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2012年6月16日土曜日

今般の津波は当社の想定を大きく超えるものだった

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テレビなし、新聞なしの生活をしているので、昨年起きた大震災に関する情報にはあまり触れてきませんでした。意識的にそうしていたところもあったのですが、そろそろ集中して知るべきと考え、『福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書』を読んでみました。完璧な本というわけではありませんが、自分の知らなかったことが多く記されており、参考になるところが多かったです。

チャーリー・マンガーが「他人の失敗から学べ」と説いているように、この本を通じて今回の失敗から何かを吸収できればと思います。今回は、同書から「想定外」について引用します。

 今回もまた、東京電力は、「今般の津波は当社の想定を大きく超えるもの」だったと主張している。しかし、三陸一体を襲った貞観津浪(西暦869年)の研究が進み、その意味合いが注目を集めるようになるにつれ、もはや津波の高さは「想定外」ではなくなっていたし、実際、東海第二原発では津波の想定される高さを上げ、海水ポンプの津波対策を強化していた。また、東京電力女川原発では建設当初より高い津波を想定し、敷地高に余裕を持たせていた。実は、東京電力の原子力技術・品質安全部は福島原発が「想定」した以上の高さの津波の来る可能性を示すシミュレーション結果を2006年に発表していたが、これは東電原子力部門上層部から「アカデミック」との理由で却下された。

津波の襲来は「想定外」ではなかった。多くの研究がそれを「想定」していたのに、東京電力は聞く耳を持たなかった。要するに東京電力の「想定が間違っていた」ということである。「想定外」を口にすることは、リスクマネジメントを放棄することにほかならない。ただ、規制当局も、津波リスクに対する新たな知見を織り込むよう事業者に勧めたものの、具体的措置は求めず、それを規制対象とはしなかった。(p.386)

「想定外」というよりは、実のところは非公式なリスク要因として挙げられたのかもしれません。ただし、その発生確率を過小評価して、対策をとらないことにしたのではないでしょうか。誰かがどこかで書いていたのを思い出します。どんなに賞金が高くても、ロシアン・ルーレットには挑戦しないと。発現すると致命傷に至るリスクは別格に扱え、ということですね。

ウォーレン・バフェットは「CEOはChief Risk Officerであれ」と言っています。今回の件で学べることは、その経営者や企業風土も経営資源のひとつと捉えた上で、企業全体のリスクを評価することが投資家に求められるということです。リスクの話題は今後も少しずつ触れていきたいと考えています。

2012年6月15日金曜日

TOPIX Core30ひとかじり(2)任天堂(岩田社長、円高の見解)

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任天堂の経営陣が、E3でアナリスト向けにプレゼンテーションを行った様子が公開されています。その中で、現在の円高をどのように捉えているか岩田社長が答えていますので、ご紹介します。引用元は、2012 E3 アナリスト Q&Aセッション質疑応答4ページ目です。

<A10 岩田社長>
(前半省略)
ただ一方で、かなり長いレンジで考えますと、国のファンダメンタルズ(経済指標)から考えて、今の為替レートが今のまま長く続くというようには私は見ておりません。また潮目が変わるときが必ず来ると思っており、そのときのことも考えながらいろいろな対策をしています。二度と元に戻れないような方法を選ぶのが正しいとは思っていません。

この質疑に限らず、アナリストが当社の今後の業績に不安を抱いているのが、全体を通して感じられます。個人的には、そこに機会があるとみて、当社の株式を若干買い始めています。平均購入単価は9,550円で、現在の価格は9,000円前後。8,700円まで下げたことがあるので、少し早かったようです。次の買い増しは、それよりもう少し下の予定です。ただし、当社はこれまでの自分の投資基準からはずれた企業なので、あまり入れ込まないように注意しています。

もうひとつおまけです。財務体質を生かす機会はあるのかという主旨の質問に対する、岩田社長の回答です。投資家好みの言葉がでてきています。引用元は1ページ目です。

<A3 岩田社長>
まず、任天堂の強固な財務体質をどう生かすべきかということに関してはさまざまな可能性を考えています。

(中略)

来年お会いするときまでに、「任天堂はお金の使い方が下手だ」と言われないように努力したいと思います。

2012年6月13日水曜日

ウォーレン・バフェットに勝つつもりですか(ボブ・ロドリゲス)

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何度かとりあげている「超慎重派ファンド・マネージャー」ボブ・ロドリゲスの最新インタビュー記事が、彼の率いる会社FPAのWebサイトで公開されていました(FPA's Bob Rodriguez: Investors, Wall Street Never Learn...)。主な話題は、アメリカの財政赤字について。マクロな話題はあまり気にしないほうがいいのですが、彼の言動はついつい追いかけています。とはいいつつ、彼の投資スタイルが顔をのぞく場面もありましたので、そのひとつをご紹介します。(日本語は拙訳)

2003年のことです。私が委員を務めていたある年金制度で、協議をしていたコンサルタントが大型の公的年金制度の期待収益率は8.5%だと発言するのを聞きました。

すかさず、私は言いました。「すみませんが、それは賛成できませんね。ここの普通のマネージャーが年率8.5%で運用するというのですか。どうも投資のことが何もわかっていない御仁がいるようですね。ウォーレン・バフェットがどうしているか、ご存知の方はいないのですか。彼の会社では退職金制度の期待収益率を6.5%に下げたのですよ。ここのマネージャーのみなさんが、現代最高の投資家よりも三分の一も上回る成績を上げ続けるというのですか。それはいささか自惚れが強いのではないでしょうか」。しかしながら、同じようなことが今日でもまだ続いているのです。

One of the pension plan boards I was on, back in '03, was talking to consultants and was told that the assumed rate of return on a large public pension plan was 8.5%.

