうちの半分でも獲得できれば、2034年には1杯250ミリリットルの飲料を2兆9,200億杯売ることができます。1杯あたりの利益を4セントと考えると、1,170億ドルもの利益です。我々の事業がずっとよい調子で成長できれば、2兆ドルの企業価値は容易に達成できる水準でしょう。

もちろんですが、そもそも2034年時点での妥当な利益目標として1杯あたり4セントでいいのか、という疑問があります。世界的に人気の高い飲み物を生み出せるのであれば、それで大丈夫です。150年間というのは長い年月です。ローマ時代の通貨ドラクマと同じようにドルが減価するのはまちがいないですし、それと並行して、飲料を買ってくれる世界中の平均的な消費者の実質購買力は上がるでしょう。安価なものを買うことは生活に満足をうみだし、飲み物の需要もまずまずの調子で増えていくでしょう。他方で、我々の単純な製品を生産するコストは技術が進歩する恩恵をうけて、恒常購買力ベースでみて低下するでしょう。これらの4つの要因があわさって働き、1杯あたり4セントの利益目標にむけて追い風を送ってくれます。世界全体でみた時の飲料に関する購買力は、ドルベースでみると150年間で少なくとも40倍にはなると思われます。逆に考えれば、1杯あたりの利益目標は、1884年の段階では4セントの40分の1、つまり0.1セントにすぎません。我々の新製品が幅広く受け入れられるものであれば、創業まもない段階でも容易に達成できる数字です。

Here is my solution, my pitch to Glotz, using only the helpful notions and what every bright college sophomore should know.

Well, Glotz, the big “no-brainer” decisions that, to simplify our problem, should be made first are as follows: First, we are never going to create something worth $2 trillion by selling some generic beverage. Therefore, we must make your name, “Coca-Cola,” into a strong, legally protected trademark. Second, we can get to $2 trillion only by starting in Atlanta, then succeeding in the rest of the United States, then rapidly succeeding with our new beverage all over the world. This will require developing a product having universal appeal because it harnesses powerful elemental forces. And the right place to find such powerful elemental forces is in the subject matter of elementary academic courses.

We will next use numerical fluency to ascertain what our target implies. We can guess reasonably that by 2034 there will be about eight billion beverage consumers in the world. On average, each of these consumers will be much more prosperous in real terms than the average consumer of 1884. Each consumer is composed mostly of water and must ingest about sixty-four ounces of water per day. This is eight, eight-ounce serving. Thus, if our new beverage, and other imitative beverages in our new market, can flavor and otherwise improve only twenty-five percent of ingested water worldwide, and we can occupy half of the new world market, we can sell 2.92 trillion eight-ounce serving in 2034. And if we can then net four cents per serving, we will earn $117 billion. This will be enough, if our business is still growing at a good rate, to make it easily worth $2trillion.

A big question, of course, is whether four cents per serving is a reasonable profit target for 2034. And the answer is yes if we can create a beverage with strong universal appeal. One hundred fifty years is a long time. The dollar, like the Roman drachma, will almost surely suffer monetary depreciation. Concurrently, real purchasing power of the average beverage consumer in the world will go way up. His proclivity to inexpensively improve his experience while ingesting water will go up considerably faster. Meanwhile, as technology improves, the cost of our simple product, in units of constant purchasing power, will go down. All four factors will work together in favor of our four-cents-per-serving profit target. Worldwide beverage-purchasing power in dollars will probably multiply by a factor of at least forty over 150 years. Thinking in reverse, this makes our profit-per-serving target, under 1884 conditions, a mere one fortieth of four cents or one tenth of a cent per serving. This is an easy-to-exceed target as we start out if our new product has universal appeal.

2013年1月25日金曜日

ウォルター・シュロス、再訪

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昨年亡くなったウォルター・シュロス氏のパートナーシップの成績は以前にも取り上げましたが(過去記事)、2002年までのものがアップロードされていたのでご紹介します。

Walter Schloss Returns (Mr. Market Blog)

(このリンクは、いつもお世話になっている掲示板で取り上げられていたものです)

以下は、以前にとりあげたときのグラフを更新したものです。2000年から2002年にご注目ください。ITバブル後の下げ相場の時期です。


余談ですが、当時のわたしは株式投資を始めたころで、投資成績はS&P500と似たようなものでした。

2013年1月23日水曜日

一族のひとりに迎えたい人なのに(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーによるハーヴァード・ウェストレイク高校での講話、その3です。前回から続いています。(日本語は拙訳)

いずれにせよ、こういったばかげた考えは学術界が考え出したことです。ただし工学や芸術や科学の分野からではなく、すべて社会科学の分野が生んだものです。経済学には芸術や科学を連想させる片鱗がみられることもありますが、私としては、その学問は社会科学の範疇に含めたいと考えます。

