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2012年4月28日土曜日

ポートフォリオの流動性について(セス・クラーマン)

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今回は、ヘッジ・ファンドのマネージャーであるセス・クラーマンの著書『Margin Of Safety』から、流動性の大切さを説いた一節をご紹介します。(日本語は拙訳)

ポートフォリオが長期投資の視点で組まれていれば、流動性が大きな問題になることは、ほとんどないでしょう。いざというときには即座に現金化する必要があるので、完璧なまでに流動性を高くしておかなければならない、といった投資家は稀だと思います。ですが、唐突に現金化しなければならないこともあります。その場合、現金化できないことで払う機会費用は大きいので、流動性がまったくないポートフォリオというのも問題です。じっとこらえた末に十分に報われるのであれば流動性の悪い大きなポジションをとりつづけることもありますが、ほとんどの場合はバランスのとれたポートフォリオにするべきです。

Most of the time liquidity is not of great importance in managing a long-term-oriented investment portfolio. Few investors require a completely liquid portfolio that could be turned rapidly into cash. However, unexpected liquidity needs do occur. Because the opportunity cost of illiquidity is high, no investment portfolio should be completely illiquid either. Most portfolios should maintain a balance, opting for greater illiquidity when the market compensates investors well for bearing it.


個人的には、流動性が高くない銘柄ばかりのポートフォリオを組んでいるので、市場全体が大きく下落しているときにうまく売れることは期待していません。そのため、下落時に買い続けられる程度の資金は残すようにしています。状況によりますが、半年から9ヶ月ぐらい下がり続けることを想定して、買うペースや待機させておく資金を調整しています。下がっているときでないと買えないという性格なので、途中で株価が反騰しはじめて、思ったほど買えなかったことはよくあります。

2012年4月27日金曜日

自動車、航空機、テレビ。何が共通しますか(ウォーレン・バフェット)

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今回はウォーレン・バフェットによる2009年度「株主のみなさんへ」からの引用で、「自分たちが避けること」についてです。(日本語は拙訳)

チャーリーとわたしは、製品がどんなに魅力的でも将来がどうなるのか評価できないビジネスは、避けるようにしています。過去をふりかえってみると、自動車(1910年)、航空機(1930年)、テレビ(1950年)といった業界には、誰の目からみてもすばらしい成長が待っていました。しかし、その種の業界には激しい競争がつきもので、ほとんどの会社は競争に敗れ、消え去っていきました。生き残った会社のほうも傷を負ったものです。

業界が今後大きく成長するのが明らかだからといって、競合との覇権争いが繰り広げられるビジネスでは、利益率や資本収益率がどうなるのか判断できるわけではありません。あくまでもバークシャーが目を向けるのは、数十年先の利益がまずまず予測できるようなビジネスです。そうであっても、過ちは絶えないものですが。

Charlie and I avoid businesses whose futures we can’t evaluate, no matter how exciting their products may be. In the past, it required no brilliance for people to foresee the fabulous growth that awaited such industries as autos (in 1910), aircraft (in 1930) and television sets (in 1950). But the future then also included competitive dynamics that would decimate almost all of the companies entering those industries. Even the survivors tended to come away bleeding.

Just because Charlie and I can clearly see dramatic growth ahead for an industry does not mean we can judge what its profit margins and returns on capital will be as a host of competitors battle for supremacy. At Berkshire we will stick with businesses whose profit picture for decades to come seems reasonably predictable. Even then, we will make plenty of mistakes.

2012年4月25日水曜日

自分のやりかたで解く(リチャード・ファインマン)

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最近読んだ本『ファインマンさんの流儀』は、彼の業績や評判を軸に展開される伝記です。物理のことはだいたい忘れてますし、量子物理学の話にはほとんどついていけませんでしたが、ファインマンの天才ぶりはよくわかりました。

今回は同書からの引用で、ファインマンのやりかたについてです。チャーリー・マンガーは様々なモデルを使いこなすことの利点を説いていますが、なかでも基礎的な学問を重視しています(過去記事)。自分のやり方にこだわるファインマンが、その好例をみせてくれます。

実際、リヒスがほんとうにその会社、<シンキング・マシンズ>社を始めたとき、ファインマンは1983年の夏じゅう、ボストンで(カール[息子]と共に)過ごさせてくれと申し出た。ただし、ヒリスの願いに沿って自分の科学専門知識に基づいて、全般的で曖昧な「助言」をすることについては、そんなことは「でたらめの山」だからできないと言って拒否し、なにか「具体的な仕事」をくれと要求した。結局彼は、並行計算が実際にちゃんと行えるようにするために個々のルーターに必要なコンピュータ・チップの数は何個かという問題に対する解を導き出した。彼が導き出したこの解がすばらしかったのは、伝統的なコンピュータ・サイエンスの技法を一切使わず、その代わりに、熱力学や統計力学を含む物理学のさまざまな考え方を使って定式化されたものだったからだ。そして、なお重要なことに、その会社のほかのコンピュータ技術者たちが出した推定値とは一致しなかったけれども、実際にはファインマンのほうが正しかったのであった。(p.340)

