朝食会の場で物思いにふける話題としては、見事に資格がないのはわかっています。私の話した内容がことごとく正しいとすれば、我々が現在享受している繁栄は普通株に関連した「資産効果」によって、過去に起きたさまざまな急上昇期よりも強力な後押しを受けていたことになります。その中には不愉快なものも含まれていますよ。もしそうであれば、このところの好調期に大きく上昇したものは、将来の株価下落時のどこかで大きく下落するかもしれません。もしかしたら経済学者らはいずれ、株式市場の上下動が長く続くとみなされたときに、「株式市場が1ドル上がるごとに選択的支出を上昇させる圧力よりも、1ドル下がるごとに下落させる圧力のほうが大きい」と結論付けるようになるかもしれません。しかし、経済学者らが他の分野から最良の概念を借りることで力添えを得たいと望んだり、あるいは日本のことをもっとじっくり観察する意思があれば、以前からそのように確信していたと思いますね。
日本とくれば、経済学で言う「美徳効果」をずっと長期間にわたって存在させたいのも私の願いです。たとえば美徳を背景に成功した複式簿記がヴェニスに盛時をもたらしましたが、それとはある種反対の効果によって、公然となった腐敗した会計がやがては長期的な悪しき結末を生み出すからです。金融界での光景をみてソドムとゴモラを思い出すようになったら、現実問題としてどんなことになるのか心配しておいたほうがいいですよ。たとえその顛末に加わりたいと考えていてもです。
最後になります。今日私から示した結論が慈善財団に対して示唆するものは、以前に財団の財務担当役員諸氏へ話した結論も込みになりますが[過去記事]、投資上の技術を示唆するところをずっと超えているのは間違いないと思います。私が正しければ米国におけるほぼすべての財団は、より巨大なシステムと関わっている自分たちの資産運用業務を理解し損ねており、それゆえに賢明さを欠いています。そうだとすれば、良き状態とは言えません。大筋で当たっている掟として、次のようなものがあります。「ある組織が複雑なシステムに取り組むやりかたがそれなりにバカげているならば、その他もおしなべてバカげている」。ですから、財団への寄付に関して良しとされていることは、資産運用面での実情と同じように改善する必要があるかもしれません。ここでもさらに古き2つの掟が我々を導いてくれます。第一が「道義に従え」、第二が「聡明であれ」です。
道義のほうはサミュエル・ジョンソンによるものです。「責任ある公職者がたやすく取り除ける無知状態を放置したままでいることは、道義的義務を果たすという点で信用できない不正な行為だ」と彼は確信していました[過去記事]。聡明のほうの規則は、かつてのワーナー・スウェイジー社が工作機械を宣伝した広告を下敷きにしています。次のような文句です。「新しい工作機械をお望みなのに未だ購入されていないお客様は、すでに対価をお支払いになっていらっしゃいます」[過去記事]。ワーナー・スウェイジー社の規則は、思考する際の道具にも間違いなく当てはまりますよ。適切な思考道具を持っていない人は容易に取り除ける無知さゆえに、その人が助けたいと望む相手共々、以前から苦しみ続けているのですから。(おわり)
Well, this is enough uncredentialed musing for one breakfast meeting. If I am at all right, our present prosperity has had a stronger boost from common-stock-price-related "wealth effects", some of them disgusting, than has been the case in many former booms. If so, what was greater on the upside in the recent boom could also be greater on the downside at some time of future stock price decline. Incidentally, the economists may well conclude, eventually, that, when stock market advances and declines are regarded as long-lasting, there is more downside force on optional consumption per dollar of stock market decline than there is upside force per dollar of stock market rise. I suspect that economists would believe this already if they were more willing to take assistance from the best ideas outside their own discipline, or even to look harder at Japan.
Remembering Japan, I also want to raise the possibility that there are, in the very long term, "virtue effects" in economics - for instance that widespread corrupt accounting will eventually create bad long-term consequences as a sort of obverse effect from the virtue-based boost double-entry bookkeeping gave to the heyday of Venice. I suggest that when the financial scene starts reminding you of Sodom and Gomorrah, you should fear practical consequences even if you like to participate in what is going on.
Finally, I believe that implications for charitable foundations of my conclusions today, combined with conclusions in my former talk to foundation financial officers, go way beyond implications for investment techniques. If I am right, almost all U.S. foundations are unwise through failure to understand their own investment operations, related to the larger system. If so, this is not good. A rough rule in life is that an organization foolish in one way in dealing with a complex system is all too likely to be foolish in another. So the wisdom of foundation donations may need as much improvement as investment practices of foundations. And here we have two more old rules to guide us. One rule is ethical, and the other is prudential.
The ethical rule is from Samuel Johnson, who believed that maintenance of easily removable ignorance by a responsible officeholder was treacherous malfeasance in meeting moral obligation. The prudential rule is that underlying the old Warner & Swasey advertisement for machine tools: "The man who needs a new machine tool, and hasn't bought it, is already paying for it". The Warner & Swasey rule also applies, I believe, to thinking tools. If you don't have the right thinking tools, you, and the people you seek to help, are already suffering from your easily removable ignorance.
2016年3月30日水曜日
我らを導く2つの掟(チャーリー・マンガー)
チャーリー・マンガーが2000年にフィランソロピー円卓会議で行った講話の最終回(10回目)です。しびれる話題で締めくくりをするのは、あいかわらずです。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)
2016年3月28日月曜日
大幅な価格下落は何を意味するのか(ハワード・マークス)
ハワード・マークスのメモから、さらに引用します。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)
価格が大きく下落することは何を意味しているでしょうか。ファンダメンタルが悪化したと市場に参加する人たちが感じている、それを意味しています。ですが価格下落は反射的なものであって、予見的なものではありません。過去に起きたこと、投資家がそれに対してどう反応したのか、それらについては語ってくれます。一方、平均的な投資家が将来のことについてわかっていない、そのことについては何も語りません。ですから、「平均的な投資家はよくわかっていないし、平均的な意見に従っても平均以上の成績をあげるには役に立たない」、私はその二つを強く確信しています。
このメモをお読みになっている方は、平均的な投資家よりも良い成績をあげたいと望む方ばかりでしょう。2014年4月に書いたメモ「傑出せんとする(その2)」[過去記事]や、拙著『投資で一番大切な20の教え』で記した「二次的思考」の話題において、それを達成するには平均的投資家とは異なるやりかたで投資しなければならないと書き始めました。そのためには平均的投資家とは違った考えをする必要がありますし、さらにそのためには平均的投資家とは違った情報を使って検討したり、違う見方で情報をとらえることを意識しなければなりません。市場の挙動が示すシグナルに単純に従うわけにはいかないのです。
これは論理的に考えれば済むことです。つまり価格動向が平均的な見方を反映しているときは、その前提となった助言に従ったところで、平均以上の成績をあげる役には立ちません。(p.5)
What do big price declines mean? They mean market participants sense fundamental deterioration. But what price declines say is reflective, not predictive. They tell you about the events that have occurred, and how investors have reacted to them. They don't tell you anything that the average investor doesn't know about future events. And, again, I'm firmly convinced (a) the average investor doesn't know much, and (b) following average opinion won't help you attain above average results.
Most of my readers want to perform better than the average investor. As I've set out in "Dare to Be Great II" (April 2014) and in the discussion of "second level thinking" in my book The Most Important Thing, to accomplish that, you have to invest differently than the average investor. To do that, you have to think differently than the average investor. And to do that, you have to consider different inputs than the average investor, or consider inputs differently. You simply can't follow the signals their behavior provides.
It's a matter of logic: if price movements reflect average opinion, following their supposed advice can't help you perform above average.
2016年3月26日土曜日
市場の意見に耳を傾けるべきか(ハワード・マークス)
ハワード・マークスのメモから、ひきつづき引用します。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)
協調しあうものがあるとすれば、それは感情だと思います。それは群衆行動や集団ヒステリーの中に組み込まれているので、たとえば1万名もの人たちがパニックになれば、その感情は雪だるまのように膨らむでしょう。お互いに影響しあうことで感情が増幅されるため、市場全体としてみたパニックの水準は、個々人それぞれのものより大きくなるかもしれません。この件はのちほど改めてとりあげます。
ここで、投資において一番重要な目標を考えてみます。それは安く買うことです。なにかを買う際には、根底にある資産や利益の価値よりも(すなわちバリュー投資)、あるいは将来の可能性よりも(すなわちグロース投資)過小評価された値段で買いたいものです。どちらにおいても、市場がまちがって捉えている対象を探し求めます。「市場は常に正しい」と考えるのならば、つまり効率的市場仮説ですが、アクティブ投資家としては生きていけないでしょう。しかし現にそうして生きているのですから、市場が示す合意よりも自分たちのほうがよくわかっていると信じるべきだと思います。ですから当然ながら、「市場つまり総体としてみた自分以外の全投資家が、なんでも知っている、もしくは自分以上に知っている、あるいは常に正しい」と考えるべきではありません。これが第二の要点です。
第三の要点は論理的に導かれます。「自分よりもわかっていない人々から指示を受ける必要があるのだろうか」。以前に書いたメモ「ソファに腰かけて」の文中で、「客観的で理にかなったニュートラルで安定したポジション、投資家がそのようなポジションを維持できることは稀である」と述べました。みなさんはその意見に対して賛否のどちらでしょうか。市場とは、客観的かつ合理的なファンダメンタル分析家でしょうか。それとも投資家の感情を示す度合いでしょうか。今日の市場がとる行動は、成熟した大人が模倣すべきものだと思えるでしょうか。
私からすれば、はっきりしています。判断力の面では、市場は平均以上の能力を持っていません。しかし感情面で平均以上になることはよくみられます。だからこそ市場の判断に従うべきではないのです。事実、逆張り派の哲学は「概して言えば、群集のとる行動と反対にせよ。極端な時期にはなおさらである」という前提に基づいています。私の好むやりかたです。(p.2)
If anything, I think it's emotion that's synergistic. It builds into herd behavior or mass hysteria. When 10,000 people panic, the emotion seems to snowball. People influence each other, and their emotions compound, so that the overall level of panic in the market can be higher than the panic of any participant in isolation. That's something I'll return to later.
Now let's think about the first goal of investing: to buy low. We want to buy things whose price underestimates the value of the underlying assets or earnings (value investing) or the future potential (growth investing). In either case, we're looking for instances when the market is wrong. If we thought the market was always right - the efficient market hypothesis - we wouldn't spend our lives as active investors. Since we do, we'd better believe we know more than the consensus. So by definition we must not think the market - that is, the sum of all other investors - knows everything, or knows more than we do, or is always right. That's point number two.
And that leads logically to point number three: why take instruction from a group of people who know less than you do? In "On the Couch," I wrote that it all seems obvious: investors rarely maintain objective, rational, neutral and stable positions. Do you agree with that or not? Is the market a clinical and rational fundamental analyst, or a barometer of investor sentiment? Does the market's behavior these days look like something a mature adult should emulate?
It seems clear to me: the market does not have above average insight, but it often is above average in emotionality. Thus we shouldn't follow its dictates. In fact, contrarianism is built on the premise that we generally should do the opposite of what the crowd is doing, especially at the extremes, and I prefer it.
2016年3月24日木曜日
市場は何を理解しているのか(ハワード・マークス)
前回取りあげたハワード・マークスが書いたメモから、続きの文脈にあたる箇所を引用します。(日本語は拙訳)
それでは、市場は何を理解しているのでしょうか。この目的において大切なのは、「市場としての」洞察のようなものは実際には存在しないと理解することです。たしかに市場には多くの人が参加しています。しかし市場とは、その参加者の集合以上のものではありません。彼らが持つ知識の総計以上のことは「知って」いないのです。
この点は非常に大切です。「市場は、参加者の抱く洞察すべてを超えた特別な識見を有している」と考える方がおられましたら、私の考えとは根本的に相容れません。群集が協調して考えるわけではないのです。私が思うに、市場の有する投資上のIQが参加者の平均IQより高いことはありません。取引を行うだれもが、ある時点における資産価格を決める際に、売買数量に応じた票を投じるのです。
価格を決めるその時には、あらゆる異なったレベルの能力を持つ人たちが共に行動します。知識や経験、判断力、感情的傾向のすべての面において違っているわけです。しかし市場は、そういった何かに卓越した特定の人物に対して、他の人以上の影響力を与えることはしません。短い間では特にそうです。「市場価格とは、市場参加者の平均的な判断力を反映しただけのもの」というのが、この件に関する私の結論です。これが第一の要点です。(p.1)
So, what does the market know? First it's important to understand for this purpose that there really isn't such a thing as "the market." There's just a bunch of people who participate in a market. The market isn't more than the sum of the participants, and it doesn't "know" any more than their collective knowledge.
This is a very important point. If you believe the market has some special insight that exceeds the collective insight of its participants, then you and I have a fundamental disagreement. The thinking of the crowd isn't synergistic. In my view, the investment IQ of the market isn't any higher than the average IQ of the participants. And everyone who transacts gets a volume-weighted vote in setting an asset's price at a given point in time.
People of all different levels of ability act together to set the price. They vary all over the lot in terms of knowledge, experience, insight and emotionalism. The market doesn't give the ones who are superior in these regards any more influence than the others, especially in the short run. My bottom line on this subject is that the market price merely reflects the average insight of the market participants. That's point number one.
2016年3月22日火曜日
日々の市場とは(ハワード・マークス)
オークツリーの会長ハワード・マークスが書いたメモを1月にご紹介した直後に、彼が追加のメモを公開していました(1月19日付)。一部を引用してご紹介します。年明け早々から下落した市場を念頭に置いた文章です。(日本語は拙訳)
What Does the Market Know? [PDF] (Oaktree Capital Management)
What Does the Market Know? [PDF] (Oaktree Capital Management)
下落している最中には特にみられることですが、「市場には知性がある」と多くの投資家が考え、何が起こっているのか、またどうしたらよいのか教わりたがるようになります。これも最大の過ちのひとつです。ベン・グレアムが指摘したように、日々の市場とはファンダメンタルの分析家ではなく、投資家の心情を測る基準にすぎません。ですから、市場の動きをあまり真剣に受け止めるべきではないのです。ファンダメンタルズの面で実際に何が起きているか、市場参加者はそれについて限られた洞察しか有していません。売り買いの背後には知性があるのかもしれませんが、彼らが感情的になって揺れ動くことで、いずれも曖昧模糊となっています。ですから、このところ続いている世界的な下落を解釈して、市場がこれからやってくる厳しい時期を「感知している」と考えるのは誤っていると思います。
Especially during downdrafts, many investors impute intelligence to the market and look to it to tell them what's going on and what to do about it. This is one of the biggest mistakes you can make. As Ben Graham pointed out, the day-to-day market isn't a fundamental analyst; it's a barometer of investor sentiment. You just can't take it too seriously. Market participants have limited insight into what's really happening in terms of fundamentals, and any intelligence that could be behind their buys and sells is obscured by their emotional swings. It would be wrong to interpret the recent worldwide drop as meaning the market "knows" tough times lay ahead.
