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2012年7月25日水曜日

(映像)チェリーコーク好きのウォーレン・バフェット..

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Bloombergのサイトに、ウォーレン・バフェットがチェリー味の各種コーラを飲み比べする動画が掲載されていました。愛飲しているコカ・コーラ社のチェリーコークを当てよという趣向です。

Boomberg: Will This Video Break Hearts of Cherry Coke Fans?



ウォーレンは確率や心理学に強いはずです。それに留意しながら映像を見ると、二重にも三重にも楽しめるような気がします。(ただの考えすぎかもしれません)

2012年7月24日火曜日

アインシュタインの警句を守る(チャーリー・マンガー)

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以前の投稿で、チャーリー・マンガーの投資における意思決定プロセスを、『Poor Charlie's Almanack』の編者ピーター・カウフマンが書いた文章をご紹介しました(過去記事)。今回の文章も同氏によるものですが、もう少し一般的な表現でチャーリーのやりかたを描いています。(日本語は拙訳)

自分の置かれた状況がどうであれ、チャーリーはどう進めたらいいかを考えはじめる前に、何をすべきでないかのほうに焦点をあてることが多い。彼のお気に入りの言い回しに、こういうのがある。「どこで死ぬかさえわかっていれば、そこには行かないようにしますよ」。日常生活と同様で、ビジネスにおいても勝ち目の低い次の一手はさっさと切り捨てる。このやりかたがチャーリーに大きな優位を与えている。時間を節約し、より建設的な分野に集中できるからだ。複雑な状況にでくわすと、彼は本質的で感情の入らない基本原理まで還元しようと努める。しかしながら、合理性や単純さを追求するうちに、彼自身のいう「物理学羨望症」にかかってしまわないように注意してきた。経済学のような格段に複雑なシステムを、ニュートンによるいくつかの法則のようなもので説明しようとするのは人の性だが、彼はそうせずに、アルバート・アインシュタインが残した警句のほうを忠実に守ってきたのだ。「科学法則はできるだけ簡潔にすべきだが、必要以上にやってはならない」。チャーリー自身の発言も挙げておこう。「自分がまさにしたことを、害をなさずして益をなすだろうと考えて満足にひたるのは、わたしには賛成できませんね。おわかりですか、高度に複雑なシステムの中では、あらゆるものがお互いに影響を及ぼしあっているのですよ」

Often, as in this case, Charlie generally focuses first on what to avoid ? that is, on what NOT to do ? before he considers the affirmative steps he will take in a given situation. “All I want to know is where I'm going to die, so I'll never go there” is one of his favorite quips. In business as in life, Charlie gains enormous advantage by summarily eliminating the unpromising portions of “the chess board,” freeing his time and attention for the more productive regions. Charlie strives to reduce complex situations to their most basic, unemotional fundamentals. Yet, within this pursuit of rationality and simplicity, he is careful to avoid what he calls “physics envy,” the common human craving to reduce enormously complex systems (such as those in economics) to one-size-fits-all Newtonian formulas. Instead, he faithfully honors Albert Einstein's admonition, “A scientific theory should be as simple as possible, but no simpler.” Or in his own word, “What I'm against is being very confident and feeling that you know, for sure, that your particular action will do more good than harm. You're dealing with highly complex systems wherein everything is interacting with everything else.”


ウォーレン・バフェットの伝説的な文句で"Rule No.1: Never lose money."というのがありますが、逆から考えるチャーリーのやりかたが強く影響したのかもしれませんね。

2012年7月21日土曜日

誤判断の心理学(12)盗んだのはわたしです(チャーリー・マンガー)

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今回ご紹介するのは、自分を過信する傾向についてです。(日本語は拙訳)

誤判断の心理学
The Psychology of Human Misjudgment

(その12) 自尊心過剰の傾向
Twelve: Excessive Self-Regard Tendency

人が行き過ぎた自尊心を持つ様子はよくみられるものです。ほとんどの場合、自分を高く評価しすぎています。たとえばスウェーデンでは、車を運転する人の90%が自分の技量を平均以上だと自任しています。この手の見当違いは、自分に関係する人や物にもあてはまります。妻や夫のことをかいかぶったり、自分の子供となると客観的にみるよりも高く評価してしまいます。また、ちょっとしたものでも過大評価しがちです。いくらなら払うかと質問されると、まだ所有していないものよりも、すでに自分のものとなったほうに高い値段をつけるのです。このような自己の所有物を過大評価する現象に対して、心理学では「授かり効果」と命名しています。そうです、自分の下すあらゆる決断は、決断する前とくらべると突如としてより良いものへ変わるわけです。

We all commonly observe the excessive self-regard of man. He mostly misappraises himself on the high side, like the ninety percent of Swedish drivers that judge themselves to be above average. Such misappraisals also apply to a person's major “possessions.” One spouse usually overappraises the other spouse. And a man's children are likewise appraised higher by him than they are likely to be in a more objective view. Even man's minor possessions tend to be overappraised. Once owned, they suddenly become worth more to him than he would pay if they were offered for sale to him and he didn't already own them. There is a name in psychology for this overappraise-your-own-possessions phenomenon: the “endowment effect.” And all man's decisions are suddenly regarded by him as better than would have been the case just before he made them.


