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2012年7月21日土曜日

誤判断の心理学(12)盗んだのはわたしです(チャーリー・マンガー)

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今回ご紹介するのは、自分を過信する傾向についてです。(日本語は拙訳)

誤判断の心理学
The Psychology of Human Misjudgment

(その12) 自尊心過剰の傾向
Twelve: Excessive Self-Regard Tendency

人が行き過ぎた自尊心を持つ様子はよくみられるものです。ほとんどの場合、自分を高く評価しすぎています。たとえばスウェーデンでは、車を運転する人の90%が自分の技量を平均以上だと自任しています。この手の見当違いは、自分に関係する人や物にもあてはまります。妻や夫のことをかいかぶったり、自分の子供となると客観的にみるよりも高く評価してしまいます。また、ちょっとしたものでも過大評価しがちです。いくらなら払うかと質問されると、まだ所有していないものよりも、すでに自分のものとなったほうに高い値段をつけるのです。このような自己の所有物を過大評価する現象に対して、心理学では「授かり効果」と命名しています。そうです、自分の下すあらゆる決断は、決断する前とくらべると突如としてより良いものへ変わるわけです。

We all commonly observe the excessive self-regard of man. He mostly misappraises himself on the high side, like the ninety percent of Swedish drivers that judge themselves to be above average. Such misappraisals also apply to a person's major “possessions.” One spouse usually overappraises the other spouse. And a man's children are likewise appraised higher by him than they are likely to be in a more objective view. Even man's minor possessions tend to be overappraised. Once owned, they suddenly become worth more to him than he would pay if they were offered for sale to him and he didn't already own them. There is a name in psychology for this overappraise-your-own-possessions phenomenon: the “endowment effect.” And all man's decisions are suddenly regarded by him as better than would have been the case just before he made them.


トルストイの書いた言い回しでよく知られたものに、過剰な自尊心が持つ力に光をあてたものがあります。「極悪非道の犯罪者は、自分はそれほど悪者ではないと考えている」。それゆえ、罪になるようなことはしていないとか、これまでの人生で受けた逆風や不利を考えれば情状を考慮してもらえる、と信じるに至るのです。

この「トルストイ効果」の後ろの部分は非常に重要です。というのは、お粗末な成果をもっと改善できるのに、筋の通らない言い訳ばかりしてやりすごそうとする人が大半だからです。そういうおろかな生き方をつづけて駄目になってしまわないように、個人に限らず、組織においても対策を講じることがとても重要です。まず個人としては、純然たる2つの事実に立ち向かうべきです。第一に、もっとよい成果をだせるのに手を打たないでいるのは悪しき性質であるということ。この症状は進みやすく、言い逃れをするほど更なる害をもたらします。もうひとつは、スポーツチームやGEのように成果が要求される場では、やるべきことをしないで弁解ばかりしていると、戦力外への道をまっしぐらということ。次に、組織として取り組む方策ですが、第一に、公正かつ実績を重視した上で成果を求める文化をはぐくむこと。加えて、士気を高めるやりかたで人を扱うこと。第二に、始末におえない者をクビにすること。もちろん、自分の子供のように縁を切れない場合には、できるかぎりの力をつくして子供が改心するよう努めねばならないでしょう。50年前に親からうけた教えをまだ覚えていると語ってくれた人がいます。これこそ、効きめのある子供への教育の好例ですね。子供だった頃のできごとを語ってくれたのは、USCの音楽学校の学部長をつとめたことのある人物です。彼は雇い主の在庫からチョコを拝借したところを父親にみつかってしまいました。あとで元に戻すつもりだったと弁解したところ、父親からこう言われたのです。「いいか、お前。そんなことをするぐらいなら、ほしいだけ全部盗ってしまって『盗んだのはわたしです』とふれまわったほうがいいぞ」

過剰な自尊心のせいでバカなことをしでかさないためにはどうしたらよいか。何か自分のものについて考えるときは、より客観的に判断するよう自分を律すること、これが一番です。自分自身だったり、家族や友人のことだったり、自分の財産だったり、過去にしたことや将来やることの重要性といったものを考えるときです。そう簡単にはできませんし、完璧にやれるものでもありません。しかし、心理学が指摘するようなありのままの心に任せるよりは、このやりかたのほうがうまくいきます。

There is a famous passage somewhere in Tolstoy that illuminates the power of Excessive Self-Regard Tendency. According to Tolstoy, the worst criminals don't appraise themselves as all that bad. They come to believe either (1) that they didn't commit their crimes or (2) that, considering the pressures and disadvantages of their lives, it is understandable and forgivable that they behaved as they did and became what they became.