2016年3月20日日曜日
手元に残った骨董品(チャーリー・マンガー)
チャーリー・マンガーが2000年にフィランソロピー円卓会議で行った講話の9回目です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)
従業員向けストック・オプションによって生じる資産運用の世界へ「フェベズルメント(横領相当)」をほうりこんでみてください。流動的な富が次また次と成長し続ける7,500億ドルになる世界です。そうすれば、普通株から生じる「資産効果」がますます消費を盛んにすると思いますよ。従業員向けストック・オプションが生む「資産効果」には、今では標準的慣行が必須としている堕落した会計手続きによって促されることで、事実上「フェベズル」な効果もあるでしょう。
つづいて、S&P500指数が100ポイント上昇するたびに株式の時価総額が1兆ドル上がることを考えてみてください。そしてあらゆる「フェベズルメント」に関連したケインズ主義的な乗数効果をいくつか足してみてください。そこで発生するマクロ経済的な「資産効果」が従来考えられてきたよりもずっと大きくなるのは、絶対にまちがいないと思いますね。
株価によって生じる「資産効果」を合計すると、実際には非常に大きくなることもあります。愚かしい余剰資金が大量に流れ込み、全体としてみた普通株の株価を上げるという事実は、なんとも不幸な話ですよ。たしかに株価のあるものは債券のように値付けされます。つまり将来に現金をもたらしてくれるという使用価値を、おおよそ合理的に見積もった結果です。しかし同時に、レンブラントの絵画のように値付けされる株もあります。買うに至った理由はほとんどの場合、「株価がこのところ上昇したから」ですね。この状況が巨大な「資産効果」と組み合わさることで、初めは上昇して後に下落し、災難が多々生まれることが想像されます。それを検証するために「思考実験」をしてみましょう。英国の大規模な年金基金のひとつが、10年後に売却するつもりでさまざまな古美術品を購入したことがあります。実際に売却したところ、少しばかり利益がでました。それではここで、あらゆる年金基金が大量の古美術品を買い付けたとしましょう。資産のすべてが古美術品になりました。ところがその後、まるで望まない強烈なマクロ経済的状況が訪れたとしたら、「ひどくむずかしいものが手元に残った」とはならないでしょうか。もし年金基金のうちの半数しか古美術品に投資していなかったとしたら、そのやっかいごとは問題にならないでしょうか。それでは、株式時価総額の半分が熱狂ゆえに成り立ったものだとしたら、年金資産の半分が古美術品となった状況と似てはいないでしょうか。
前言では株式の時価総額が不合理に高くなり得る可能性を認めましたが、それは「効率的市場」理論のハード・フォーム版と相反するものです。みなさんの多くが、かつてその理論を福音として学んだと思いますが、しかし教えてくれた先生がまちがっていたのですね。彼らは、人間とは「合理的人間[=ホモ・エコノミクス]」モデルに従うという経済学上の考えに強烈に影響されていた一方、心理学や現実世界での実経験が示す「おろかな人間」モデルからはほとんど学んでいませんでした。たとえば、ある状況では聡明な人であってもレミングたちと同じように、ずいぶんとバカげた思考に陥ったり、ひどくバカげた行動をとるものです。人間とは「集団による愚行」を行う傾向があることを知っていれば、なぜそうなるのかがわかります。今日ここに代表の方が出席された財団の多くでも、資産運用を進める上で同じことが行われていると思います。「自分たちの投資の進めかたが他所と違わないように」、今日の機関投資家のみなさんはそればかりを恐れているようですが、これは悲しい事態だと思いますね。
Now, toss in with “febezzlement” in investment management about $750 billion in floating, ever- growing, ever-renewing wealth from employee stock options and you get lot more common-stock-related “wealth effect” driving consumption, with some of the “wealth effect” from employee stock options being, in substance, “febezzle” effect, facilitated by the corrupt accounting practice now required by standard practice.
Next, consider that each one-hundred-point advance in the S&P adds about $1 trillion in stock market value, and throw in some sort of Keynesian-type multiplier effect related to all “febezzlement”. The related macroeconomic “wealth effects”, I believe, become much larger than is conventionally supposed.
And aggregate “wealth effect” from stock prices can get very large indeed. It is an unfortunate fact that great and foolish excess can come into prices of common stocks in the aggregate. They are valued partly like bonds, based on roughly rational projections of use value in producing future cash. But they are also valued partly like Rembrandt paintings, purchased mostly because their prices have gone up, so far. This situation, combined with big “wealth effects,” at first up and later down, can conceivably produce much mischief. Let us try to investigate this by a “thought experiment”. One of the big British pension funds once bought a lot of ancient art, planning to sell it ten years later, which it did, at a modest profit. Suppose all pension funds purchased ancient art, and only ancient art, with all their assets. Wouldn’t we eventually have a terrible mess on our hands, with great and undesirable macroeconomic consequences? And wouldn’t the mess be bad if only half of all pension funds were invested in ancient art? And if half of all stock value became a consequence of mania, isn’t the situation much like the case wherein half of pension assets are ancient art?
My foregoing acceptance of the possibility that stock value in aggregate can become irrationally high is contrary to the hard-form “efficient market” theory that many of you once learned as gospel from your mistaken professors of yore. Your mistaken professors were too much influenced by “rational man” models of human behavior from economics and too little by “foolish man” models from psychology and real-world experience. “Crowd folly,” the tendency of humans, under some circumstances, to resemble lemmings, explains much foolish thinking of brilliant men and much foolish behavior --- like investment management practices of many foundations represented here today. It is sad that today each institutional investor apparently fears most of all that its investment practices will be different from practices of the rest of the crowd.
2016年3月18日金曜日
おすすめのベイズ統計学入門書
チャーリー・マンガーは機会やリスクを確率的にとらえるやりかたについて触れていましたが(過去記事例)、意思決定やリスク管理の切り口からみれば、それは一般的なやりかただと思います。個人的には、確率モデルを構築して投資対象を分析したいと意識してはいますが、なお勉強中の段階です。
そんなわけで最近読んだ確率に関する本も入門書です。題名は『完全独習 ベイズ統計学入門』です。ベイス統計学の話題は以前も取りあげ(過去記事例)、別の入門書も若干読んだのですが、本書はわかりやすさの点で秀逸でした。
第一に、本質的な概念を図で示している点です。著者の方も強調されているように、確率の大小や事象発生後の状態を表現するために面積図を採用しています(要するに、長方形の大きさを比較するだけです)。2次元の情報は数字や表よりも格段にわかりやすく、読み手が理解すべき説明がそのまま伝わってきます。面積図は小学生高学年(の一部)でも駆使できるツールですから、直観的なわかりやすさは折り紙付きだと思います。
第二に、発展的な内容へ説明を進めるやりかたが自然で、かつ飛躍が小さい点です。複雑な説明は削ぎ落しながらも、各々の本質的な説明が展開されているので、短時間で読了でき、基本的な内容を理解できます。
第三に、数式が限りなく少なく、本文の文字自体も少ない点です。それでいて読み手は重要な諸概念をそれなりに理解できるのですから、著者は本書のアーキテクチャーを検討する際に苦心なさったことと想像します。
ところで、おなじみの「モンティ・ホール」問題が本書でも取り上げられていました。その際に著者は「直観に反する」という表現を使っておられますが、投資家として個人的に追いかけているのが、まさしくその言葉です。確率(数学)と心理学(生物学)の両方を学び、その両者が交わった「直観に反する」機会を見定めたい。それが実利的な願望のひとつです。
そんなわけで最近読んだ確率に関する本も入門書です。題名は『完全独習 ベイズ統計学入門』です。ベイス統計学の話題は以前も取りあげ(過去記事例)、別の入門書も若干読んだのですが、本書はわかりやすさの点で秀逸でした。
第一に、本質的な概念を図で示している点です。著者の方も強調されているように、確率の大小や事象発生後の状態を表現するために面積図を採用しています(要するに、長方形の大きさを比較するだけです)。2次元の情報は数字や表よりも格段にわかりやすく、読み手が理解すべき説明がそのまま伝わってきます。面積図は小学生高学年(の一部)でも駆使できるツールですから、直観的なわかりやすさは折り紙付きだと思います。
第二に、発展的な内容へ説明を進めるやりかたが自然で、かつ飛躍が小さい点です。複雑な説明は削ぎ落しながらも、各々の本質的な説明が展開されているので、短時間で読了でき、基本的な内容を理解できます。
第三に、数式が限りなく少なく、本文の文字自体も少ない点です。それでいて読み手は重要な諸概念をそれなりに理解できるのですから、著者は本書のアーキテクチャーを検討する際に苦心なさったことと想像します。
ところで、おなじみの「モンティ・ホール」問題が本書でも取り上げられていました。その際に著者は「直観に反する」という表現を使っておられますが、投資家として個人的に追いかけているのが、まさしくその言葉です。確率(数学)と心理学(生物学)の両方を学び、その両者が交わった「直観に反する」機会を見定めたい。それが実利的な願望のひとつです。
2016年3月16日水曜日
2015年度バフェットからの手紙(8)ザ・デイ・アフター
2015年度「バフェットからの手紙」より引用します。前回のつづきにあたる文章です。(日本語は拙訳)
絶え間なく変化する世界において、もっとうまく闘っていくにはどうすればよいか、バークシャー[配下の各社]の経営者諸氏は毎日考えています。同じようにわたしやチャーリーが意欲的に取り組むのは、安定して流入する資金をどこへ向ければよいのか集中して考えることです。その点でわたしたちは、単一業界に属する企業とくらべて大きな強みを有しています。そういった企業の選択肢は、当社よりもずっと限定されているからです。先に列挙したものあるいはそれ以上の困難の類いを辛苦の末に片づけ、やがては収益力の増した姿を現す。バークシャーにはそれを果たすことのできる資金や人材や文化がある、とわたしは堅く信じています。
ただしバークシャーにとって、はっきりと現存する危機がひとつあります。それについては、わたしもチャーリーも無力です。またその脅威は、わたしたち市民が直面する重大な脅威でもあります。そうです、サイバーやバイオ、核、化学といった手段による攻撃が「(攻撃者からみて)成功した」場合です。バークシャーはこのリスクを他のあらゆる米国企業と共有しています。
ある1年間でみたときに、そういった大量破壊が生じる確率は非常に小さいと思われます。もう70年以上前になりますが、わたしが配達していたワシントン・ポスト紙に、「最初の原子爆弾を米国が投下」と報じる見出しが出ていました。その後、瀬戸際まで迫ったことが何度かありましたが、破滅の事態は回避されました。そのような結果に落ち着いたのも、われらが政府(そして幸運)のおかげでした。
それにもかかわらず、短期でみたときに小さな確率であっても、長期でみれば必然へと近づいていきます(ある年に発生する確率が1/30であっても、1世紀の間にそのことが最低1回以上生じる確率は96.6%になります)。そしてさらなる悪いニュースをお伝えしますと、この国に対して「なるべく大きな被害を与えたい」と考える人々や組織やおそらく国家さえもが、将来ずっと存在すると思います。わたしが生きてきた間に、それらを実行するための手段は級数的に増加しました。これが「イノベーション」の持つ暗い側面です。
米国企業やそこに投資する人たちが、このリスクを減じる術はありません。米国内で大規模な破壊につながる活動が起これば、あらゆる証券投資の価値が大打撃を受けるのは、ほぼ間違いないと言えます。
「その後(ザ・デイ・アフター)」一体どうなるのかは、だれにもわかりません。しかし1949年にアインシュタインが予想したことは、今でも当てはまると思います。「第3次世界大戦でどんな武器が使われるのか、それはわかりませんね。しかし第4次世界大戦ならわかります。棒切れと石ころですよ」[参考記事]。(PDFファイル24ページ目)
Every day Berkshire managers are thinking about how they can better compete in an always-changing world. Just as vigorously, Charlie and I focus on where a steady stream of funds should be deployed. In that respect, we possess a major advantage over one-industry companies, whose options are far more limited. I firmly believe that Berkshire has the money, talent and culture to plow through the sort of adversities I've itemized above - and many more - and to emerge with ever-greater earning power.
There is, however, one clear, present and enduring danger to Berkshire against which Charlie and I are powerless. That threat to Berkshire is also the major threat our citizenry faces: a "successful" (as defined by the aggressor) cyber, biological, nuclear or chemical attack on the United States. That is a risk Berkshire shares with all of American business.
The probability of such mass destruction in any given year is likely very small. It's been more than 70 years since I delivered a Washington Post newspaper headlining the fact that the United States had dropped the first atomic bomb. Subsequently, we've had a few close calls but avoided catastrophic destruction. We can thank our government - and luck! - for this result.
Nevertheless, what's a small probability in a short period approaches certainty in the longer run. (If there is only one chance in thirty of an event occurring in a given year, the likelihood of it occurring at least once in a century is 96.6%.) The added bad news is that there will forever be people and organizations and perhaps even nations that would like to inflict maximum damage on our country. Their means of doing so have increased exponentially during my lifetime. "Innovation" has its dark side.
There is no way for American corporations or their investors to shed this risk. If an event occurs in the U.S. that leads to mass devastation, the value of all equity investments will almost certainly be decimated.
No one knows what "the day after" will look like. I think, however, that Einstein's 1949 appraisal remains apt: "I know not with what weapons World War III will be fought, but World War IV will be fought with sticks and stones."