トルストイの書いた言い回しでよく知られたものに、過剰な自尊心が持つ力に光をあてたものがあります。「極悪非道の犯罪者は、自分はそれほど悪者ではないと考えている」。それゆえ、罪になるようなことはしていないとか、これまでの人生で受けた逆風や不利を考えれば情状を考慮してもらえる、と信じるに至るのです。

この「トルストイ効果」の後ろの部分は非常に重要です。というのは、お粗末な成果をもっと改善できるのに、筋の通らない言い訳ばかりしてやりすごそうとする人が大半だからです。そういうおろかな生き方をつづけて駄目になってしまわないように、個人に限らず、組織においても対策を講じることがとても重要です。まず個人としては、純然たる2つの事実に立ち向かうべきです。第一に、もっとよい成果をだせるのに手を打たないでいるのは悪しき性質であるということ。この症状は進みやすく、言い逃れをするほど更なる害をもたらします。もうひとつは、スポーツチームやGEのように成果が要求される場では、やるべきことをしないで弁解ばかりしていると、戦力外への道をまっしぐらということ。次に、組織として取り組む方策ですが、第一に、公正かつ実績を重視した上で成果を求める文化をはぐくむこと。加えて、士気を高めるやりかたで人を扱うこと。第二に、始末におえない者をクビにすること。もちろん、自分の子供のように縁を切れない場合には、できるかぎりの力をつくして子供が改心するよう努めねばならないでしょう。50年前に親からうけた教えをまだ覚えていると語ってくれた人がいます。これこそ、効きめのある子供への教育の好例ですね。子供だった頃のできごとを語ってくれたのは、USCの音楽学校の学部長をつとめたことのある人物です。彼は雇い主の在庫からチョコを拝借したところを父親にみつかってしまいました。あとで元に戻すつもりだったと弁解したところ、父親からこう言われたのです。「いいか、お前。そんなことをするぐらいなら、ほしいだけ全部盗ってしまって『盗んだのはわたしです』とふれまわったほうがいいぞ」

過剰な自尊心のせいでバカなことをしでかさないためにはどうしたらよいか。何か自分のものについて考えるときは、より客観的に判断するよう自分を律すること、これが一番です。自分自身だったり、家族や友人のことだったり、自分の財産だったり、過去にしたことや将来やることの重要性といったものを考えるときです。そう簡単にはできませんし、完璧にやれるものでもありません。しかし、心理学が指摘するようなありのままの心に任せるよりは、このやりかたのほうがうまくいきます。

There is a famous passage somewhere in Tolstoy that illuminates the power of Excessive Self-Regard Tendency. According to Tolstoy, the worst criminals don't appraise themselves as all that bad. They come to believe either (1) that they didn't commit their crimes or (2) that, considering the pressures and disadvantages of their lives, it is understandable and forgivable that they behaved as they did and became what they became.

The second half of the “Tolstoy effect”, where the man makes excuses for his fixable poor performance, instead of providing the fix, is enormously important. Because a majority of mankind will try to get along by making way too many unreasonable excuses for fixable poor performance, it is very important to have personal and institutional antidotes limiting the ravages of such folly. On the personal level a man should try to face the two simple facts: (1) fixable but unfixed bad performance is bad character and tends to create more of itself, causing more damage to the excuse giver with each tolerated instance, and (2) in demanding places, like athletic teams and General Electric, you are almost sure to be discarded in due course if you keep giving excuses instead of behaving as you should. The main institutional antidotes to this part of the “Tolstoy effect” are (1) a fair, meritocratic, demanding culture plus personnel handling methods that build up morale and (2) severance of the worst offenders. Of course, when you can't sever, as in the case of your own child, you must try to fix the child as best you can. I once heard of a child-teaching method so effective that the child remembered the learning experience over fifty years later. The child later became Dean of the USC School of Music and then related to me what his father said when he saw his child taking candy from the stock of his employer with the excuse that he intended to replace it later. The father said, “Son, it would be better for you to simply take all you want and call yourself a thief every time you do it.”

The best antidote to folly from an excess of self-regard is to force yourself to be more objective when you are thinking about yourself, your family and friends, your property, and the value of your past and future activity. This isn't easy to do well and won't work perfectly, but it will work much better than simply letting psychological nature take its normal course.

