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2012年5月9日水曜日

なすすべもなく見守る(セス・クラーマン)

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気に入った銘柄の「株価が下がったら買い増しする」というのは、ウォーレン・バフェットやチャーリー・マンガーもとっている方針です(過去記事)。ヘッジ・ファンドのマネージャー、セス・クラーマンも同様のことを著書『Margin of Safety』で取り上げていますので、ご紹介します。(日本語は拙訳)

売買の際にもっとも肝心な点は、価格の変動に対して適切に応じることです。価格が下落し続けるとパニックになりがちですが、こういうときにこわがらない術を身につけなければなりません。反対に、価格が上昇しているときには浮かれて欲をださないように自制すべきです。それでは売買について学ぶべきこと、まずは前半の買い方です。わたしの考えでは、ある証券に投じる予定の資金満額を使って一度に買ってしまうやりかたは、基本的にはとるべきではありません。そうしないと、買った後に価格下落が続き、予備の資金がないまま、なすすべもなく見守ることになるかもしれないからです。一部だけを買うようにすれば、株価が下がっても残りの資金を使って平均購入単価を下げられます。

The single most crucial factor in trading is developing the appropriate reaction to price fluctuations. Investors must learn to resist fear, the tendency to panic when prices are falling, and greed, the tendency to become overly enthusiastic when prices are rising. One half of trading involves learning how to buy. In my view, investors should usually refrain from purchasing a “full position” (the maximum dollar commitment they intend to make) in a given security all at once. Those who fail to heed this advice may be compelled to watch a subsequent price decline helplessly, with no buying power in reserve. Buying a partial position leaves reserves that permit investors to “average down,” lowering their average cost per share, if prices decline.

2012年4月28日土曜日

ポートフォリオの流動性について(セス・クラーマン)

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今回は、ヘッジ・ファンドのマネージャーであるセス・クラーマンの著書『Margin Of Safety』から、流動性の大切さを説いた一節をご紹介します。(日本語は拙訳)

ポートフォリオが長期投資の視点で組まれていれば、流動性が大きな問題になることは、ほとんどないでしょう。いざというときには即座に現金化する必要があるので、完璧なまでに流動性を高くしておかなければならない、といった投資家は稀だと思います。ですが、唐突に現金化しなければならないこともあります。その場合、現金化できないことで払う機会費用は大きいので、流動性がまったくないポートフォリオというのも問題です。じっとこらえた末に十分に報われるのであれば流動性の悪い大きなポジションをとりつづけることもありますが、ほとんどの場合はバランスのとれたポートフォリオにするべきです。

Most of the time liquidity is not of great importance in managing a long-term-oriented investment portfolio. Few investors require a completely liquid portfolio that could be turned rapidly into cash. However, unexpected liquidity needs do occur. Because the opportunity cost of illiquidity is high, no investment portfolio should be completely illiquid either. Most portfolios should maintain a balance, opting for greater illiquidity when the market compensates investors well for bearing it.


個人的には、流動性が高くない銘柄ばかりのポートフォリオを組んでいるので、市場全体が大きく下落しているときにうまく売れることは期待していません。そのため、下落時に買い続けられる程度の資金は残すようにしています。状況によりますが、半年から9ヶ月ぐらい下がり続けることを想定して、買うペースや待機させておく資金を調整しています。下がっているときでないと買えないという性格なので、途中で株価が反騰しはじめて、思ったほど買えなかったことはよくあります。

2012年4月18日水曜日

ぱっと考える、じっくり考える(セス・クラーマン)

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今回ご紹介するのは、ヘッジファンド・マネージャーのセス・クラーマンが投資家に向けて書いた2011年度の年次報告からで、おなじみの主題「判断の誤り」についてです。(日本語は拙訳)

心理学者のダニエル・カーネマンは経済学の分野で活躍しており、人の判断や意思決定における合理的モデルを開拓した業績に対して[俗に言う]ノーベル経済学賞を受賞しました。さらに研究を進めた彼が最近になって出版した作品も、注目に値するものです。題名は『ぱっと考える、じっくり考える』[邦訳は未刊行]。自分たちは常に合理的に行動していると考えている人が本書を読むと、がっかりさせられるかもしれません。ですが、カーネマンは人間を非合理な生き物だと決めつけているのではなく、人は常に合理的だと考えるのは現実には即していないと言っているだけです。カーネマンはこう考えています。「人の脳では2つのシステムが共存して働いている。システムその1は素早く考えるようにできており、日常的に入ってくる何百万もの情報に対して自動的に反応する。この反応はぱっとでてくるが、そこそこ信頼できるものだ。このシステムは友人と敵を見分けたり、無害な食べ物と有害なものを選り分けたりする。いつも使う道路を運転する際にも働いており、目的地に着いたときには何をどう運転してきたのか思い出せないぐらいだ。そう、システムその1は世の中で生きていくには欠かせないものなのだ。一方、システムその2のほうはじっくり考えるようにできている。システムその1は特に計算せずに2 + 2 = 4のような答えを出せるが、17 * 24のような問題にはシステムその2が必要になる。落ち着いて考えなければ解けないからだ」。