2016年3月14日月曜日
2015年度バフェットからの手紙(7)重大なリスクについて
2015年度「バフェットからの手紙」より引用します。今回は、バークシャーに関する経営上のリスクと基本戦略についてです。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)
すべての公開企業と同じように、当社も毎年10-K[米国版の有価証券報告書]の中で「リスク要因」を列挙するよう、証券取引委員会(SEC)から義務付けられています。しかし10-Kに書かれた「リスク」の節を読んだところで、事業を評価するのに役に立った例はひとつも記憶にありません。現実的なリスクが示されていないからではありません。本当に重要なリスクはよく知られているものです。そうではなく、10-Kに列挙されているリスクが次の点を評価する上でほとんど役に立たないからです。第一が、脅威とみなすできごとが実際に生じる確率。第二が、そうなったときに対処するのにかかる費用の幅。第三が、想定される損失が発生する時期です。「危機が表面化するのは今後50年以内」としただけの予測であっても、社会にとっては問題かもしれません。しかし今現在の投資家にとっては、財務的問題とはなりません。
バークシャーはわたしの知る限り、どの企業よりも様々な業界にわたって事業を展開しています。それぞれの事業では、発生しうる問題や機会をいくつも抱えています。それらを並べ立てるのは簡単ですが、評価するのは大変です。そういった可能性の起こる確率や時期や費用(あるいは便益)を算出してみると、わたしとチャーリーとCEO諸氏の間でその差がとても大きくなることがよくあります。
いくつか例をあげさせてください。まずは明白な脅威からですが、[バークシャーの子会社である]BNSF社や他の鉄道会社は、今後10年のうちに石炭の相当な輸送量を失うはずです。またいずれどこかの時点で、ただし長期にはならないと思いますが、ガイコ[バークシャーの損保子会社GEICO]の保険料収入が減少する可能性があります。無人運転の自動車がでてくるからです。さらにこの展開は当社の自動車販売会社にも同じように悪影響を及ぼすでしょう。それから、各新聞社の紙面購読者数も減少し続けると思います。ただしそれらの企業を買収する際に、そのことははっきりと承知していました。再生可能エネルギーは今日に至るまで当社の公益事業を助けてきましたが、それが変わる可能性があります。特に、電力貯蔵能力が大幅に向上する場合です。インターネット上での小売は当社の小売事業がとっている商売の仕方を脅かしていますし、消費者向けブランドにおいても当然です。ここにあげたものは、当社が直面している悲観的な可能性のごくわずかに過ぎません。しかしビジネスに関するニュースを斜め読みで済ます人たちでも、ずっと以前から知っていたことです。
ですがそういった問題のいずれも、バークシャーの長期的な健全性に対して致命的にはなりません。1965年にわたしたちが当社の経営権を獲得したときには、会社のリスクは次の一言で言い表せたと思います。「当社の全資本が住まう処である北部における織物事業は、今後も損失を計上し続ける運命にあり、やがては消滅すると思われる」。しかしその後どうなったかと言うと、弔いの鐘は鳴りませんでした。ただ単に、状況に合わせて適応したのです。わたしたちはこれからも同じようにやっていくつもりです。(PDFファイル23ページ目)
We, like all public companies, are required by the SEC to annually catalog "risk factors" in our 10-K. I can't remember, however, an instance when reading a 10-K's "risk" section has helped me in evaluating a business. That's not because the identified risks aren't real. The truly important risks, however, are usually well known. Beyond that, a 10-K's catalog of risks is seldom of aid in assessing: (1) the probability of the threatening event actually occurring; (2) the range of costs if it does occur; and (3) the timing of the possible loss. A threat that will only surface 50 years from now may be a problem for society, but it is not a financial problem for today's investor.
Berkshire operates in more industries than any company I know of. Each of our pursuits has its own array of possible problems and opportunities. Those are easy to list but hard to evaluate: Charlie, I and our various CEOs often differ in a very major way in our calculation of the likelihood, the timing and the cost (or benefit) that may result from these possibilities.
Let me mention just a few examples. To begin with an obvious threat, BNSF, along with other railroads, is certain to lose significant coal volume over the next decade. At some point in the future - though not, in my view, for a long time - GEICO's premium volume may shrink because of driverless cars. This development could hurt our auto dealerships as well. Circulation of our print newspapers will continue to fall, a certainty we allowed for when purchasing them. To date, renewables have helped our utility operation but that could change, particularly if storage capabilities for electricity materially improve. Online retailing threatens the business model of our retailers and certain of our consumer brands. These potentialities are just a few of the negative possibilities facing us - but even the most casual follower of business news has long been aware of them.
None of these problems, however, is crucial to Berkshire's long-term well-being. When we took over the company in 1965, its risks could have been encapsulated in a single sentence: "The northern textile business in which all of our capital resides is destined for recurring losses and will eventually disappear." That development, however, was no death knell. We simply adapted. And we will continue to do so.
2016年3月12日土曜日
2015年度バフェットからの手紙(6)イノベーションによる代償
2015年度「バフェットからの手紙」より、前回につづいて生産性向上に関する引用です。(日本語は拙訳)
労働者として長く雇用されてきた人たちが直面するのは、それとはちがった複雑な状況です。効率を求めてイノベーションと市場システムが互いにやりとりするようになると、多くの労働者は不要とされ、その技能は時代遅れになることがあります。人によっては、そこそこの仕事を他所でみつけられるかもしれません。しかしそうでない人たちには、取るべき道が残っていません。
低コスト競争によって製靴業のアジアへの移転が促進されたことで、ひとときは大成功していたデクスター・シューズ社[=バークシャーが買収した一社]は店じまいすることとなり、メイン州の小さな町で働いていた従業員1,600名をクビにしました。彼らは、他の技能を身に付けることのできる年齢を通り過ぎてしまった人ばかりでした。わたしたちが投じた資本はすべて失われましたが、それは許容できました。しかし労働者のみなさんの多くは、取り換えのきかない生計を失うことになりました。当社が元来営んでいたニュー・イングランドでの織物事業でも、それと同じ筋書きがゆっくりゆっくりと広がりました。終わりになるまでの20年間にわたって奮闘したのです。胸の痛む一例をあげますと、ニュー・ベッドフォードの工場で働いていた年かさの労働者の多くは、ポルトガル語を話す人たちでした。仮に英語ができたとしても、話せるうちには入りませんでした。ですから彼らには、代わりとなる次善の策がありませんでした。
しかしそのような破壊が生じるからといって、生産性を向上させる動きを阻止したり禁止することが解答にはなりません。かつて1,100万人ものアメリカ人が終生にわたって農場で働くよう強いられていたら、わたしたちが今日送っているような生活は得られなかったことでしょう。
そうするかわりの解決策があります。それは、働く意思を持っているものの、市場の力学ゆえに自身の技能に対して小さな評価しか受けられない人々へ、ほどほどの生活ができるような多様な救済策を講じるやりかたです(わたし個人としては、給付付き勤労所得税額控除制度(EITC)を改正・拡大するのが良いと考えています[過去記事]。働く意思のある人にとって米国はふさわしい国である、それを体現しようとする一例になるからです)。大多数のアメリカ人がますます豊かな生活を送れるからといって、その代償に不幸な人たちが貧しさにあえぐべきではないと思います。(PDFファイル23ページ目)
A long-employed worker faces a different equation. When innovation and the market system interact to produce efficiencies, many workers may be rendered unnecessary, their talents obsolete. Some can find decent employment elsewhere; for others, that is not an option.
When low-cost competition drove shoe production to Asia, our once-prosperous Dexter operation folded, putting 1,600 employees in a small Maine town out of work. Many were past the point in life at which they could learn another trade. We lost our entire investment, which we could afford, but many workers lost a livelihood they could not replace. The same scenario unfolded in slow-motion at our original New England textile operation, which struggled for 20 years before expiring. Many older workers at our New Bedford plant, as a poignant example, spoke Portuguese and knew little, if any, English. They had no Plan B.
The answer in such disruptions is not the restraining or outlawing of actions that increase productivity. Americans would not be living nearly as well as we do if we had mandated that 11 million people should forever be employed in farming.
The solution, rather, is a variety of safety nets aimed at providing a decent life for those who are willing to work but find their specific talents judged of small value because of market forces. (I personally favor a reformed and expanded Earned Income Tax Credit that would try to make sure America works for those willing to work.) The price of achieving ever-increasing prosperity for the great majority of Americans should not be penury for the unfortunate.
2016年3月10日木曜日
2015年度バフェットからの手紙(5)資本家に同情する必要はない
2015年度「バフェットからの手紙」より、今回も生産性向上に関する引用です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)
先に記した生産性の向上は、米国において数えきれないほど達成され、社会に対してすばらしい利益をもたらしてくれました。そのおかげでわたしたち一般市民は、全体としてみれば財やサービスの大幅な増加を享受できたわけですし、それは今後もつづくと思います。
しかし、それを減じる要素もあります。第一に、近年なされた生産性向上の多くが富裕層の利益となった点です。第二に、生成性の向上によってしばしば大変動が生じる点です。イノベーションや新たな効率化によって業界がひっくり返ると、資本側と労働側のどちらもが痛い目に遭うことになります。
(非公開企業の個人オーナーであろうと一般投資家の集団であろうと)、資本家のことを憐れむ必要はありません。自分の面倒は自分でみる責任があるからです。優れた判断をすることで投資家が大きな報酬を得られるのであれば、彼らが誤った選択をしたときに生じる損失を救うべきではありません。その上、投資先銘柄に広く分散してじっと握りしめたまま待ちつづければ、儲かるのは確実なのですから。米国では成功した投資から得られる利益は、ドジを踏んだほうの損失を必ずや埋め合わせる以上になります。(その種のインデックスファンドたるダウ工業平均は、20世紀の間に66から11,497ポイントに上昇しました。さらに同指数を構成する各企業は、増加をつづける配当をその間ずっと支払ってくれたのです) (PDFファイル22ページ目)
[この引用部は次回に続きます]
The productivity gains that I've just spelled out - and countless others that have been achieved in America - have delivered awesome benefits to society. That's the reason our citizens, as a whole, have enjoyed - and will continue to enjoy - major gains in the goods and services they receive.
To this thought there are offsets. First, the productivity gains achieved in recent years have largely benefitted the wealthy. Second, productivity gains frequently cause upheaval: Both capital and labor can pay a terrible price when innovation or new efficiencies upend their worlds.
We need shed no tears for the capitalists (whether they be private owners or an army of public shareholders). It's their job to take care of themselves. When large rewards can flow to investors from good decisions, these parties should not be spared the losses produced by wrong choices. Moreover, investors who diversify widely and simply sit tight with their holdings are certain to prosper: In America, gains from winning investments have always far more than offset the losses from clunkers. (During the 20th Century, the Dow Jones Industrial Average - an index fund of sorts - soared from 66 to 11,497, with its component companies all the while paying ever-increasing dividends.)
2016年3月8日火曜日
2015年度バフェットからの手紙(4)株主総会をウェブで中継する理由
2015年度「バフェットからの手紙」より引用します。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)
ここに至って、わたしとチャーリーは21世紀に足を踏み入れることを決心しました。今年の株主総会は、全編通して全世界向けにウェブ中継します。総会を視聴するには4月30日土曜日の午前9時(中部夏時間)に、次のURLにアクセスしてください(Berkshire Hathaway 2016 Annual Shareholders Meeting Livestream)。Yahoo!によって流される中継は、30分間にわたる各社経営陣や取締役陣や株主諸氏へのインタビューから始まります。そのあと9時30分から、わたしとチャーリーが質疑応答を開催します。
新たに始めるこのやりかたには2つの目的があります。第一のねらいは、総会への参加者数を落ち着かせるか、それなりに減少させることです。昨年は4万名超に達し、わたしたちの開催能力は大わらわの状態でした。開催場所であるセンチュリーリンク・センターのメイン・アリーナは即座に満員となり、予備の各部屋も一杯で、さらなる追加のオマハ・ヒルトンの大会議室2部屋も人であふれました。エアビーアンドビーがますます台頭していますが、それでもあらゆる主要ホテルの部屋が完売になりました。なおエアビーアンドビーがあったことは、予算の限られた参加者には特に助かりました。
ウェブ中継を始める第二の理由のほうが、実はもっと大切です。わたしは85歳になりましたし、チャーリーのほうは92歳です。もしみなさんとわたしたちがパートナーになって小さな事業を営んでおり、その会社を経営する責任をわたしたちのほうが負っているとしたら、わたしたちが能天気な世界にどっぷり浸かっていないか、みなさんは折に触れて確認したいだろうと思います。それとは対照的に、わたしたちがどんな様子でどんな調子かを監視するために株主がオマハへやって来なければならないのは、違うと思います。(それはそうと、絶頂期当時のわたしたちがそれほどのやり手に見えなかったことはご勘弁いただいた上で、今のわたしたちを値踏みしてください)
ウェブ中継を視聴される方は、わたしたちが長寿を心がけた食生活を送っている様子もご覧いただけます。総会の最中にわたしとチャーリーは、コーラやシーズ・キャンディーのファッジやピーナッツ・ブリトルをけっこう消費します。NFLのラインマン[=アメフトのポジション]が1週間に必要なカロリーを賄うためです。ずっと以前のことですが、わたしたちは根源的な真理を見出しました。「心底空腹で、しかもそのままでいたいときこそ、人参やブロッコリーを食べるのにうってつけのときだ」と。(PDFファイル25ページ目)
Charlie and I have finally decided to enter the 21st Century. Our annual meeting this year will be webcast worldwide in its entirety. To view the meeting, simply go to https://finance.yahoo.com/brklivestream at 9 a.m. Central Daylight Time on Saturday, April 30th. The Yahoo! webcast will begin with a half hour of interviews with managers, directors and shareholders. Then, at 9:30, Charlie and I will commence answering questions.
This new arrangement will serve two purposes. First, it may level off or modestly decrease attendance at the meeting. Last year's record of more than 40,000 attendees strained our capacity. In addition to quickly filling the CenturyLink Center's main arena, we packed its overflow rooms and then spilled into two large meeting rooms at the adjoining Omaha Hilton. All major hotels were sold out notwithstanding Airbnb's stepped-up presence. Airbnb was especially helpful for those visitors on limited budgets.
Our second reason for initiating a webcast is more important. Charlie is 92, and I am 85. If we were partners with you in a small business, and were charged with running the place, you would want to look in occasionally to make sure we hadn't drifted off into la-la land. Shareholders, in contrast, should not need to come to Omaha to monitor how we look and sound. (In making your evaluation, be kind: Allow for the fact that we didn't look that impressive when we were at our best.)
Viewers can also observe our life-prolonging diet. During the meeting, Charlie and I will each consume enough Coke, See's fudge and See's peanut brittle to satisfy the weekly caloric needs of an NFL lineman. Long ago we discovered a fundamental truth: There's nothing like eating carrots and broccoli when you're really hungry - and want to stay that way.