2012年7月20日金曜日

B/Sを読む(5310東洋炭素、2012/5月期)

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前回の投稿ではB/Sの重要性にふれました。今回は、最近気になったB/Sの具体的な例をとりあげて分析します。対象企業は東洋炭素株式会社(5310)です。

(1) 東洋炭素について
社名が示すとおり、当社では炭素を素材とする製品を製造しています。当社の製品は電気伝導性や熱伝導性、機械的特性がすぐれていることから、たとえば半導体製造装置やシリコン製造炉で使われる部材として産業用に使われています。製品の品質が物性に依存するため、製造工程やプロセス上のノウハウが重要で、当社の属する業界は国際競争力を失わずに比較的高い利益率を守っています。同業他社の東海カーボンなども同水準の利益をあげています。

当社は香川県を発祥とする独立系の企業で、2006年に株式公開されました。創業者一族が株式の半数近くを保有しており、取締役会会長は創業家の近藤純子氏がつとめています。

個人的には、当社のような利益率が高い材料系のメーカーは注視しています。当社を知ったのは昨年の末ごろで、あまりなじんでいないため、少しずつ情報を蓄えているところです。

(2) 経営成績
ここでは直近2期の数字を挙げました。

(単位:千円)前々期(2011年5月期)前期(2012年5月期)
売上高  37,557,80138,714,106
営業利益 5,868,2296,055,421
純利益 3,699,5713,466,829

減益決算となりましたが、収益性は変わっていません。売上高当期純利益率 は9.0%と、まずまずの水準を保っています。

(3) 決算短信を読む
前期の決算短信をひととおり読みすすめたところ、次の2点がひっかかりました。ひとつは会計方針の変更で、もうひとつは製品在庫の増加傾向です。

・会計方針の変更
次期の見通し(PDFファイル4ページ目)で、次のような記述がありました。

当社グループの有形固定資産の減価償却方法は、国内では主として定率法で行っておりましたが、次期より定額法へ変更します。この変更により減価償却費は約23億円減少する見込みです。

ご存知のとおり、定率法は直近の費用負担が大きく、次第に小さくなっていく方式です。そのため、定額法に変更することは、費用負担を将来へ繰り延べることになります。

今期の業績として営業利益55億円(前期比9.2%減)を見込んでいますので(PDFファイル1ページ目)、この変更がなければ今期の予想営業利益は30億円強になります。これは前期の60億円と比べると半減に近い数字です。

競合動向が変化したなどの合理的な理由があれば、この変更はすんなり納得できるものですが、手持ちの情報では判断しきれません。不明なものは厳しくみるとすれば、この件は将来の帳簿上の利益を先食いしたものと捉えられます。

・製品在庫の増加
連結貸借対照表(PDFファイル12ページ目)によれば、製品在庫の期末評価額は以下のようになっています。

(単位:千円)前々期(2011年5月期)前期(2012年5月期)
商品及び製品  4,761,6187,315,218

絶対額ベースで25億円、前年比では50%以上増加しており、よい傾向ではありません。大きな受注が控えているのであればこれも納得できますが、受注残は漸減傾向なので(PDFファイル27ページ目)、その可能性は低いと思われます。これは、需要予測が大きくはずれたか、あるいは決算数字をつくったものと想像してしまいます。製造業の会計では、当期に発生した固定費でも製品在庫として棚卸資産の勘定項目にある間は費用として認識されません。固定費が重くて困った年度にこのやりかたをとれば、つまり作りすぎをしておけば、費用を先送りすることができます。翌期の需要を平準化する目的で先行生産するのであれば理にかなった行動といえますが、それでは意図を判断する一材料として過去の経営状況をふりかえってみましょう。

以下の図は当社の棚卸資産の推移です。適正水準を判断するために、あわせて売上高の推移も載せています。これをみると、ここ数年間で棚卸資産が相対的に増加しているのがわかります。また製品在庫については、前期の伸びが大きいこともわかります。このことから、前期の製品在庫ひいては棚卸資産全体が適正水準から離れていると考えられます。つまり、数年前から資産の過剰な拡大基調が続いていたということです。







ただし、当社としても過剰在庫リスクは認識しており、有価証券報告書で喚起しています。前々期分(2011/5月期)の有価証券報告書では次のように記載されています(PDFファイル20ページ目)。

当企業グループでは、等方性黒鉛材料の需要予測を毎月行い、生産計画を作成することで、過剰在庫を持たないように努めておりますが、予想以上に等方性黒鉛材料の需要が落ち込んだ場合には、製品自体に系時変化はないものの一時的に過剰在庫となる可能性があります。