The second half of the “Tolstoy effect”, where the man makes excuses for his fixable poor performance, instead of providing the fix, is enormously important. Because a majority of mankind will try to get along by making way too many unreasonable excuses for fixable poor performance, it is very important to have personal and institutional antidotes limiting the ravages of such folly. On the personal level a man should try to face the two simple facts: (1) fixable but unfixed bad performance is bad character and tends to create more of itself, causing more damage to the excuse giver with each tolerated instance, and (2) in demanding places, like athletic teams and General Electric, you are almost sure to be discarded in due course if you keep giving excuses instead of behaving as you should. The main institutional antidotes to this part of the “Tolstoy effect” are (1) a fair, meritocratic, demanding culture plus personnel handling methods that build up morale and (2) severance of the worst offenders. Of course, when you can't sever, as in the case of your own child, you must try to fix the child as best you can. I once heard of a child-teaching method so effective that the child remembered the learning experience over fifty years later. The child later became Dean of the USC School of Music and then related to me what his father said when he saw his child taking candy from the stock of his employer with the excuse that he intended to replace it later. The father said, “Son, it would be better for you to simply take all you want and call yourself a thief every time you do it.”

The best antidote to folly from an excess of self-regard is to force yourself to be more objective when you are thinking about yourself, your family and friends, your property, and the value of your past and future activity. This isn't easy to do well and won't work perfectly, but it will work much better than simply letting psychological nature take its normal course.

2012年7月20日金曜日

B/Sを読む(5310東洋炭素、2012/5月期)

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前回の投稿ではB/Sの重要性にふれました。今回は、最近気になったB/Sの具体的な例をとりあげて分析します。対象企業は東洋炭素株式会社(5310)です。

(1) 東洋炭素について
社名が示すとおり、当社では炭素を素材とする製品を製造しています。当社の製品は電気伝導性や熱伝導性、機械的特性がすぐれていることから、たとえば半導体製造装置やシリコン製造炉で使われる部材として産業用に使われています。製品の品質が物性に依存するため、製造工程やプロセス上のノウハウが重要で、当社の属する業界は国際競争力を失わずに比較的高い利益率を守っています。同業他社の東海カーボンなども同水準の利益をあげています。

当社は香川県を発祥とする独立系の企業で、2006年に株式公開されました。創業者一族が株式の半数近くを保有しており、取締役会会長は創業家の近藤純子氏がつとめています。

個人的には、当社のような利益率が高い材料系のメーカーは注視しています。当社を知ったのは昨年の末ごろで、あまりなじんでいないため、少しずつ情報を蓄えているところです。

(2) 経営成績
ここでは直近2期の数字を挙げました。

(単位:千円)前々期(2011年5月期)前期(2012年5月期)
売上高  37,557,80138,714,106
営業利益 5,868,2296,055,421
純利益 3,699,5713,466,829

減益決算となりましたが、収益性は変わっていません。売上高当期純利益率 は9.0%と、まずまずの水準を保っています。

(3) 決算短信を読む
前期の決算短信をひととおり読みすすめたところ、次の2点がひっかかりました。ひとつは会計方針の変更で、もうひとつは製品在庫の増加傾向です。

・会計方針の変更
次期の見通し(PDFファイル4ページ目)で、次のような記述がありました。

当社グループの有形固定資産の減価償却方法は、国内では主として定率法で行っておりましたが、次期より定額法へ変更します。この変更により減価償却費は約23億円減少する見込みです。

ご存知のとおり、定率法は直近の費用負担が大きく、次第に小さくなっていく方式です。そのため、定額法に変更することは、費用負担を将来へ繰り延べることになります。

今期の業績として営業利益55億円(前期比9.2%減)を見込んでいますので(PDFファイル1ページ目)、この変更がなければ今期の予想営業利益は30億円強になります。これは前期の60億円と比べると半減に近い数字です。

競合動向が変化したなどの合理的な理由があれば、この変更はすんなり納得できるものですが、手持ちの情報では判断しきれません。不明なものは厳しくみるとすれば、この件は将来の帳簿上の利益を先食いしたものと捉えられます。