2016年3月6日日曜日
2015年度バフェットからの手紙(3)後継者に残す青写真
2015年度「バフェットからの手紙」より、さらに引用します。後継の経営者に望まれる重要な経営手段が、具体的に列挙された部分です。単純かつ明快ですが、だからこそバークシャーの強みが生きてくるのだと思います。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)
その好ましい追い風があることを考えれば、バークシャーが(そして当然ながらすごく多数の他社も)今後も発展していくのは、ほぼまちがいないと思います。わたしやチャーリーの後任となる経営陣は、わたしたちの描いた次のような単純な青写真に従って、バークシャーの1株当たり本源的価値をより高く築いていくでしょう。第一に、多くの子会社が基礎的な収益力を継続的に向上させること。第二に、拡張型の買収を実現して収益をさらに増加させること。第三に、[証券の]投資先企業が成長することで貢献してくれること。第四に、バークシャーの株価が本源的価値からかなり割安となる状況が訪れたときに自社株買いをすること。最後の5番目が、折に触れて大型の買収をすることです。さらには稀ながらも、株主のみなさんにとって最も利益になると考えた結果、バークシャーの株式を追加発行する術もあります。(PDFファイル7ページ目)
Considering this favorable tailwind, Berkshire (and, to be sure, a great many other businesses) will almost certainly prosper. The managers who succeed Charlie and me will build Berkshire's per-share intrinsic value by following our simple blueprint of: (1) constantly improving the basic earning power of our many subsidiaries; (2) further increasing their earnings through bolt-on acquisitions; (3) benefiting from the growth of our investees; (4) repurchasing Berkshire shares when they are available at a meaningful discount from intrinsic value; and (5) making an occasional large acquisition. Management will also try to maximize results for you by rarely, if ever, issuing Berkshire shares.
2016年3月4日金曜日
2015年度バフェットからの手紙(2)一生みじめでいたければ
2015年度「バフェットからの手紙」より、ひきつづき引用します。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)
[3Gキャピタルの]ジョージ・パウロと彼の僚友ほどのパートナーは望めません。基本的なニーズや要求を満たすものを提供する大規模な事業を買収したり、築き上げたり、保有したいという想いは、わたしたちも彼らと同じです。ですがそれらの目標を追求する上で、彼らとは異なる道をわたしたちは歩んでいます。
彼らがとてつもない成功をおさめてきた方法とは、さまざまな不要なコストが削減可能な企業を買収し、すばやく行動することでその仕事を達成するやりかたです。米国経済が過去240年間にわたって成長をつづける際に、生産性は非常に重要な要因でした。要求される製品やサービスを同じ労働時間内でより多く産出できないと、つまり生産性増加の指標が向上しなければ、経済は必然的に停滞します。彼らは行動を起こすことで、その生産性を大幅に向上させるわけです。多くの米国企業において、生産性をまさしく大幅に向上させることは可能です。ジョージ・パウロや彼の仲間が機会を手にできるのは、それが事実だからです。
わたしたちも同じようにバークシャーでさらなる効率を求めつづけていますし、官僚主義を忌み嫌っています。しかしながら目標を達成するやりかたは、拡大忌避を謳う方法をとっています。つまり、昔から低コスト志向かつ効率的な経営者によって率いられてきたPCC[プレシジョン・キャストパーツ社]のような企業を買うやりかたです。同社を買収した後にわたしたちがやることと言えば、同社のCEOやその後継者諸氏が、彼らは概してわたしたちと気の合う人たちですが、最大限に効率的な経営をできるような、さらには仕事を通じて最高の喜びを得られるような、そのための環境を作り出すだけです。(このような非干渉的なやりかたをするのは、ある有名なマンガー式の考えを心に留めているからです。その考えとはこうです。「死ぬまでとことん惨めでいたければ、やがて振舞いを変えるつもりの相手と結婚すればまちがいない」) (PDFファイル5ページ目)
Jorge Paulo and his associates could not be better partners. We share with them a passion to buy, build and hold large businesses that satisfy basic needs and desires. We follow different paths, however, in pursuing this goal.
Their method, at which they have been extraordinarily successful, is to buy companies that offer an opportunity for eliminating many unnecessary costs and then - very promptly - to make the moves that will get the job done. Their actions significantly boost productivity, the all-important factor in America's economic growth over the past 240 years. Without more output of desired goods and services per working hour - that's the measure of productivity gains - an economy inevitably stagnates. At much of corporate America, truly major gains in productivity are possible, a fact offering opportunities to Jorge Paulo and his associates.
At Berkshire, we, too, crave efficiency and detest bureaucracy. To achieve our goals, however, we follow an approach emphasizing avoidance of bloat, buying businesses such as PCC that have long been run by cost-conscious and efficient managers. After the purchase, our role is simply to create an environment in which these CEOs - and their eventual successors, who typically are like-minded - can maximize both their managerial effectiveness and the pleasure they derive from their jobs. (With this hands-off style, I am heeding a well-known Mungerism: "If you want to guarantee yourself a lifetime of misery, be sure to marry someone with the intent of changing their behavior.")
2016年3月2日水曜日
2015年度バフェットからの手紙(1)「米国」が抱える金のガチョウ
バークシャー・ハサウェイのウォーレン・バフェットが、2/27(土)付けで2015年度のいわゆる「バフェットからの手紙」を公開しました。一部を引用して和訳付きでご紹介します。今回引用する箇所が、一般向け内容の中心部になると思います。(日本語は拙訳)
SHAREHOLDER LETTER 2015 [PDF] (Berkshire Hathaway)
SHAREHOLDER LETTER 2015 [PDF] (Berkshire Hathaway)
今年の選挙に向けて、各候補者はこの国の問題ばかりを話題にしています(もちろんながら、それを解決できるのは彼らだけだそうですが)。この否定的な話題が何度も繰り返されることで、今ではアメリカ人の多くが、子供たちは自分たちのような生活ができなくなってしまうと信じこんでいます。
これは完全にまちがった見方です。今日米国に生まれてくる赤ちゃんは、有史以来最高に幸運な一団だと言えるからです。
米国における現在の一人当たりGDPは、およそ5万6千ドルになります。昨年も話題に出しましたが、わたしが生まれた1930年とくらべると、実質的な価値はなんと6倍になっています。両親やその同世代の人たちからすれば途方もなかった夢を、はるかに超えています。ですが1930年当時の米国市民とくらべたときに、現在の人たちのほうが本質的に頭が良くなったわけではないですし、懸命に働いているわけでもありません。そうではなく、当時よりも働き方が効率的になり、その結果として以前よりも多くを生み出せるようになったからです。きわめて強力なこの潮流が今後も続いていくのはまちがいありません。この国で起きてきた経済的なマジックは現在も健在ですし、うまく効いています。
[マスコミに登場する]解説者の中には、現在における実質GDPの年間成長率が2%であることを嘆いています。たしかにだれもが、もっと高い数字をと望むことでしょう。ですが、その嘆かわしい2%という数字を使って単純な計算をしてみましょう。この率が驚くべき増加をもたらすことがわかります。
米国の人口は年率0.8%ずつ増加しています(出生率から死亡率を引いたものが0.5%、そして正味の移民増が0.3%です)。ですから国全体で2%成長するということは、一人当たり1.2%の成長を意味します。目を見張るほどの数字とは感じられないかもしれません。しかし一世代でみると、つまり25年間としてこの率で成長していくと、一人当たりの実質GDPは34.4%増加します(複利の力によって、単純に1.2%を25倍した値よりも大きなパーセントになります)。別の言い方をすれば、34.4%増加するということは、次の世代の一人当たり実質GDPが見事に1万9千ドル増えることになります。これが均等に分配されれば、4人家族には年間7万6千ドル分になります。今日の政治家が将来の子供のために涙を流す必要はないわけです。
実際のところ、今日の子供のほとんどが良い生活を送っています。「中流の上」に位置する隣人のみなさんはだれもが、わたしが生まれた当時にジョン・D・ロックフェラーSr.が手にしていたよりも良い生活水準を日常的に満喫しています。並ぶ者のなかった彼ほどの幸せ者であっても、現在のわたしたちに許されているあれこれを手に入れることはできませんでした。交通、エンターテインメント、通信、医療サービスなど、どんな領域であってもです。たしかにロックフェラーは権力と名声を手にしました。ですが彼は、この現代でわたしのご近所さんが営んでいるような生活をおくることはできませんでした。
ただし次の世代で分けられるパイは今日よりもずっと大きくなるものの、それをどのように切り分けるかとなると、まさに現在と同じような熾烈な争いが待っています。増加した財やサービスをめぐって、次のような両者の間で取り合いが起きます。現役世代と引退世代の間で、身体が健康な者と衰弱した者の間で、遺産相続者とホレイショー・アルジャー[=アメリカン・ドリームを数多く描いた作家]の間で、投資家と労働者の間で。そして極めつけは、市場から高く評価される能力を持つ者と、懸命な働きぶりは同じながらも市場から称賛を受ける技能に欠けているアメリカ人との間で。わたしたちはその種の闘争をずっと続けてきましたし、今後もずっと続くと思います。議会は戦場となり、資金と投票が武器となります。そしてロビー活動という産業はひきつづき成長していくことでしょう。
しかしながら良いニュースがあります。たとえ「負けた」側の一員であっても、以前よりもずっと多くの財やサービスを享受できるのはほぼ確実ですし、またそうすべきだと思います。さらには、増加した恵みの質(クォリティー)も劇的に改善されるでしょう。人々の要求を満たしたり、もっと言えば人々がまだ理解していない要求を提供する、そのような市場システムに伍する仕組みは存在しません。わたしの両親が若者だった頃に、テレビの到来を予想することはできませんでした。同じように50歳代当時のわたしも、パーソナル・コンピューターを必要だとは思いませんでした。しかしどちらの製品も、なにができるのかみんなが理解しはじめると、あっという間に生活を劇変させてしまいました。今ではわたしもブリッジのオンライン対戦を毎週10時間やっています。そしてこのレターで書いたように、わたしにとって「検索すること」はとても価値があることです(ただしTinderをやる準備はできていませんが[デート系サイトのこと])。
この240年間にわたって、米国の失敗に賭けるのはひどいまちがいでした。そして今日現在も、それを始める時期ではありません。米国における商売やイノベーションは金のガチョウと呼べるもので、これからももっと大きな卵をもっとたくさん産み続けてくれるでしょう。米国の社会保障制度が定めた公約は履行されるでしょうし、たぶんもっと寛大になると思います。そうです、この国の子供たちは両親よりも良い生活ができるようになるでしょう。(PDFファイル6ページ目)
It's an election year, and candidates can't stop speaking about our country's problems (which, of course, only they can solve). As a result of this negative drumbeat, many Americans now believe that their children will not live as well as they themselves do.
That view is dead wrong: The babies being born in America today are the luckiest crop in history.
American GDP per capita is now about $56,000. As I mentioned last year that - in real terms - is a staggering six times the amount in 1930, the year I was born, a leap far beyond the wildest dreams of my parents or their contemporaries. U.S. citizens are not intrinsically more intelligent today, nor do they work harder than did Americans in 1930. Rather, they work far more efficiently and thereby produce far more. This all-powerful trend is certain to continue: America's economic magic remains alive and well.
Some commentators bemoan our current 2% per year growth in real GDP - and, yes, we would all like to see a higher rate. But let's do some simple math using the much-lamented 2% figure. That rate, we will see, delivers astounding gains.
America's population is growing about .8% per year (.5% from births minus deaths and .3% from net migration). Thus 2% of overall growth produces about 1.2% of per capita growth. That may not sound impressive. But in a single generation of, say, 25 years, that rate of growth leads to a gain of 34.4% in real GDP per capita. (Compounding's effects produce the excess over the percentage that would result by simply multiplying 25 x 1.2%.) In turn, that 34.4% gain will produce a staggering $19,000 increase in real GDP per capita for the next generation. Were that to be distributed equally, the gain would be $76,000 annually for a family of four. Today's politicians need not shed tears for tomorrow's children.
Indeed, most of today's children are doing well. All families in my upper middle-class neighborhood regularly enjoy a living standard better than that achieved by John D. Rockefeller Sr. at the time of my birth. His unparalleled fortune couldn't buy what we now take for granted, whether the field is - to name just a few - transportation, entertainment, communication or medical services. Rockefeller certainly had power and fame; he could not, however, live as well as my neighbors now do.
Though the pie to be shared by the next generation will be far larger than today's, how it will be divided will remain fiercely contentious. Just as is now the case, there will be struggles for the increased output of goods and services between those people in their productive years and retirees, between the healthy and the infirm, between the inheritors and the Horatio Algers, between investors and workers and, in particular, between those with talents that are valued highly by the marketplace and the equally decent hard-working Americans who lack the skills the market prizes. Clashes of that sort have forever been with us - and will forever continue. Congress will be the battlefield; money and votes will be the weapons. Lobbying will remain a growth industry.
The good news, however, is that even members of the "losing" sides will almost certainly enjoy - as they should - far more goods and services in the future than they have in the past. The quality of their increased bounty will also dramatically improve. Nothing rivals the market system in producing what people want - nor, even more so, in delivering what people don't yet know they want. My parents, when young, could not envision a television set, nor did I, in my 50s, think I needed a personal computer. Both products, once people saw what they could do, quickly revolutionized their lives. I now spend ten hours a week playing bridge online. And, as I write this letter, "search" is invaluable to me. (I'm not ready for Tinder, however.)
For 240 years it's been a terrible mistake to bet against America, and now is no time to start. America's golden goose of commerce and innovation will continue to lay more and larger eggs. America's social security promises will be honored and perhaps made more generous. And, yes, America's kids will live far better than their parents did.
2016年2月28日日曜日
ウォーレン・バフェットが望む人物の条件(セス・クラーマン)
2009年3月のOID誌に掲載されたセス・クラーマンの講演記事から、ウォーレン・バフェットの言葉を引用した部分です。どこかで読んだ記憶のある発言ですが、こうして触れられていることにいっそう意義を感じます。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)
<クラーマン> いつの日か自分の後継者となる人物の職務責任をウォーレン・バフェットが書きくだした際に、その人物に望む条件のひとつとして彼はこう述べています。「かつて起きたことのない事態に対処でき、さらにはその事態さえも予期できること」と。これは予言的な言葉でしたし、投資家にとっては実に重要なことだと思います。(p.5)
Klarman: When Warren Buffett put out his job description for who would replace him some day, he said that one of the criteria he was looking for was somebody who could deal with and even anticipate things that had never happened before. Well, that was prophetic - and incredibly important for investors.