経済学の教科書で教えているグレシャムの法則は、「悪貨は良貨を駆逐する」というものです。しかし現代では悪貨を集めてもたいした額にはなりません。硬貨の素材には、溶解すれば高い価値のある貴金属は今では使われていないので、25セント硬貨を溶かすと10セント硬貨の価値とくらべてどうなるか、などと考える人はいないでしょう。グレシャムの法則は、現代社会を語る際の第一歩ではなくなったのです。悪貨は良貨を駆逐しますが、経済学的にみるとまぎれもなく重要なのは、新しい形のグレシャムの法則のほうです。それは貯蓄貸付組合の危機の際に、「悪しき貸出しは良き貸出しを駆逐する」という形で露呈しました、このモデルがいかに強力か、あらゆる人にふりかかった災厄を考えてみてください。たとえば小さな金融機関をやっていて、もはや信用を失った建設業者に対して融資しているとしましょう。普通の人がやるようなおろかなことには手を出しませんでしたが、あるとき某ペテ・ジョンソンのほうがバカなことをたくらみ[空手形を切られるの意]、これが大事となってしまい、愛するビジネスを縮小するはめになりました。経歴をかけて信頼してくれた人たちを解雇することにもなるでしょう。さもなければ、多額のおろかな貸出しをするかです。そのようなときにバークシャー・ハサウェイでは、縮小の道を選びました。ただし誰ひとり、首にはしませんでした、職場から出てゴルフにでも行くように伝えたのです。おろかな貸出しをしようとは全く考えていませんでした。しかしそのような選択をするのは、なかなか難しいことです。社会で指導的な立場にある人が、解雇される人の就職を手助けしたり、奥さんや子供さんと顔を合わせたりするわけですから。それゆえに、悪い貸出しは良い貸出しを駆逐してしまうのです。

悪い貸出しだけにとどまりません。悪しきモラルも良きモラルを駆逐します。大都市の下町で小切手を換金する事業を営んでいれば、100%以上の利益をあげるのは、契約面で相手をだます場合だけです。取引相手をだますつもりがなければ、それらの人はマイノリティーのことが多いですが、100%以上もの利益は得られないはずです。その事業が相続したものだったり、バカな義理の息子に経営を任せていたりすれば、他になにが起きているのか知らないでしょう。これが私が言うところの「大人の問題」で、ほとんどの人は「大人のやり方」で対応しています。つまり、ごまかしを黙認することを学ぶのです。しかし、充実した良き人生を謳歌したい人にとっては、このやりかたをとるべきではありません。これこそ、ある種のグレシャムの法則、新グレシャムの法則です。経済学の講義では教えていないので、ぜひ教えるべきです。この問題は真剣にとらえなければなりません。経済危機を引き起こした原因とも深くかかわっています。「この人だったら、婿や嫁として一族に迎えたい」、そう思えるような人たちでさえも、新グレシャムの法則の影響のもとで悔やみきれないようなことをしでかすからです。

At any rate, these ridiculous ideas came out of academia. This wasn’t true in engineering and arts and science by the way. The idiotic ideas are all from the social science department and I would put economics in the social sciences department although it has some tinges of reality that remind you of arts and science.

In economics textbooks they teach you Gresham’s Law: Bad money drives out good. But we don’t have any bad money that amounts to anything. We don’t have any coins that are worth a lot, that have precious metals that you can melt down. Nobody cares what the melt-down value of the quarter is in relationship to the dime, so Gresham’s Law is a non-starter in the modern world. Bad money drives out good. But the new form of Gresham’s Law is ungodly important. The new form of Gresham’s Law is brought into play - in economic thought, anyway - in the savings and loans crisis, when it was perfectly obvious that bad lending drives out good. Think of how powerful that model is. Think of the disaster that it creates for everybody. You sit there in your little institution. All of the builders [are not good credits anymore], and you are in the business of lending money to builders. Unless you do the same idiotic thing [as] Joe Blow is doing down the street. Pete Johnson up the street wants to do something a little dumber and the thing just goes to a mighty tide. You’ve got to shrink the business that you love and maybe lay off the employees who have trusted you their careers and so forth or [make] a lot of dumb loans. At Berkshire Hathaway we try and let the place shrink. We never fire anybody, we tell them to go out and play golf. We sure as hell don’t want to make any dumb loans. But that is very hard to do if you sit in a leadership position in society with people you helped recruit, you meet their wives and children and so forth. The bad loans drive out the good.

It isn’t just bad loans. Bad morals drive out the good. If you want to run a check-cashing agency in [a] downtown big city, more than 100 percent of all the profit you could possibly earn can only be earned by flim-flamming people on the finance contracts. So if you aren’t willing to cheat people - basically minorities - more than 100 percent of the profit can’t be earned. Well, if you inherited the business or your idiot son-in-law is in it, you don’t know what else to do. This is what I would call an adult problem and most people solve it in the adult fashion: They learn to tolerate the cheating. But that is not the right answer to people who want to live a larger and better life. But it is a form of Greshem’s Law, the new Gresham’s Law. One that is not taught in economics courses and should be. It is a really serious problem and, of course, it relates deeply to what happened to create the economic crisis. All kinds of people who you would be glad to have marry into your family compared to what you are otherwise going to get did things that were very regrettable under these pressures from the new Gresham’s Law.