・製品在庫の増加
連結貸借対照表(PDFファイル12ページ目)によれば、製品在庫の期末評価額は以下のようになっています。

(単位:千円)前々期(2011年5月期)前期(2012年5月期)
商品及び製品  4,761,6187,315,218

絶対額ベースで25億円、前年比では50%以上増加しており、よい傾向ではありません。大きな受注が控えているのであればこれも納得できますが、受注残は漸減傾向なので(PDFファイル27ページ目)、その可能性は低いと思われます。これは、需要予測が大きくはずれたか、あるいは決算数字をつくったものと想像してしまいます。製造業の会計では、当期に発生した固定費でも製品在庫として棚卸資産の勘定項目にある間は費用として認識されません。固定費が重くて困った年度にこのやりかたをとれば、つまり作りすぎをしておけば、費用を先送りすることができます。翌期の需要を平準化する目的で先行生産するのであれば理にかなった行動といえますが、それでは意図を判断する一材料として過去の経営状況をふりかえってみましょう。

以下の図は当社の棚卸資産の推移です。適正水準を判断するために、あわせて売上高の推移も載せています。これをみると、ここ数年間で棚卸資産が相対的に増加しているのがわかります。また製品在庫については、前期の伸びが大きいこともわかります。このことから、前期の製品在庫ひいては棚卸資産全体が適正水準から離れていると考えられます。つまり、数年前から資産の過剰な拡大基調が続いていたということです。







ただし、当社としても過剰在庫リスクは認識しており、有価証券報告書で喚起しています。前々期分(2011/5月期)の有価証券報告書では次のように記載されています(PDFファイル20ページ目)。

当企業グループでは、等方性黒鉛材料の需要予測を毎月行い、生産計画を作成することで、過剰在庫を持たないように努めておりますが、予想以上に等方性黒鉛材料の需要が落ち込んだ場合には、製品自体に系時変化はないものの一時的に過剰在庫となる可能性があります。

(4)B/Sを読む
最後になりましたが、貸借対照表を読んでみます。「読む」というからには以前のものと比較します。前期(2012年5月期)(PDFファイル12ページ目)と2009年5月期(PDFファイル46ページ目)をくらべてみてください。大きな違いに気づかれると思います。この数年間で資産をふくらませる方向で経営してきたのがみてとれます。流動資産と固定資産のどちらも増加しているのですが、2つの点が気になります。ひとつは、上に挙げたように棚卸資産の割合が大きくなっていること、そしてもうひとつは、現預金残高が縮小し、借入金が増えていることです。このツケを払う日がくるのかこないのか。前回前々回の投稿を読み返すと、当社にとって興味深い時期はまさしくこれからと感じます。

ここでさらなる観点を加えておきます。上でとりあげた2009年5月期の決算が終わってまもなく、同年8月に新社長が就任しています(人事異動のお知らせ)。近藤尚孝氏という方で、創業者である故近藤照久氏の娘婿であり、会長近藤純子氏からみると義弟にあたる人物です。その社長が、今年の5月末日付けで社長及び取締役を辞任しました(人事異動のお知らせ)。健康上の理由ということです。

2012年7月18日水曜日

P/Lは見るもの、B/Sは読むもの(スター精密社長佐藤肇)

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前回とりあげた売掛金のような話題となると、実情が生々しく伝わってくるのは実際の経営者の言葉です。そういうわけで、もうひとつ手にとってみた本が『社長が絶対に守るべき経営の定石』です。著者はスター精密社長の佐藤肇氏で、創業者だった父親から受け継いだ経営上の定石を実践咀嚼した上で、具体的な数字を使って簡明に説明しています。題名が示すように、経営で悩む社長向けに書かれた本ですが、投資家の参考になる話題もあちこちにみられます。

今回は、貸借対照表の重要性を説いた部分をご紹介します。個人的には、企業分析の際には損益計算書だけでなく、貸借対照表やキャッシュフロー計算書にも目を通してきました(過去記事)。今回の引用文を読むと、そういったやりかたが有益なことを感じさせてくれます。

P/Lは見るもの、そしてB/Sは読むもの、というのが私の持論である。

P/Lは一番上にある売上高から下に目をやっていくだけで、いくら経費を使って最終的にいくら儲かったか、単純な引き算である。したがって、見ればすぐわかる。

一方、B/Sをただ眺めていても、会社の実態は一向に見えてこない。しかし、会社の実態というのはB/Sにこそ示されているものであり、B/Sの体質が良くなったのかどうか、経営としてはそれが重要である。利益は出たがB/Sが良くないというのでは、優れた経営とはいえない。利益が出て、なおかつB/Sが良くなり、会社が効率のいい会社に生まれかわる、ここにこそ、経営の定石を守る意義があると、前頁で申し上げたとおりだ。(p.374)