2016年2月26日金曜日
もうお呼びがかからないかもしれない(チャーリー・マンガー)
チャーリー・マンガーが2000年にフィランソロピー円卓会議で行った講話の8回目です。辛口です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)
また、この場を借りて申し上げておきますが、多くの機関投資家が株式投資でムダ金を費やしている割合を資産比でみて年間3%とした数字は、大多数の場合において明らかに低すぎます。財団の財務担当役員を前にして話をした後に、ある友人が投資信託に関する調査報告の概要を送ってくれました。その報告では次のように結論づけています。「投資信託へ資金を投じている典型的な受益者が15年の間にあげた成績は、年率7.25%のゲインだった。一方、その期間における平均的な株式ファンドは、(おそらく諸経費控除後で)年率12.8%のゲインをあげていた」。つまり、それら投資家の成績は資産比で年率5%以上低下するだけでなく、投資信託のあげる経費控除後の成績が株式市場平均を年率何%か下回れば、それも低下要因に加わるわけです。投資信託に関するこの調査がおおよそ正しいとすれば、投資信託へ投資する人たちがやるのと同じように、財団が資産運用者をたびたび取り換えることを良しとする知恵に対して、巨大な疑問符が付けられるでしょう。投資信託に関するその調査が示すように、成績を追加的に引き下げるものがあるとすれば、かなりの部分が愚かな基準によって生じていると思いますよ。つまりは、後れを取っているポートフォリオ・マネージャーから一貫して資産を取り上げることで保有株式を否応なしに現金化し、取りあげた資産を託した新たな資産運用者を据えることによってです。新任者は強いプレッシャーを負い、資産を獲得するようにとのホースを口に突っ込んでいます。しかし新たな資金を超急激に投入したところで、顧客の投資成績が改善されるわけではありません。投資信託に関するこの新調査結果のような問題は、始終目にしてきたことですね。私は、それそのものを描写しているのですよ。ですが不愉快に思われて、現実とは受けとめられずに行き過ぎたバカ話として無視されています。しかしその後になって新たな現実がもたらす恐怖は、疑問視されていた私の描写を相当な規模で上回ることとなります。現実を示すマンガーの見解が広く歓迎されないのも不思議ではないですね。慈善財団で話しをするのは、今回が最後かもしれません。
Let me also take this occasion to state that my previous notion of three percent of assets per annum in waste in much institutional investment management related to stocks is quite likely too low in a great many cases. A friend, after my talk to foundation financial officers, sent me a summary of a study about mutual fund investors. The study concluded that the typical mutual fund investor gained at 7.25 percent per year in a fifteen-year period when the average stock fund gained at 12.8 percent per year (presumably after expenses). Thus, the real performance lag for investors was over five percent of assets per year in addition to whatever percentage per year the mutual funds, after expenses, lagged behind stock market averages. If this mutual fund study is roughly right, it raises huge questions about foundation wisdom in changing investment managers all the time as mutual fund investors do. If the extra lag reported in the mutual fund study exists, it is probably caused in considerable measure by folly in constant removal of assets from lagging portfolio managers being forced to liquidate stockholdings, followed by placement of removed assets with new investment managers that have high-pressure, asset-gaining hoses in their mouths and clients whose investment results will not be improved by the super-rapid injection of new funds. I am always having trouble like that caused by this new mutual fund study. I describe something realistically that looks so awful that my description is disregarded as extreme satire instead of reality. Next, new reality tops the horror of my disbelieved description by some large amount. No wonder Munger notions of reality are not widely welcome. This may be my last talk to charitable foundations.
2016年2月24日水曜日
無傷で迎えることのできる大統領選投票日(ジェレミー・グランサム)
GMOのジェレミー・グランサムが少し前にレターを公開していました。今後1年間の市場予測を試みているのは、年初ながらの恒例のようです。今回は、おなじみのキーワード「大統領選」が登場している文章を引用します。なお、もうひとつ取りあげられていた話題は「アメリカの強み(そしてカナダも含めた地理的強み)」についてでした。(日本語は拙訳)
GMO Quarterly Letter 4Q 2015 - Part II: 2015 and 2016, U.S. Equity Bubble Update, and Yet More on Oil [PDF] (GMO)
GMO Quarterly Letter 4Q 2015 - Part II: 2015 and 2016, U.S. Equity Bubble Update, and Yet More on Oil [PDF] (GMO)
今回の株式市場における上昇[2009年から現在まで]では、もっとも重要な要素である「最大規模まで到達した大嵐」がみられません。孫に語りきかせるほどの狂乱した投機話や、個人投資家がみせるものすごい熱狂、感情の高ぶりや能力以上に過熱した経済、さらにはS&P500指数が最低でも2シグマ以上つまり2,300ポイントに到達していること、それらすべてが揃っている必要があります。現段階ではそのすべてを欠いていますから、「おそらく」大統領選投票日を程度の差はあれど無傷で迎えられると考えています。ただし私が言う「おそらく」という言葉の定義は、先に記した否定的な各要素によって50%をちょうど超える程度まで引き下げられていることに触れておきます。この予測では、中国については読みきれていません。最近はお決まりのワイルド・カードとなりましたが、現在の市場は中国の低成長を織り込んでいます(今後10年間の年間成長率を4%とするのは妥当な目標だと思います)。しかしGDP成長率が相当なマイナスまで後退したら、世界的な成長に対する比較的楽観視した私の見方は、もろくも崩れると思われます。(PDFファイル15ページ目)
The most important missing ingredient is a fully-fledged blow-off. This should come complete with crazy speculative anecdotes for your grandchildren, massive enthusiasm from individual investors, an overwrought, overcapacity economy, and, at minimum, a 2-sigma S&P 500 at 2300. Lacking all of this, I still believe it is "likely" that we will reach Election Day more or less intact. I will, though, admit to my definition of "likely" being beaten down by the negative factors listed earlier to something just over 50%. The wild card, as usual these days, is China. The market is discounting lower growth. (I believe 4% a year for the next 10 years would be a reasonable target.) But a deep entry into negative GDP numbers might ruin my relatively positive case for global growth.
2016年2月22日月曜日
2016年デイリー・ジャーナル株主総会(4)企業価値評価について
デイリー・ジャーナル社の株主総会の記事から、企業価値評価の話題です。今回の引用元記事は以下のリンク先になります。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)
Charlie Munger on The Discount Rate (ValueWalk)
Charlie Munger on The Discount Rate (ValueWalk)
<質問> 根源的価値を算出する際に、割引率をどのように使っていますか。
<マンガー> そのようなやりかたで数式を使ってはいませんね。質的な各種の要因を考慮しているからです。ブリッジのハンドと同じで、さまざまなことを考慮にいれなければなりません[参考記事]。
公式などはないのですよ。そんなものがあれば、数学の得意な人はみんな金持ちになっています。ところが、そううまくはいかないのです。
<質問> ですが、企業の価値を判断するには...
<マンガー> 機会費用が大切ですね。それから無リスク金利も、要因のひとつではあります[参考記事の一例]。
<質問> 各企業に対して同じ利率を使うのですか。
<マンガー> もちろん違います。異なるビジネスには異なる利率を使いますね。それらはすべて価値の点から捉えた上で比較検討します。当然ながら、すぐれた企業に多めに払うのはOKです。米国ではお粗末な事業からでも儲けることはできますが、金を稼ぐという意味では骨の折れるやりかたです。ときに私たちも意図せずしてそうすることがありますが、あれは身内に無心するようなものですよ。できる限りの手は打ちますが、次のものを探そうなどとは考えていません。
Questioner: How do you use the discount rate to calculate intrinsic value?
Charlie Munger: We don't use numeric formulas that way. We take into account quality factors. It's like a bridge hand, you have to think about a lot of things.
There is never going to be a formula. If that worked, every mathematical person would be rich, but that's not the way it works.
Questioner: But you value a company…
Charlie Munger: Opportunity cost is crucial, and the risk free rate is one factor.
Questioner: Do you use the same rate for different businesses?
Charlie Munger: The answer is no, of course not, different businesses need different rates. They all are viewed in terms of value and weighed against one another. Of course we're OK paying more for a good business. In the US you can make money out of a lousy business. But it's a painful way to make money. Sometime we do it by accident, and in that case, it's like hitting up a relative, and we deal with those the best we can, but we're not looking for new ones.
2016年2月20日土曜日
2016年デイリー・ジャーナル株主総会(3)所得格差について
デイリー・ジャーナル社の株主総会の記事から、チャーリー・マンガーが所得格差の話題について語った箇所を引用します。前回分はこちらです。なおウォーレン・バフェットによる同じ話題は、過去の投稿でご紹介しています。(日本語は拙訳)
<所得格差について>
トマ・ピケティ[『21世紀の資本』の著者]も、バーニー・サンダース[民主党からの大統領予備選候補者]も、イカれ気味だというのが私の見方です。社会的平等に熱烈な人たちが何をもたらしたのか。ソ連と彼の国で起きた虐殺や、中国共産党支配が招いた大飢饉や、愛すべき北朝鮮もそうですよ。そういった悪しき先例を招いたわけですから、この種の情熱はどれも疑問に思いますね。平等を掲げていた中国では飢饉がありましたが、私有の権利を認めてからは生活水準が10倍向上しました。そのことで多大な不平等を生み出してはいます。サンダースはこの件についてまったくわかっていないのに、その考えを崇拝しているのですから。彼は一本気な人間[原文はJohnny One Note]なのですね。知性ある人間として、恥ずかしい人だと思います。ただし、我らが共和党にも彼より悪い人たちがいます。しかしそのような人たちのイカれかたは、少なくともサンダースとは違っています。サンダースの個人的な性質を考えると、一族のだれかと結婚させたいとは思いませんね。思弁家の一人として、彼はお粗末です。社会的平等は、ある効果を生みます。「得られる結果が相応なものであれば、人はその結果の違いを受け入れるものだ」とアリストテレスは言いました。タイガー・ウッズがあれほどに金持ちであるのは、だれでも承知しています。その一方、現在のアメリカで不相応に財産を得た人間とはだれでしょうか。[ビル・]ゲイツではないですし、起業家たちでもありません。相応ならぬ富を蓄えた一員に含まれる者、それは金融に携わる人たちです。だから彼らは妬まれているのですね。そしてその罪は、今こうして語っている人間にも当てはまります。何もせずに、もしくは非生産的な行動によって、不相応に多くの富を築くべきではないでしょう。不相応に富を成すことの問題を修正できれば、それは大きいと思います。通常の投資パートナーシップでは、含み益には課税されません。課税されない莫大な流動的資産が生み出されることは当然ながら腹立たしいですし、その実情を理解した人はそれ以上に感じるでしょうね。
しかしながら不平等とは、成功をおさめた発展中の社会では自然な成り行きです。上位1%の輩が何をするかって。彼らが重要な問題なのでしょうかね。金持ちが実際に手にしている力がどれほど些細なのかは、金持ちになれば理解できますよ。多額の金を費やして、実質的に得るものは何もありません。ですから、ピケティとサンダースはまちがっています。しかし相応でない富を得ることについては、注意を向けるべきですね。
Income inequality: "My attitude is that both [Thomas] Piketty and [Bernie] Sanders are a little nuts. People passionate about egality gave us the Soviet Union and all those murders and Communist China and the starvation and lovely North Korea. I am suspicious of all this passion that brings about such bad examples. China had egality and was starving but adopted property rights, and living standards increased 10x, but that created a lot of inequality. Sanders doesn't understand this at all and has a religion for it; he is 'Johnny One Note.' As an intellectual, Bernie is a disgrace. Now, I don't think he's any worse than some of our Republicans. But at least they're crazy in a different way. But I wouldn't have him [Bernie] marry into my family just for his personal traits. As thinker, he is bad. Egality has one effect: people will tolerate different outcomes, if the outcomes are deserved, according to Aristotle. People are understanding that Tiger Woods is so rich. Who is getting undeserved money in America now? Not Gates or creators of businesses. Financiers are among those who do receive undeserved wealth and have caused envy. Even the man talking [referring to himself] is guilty of this. We don't want a lot of undeserved wealth for doing nothing or acting counterproductively. Fixing undeserved wealth would be extraordinary. Normal investment partnerships pay no taxes on unrealized gains. Naturally, enormous liquid wealth created not taxed is resented and would be more so if people actually understood it."
"But inequality is the natural outcome of a successful, advancing civilization. What the hell is the guy at the top 1% to do? Is he the main problem? When you get rich, you finally realize how little power the rich really have - they will spend a lot and get practically nowhere. Piketty and Sanders are wrong, but undeserved wealth needs some attention."
2016年2月18日木曜日
2016年デイリー・ジャーナル株主総会(2)コカ・コーラ社について
デイリー・ジャーナル社の株主総会の記事から、コカ・コーラ社に対するチャーリー・マンガーの評価を引用します。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)
<コカ・コーラ社の縮小及びバークシャーが主要株主であることによる擁護の有無について>
コカ・コーラ社の製品は何十年にもわたって水と砂糖を混ぜたものでした。宿命が次々とやってくるかのように、毎年成長をつづけたものです。しかし近年になってからは縮小しています。最近のコカ・コーラ社は新製品を多数発売し、インフラ共々成長させています。それができる力とは、実のところ広大な販売流通網にあります。今でも同社は強力な企業ですし、これからも尊敬されていくでしょうが、かつてほどではないと思いますね。
Coke on decline and does BRK's major holding in the stock provide cover for it?: "For many decades, the product was water and sugar, and it grew every year like the March of the Inevitable, but in recent years this declined, and in recent years Coke's vast offering and infrastructure with new products are growing. The power is really in that vast distribution network. It is still a strong company and will be respectable, but it is not like it used to be."
2016年2月16日火曜日
2016年デイリー・ジャーナル株主総会(1)人生での過ちを減らすには
チャーリー・マンガーが会長を務めるデイリー・ジャーナル社の株主総会が開催されていたようで、チャーリーの質疑応答が以下のWebサイトにアップロードされています。まだ全文を通読してはいませんが、一部をご紹介します。今回引用する箇所はおなじみの話題ですが、だからこそ大切なのは言うまでもないですね。(日本語は拙訳)
Charlie Munger At The 2016 Daily Journal Corporation Meeting [FULL NOTES] (ValueWalk)
Charlie Munger At The 2016 Daily Journal Corporation Meeting [FULL NOTES] (ValueWalk)
<人生における過ちを減らすには>
私やウォーレンや[デイリー・ジャーナル社の取締役である]ゲリンがしていることは、2つです。ひとつめが、考える作業に多くの時間を費やすことです。予定が一杯ということはないので、私たちの様子は事業家というよりも学者然としていると思います。数件の機会を待ち続ける静かな毎日ですよ。それらを求めてずっと待ったあげく何も起きなかろうが、へっちゃらです。ウォーレンは彼の帝国に鎮座しており、今週の予定といえば髪を切りに行くだけでした。そしてたくさんの時間を考えごとに費やすわけですね。ここにお集まりの諸君は幸運にも人目につかない人が多いでしょうから、時間の多くを考えごとに使えると思います。ふたつめは掛け持ち作業[直訳はマルチタスキング]についてです。人間はそうする能力を持ってはいるものの、病院の看護師長を務めているのでなければ、それが最上のやりかただとは思えませんね。そうなってしまえば、凡庸な人生で満足するしかないでしょう。私が次善の目標を持つことはありませんでした。ボリショイ・バレエの主役になりたいとか、ヤンキー・スタジアムで登板したいという考えはなかったですよ。知恵や機会を営々と追求することが大切です。これは私生活にも当てはまります。すばらしい相手と結婚できる機会が、5回や6回もめぐってくることはありません。ふつうは1回だってありません。並みの機会が訪れて、並みの結果となるのがふつうですね。(4ページ目)
How to reduce errors in life: "Warren and I and [DJCO director J.P.] Guerin do two things. One, we spend a lot of time thinking. Our schedules are not crowded, and we look like academics more than businessmen. It is a soft life waiting for a few opportunities, and we seize them and are ok with waiting for a while and nothing happens. Warren is sitting on an empire, and all he has on his schedule is a haircut this week. He has plenty of time to think. Luckily so many of you groupies [attendees] are so obscure, you'll have plenty of time to think. Second, multitasking is not the highest quality thought man is capable of doing unless you're chief nurse of hospital. If not, be satisfied with life in shallows. I didn't have #2 plan; I wasn't going to dance lead in Bolshoi Ballet or stand on the mound in Yankee Stadium. The constant search for wisdom or opportunity is important. It applies to the personal life too. Most of you aren't going to have five or six opportunities to marry a wonderful person. Most of you aren't going to get one. Most of you get an ordinary chance, which leads to an ordinary result."