2012年4月24日火曜日

ブラジルが一緒に詰めて輸出しているもの

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前回記事に続いて『食の終焉』からの引用の最終回です。今回は農業や畜産業で成長著しいブラジルについてです。

農家がいまだに分厚い表土の恩恵を受けているアメリカ中西部や黒海地方とは違い、南米の森林地帯の多くは表土が薄く、有機物の少ない強酸性の土壌であるため、開墾され作付けが行われても、ほかの地域で行われてきたような集約的農業に十分に耐えられない。そのような土地では、有機物の消失が急速に進み、それによって収穫量が徐々に落ち込み、表土流出の危険性が高まると、農家はその土地を放棄して新しい土地に移るしかないが、そのためにまた新たな森林伐採が必要となる。言ってみれば、ブラジルは輸出する大豆の袋や冷凍鶏肉の箱の中に、安い労働力やすでに逼迫している水資源や土資源を一緒に詰めて輸出しているようなものなのだ。

育種の専門家で、中南米で調査を行ったジョージア大学のチャールズ・ブラマー(Charles Brummer)教授は言う。「ブラジルが次の100年も作付け面積を増やせると考えるのは馬鹿げている。彼らは沼地を干拓したり、森林の伐採をさらに進めたりすることはできるだろう。しかし、それはすでに彼らが、延命措置によって生きていることを意味している」(p.399)

ブラジルはこれからの経済成長が期待されている大国として明るい面ばかりみていましたが、それなりの影がかくれているのですね。

2012年4月22日日曜日

スナック菓子が食事を占める割合

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前回の記事に続いて『食の終焉』からの引用です。今回は食品メーカーのマーケティングやR&Dについてです。

まずはブランドについて。
ほとんどの加工食品において(ついでに言えば、ほとんどあらゆる消費者製品についてもこれはいえる)、消費者は首位のブランドをあたかもそれがより高い価値を持つ製品であるかのように扱い、その価値を手に入れるためであれば、消費者は喜んで割高の代金を支払ってくれる。具体的には、消費者は売上トップのブランドには2位のブランドよりも最大4パーセントまでの割高な代金を、3位のブランドよりも7パーセント余分な代金を支払う意思がある。その3つの製品が本質的に同一のものであったとしてもだ。(p.97)

次は嗜好に関する研究結果です。
ネスレ、クラフト、ハインツなどの会社は、味と嗜好の謎をデータ化することに成功した。それだけでなく、私たちが何を好んで食べるか、そしてそれをなぜ好むのか、その理由まで、私たち自身が認識している以上に、彼らは私たちのことをよく理解している。彼らは塩味やカリカリ感への嗜好性が性別、年齢、民族性、国民性によってどう変わるかも、正確に把握している。年長者は味蕾の衰えもあって濃い味を好み、アジア人は塩気のあるパリッとしたスナックに目がなく、アメリカ人は新しい味に夢中になりやすいが、マカロニやミートローフのような「郷愁を感じさせる味」にも弱く、これまで慣れ親しんだ味からそう簡単には離れられないことも、彼らはすべてお見通しなのだ。(p.102)

「慣れ親しんだ味からそう簡単には離れられない」理由を、ネスレ社のあるマネージャーは次のように説明しています。
「人間はこと食べ物のことになると、昔からとても保守的にできています。かつて狩猟採集民だった頃から、何か急な味の変化を感じ取ったとき、それを何かの警告として受け取る習性が身に付いているからです」
(p.84)

最後は、スナック菓子のマーケット調査結果です。
世界中の食品販売を分析しているイギリスのデータモニター(Datamonitor)社は、平均的なアメリカ人は3日に1回は朝食を抜いていて、さらに昼食と夕食を抜く回数も増え始めていると分析している。このような傾向は消費者の健康には恐ろしく悪いことだが、食品会社にとってみればまた新たなチャンスの訪れを意味している。消費者が日常の食事の回数を減らせば、それを補完するために、利益率の高い食物カテゴリーであるスナック菓子を多く食べるようになるからだ。データモニター社によると、現在アメリカでは、スナック菓子がすべての食事の約半分を占めるまでになっているという。(p.105)