B/Sというのは、会社創業以来の蓄積の結果をあらわしたものである。言ってみれば、創業以来10年も20年もかけて蓄積してきた会社の力量、会社が現在有している体力のすべてを示しているのがB/Sなのである。

そこには、事業の歴史と社長の折々の判断が、良いも悪いも含めて、すべて凝縮されたカタチであらわされている。例えば、B/Sの右側は、その会社が持っている自分のカネ、利益、それと信用の累計であり、結局はこれだけの資金を使って会社経営ができるという「資金の調達力」をあらわしている。いわば、何十年もかけて蓄積してきた、会社の現時点における体力をあらわしているといっていい。

このように、B/Sの右側は資金の調達力をあらわしたものだが、それだけではない。さらに、どういうところから資金を調達しているのか、自分のカネなのか銀行からの借金なのか、信用によって仕入先から買掛債務として調達しているカネなのかといった「資金の調達先」もあらわしている。

一方のB/Sの左側は、右側で調達した資金をどのように使っているか、「資金の使い道」「資金の使途」をあらわしている。つまり、調達した資金を売掛金や手形でもっているとか、機械設備や土地でもっているとか、あるいは投資勘定でもっているといったことをあらわしている。そして、必要以上に在庫が多いとか、売掛債権が多いとか、自己資本以上に固定資産を持っているとか、万一不渡りをくらったときに、手元にすぐ金になるものがいくらあるとか、創業からこれまで資金をどう調達して、どう使ってきたか、いわば会社の体質、体力、もっといえば社長の性格、経営のやり方そのものが、B/Sには示されているといっていい。

だから過去3期分なり5期分なりのB/Sを拝見すれば、「売上の割に儲からない体質」とか「万一のときにどの程度の抵抗力があるか」だとか、その会社の実態が読み取れるのだ。

こういうことはP/Lだけ見ていても、決してわからない。基本的にP/Lで出る利益というのは、つくられた数字、いわば帳簿上の数字であって、利益が上がったからカネが増えるわけではないからだ。はっきり言ってしまえば、実際のカネと利益というのは直接関係がないのだ。(p.348)

2012年7月17日火曜日

売掛債権とは本物のカネではない(大竹愼一)

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常々拝見しているブログ『賢明なる投資!バフェる!グレアムる!フィッシャる!』で売掛金の話題がとりあげられていましたので、今回は同じ話題になります。たまたま手に取った本からの引用になりますが、題名は『おカネの法則』。2003年の初版と、不況で苦しむ経営者向けの内容ですが、個人的にはオーソドックスなものと感じました。著者の大竹愼一氏はアメリカでファンドマネージャーをやっているとのこと、その筋では有名な方のようです。売掛金回収や顧客の検収を待つときのゴタゴタは、そういった職務上の責任を実際に負ったことのある方にとっては日常茶飯事のことと思いますが、たまには正論もいかがでしょうか。

まずは、著者からみた売掛金の位置づけです。

私が企業のバランスシートを見るときは、真っ先に、売掛債権と買掛債務の項目に注意して、その企業の問題点をそこからえぐり出そうとするのが常である。なぜなら、キャッシュフローを大きく変動させる要因の主なものが流動資産で、その中でも最大なものは、売掛債権と在庫の残高だからである。

私の考えでは、この売掛債権は最も重要な要素であるにもかかわらず、経営者が最も軽く見ているものである。言い換えれば、今回の不況に生き残るには、売掛債権を減らすことによって流動資産を圧縮し続けることが重要である。さもないと回転差(期間差)資金がなくなって、資金繰りが急速に悪化してしまうからだ。売掛債権とは本物のカネではない。そういう意味で、経営者は「現金」というものが経営にとって、とても意味の深いものだということを肝に銘じる必要がある。

そして、私が売掛金にこだわるのは、あくまでも売上の性格をつかまえたいからである。もちろん売上が立たないと、利益は出ない。しかし、売上が増えたとしても、利益が増えるとは限らないことに注目せねばならない。