2016年2月14日日曜日
最近の株式購入状況(2016/2/12)
おとといの2/12(金)にポートフォリオ中の株価が大幅に下落したため、日本株を少しまとめて買い増ししました。具体的には以下の2銘柄です。
・従来から保有している主力銘柄の一社
・クラレ(3405)
また、今年に入ってから株価下落につれてポツポツと買い増した銘柄は以下のとおりです。
・モザイク(MOS)
・メック(4971)
景気循環を考えると悪化が進むのはこれからで、循環的な銘柄を買うには時期が早すぎるようにも思えます。しかしそれでも買ってしまうのは、精神的な弱さを克服できておらず、ビジネスライクなプロセスが徹底されていないせいだと自覚しています。安いと思っても、本物の安さはずっと先で待っている。何をいついくらでどれだけ買うのか、その選択が迫られる投資とは実におもしろい行為だと思います。
・従来から保有している主力銘柄の一社
・クラレ(3405)
また、今年に入ってから株価下落につれてポツポツと買い増した銘柄は以下のとおりです。
・モザイク(MOS)
・メック(4971)
景気循環を考えると悪化が進むのはこれからで、循環的な銘柄を買うには時期が早すぎるようにも思えます。しかしそれでも買ってしまうのは、精神的な弱さを克服できておらず、ビジネスライクなプロセスが徹底されていないせいだと自覚しています。安いと思っても、本物の安さはずっと先で待っている。何をいついくらでどれだけ買うのか、その選択が迫られる投資とは実におもしろい行為だと思います。
2016年2月12日金曜日
さまざまな逆説を受け入れよ(チャーリー・マンガー)
チャーリー・マンガーが2000年にフィランソロピー円卓会議で行った講話の7回目です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)
この部屋にいる多くの方は、過ぎ去りし年月の印象を強く持っておられると思います。私の年代か、その直後の年代ですね。倹約を旨としたり、浪費を戒めることは善であると受けとめたものでした。そういったプロセスは我々にとってうまくいきました。ですから、経済学者が以前から「愚かな消費は経済発展に不可欠な要因だ」と称えてきたことは、我々からすれば逆説的でしたし、困惑させられました。私たちとしては、「愚かしい消費(foolish expenditures)」のことは「愚曲(foolexures)」と呼ぶことにしましょう。みなさんのように古き価値観を抱く人であれば、みずからの考える「愚曲」の一例に、「フェベズルメント」つまり「横領に相当するもの」が加わったと感じられたことでしょう。新しい日の始まりにふさわしい話題ではないかもしれませんが、私が「横領相当」を好まぬことをどうかご了解ください。私が思うに、「横領相当」は大きく広がり、経済に強い影響をもたらしています。ですから、たとえこの件を好まないとしても、その現実を認識すべきです。この件を好まぬ人ほど、なおさらそうすべきです。さらには、「良き振る舞いを以ってしても解消できない逆説」を喜んで受け入れるべきです。あらゆる逆説を排除することは純粋数学でさえもできないのですから、その他大勢の我々としては、好き嫌いにかかわらず、さまざまな逆説を受け入れざるを得ない、そう認識すべきでしょう。
This room contains many people pretty well stricken by expired years - in my generation or the one following. We tend to believe in thrift and avoiding waste as good things, a process that has worked well for us. It is paradoxical and disturbing to us that economists have long praised foolish spending as a necessary ingredient of a successful economy. Let us call foolish expenditures “foolexures”. And now you holders of old values are hearing one of your own add to the case for “foolexures” the case for “febezzlements” - the functional equivalent of embezzlements. This may not seem like a nice way to start a new day. Please be assured that I don’t like “febezzlements”. It is just that I think “febezzlements” are widespread and have powerful economic effects. And I also think that one should recognize reality even when one doesn’t like it, indeed, especially when one doesn’t like it. Also, I think one should cheerfully endure paradox that one can’t remove by good thinking. Even in pure mathematics, they can’t remove all paradox, and the rest of us should also recognize we are going to have to endure a lot of paradox, like it or not.
2016年2月10日水曜日
スポーツ選手が抱く心境に学ぶ(セス・クラーマン)
2009年3月のOID誌に掲載されたセス・クラーマンの講演記事から、さらに引用します。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)
<クラーマン> みずからの投資プロセスをコントロールすることにおいて、そういった点は絶対的に重要です。ソシエテ・ジェネラル社のストラテジストであるジェームズ・モンティエ[現在はGMOに所属]は、少し前に書いた文章で次のように指摘していました。「北京オリンピックで競技が始まる直前に、どんなことを心に抱いていたか」、運動選手たちに対してそう質問したところ、返事はどれも同じように、選手がひたすら考えていたのは結果ではなくプロセスのほうだったとのことでした。プロセスに集中することが、最善の結果を達成する術だったのです。
さらにモンティエは、昔から心理学者が「結果バイアス」として知られる現象を知っていたことに触れています。これは、結果の如何によって異なった評定をくだす傾向のことです。たとえばある医者が手術を行って、患者が命を取りとめたとします。この場合、同じ手術をしながらも失敗して患者が死亡した場合と比較して、はるかに優れていた判断だったと評定されます。モンティエ曰く、成果が振るわない期間にはプロセスを変更するようにとの圧力が高まります。しかしそのプロセスが適切である以上、プロセスを変更することこそ間違いなのです。(p.3)
Klarman: This point about controlling your process is absolutely crucial. James Montier, SocGen's market strategist, pointed out in a recent piece that when athletes were asked what went through their minds just before competing in the Beijing Olympics, the response again and again was that the competitor was focused on the process, not on the outcome. The way to maximize outcome is to concentrate on the process.
Montier points out that psychologists have long been aware of a phenomenon known as "outcome bias". This is the tendency to judge a decision differently based on its outcome. For example, if a doctor performs an operation and a patient survives, the decision is rated as significantly better than if the same operation fails and the patient dies. According to Montier, during periods of poor performance, the pressure builds to change your process. But so long as the process is sound, this would be exactly the wrong thing to do.
2016年2月8日月曜日
金融危機当時と異なる点(ハワード・マークス)
さきに取りあげたハワード・マークスのメモから、もう一か所引用します。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)
経済及び株式市場のいずれにおいても、熱狂にまでは至っていません。ですから、それらが破裂するさだめにあるとは思いません。ほとんどの企業は設備拡張に格別躊躇しており、売上が横ばいあるいは低下しても痛打されないだろう、と考えるからです。
民間部門における借入れ依存度は減少しました。特に当てはまるのが銀行です。金融危機前には借入の規模が自己資本の30倍以上の領域にありましたが、今日では2桁下辺まで低下しました。さらに今日の銀行は、自己勘定でむこうみずな投資を行うことを禁じられています。
最後にあげたいのが、金融危機で主要な悪役を演じたのはサブプライム・ローン証券だったことです。それを生み出した原材料、つまり根底にある住宅ローンはそもそも好ましからぬもので、嘘で偽られたことも多々ありました。住宅ローンを組み入れたその証券は借入比率を高めて組成されていたのですが、不合理なほど高い格付けが付与されたのです。そのため、銀行が保有するポートフォリオ中へリスクの大きなトランシェ[=部分]が含まれることとなり、彼らが支援を必要とする原因となりました。しかし今回は脆弱さと規模の組み合わせという観点に立つと、サブプライム・ローンや不動産担保証券に相当するものが見当たりません。その点が重要だと思います。(p.14)
We haven't had a boom (either in the economy or in the stock market), so I don't think we're fated to have a bust. Because most businesses have been particularly loath to expand their facilities, I don't think they'll be slammed if revenues flatten or turn down.
The leverage in the private sector has been reduced. This is particularly true of the banks, where leverage has gone from the region of 30+ times equity before the crisis to very low double digits today. And, of course, banks are now barred from investing adventurously for their own account.
Finally, the main villain in the crisis was sub-prime mortgage backed securities. The raw material - the underlying mortgages - was unsound and often fraudulent. The structured mortgage vehicles were highly levered and absurdly highly rated. And the risky tranches ended up in banks' portfolios, causing them to require rescues. Importantly, this time around I see no analog to sub-prime mortgages and MBS in terms of their combination of fragility and magnitude.
2016年2月6日土曜日
私の経験から言えること(セス・クラーマン)
2009年3月のOID誌に掲載されたセス・クラーマンの講演記事から、今回も引用します。短いですが核心をついた言葉です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)
<クラーマン> 経験とはたいていは良きものですが、時には経験という罠にいざなわれて、早すぎる行動を起こしたり、間違いを犯してしまうこともあります。それを承知で私の経験を申し上げれば、世の人たちが本意ではなしに止むを得ずめちゃくちゃな値段で手放し始めたら、そのときが買いに出る好機だと言えます。(p.4)
Klarman: So my experience - and experience is usually a good thing, but occasionally it can lure you into being too early or doing the wrong things - is that when people start to give something away at a ridiculous price because they have to, not because they want to, that's a good time to buy.
2016年2月4日木曜日
フェベズラー(febezzlers)(チャーリー・マンガー)
チャーリー・マンガーが2000年にフィランソロピー円卓会議で行った講話の6回目です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)
「横領」が増加することで、ケインズ主義的な効果が経済に必ずやもたらされる。ガルブレイスがそう考えたのは言うまでもないでしょう。しかし彼はそこでやめにしてしまいました。結局は、とてつもなく巨大な「横領」にはなり得ないからですね。大規模な窃盗とはほぼ確実に発覚するものですし、その後は当然のように反動がきます。それがために、秘匿された「横領」が増えたとしても、政府支出のように景気を延々上昇させることは、それなりの期間であってもできないわけです。
「経済的影響は明らかに小さい」と洞察したことが障壁となり、ガルブレイスは次に問われて然るべき設問には進みませんでした。それはつまり、「横領(ベズル)」と機能的に等価で重要なものがあるかという設問です。それは巨大でいて、早々に自己崩壊しない必要があります。では、私から答えましょう。それは「存在します」。ここではひとつだけ取りあげます。私もガルブレイスと立ち並び、新たな言葉を生み出すことにします。まずひとつめが「フェベズル(febezzle)」です[以降は横領相当と訳す]。これは「ベズル(bezzle)」と機能的に等価なものを意味します(functional equivalent)。ふたつめが「フェベズルメント(febezzlement)」で、「横領相当」を生み出す一連のプロセスを表す言葉です。そして三つめが「フェベズラー(febezzlers)」です。「横領相当を創出するプロセス」に携わる人物を示します。それでは「横領相当」の重要な源泉のひとつを、今ここでずばり特定しましょう。私が思うに、みなさんは愚かしくも普通株を大量に保有する資産運用を行ってきた間に、数多くの「横領相当」を生みだしてきました。
もし財団あるいは別の投資家が株式ポートフォリオを管理する際に不要かつ非生産的な運用経費として保有資産の3%分を毎年浪費していても、強烈に上昇している市場環境であれば、浪費しているにもかかわらず、金持ちになったと感じるものです。ところが3%が浪費されている一方で、「横領相当創出関係者ら」は自分たちが高潔なる収入を得ていると考えているのですよ。この状況は自己抑制のない未発覚な横領さながらに働きますね。実際問題、このプロセスはタコが自らの足を食べている最中はずっと拡大していけます。しかしその間において、浪費分3%を手にした者の収入から支出されたように見えるのは、実のところは株価上昇に起因する偽装された「資産効果」から支出されたものなのです。
No doubt Galbraith saw the Keynesian-multiplier-type economic effects promised by increases in “bezzle”. But he stopped there. After all, “bezzle” could not grow very big because discovery of massive theft was nearly inevitable and sure to have reverse effects in due course. Thus, increase in private “bezzle” could not drive economies up and up, and on and on, at least for a considerable time, like government spending.
Deterred by the apparent smallness of economic effects from his insight, Galbraith did not ask the next logical question: Are there important functional equivalents of “bezzle” that are large and not promptly self-destructive? My answer to this question is yes. I will next describe only one. I will join Galbraith in coining new words: first, “febezzle”, to stand for the functional equivalent of “bezzle”; second, “febezzlement”, to describe the process of creating “febezzle”; and third, “febezzlers,” to describe persons engaged in “febezzlement.” Then, I will identify an important source of “febezzle” right in this room. You people, I think, have created a lot of “febezzle” through your foolish investment management practices in dealing with your large holdings of common stock.
If a foundation, or other investor, wastes three percent of assets per year in unnecessary, nonproductive investment costs in managing a strongly rising stock portfolio, it still feels richer, despite the waste, while the people getting the wasted three percent, “febezzlers” though they are, think they are virtuously earning income. The situation is functioning like undisclosed embezzlement without being self-limited. Indeed, the process can expand for a long while by feeding on itself. And, all the while, what looks like spending from earned income of the receivers of the wasted three percent is, in substance, spending from a disguised “wealth effect” from rising stock prices.
2016年2月2日火曜日
私にひとつだけわかること(ハワード・マークス)
少し前の投稿でご紹介したハワード・マークスのメモから、さらに引用します。(日本語は拙訳)
投資家の心理とは変動するもので、[強気・弱気相場のそれぞれにおける]3つの段階が示すように、あらゆる可能性を拒絶するときもあれば、盲目的に信じ込んでしまうときもあります。ですからオークツリーでは、世間の投資家が悲観的なときにこそ買いに出たいと考えますし、彼らが一枚加わりたがっているときに買いたいとは思いません。じっくり検討している投資対象について一つだけ私にわかることがあるとしたら、「価格の中で楽観の部分がどれだけを占めているか」と言えるかもしれません。強気相場における最初の段階では、楽観的な見方は存在しません。それゆえに大幅な割安が生まれます。しかし最後の段階になると楽観の度合いは甚だしく大きくなり、ファンダメンタルズからみた購入価格も同じ様相を呈します。集団神経症から利益が得られるときには買いたいですが、そのことで他人と同様に私も手痛い目にあうのであれば買おうとは思いません。(p.13)
We know investors swing from rejecting all possibilities to drinking the Kool-Aid, just as the three stages say. Thus at Oaktree we want to buy when they're pessimistic, not when they're eager participants. If I could know only one thing about an investment I'm contemplating, it might be how much optimism is embodied in the price. In the first stage of the bull market, no optimism is present, and that makes for great bargains. In the last stage, the level of optimism is terribly high, and thus so are purchase prices relative to fundamentals. I want to buy when I can benefit from the herd's neuroses, not when they'll penalize me just as they do everyone else.