(4)B/Sを読む
最後になりましたが、貸借対照表を読んでみます。「読む」というからには以前のものと比較します。前期(2012年5月期)(PDFファイル12ページ目)と2009年5月期(PDFファイル46ページ目)をくらべてみてください。大きな違いに気づかれると思います。この数年間で資産をふくらませる方向で経営してきたのがみてとれます。流動資産と固定資産のどちらも増加しているのですが、2つの点が気になります。ひとつは、上に挙げたように棚卸資産の割合が大きくなっていること、そしてもうひとつは、現預金残高が縮小し、借入金が増えていることです。このツケを払う日がくるのかこないのか。前回前々回の投稿を読み返すと、当社にとって興味深い時期はまさしくこれからと感じます。

ここでさらなる観点を加えておきます。上でとりあげた2009年5月期の決算が終わってまもなく、同年8月に新社長が就任しています(人事異動のお知らせ)。近藤尚孝氏という方で、創業者である故近藤照久氏の娘婿であり、会長近藤純子氏からみると義弟にあたる人物です。その社長が、今年の5月末日付けで社長及び取締役を辞任しました(人事異動のお知らせ)。健康上の理由ということです。

2012年7月18日水曜日

P/Lは見るもの、B/Sは読むもの(スター精密社長佐藤肇)

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前回とりあげた売掛金のような話題となると、実情が生々しく伝わってくるのは実際の経営者の言葉です。そういうわけで、もうひとつ手にとってみた本が『社長が絶対に守るべき経営の定石』です。著者はスター精密社長の佐藤肇氏で、創業者だった父親から受け継いだ経営上の定石を実践咀嚼した上で、具体的な数字を使って簡明に説明しています。題名が示すように、経営で悩む社長向けに書かれた本ですが、投資家の参考になる話題もあちこちにみられます。

今回は、貸借対照表の重要性を説いた部分をご紹介します。個人的には、企業分析の際には損益計算書だけでなく、貸借対照表やキャッシュフロー計算書にも目を通してきました(過去記事)。今回の引用文を読むと、そういったやりかたが有益なことを感じさせてくれます。

P/Lは見るもの、そしてB/Sは読むもの、というのが私の持論である。

P/Lは一番上にある売上高から下に目をやっていくだけで、いくら経費を使って最終的にいくら儲かったか、単純な引き算である。したがって、見ればすぐわかる。

一方、B/Sをただ眺めていても、会社の実態は一向に見えてこない。しかし、会社の実態というのはB/Sにこそ示されているものであり、B/Sの体質が良くなったのかどうか、経営としてはそれが重要である。利益は出たがB/Sが良くないというのでは、優れた経営とはいえない。利益が出て、なおかつB/Sが良くなり、会社が効率のいい会社に生まれかわる、ここにこそ、経営の定石を守る意義があると、前頁で申し上げたとおりだ。(p.374)


B/Sというのは、会社創業以来の蓄積の結果をあらわしたものである。言ってみれば、創業以来10年も20年もかけて蓄積してきた会社の力量、会社が現在有している体力のすべてを示しているのがB/Sなのである。

そこには、事業の歴史と社長の折々の判断が、良いも悪いも含めて、すべて凝縮されたカタチであらわされている。例えば、B/Sの右側は、その会社が持っている自分のカネ、利益、それと信用の累計であり、結局はこれだけの資金を使って会社経営ができるという「資金の調達力」をあらわしている。いわば、何十年もかけて蓄積してきた、会社の現時点における体力をあらわしているといっていい。

このように、B/Sの右側は資金の調達力をあらわしたものだが、それだけではない。さらに、どういうところから資金を調達しているのか、自分のカネなのか銀行からの借金なのか、信用によって仕入先から買掛債務として調達しているカネなのかといった「資金の調達先」もあらわしている。

一方のB/Sの左側は、右側で調達した資金をどのように使っているか、「資金の使い道」「資金の使途」をあらわしている。つまり、調達した資金を売掛金や手形でもっているとか、機械設備や土地でもっているとか、あるいは投資勘定でもっているといったことをあらわしている。そして、必要以上に在庫が多いとか、売掛債権が多いとか、自己資本以上に固定資産を持っているとか、万一不渡りをくらったときに、手元にすぐ金になるものがいくらあるとか、創業からこれまで資金をどう調達して、どう使ってきたか、いわば会社の体質、体力、もっといえば社長の性格、経営のやり方そのものが、B/Sには示されているといっていい。

だから過去3期分なり5期分なりのB/Sを拝見すれば、「売上の割に儲からない体質」とか「万一のときにどの程度の抵抗力があるか」だとか、その会社の実態が読み取れるのだ。

こういうことはP/Lだけ見ていても、決してわからない。基本的にP/Lで出る利益というのは、つくられた数字、いわば帳簿上の数字であって、利益が上がったからカネが増えるわけではないからだ。はっきり言ってしまえば、実際のカネと利益というのは直接関係がないのだ。(p.348)