無理に売上を増やそうとすると、大幅な値引き販売になったり、売上の回収期間が長くなったり、金利負担が増えたり、あるいは取引先が倒産して焦げ付いたりすることがある。これはお客の顔色を見ながら、二割引、三割引と売値を割り引いていく日本の伝統商法ではよくあることだ。とくに、この長い不況の中で、販売条件をさらに悪くしてでも、売上を取ろうとする企業が多い。

しかし、こういう商売をやっていると、次第に本当の利益がわからなくなってくる。

いわゆる、骨折り損のくたびれ儲けになって、忙しそうにみんな働いているが、働けば働くほど、知らぬうちに損が累積していく。こういう会社が資金繰りに苦しめば、たちどころに倒産してしまう。(p.109)


次は、売掛金の質を向上させる管理会計の一例です。

医薬品卸大手の東邦薬品・故松谷義範会長は、売掛債権のコントロールに長けた名経営者であった。これまでの医薬品卸業界は、得意先である医師へ売り込むために、極端な増量サービスや長期の手形決済などで対応するのが常であった。

業界ではプロパーと呼ばれる営業マンは、自社の薬品をなんとか買ってもらおうと、他社との増量競争や手形の延長競争に走り、利益なき繁忙を続けていたのである。

そこで、松谷会長は、売掛債権の回収期間の適正水準を設け、水準を超える債権については、独自の金利をかけ、予定粗利益額から金利分を差し引く仕組みをつくったのである。回収の遅い売上について名目上では多少の利益が出ていても、金利を引かれると赤字になる。

それによって、給料やボーナスにまで反映させる仕組みだから、たちどころに営業マンの意識を変えることに成功したのである。

不況が深刻になればなるほど、営業マンは目先の売上を取るために、法外な値引きや回収の長期化に走りがちになる。ここで経営者が、売上のもつ恐ろしい性格を知っていれば、利益の出ない売上や回収できそうもない売上をいかに減らすかに腐心するはずだ。(p.111)


ところで、引用元の本は定価が約10,000円と、いい値段がつけられています。図書館向きの本です。この手の本が高価なのは、たとえばセミナーの場で販売するからでしょうかね。

2012年7月14日土曜日

帰り道をまちがえる(チャーリー・マンガー)

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Poor Charlie's Almanack』に掲載されているチャーリー・マンガーの写真には、本を手にした姿がいくつかあります。なかでもわたしのお気に入りは、歩きながら本を読んでいる写真です。今回の引用は、そんなチャーリーの思索的日常生活を息子デイヴィッドが書き記したものです(David Borthwick; 再婚した妻の連れ子)(日本語は拙訳)。

毎晩のように、父はお気に入りの椅子に座って何かを読むのに没頭していました。このときの様子はおもしろおかしいとしか言いようがありませんでした。はしゃぎまわる小さな子供たち、騒々しいTVの音、夕食の準備ができたと呼ぶ母さんの声。そういうのが父の耳にはほとんど入っていなかったのです。

何かを読んでいないときでも、父は静かに深く考えこむことがよくありました。たとえば、モリーとウェンディー[娘たち]をむかえに行ってパサデナへ帰るいつもの道でも、母さんが正しい方向へ指示しないと、まちがってサン・バーナーディノにいく道へ進んでしまったものです。そのようなときに父が何を考えていたのか、わたしにはわかりません。ですが、アメフトの試合やゴルフでの打ち損じを思い起こしていたわけではありませんでした。父が成功した要因はいろいろあるでしょうが、自分が熟考しているところに割り込んでくるじゃまものを固く閉め出すことができたのも、それらと同じように重要なことだったと思います。父の関心をひくことには楽しみがある一方で、歯がゆいところもあったものでした。

You have a dead-on comedic take on Father night after night in his favorite chair poring over something, all but deaf to the roughhousing younger children, a blaring TV, and Mom trying to summon him to dinner.

Even when not reading, Father was often so deep in contemplation that a routine drive to take Molly and Wendy back to Pasadena could have turned into an excursion to San Bernardino without Mom calling out the correct freeway turnoffs. Whatever was on his mind, it wasn't the outcome of a football game or a botched golf shot. Father's ability to Chinese wall off the most intrusive distractions from whatever mental task he was engaged in - a practice alternately amusing and irritating if you were trying to get his attention - accounts as much as anything else for his success.


蛇足ですが、わたしも歩きながら読書派です。自転車読書もやりますが、ときどき見知らぬ人から叱られています。