2016年1月30日土曜日
理性か知性を欠いた者だけが挑戦できる(『バッテリーウォーズ』)
前回と同じように、『バッテリーウォーズ』から印象に残った文章を引用します。今回も本筋とは少し離れますが、ベンチャー・キャピタリストのビノッド・コースラ氏の大胆な発言です。なお彼は、UNIXやJavaで一時代を築いたサン・マイクロシステムズの創業者の一人です。
講演の冒頭でコースラは、ガソリンが無敵だという前提に異議を唱えた。最近の実績を見れば、現在使われているほかのテクノロジーと同じくガソリンも脆弱だということがわかるはずだという。ガソリンに勝てる見込みが低いという事実こそ、まさに彼が勝利を目指す理由だった。勝てれば天文学的な金銭的利益が得られるからだ。「専門家たちは一様に2008年の金融危機について物知り顔で語っていますが、2008年6月の時点では誰もあんなことは予想していませんでした」と彼は言う。エネルギーについても事情は同じで、専門家はシェールガスの将来について今でこそきわめてはっきりした言い方をしているが、2008年には誰もそんなものが使いものになるとは予見していなかった。
「成功の確率が0.01パーセントだと言われても、私は受けて立ちます」と彼が言った。
壁にスライドが映し出された。「見えない方のために説明します。縦軸が成功の確率、横軸がインパクトの大きさを表します。テクノロジーの失敗する確率が90パーセント以上の場合、きわめて破壊的なインパクトが生じやすいということです」ベンチャーキャピタリストにとって、確立されたビジネスパターンの破壊、そしてそれに伴う新しいビジネス手法の創出は、ずば抜けて大きな利益をもたらすことが多い。
たいていのベンチャー投資家やエンジェル投資家はそんなやり方をしない、と彼は言う。失敗のもたらす結果と成功のもたらす結果に極端な差が生じない程度までリスクを抑えようとするのだ。
「私が提案したいのは、その正反対のやり方です」とコースラが言った。大きなリスクとそれがもたらす潜在的なメリットをむしろ歓迎すべきだという。
コースラは、目の前に座る出席者のほとんどまたは全員の耳に彼のメッセージが届いてはいても、聞き入れる者はごくわずかだとわかっていた。「ほぼ不可能なことに挑戦できるのは理性か知性を欠いた者だけ」だからだ。侮辱的な言葉を浴びせれば、少なくとも相手を困惑させるくらいの効果はあるかもしれない。「物事がうまくいかない理由を常に説明できる専門家は、理性と知性を備えた人間を常に脅かして、途方もないアイデアへの挑戦を妨げることができるのです」と彼は語った。(p.269)
2016年1月28日木曜日
羊飼いの少年が期せずして成功する話(『バッテリーウォーズ』)
『バッテリーウォーズ』という本を読みました。内容は副題が示す通りのもので、「次世代電池開発競争の最前線」です。エネルギーや素材関係の話題には興味があるので期待して手に取ったのですが、読み始めのころはハズレだったかと案じました。書き出しには引きこまれず、突出したヒーローは不在、淡白な文体、そして地味な話題と、四重苦状態だと感じたからです。それでも100ページ目、150ページ目と読み進めていくうちに、実は楽しんでページを繰っている自分に気がつきました。そして静かなクライマックスに向けて一気に読了できました。
本書では研究開発やイノベーションの現場が、飾ることなく描写されています。登場人物は研究所や先端企業で働く頭脳明晰な人ばかりですが、彼らのふるまいや願望は一般人と同じで、等身大の群像劇が展開されています。様々なものごとがごったがえす中、技術はたゆまずに進歩し、ビジネスは拡大の機会をうかがい続けます。本書の中心的な役割はそういったイノベーション小史を楽しむ点にあると思いますが、それ以外の読み方もできます。日米におけるR&Dの比較という視点が持てたり、ベンチャー・ビジネスのケース・スタディーとしても参考になります。なおテスラモーターズのCEOイーロン・マスクも出番が少しありますが、端役の扱いです。
その本書から今回引用するのは、主題とはまるで関係のない話題です。モロッコ出身のアミーンという名の印象的な人物が登場しますが、彼の祖父が過ごした劇的な人生についてです。
本書では研究開発やイノベーションの現場が、飾ることなく描写されています。登場人物は研究所や先端企業で働く頭脳明晰な人ばかりですが、彼らのふるまいや願望は一般人と同じで、等身大の群像劇が展開されています。様々なものごとがごったがえす中、技術はたゆまずに進歩し、ビジネスは拡大の機会をうかがい続けます。本書の中心的な役割はそういったイノベーション小史を楽しむ点にあると思いますが、それ以外の読み方もできます。日米におけるR&Dの比較という視点が持てたり、ベンチャー・ビジネスのケース・スタディーとしても参考になります。なおテスラモーターズのCEOイーロン・マスクも出番が少しありますが、端役の扱いです。
その本書から今回引用するのは、主題とはまるで関係のない話題です。モロッコ出身のアミーンという名の印象的な人物が登場しますが、彼の祖父が過ごした劇的な人生についてです。
一族の伝説は20世紀の初めごろにさかのぼる。アミーンの母方の祖父ベナディールが、12歳のときにアガディール港周辺の山で羊飼いをしていたころの話だ。ベナディールはしょっちゅう年配の男に叩かれた。しかしあるとき、耐えかねたベナディールが石をつかんで老人の頭を殴りつけると、相手は倒れて動かなくなった。少年はおびえて逃走した。
ベナディールが隠れていると、青果を積んで牽引車につながれた荷車が通りかかった。ベナディールは荷車によじ登ってすぐさま身を隠した。それから二、三日間、荷車は海岸沿いを進んでいった。ベナディールは積んである果物や野菜を食べて過ごした。しかしカサブランカに到着すると、荷主に見つかって路上に放り出されてしまう。ベナディールは歩きながら物乞いを始めた。汚れまみれで疲れきった彼は、一軒の家の前に立った。中にいたフランス人の婦人が哀れんで、ベナディールを招き入れた。それから彼の体をきれいにして、家事係としてこの家にいてよいと言った。
この婦人が何という名だったか、アミーンは覚えていない。ともあれ、婦人の夫はいくつもの店を所有する商人で、あるときベナディールはこの主人から一軒の店番を命じられる。ベナディールはこれをとても責任の重い仕事だと思い、きちんと朝5時に店を開け、真夜中に店を閉めた。夜は店で眠り、食事も店でとった。しばらくすると、主人は店の儲けが大きく増えたことに気づいた。そこで少年にさらに多くの店を任せ、彼を息子のように扱い始めたのだ。
1956年、モロッコはフランスとスペインから独立を勝ち取った。ベナディールを置いてくれたフランス人一家は、ほかの多くの外国人と同様に大あわてで帰国した。出国する際に、主人は事業をベナディールに譲った。こうして、アミーンの祖父は地元でかなりの大物になったのだった。(p. 72)
2016年1月26日火曜日
ガルブレイスの好んだ寒々とした世界(チャーリー・マンガー)
チャーリー・マンガーが2000年にフィランソロピー円卓会議で行った講話の5回目です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)
備考です。同じガルブレイスの話題は、過去記事「Febezzlement」でも取りあげています。
次にあげたいのは、経済学者の伝統的な考えにおいて、bezzle(ベズル)という考えに含まれる意味を考慮していないことがよくある点です。もう一度言いますよ、「ベ・ズ・ル」です。
この「ベズル」という言葉は「横領(embezzle)」という言葉を短縮したものです。ある期間において未発覚の横領が増加した数量を示すために、ハーバードにいた経済学者ジョン・ケネス・ガルブレイスが考案しました。彼は、1ドル当たりでみた未発覚の横領が、消費に対して非常に強力な刺激を与える様子を観察したことから、この言葉を考え出したのですね。結局は、横領をした者は実入りが増えるので消費を増やしますし、雇用主のほうは自分の資産が消えたとは露ほども知らず、以前と同じように消費するわけです。
しかしガルブレイスは自分の洞察をそれ以上押し進めませんでした。物議を醸すだけにとどめることで満足していたのです。ですから、これから私がガルブレイスの持ち出した「ベズルな」概念を、論理的に考えられる次の段階に進めてみることにしましょう。ケインズが示したように、収入の動きに敏感な経済では、たとえば針子(はりこ)が靴職人へコートを20ドルで売れば、靴職人は消費に回せる金銭が20ドル減りますし、針子のほうは20ドル増えます。この場合、消費全体でみると「とびっきりな」効果は生じません。ところがそこで政府が20ドル札を1枚刷って靴を1足買えば、靴職人は20ドル増えることになり、貧しさを感じる者はいなくなります。さらに靴職人がコートを買って…というプロセスが連続すれば、無限に増えることはないものの、ケインズが言うところの乗数効果が生まれます。これは消費における、ある種の「とびっきりな」効果ですね。それと同じで、未発覚の横領は同規模の誠実な物々交換とくらべて、1ドル当たりでみた消費に対して強い刺激を与えます。スコットランド人であったガルブレイスは、自分の洞察が示した荒涼とした世界を好んでいました。結局のところスコットランド人たる彼は、さだめであって修正のきかぬ出来たての天罰を喜んで受け入れたのです。我々にとってガルブレイスの洞察は心惹かれるものではありません。にもかかわらず、彼の考えが大筋で正しいことは認めなければならないでしょう。
For another thing, the traditional thinking of economists often does not take into account implications from the idea of “bezzle”. Let me repeat: “bezzle,” B-E-Z-Z-L-E.
The word “bezzle” is a contraction of the word “embezzle”, and it was coined by Harvard Economics Professor John Kenneth Galbraith to stand for the increase in any period of undisclosed embezzlement. Galbraith coined the “bezzle” word because he saw that undisclosed embezzlement, per dollar, had a very powerful stimulating effect on spending. After all, the embezzler spends more because he has more income, and his employer spends as before because he doesn’t know any of his assets are gone.
But Galbraith did not push his insight on. He was content to stop with being a stimulating gadfly. So , I will now try to push Galbraith’s “bezzle” concept on to the next logical level. As Keynes showed, in a naive economy relying on earned income, when the seamstress sells a coat to the shoemaker for twenty dollars, the shoemaker has twenty dollars less to spend, and the seamstress has twenty dollars more to spend. There is no lollapalooza effect on aggregate spending. But when the government prints another twenty-dollar bill and uses it to buy a pair of shoes, the shoemaker has another twenty dollars, and no one feels poorer. And when the shoemaker next buys a coat, the process goes on and on, not to an infinite increase, but with what is now called the Keynesian multiplier effect, a sort of lollapalooza effect on spending. Similarly, an undisclosed embezzlement has stronger stimulative effects per dollar on spending than a same-sized honest exchange of goods. Galbraith, being Scottish, liked the bleakness of life demonstrated by his insight. After all, the Scottish enthusiastically accepted the idea of pre-ordained, unfixable infant damnation. But the rest of us don’t like Galbraith’s insight. Nevertheless, we have to recognize that Galbraith was roughly right.
備考です。同じガルブレイスの話題は、過去記事「Febezzlement」でも取りあげています。
2016年1月24日日曜日
望まない習慣に生活を支配される(『脳が冴える勉強法』)
チャーリー・マンガーやウォーレン・バフェットが好んで使う表現のひとつに、「習慣という鎖は、初めは軽すぎて感じられないが、やがて重くなって壊せなくなる」というものがあります。過去記事で何度かとりあげています(例1や例2)。 最近読んだ本『脳が冴える勉強法』でも同じことに触れた箇所がありましたので、以下に引用します。
ヘッブの法則[脳神経ネットワークの同じ箇所に同じ刺激が繰り返し与えられることで、学習がなされる]が重要な意味を持つのは、学習の原理としてだけではありません。人間の行動が強化される原理、つまり習慣化の原理としても、ヘッブの法則は重要な意味を持っています。
習慣化の原理として考えたときに、ヘッブの法則が怖いのは、それが望むと望まざるとにかかわらず、起こってしまう、ということ。本人が望んでいなくても、繰り返した行動がヘッブの法則により強化されてしまう、ということです。
たとえば、デスクについてまずパソコンを起動させる。起動させたら、まずブラウザを立ち上げる。ブラウザを立ち上げたら、何となくニュースサイトを読み始めて、特に興味のない記事までリンクを辿って読んでいく。そういう行動を毎日繰り返したとします(それが悪いことだというわけではありませんが)。
そうすると、その行動を習慣化したいと望んでいるわけではなくても、その行動にまつわる回路が強化されます。デスクにつくというきっかけの行動を取っただけで、後は自動再生されるように、一連の行動をとってしまう。
生活のごく一部にそういう望まない習慣を持っているだけならいいですが、私たちは普段から注意していないと、いつの間にか望まない習慣に生活を支配されている状態になりがちです。
サミュエル・スマイルズの『自助論』の中に、次のような表現が出てきます。
「時間の浪費は、精神に有害な雑草をはびこらせる」
神経学的に翻訳するなら、実際に(脳の中に)はびこるのは、悪習慣の強い回路です。そして、いつの間にかそれに動かされて、膨大な時間を浪費するようになってしまう。
これは若い頃だけの話ではありませんが、若い人の方が残されている人生の時間が長いので、より大きな損失を被るのは確かだと思います。(p.136)
2016年1月22日金曜日
バリュー投資家は難しい時期に恩恵を受ける(セス・クラーマン)
2009年3月のOID誌に掲載されたセス・クラーマンの講演記事から引用がつづきます。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)
<クラーマン> 短期的な成績を追求する投資ビジネスに固有の圧力に抵抗でき、狙いを定め続けられるバリュー投資家は、むずかしい時期でさえも利益を上げることのできる多面的で柔軟な各種の道具を備えています。第一に、バリュー投資家はおのれの原則を守って良い時も悪い時も辛抱し続けられるので、割安な銘柄を保有できます。これは根底にある価値よりも割安に買った証券なので、安全余裕を授けられています。ただし保有銘柄の株価が下落しないとか下落などありえない、という意味ではありません。株価が下落すれば買い増しを検討したくなるような、より好ましいバーゲン銘柄になるという意味です。高い割合で借り入れをしている企業の株式や問題を抱えた金融会社、いつまで経っても大きくなれない事業やリスクの大きいジャンク債、そのような証券には手を出さないとする規律を厳格に守ってきたバリュー投資家は、むずかしい時期にはまちがいなく恩恵を受けます。それらの投機的な銘柄を保有している人は、市場が下落するとみずからの選択を早々に後悔することになるでしょう。(p. 2)
Klarman: Value investors who are able to maintain their focus and resist the pressures inherent in the investment business to pursue short-term results have a multifaceted and adaptable tool kit that should allow them to prosper even in difficult times. First, by maintaining their discipline and by remaining patient in good times and bad, value investors own bargains - securities trading at a discount to underlying value which confer a margin of safety. This doesn't mean those holdings can't or won't drop in price; it means that when they decline, they'll be an even better bargain to which you are likely to seek to add. In difficult times, value investors certainly benefit from their relentlessly-kept discipline by having avoided highly-leveraged stocks, troubled financials, perpetually marginal businesses, and risky junk bonds. When the market drops, holders of such speculations quickly regret their choices.