Daniel Kahneman, a psychologist who won the Nobel Prize in Economic Sciences for his work that challenged a rational model of judgment and decision-making, recently published a remarkable account of his intellectual journey: Thinking, Fast and Slow. The implications for those who believe that we are always rational actors are quite disheartening. Kahneman does not, by the way, brand people as irrational; he simply believes that the idea that we are always rational actors does not hold water. Kahneman thinks of the human brain as operating on two systems simultaneously. System One, the fast brain, is mostly on autopilot-responding to millions of inputs on a daily basis, forming quick and mostly reliable impressions. System One helps us discern friend from foe, or edible from poisonous. It controls our driving on a familiar highway, so that when we arrive at our destination, we hardly remember how we got there. We need System One to navigate the world. System Two is slow. System One knows that two plus two is, four without doing the math. System Two is needed to know what 17 times 24 equals', We have to slow down and think.


続いて、セス・クラーマンは、システムその1を使う場合の危険性に触れています。

システムその1を使って、簡単な問いではなく難解な問いに答えようとすると、失敗しやすくなります。物事を単純化しすぎることの危うさを示す例として、コリン・キャメラーという学者が最初に注目した「競合動向の軽視」という概念を紹介しましょう。これは、ある会社が自分たちの強みばかりに目がいってしまうと、実は競合他社も同じような力をつけていて、顧客をうばいとってきたり、いい商売の機会をみつけようと動くのを見逃しかねない、というものです。もうけ話が眠っているニッチをみつけるには、自分の能力を正しく見極めるだけではなく、競争相手の能力や意図のほうも考えることが不可欠なのです。これはビジネスでも投資でも同じことです。

When System One substitutes an easier question for a harder one, it is easy to make mistakes. Colin Camerer coined the concept of "competition neglect," which illustrates one of the dangers of oversimplification. When a business only focuses inward on its own strengths, it can miss the fact that its competitors may be equally strong and pursuing the same customers and business opportunities. Figuring out profitable niches to exploit-in business or in investing--depends not only on correct identification of your own capabilities, but also the capabilities and intentions of your competitors.


ダニエル・カーネマンは行動経済学の大家で、その手の本を読むたびにお目にかかる名前です。今回の引用で出てくる『Thinking, Fast and Slow』は遠からず翻訳されるでしょうから、楽しみに待つことにします。なお、題名の『ぱっと考える、じっくり考える』は私の勝手訳です。

2012年3月23日金曜日

投資における最も価値ある道具(セス・クラーマン)

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株価が上がってしまって割安な銘柄があまり見つからなくなったら、ヘッジファンド・マネージャーのセス・クラーマンの言葉はどうでしょうか。見た目もしゃべりも温厚な雰囲気の彼ですが、投資のほうは凄腕です。今回の引用は、パートナーに向けた2004年度のレター(の転載)からです。

全額を投資せずに現金を大量に待機させておくのはギャンブルだ、という人がいます。市場に参加する時期をみはからっているのだろう、と。ですが、投資するかしないかを決めること自体、投資上の重要な要因だったはずではないでしょうか。「投資とは、あたりだろうがはずれだろうが、とにかく何か買うことだ」なんて、一体どこで決まったのでしょう。「今は投資しない」と言えない人は、投資における最も価値ある道具を投げ出しているわけです。ウォーレン・バフェットの古くからのパートナーであるチャーリー・マンガーは、こう助言してくれています。「将来得られるキャッシュフローを現在価値に割り引いて、それが買値以上のものをさがすのです。そして初歩的ですが、自分が有利なときだけ動くこと。勝率を見定め、勝ち目があるときだけ勝負に出るように自分を律する、これが大切です」。

Some argue that holding significant cash is gambling, that being less than fully invested is akin to market timing. But isn’t a yes or no decision the crucial one in investing? Where does it say that investing means always buying something, even the best of a bad lot? An investor who can’t or won’t say no forgoes perhaps the most valuable tool available to investors. Charlie Munger, Warren Buffett’s long-time partner, has counseled investors, “Look for more value in terms of discounted future cash flow than you’re paying for. Move only when you have an advantage. It’s very basic. You have to understand the odds and have the discipline to bet only when the odds are in your favor.

2012年1月4日水曜日

バリュー投資とは(セス・クラーマン)

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カルト的な人気を集めているヘッジファンド・マネージャーに、セス・クラーマン(Seth Klarman)がいます。著書Margin Of Safetyはamazon.comで高値で取引されています。今回は同書から、年頭にあたっての自戒として引用します。(日本語は拙訳)

バリュー投資の信条は、次の3つの主要な考えから成り立っています。まず一つ目は、ボトムアップ戦略です。つまり、やるべきことは特定の割安な投資対象をみつけることです。二つ目は、投資成績は純損益をみること。[他と比べる]相対的な成績は追いかけません。最後の三つ目は、損失を避けるよう努めることです。うまくいく場合(儲け)だけを考えるのではなく、間違えている場合(損失)のことも同じように検討するべきです。

There are three central elements to a value-investment philosophy. First, value investing is a bottom-up strategy entailing the identification of specific undervalued investment opportunities. Second, value investing is absolute-performance-, not relative-performance oriented. Finally, value investing is a risk-averse approach; attention is paid as much to what can go wrong(risk) as to what can go right(return).