I just said, "I'm sorry. I don't buy this. You're telling me that your average manager is going to earn 8.5%? Well, there's a little guy out there that doesn't know anything about investing. Have any of you ever heard of Warren Buffett? In his corporation's retirement plan, they just lowered the assumed rate of return down to 6.5%. So you're telling me that your stable of managers is basically going to earn approximately one-third higher on a sustained basis than the greatest investment manager in the history of time? Isn't that a little bit egotistical?" But that same sort of thing is still going on today.


参考までに日本での年金の状況ですが、厚生年金などを運用する年金積立管理運用では、運用利回りを「名目賃金上昇率プラス1.1%」としています。(平成22年度業務概況書 PDFファイルのp.29)

また企業年金の期待収益率(2010年度)の例は、トヨタ自動車が3.8%、東芝が3.6%、日本電産が2.3%、京セラが2.0-2.2%となっています。トヨタの数字が大きめなのは、北米拠点の従業員割合が大きいからでしょうか。

なお、上記でご紹介したインタビューの最後では日本のことも触れています。「こんなに悪い状況はみたことがない」、さすがは「超慎重派」です。

2012年6月12日火曜日

わたしも含み損だった頃(ウォーレン・バフェット)

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手持ちの株の評価額をみて元気が出ないときは、1970年代半ばにウォーレン・バフェットのバークシャー・ハサウェイが抱えていた含み損の金額でもみてください。今回は、ウォーレンによる1975年度「株主のみなさんへ」から引用します。(日本語は拙訳)

1974年末の時点での株式ポートフォリオは、1,700万ドル[現在価値で60億円]の含み損でした。ですが、そのときはこう申し上げました。全体としてみれば、このポートフォリオは払った代金以上の価値があります、と。1975年には税額控除前で288.8万ドル[10億円]の実現損がでましたが、1976年は実現益がでると現段階では予想しています。1976年3月末の時点で、株式の含み益は1,500万ドル[53億円]となっています。当社では数社に集中して株式投資を行っていますが、各企業の経済的特性は良好で、有能かつ正直な経営陣に率いられています。また購入価格の面では、相対で取引する場合と比べても魅力的な値段で買うことができました。

そういった条件が満たされた企業であれば、わたしどもとしては長きにわたって株式を保有したいと考えております。うちあけますと、当社の最大の投資先はワシントン・ポストです。クラスB株を467,150株、1,060万ドル[38億円]で購入しました。同社の株は永久に保有するつもりです。

このような方針なので、株価が変動するのはそれほど大したことではありません。もちろん、絶好の買い場となるのであれば別の話です。大切なのはビジネスの結果のほうです。そういう意味では、当社が投資している主な企業のほとんどは、満足できる結果を挙げています。

At the end of 1974 the net unrealized loss in the stock section of our portfolio amounted to about $17 million, but we expressed the opinion, nevertheless, that this portfolio overall represented good value at its carrying value of cost. During 1975 a net capital loss of $2,888,000 before tax credits was realized, but our present expectation is that 1976 will be a year of realized capital gain. On March 31, 1976 our net unrealized gains applicable to equities amounted to about $15 million. Our equity investments are heavily concentrated in a few companies which are selected based on favorable economic characteristics, competent and honest management, and a purchase price attractive when measured against the yardstick of value to a private owner.

When such criteria are maintained, our intention is to hold for a long time; indeed, our largest equity investment is 467,150 shares of Washington Post "B" stock with a cost of $10.6 million, which we expect to hold permanently.

With this approach, stock market fluctuations are of little importance to us - except as they may provide buying opportunities - but business performance is of major importance. On this score we have been delighted with progress made by practically all of the companies in which we now have significant investments.

2012年6月11日月曜日

客観的に判断できる人の割合は?(マイケル・モーブッシン)

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資産管理会社の大手レッグ・メイソンといえば、以前は絶頂を誇ったビル・ミラー氏が有名でした。しかしここ数年の失敗の後、彼のファンドの看板はマイケル・モーブッサン氏に変わってきています。彼のための専用のWebサイトも用意されています。

モーブッサンはチャーリー・マンガーやウォーレン・バフェットの教えを踏まえているようで、彼の文章を読むと共感できるものがあちこちにみられます。ただし彼の場合は、より定量的に迫ろうとしている点が特徴的ですが、個人的にはそちらにはあまり近寄らないようにしています。

今回はモーブッサンの著書の翻訳『まさか!?―自信がある人ほど陥る意思決定8つの罠』から、心理学的な落とし穴のひとつを引用します。日本語の題名はともかく、個人的にはこの本も楽しんで読めました。

仕事にかかる時間やコストを見積もるのは難しい。正しく見積もれない場合というのは通常、時間とコストを少なく見積もりすぎるのだ。心理学者は、これを計画錯誤と読んでいる。大多数の人は何かを計画する時に主観的な視点でしか見られないのだ。自分や他人の経験から基準となる客観的なデータを得て、そこからスケジュールを立てる、といったやり方ができる人はわずか4人に1人であるという研究結果が報告されている。(p.35)


なぜ人々は客観的な視点を持たないのかについて。

周りの人間と比べて自分は特別で優秀であるとほとんどの人が思い込んでいるからである。(p.36)


チャーリー・マンガーも、自身を過大評価する傾向は人の判断を誤らせると指摘しています。できないことをできると考えれば失敗するのは当たり前ですが、なぜ人は自分のことを過大評価するのかという疑問は、興味深いテーマだと感じています。

なお、モーブッサンがこの秋に出す本のタイトルは『THE SUCCESS EQUATION』(成功するための方程式)。この本も期待して待ちたいと思います。