2016年1月20日水曜日
投資家がみせる行動特性で注目すべきもの(ハワード・マークス)
オークツリーの会長ハワード・マークスが新しいレターを公開しています(1月14日付)。今回引用する箇所は短い文章なので翻訳をつけるまでもないですが、いつもの形でやっています。なお投資雑誌Barron'sのWebサイトでも、全文がそのまま掲載されていました。
On the Couch [PDF] (Oaktree Capital Management)
On the Couch [PDF] (Oaktree Capital Management)
投資家がみせる行動特性の中でもっとも注目すべきひとつとして、悲観的なものごとが生じてもしばらくの間は見過ごしたり、あるいはその重要性を軽視したりしがちな点が挙げられます。しかし結局は下落の途中で降参し、今度は過剰に反応するのです。私としては、そういった行動の多くは心理的な弱点に因るものであり、そうでなければ出来事が持つ本当の重要性を的確に評価する能力がないことに帰すると考えています。(p. 4)
One of the most notable behavioral traits among investors is their tendency to overlook negatives or understate their significance for a while, and then eventually to capitulate and overreact to them on the downside. I attribute a lot of this to psychological failings and the rest to the inability to appreciate the true significance of events.
2016年1月18日月曜日
さらばシボレー、ようこそキャデラック(チャーリー・マンガー)
チャーリー・マンガーが2000年にフィランソロピー円卓会議で行った講話の4回目です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)
しかしそのような経済学的考えかたはまちがいなく、現在の実情を相当誤解していますね。まちがった数字を見ていますし、まちがった疑問を投げかけています。それでは究極のアマチュアたる私がもう少し上手なやりかたを、あるいは少なくとも若干は異なるやりかたを大胆にも試みてみましょう。
ひとつめとして、たぶん次の内容で合っていると思いますが、「FRBのデータ群は実際的な障害のせいで年金から生じる影響を適切に考慮していない」とする話を聞いたことがあります。これには401Kや同様の制度などが含まれます。たとえば次のような例を考えてみましょう。ある63歳になる歯科医が私的年金口座でGE株を100万ドル分保有しているとします。ところが株価が上がって持ち分が200万ドルになると、気分がほくほくした歯科医はかなり古くなったシボレーを下取りに出して、新しいキャデラックを現在一般的なタダのような料率のリースで乗り始めます。私からすればこれは言うまでもなく、歯科医の消費行動に大きな「資産効果」が働いています。しかしFRBのデータを使う多数の経済学者にすれば、この状況が歯科医による浪費性の貯蓄取り崩しにみえるのではないですかね。しかし彼や彼と同じような人たちが多額の消費をしたのは、年金にかかわる非常に強力な「資産効果」が働いたからだと思いますよ。ですから、現在生じている年金制度由来の「資産効果」は些細とは程遠いものであり、過去に生じたものよりもずっと巨大であることは間違いないと思います。
I believe that such economic thinking widely misses underlying reality right now. To me, such thinking looks at the wrong numbers and asks the wrong questions. Let me, the ultimate amateur, boldly try to do a little better, or at least a little differently.
For one thing, I have been told, probably correctly, that Federal Reserve data collection, due to practical obstacles, doesn’t properly take into account pension effects, including effects from 401(k) and similar plans. Assume some sixty-three-year-old dentist has $1 million in GE stock in a private pension plan. The stock goes up in value to $2 million, and the dentist, feeling flush, trades in his very old Chevrolet and leases a new Cadillac at the giveaway rate now common. To me, this is an obvious large “wealth effect” in the dentist’s spending. To many economists, using Federal Reserve data, I suspect the occasion looks like profligate dissaving by the dentist. To me, the dentist, and many others like him, seems to be spending a lot more because of a very strong pension-related “wealth effect.” Accordingly, I believe that present-day “wealth effect” from pension plans is far from trivial and much larger than it was in the past.
2016年1月16日土曜日
グレアムとドッドに返れ(セス・クラーマン)
2009年3月のOID誌に掲載されたセス・クラーマンの講演記事から、ひきつづきの引用です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)
<クラーマン>バリュー投資家が自分以外の何かになりたいと望むのであれば、グレアムとドッドがみせてくれた知恵を思い返すのが一番です。この75年間で最高の成功をおさめた投資には、彼らが示した見事なロードマップに従うことで達成されたものがあったからです。難解かつ未知なこともある領域を通過する者を導き、成功をおさめさせてくれる地図です。
現在継続している市場環境において、ほとんどの投資家は舵を失っています。無能力となったことで、極端な混乱や企業業績の悪化、苦悶する経済や積み上がる損失がつづく最中に舵を取れないでいます。現金を手放そうとはせず、資金償還や損失増加を恐れています。しかし市場から身を引き、ある種の「絶対明白な」徴候が現われるまで再参入するのを待ちたいと思案する投資家にとって、有益なことがあります。1934年にグレアムとドッドが書いた忠告を思い返すことです。「我々は本書を書き記す間、世間に広まった『金融崩壊は永続必然』とする信念と戦わなければならなかった」。彼らが当時そう言えたのであれば、今私から同じように申し上げねばならないでしょう。
Klarman: When a value investor is tempted to become something other than what he or she is, I find it best to recall the wisdom of Graham and Dodd. Graham and Dodd have provided us with a remarkable road map that has been carried on some of the world's most successful investment journeys for 75 years - a road map that allows us to navigate through difficult, even uncharted, territory and come out ahead.
In a market like we've been experiencing, most investors lose their rudders. They become incapacitated, unable to navigate amidst extreme turmoil, declining corporate results, and a litany of economic woes and mounting losses. They become unwilling to part with their cash - afraid of possible redemptions, and afraid of adding to their losses. Investors today, who are tempted to pull out of the market and wait for some kind of "all clear" signal before recommitting, would be well advised to remember the counsel of Graham and Dodd who wrote in 1934: "While we were writing, we had to combat a widespread conviction that financial debacle was to be the permanent order." If they could say that then, I must restate it now.
2016年1月14日木曜日
経済学者曰く、消費に対する株価の影響は小さい(チャーリー・マンガー)
チャーリー・マンガーが2000年にフィランソロピー円卓会議で行った講話の3回目です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)
ですから、次の2つは認めるべきなのです。ひとつは、消費の傾向が株価動向の影響を受けることが、今や重要な主題であること。もうひとつは、日本で不景気が長引いている事態は憂慮すべきであること。では、米国の株価は経済にどれほどの影響を与えているでしょうか。主として連邦準備制度が収集したデータに基づいて経済の専門家が下す見解では、「株価が原因で消費に影響する『資産効果』は、まるで大きくない」というのが中間的になるでしょう。結局のところ、現在においても家計部門の年金を除いた実質純資産の上昇率は、この10年間では100%以下だったでしょうし、世帯当たりの金額は月並みなまま推移したと思います。その一方で株式の時価総額は、年金を除いた家計純資産全体の1/3に達していないでしょう。さらに家計部門の資産における普通株は、信じがたいほど一部に集中して保有されています。その上、超大金持ちが消費する金額は、保有資産とは比例しません。年金を除いて考えれば、普通株の評価額のうちで家計部門上位1%の人たちが保有する割合は50%ぐらいでしょうし、下位80%が保有するのは4%程度だと思います。
そのようなデータに加えて、過去における株価と消費の相関は心躍るものでもありません。ですからプロの経済学者にしてみれば、「家計における消費支出の平均金額が株式資産の評価額のたとえば3%ずつ増加すると仮定したところで、巨大かつ前代未聞の長期にわたる一貫した株価上昇のなかであっても、過去10年間における消費の上昇率は年率0.5%以下にとどまった」と判断するのはたやすいと思います。
Well, grant that spending proclivity, as influenced by stock prices, is now an important subject, and that the long Japanese recession is disturbing. How big are the economic influences of U.S. stock prices? A median conclusion of the economics professionals, based mostly on data collected by the Federal Reserve System, would probably be that the “wealth effect” on spending from stock prices is not all that big. After all, even now, real household net worth, excluding pensions, is probably up by less than 100% over the last ten years and remains a pretty modest figure per household while market value of common stock is probably not yet one third of aggregate household net worth, excluding pensions. Moreover, such household wealth in common stocks is almost incredibly concentrated, and the super-rich don’t consume in proportion to their wealth. Leaving out pensions, the top 1% of households probably hold about 50% of common stock value and the bottom 80% probably hold about 4%.
Based, on such data plus unexciting past correlation between stock prices and spending, it is easy for a professional economist to conclude, say, that even if the average household spends incrementally at a rate of three percent of asset values in stock, consumer spending would have risen less than one-half percent per year over the last ten years as a consequence of the huge, unprecedented, long-lasting, consistent boom in stock prices.
2016年1月12日火曜日
割安な銘柄を買う以外にバリュー投資家がすべきこと(セス・クラーマン)
2009年3月のOID誌に掲載されたセス・クラーマンの講演記事から、ひきつづき引用します。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)
<クラーマン> ですから、個別銘柄の株価が本当に割安な水準に達したときにそれを買わないとしたら、バリュー投資家がすべきこととは何でしょうか。それはマーケット・タイミングです。投資家は即時的な時間軸で暮らしています。数カ月や数日、数時間、はたまた数分間の人もいるでしょうが、数年間隔ではありません。将来を知ることはできません。またサイクルの途中においていつ終わりが来るのかわかりませんし、その始まりでさえ必ずしもはっきりしてはいません。ですから市場が下落する間に、それらしき機会に誘われてやられてしまうわけです。魅力なバーゲン銘柄あるいはバリューを装う銘柄だったり、騙し上げあるいは正当なる回復だったり、巧みな底値買いあるいは軽率な下落買いだったりと、そういった諸々を目の当たりにするでしょう。しかし実際に事実が起きてからでないと、どこまで下がるのかを知ることはできません。マクロ的な予測をすることはできます。その場合、今後生じる2回の景気後退のうち10回を予言するわけです。あるいはマクロ経済を無視する道もあります。その場合、経済が悪化して信用が収縮し、あらゆる証券から波が引いていった後に、もはや割安にみえなくなったバーゲン銘柄を買うわけです。
Klarman: So when individual stocks reach levels where they are truly undervalued, what are value investors supposed to do other than to buy them? Anything else is market timing. Investors live in real time - not in several year intervals, but in months, days, hours and even minutes. Because we cannot know the future - and cannot see in the middle of the cycle its end, and not even necessarily its beginning - we will be bombarded by apparent opportunity as the market descends. We will see tempting bargains and value imposters, false rallies and legitimate recoveries, smart bottom fishers and mindless buy-the-dippers - and we will never know until after the fact how low things might go. We can become macro forecasters, predicting 10 of the next two recessions, or we can ignore the macro economy, buying bargains that cease to look cheap as the economy deteriorates and credit contracts and the tide goes out on all marketable securities.
2016年1月10日日曜日
米国は日本と同じ状況になるのか(チャーリー・マンガー)
チャーリー・マンガーが2000年にフィランソロピー円卓会議で行った講話の2回目です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)
金融面で数々の腐敗があった日本では、非常に長期間にわたって株価や不動産価格が著しく上昇しました。その間、米国と比較して極端なまでの実質経済成長を果たしましたが、その後は資産価値が暴落し、日本経済は最上からは大きく離れた水準で立ち往生しました。その後の日本は経済立て直しを期待してケインズ経済学や金融上の施策をことごとく学び、強力かつ長期間推進しました。政府部門では莫大な赤字を何年間も続けただけでなく、金利をゼロ近辺の位置まで引き下げて維持しました。にもかかわらず、日本経済はいつまでたっても手詰まりのままだったのです。日本人消費者の意識は経済学者が繰り出すあらゆる術策に頑固として逆らいましたし、株価も低迷しつづけました。日本が経験したこの事態は、だれにとっても憂慮すべき例ですね。それと似たことがこの国で起きたとしたら、収縮した慈善基金は運命に打ちのめされたと感じることでしょう。日本で起きた惨めな状況のかなりの部分は、おそらくそうだとは思いますが、日本固有の心理面における社会的影響や腐敗によって起こされたものだったと願いましょう。そうだとしたら我が国は、広く考えられている程度の半分は大丈夫かもしれません。
In Japan, with much financial corruption, there was an extreme rise in stock and real estate prices for a very long time, accompanied by extreme real economic growth, compared to the United States. Then, asset values crashed, and the Japanese economy stalled out at a very suboptimal level. After this, Japan, a modern economy that had learned all the would-be-corrective Keynesian and monetary tricks, pushed these tricks hard and long. Japan, for many years, not only ran an immense government deficit but also reduced interest rates to a place within hailing distance of zero and kept them there. Nonetheless, the Japanese economy, year after year, stays stalled, as Japanese proclivity to spend stubbornly resists all the tricks of the economists. And Japanese stock prices stay down. This Japanese experience is a disturbing example for everyone and, if something like it happened here, would leave shrunken charitable foundations feeling clobbered by fate. Let us hope, as is probably the case, that the sad situation in Japan is caused in some large part by social psychological effects and corruption peculiar to Japan. In such case, our country may be at least half as safe as is widely assumed.
2016年1月8日金曜日
3割下がっても、油断は禁物(セス・クラーマン)
数回前の投稿でとりあげたセス・クラーマンの講演記事から、つづく部分を引用します。(日本語は拙訳)
<質問> 30%下落した後に、次はどれだけどうなるのか、わかる人がいるのでしょうか。
<クラーマン> 市場が下落している最中に参入する時期が早すぎると、当然ですがどんな投資家にも大きなリスクとなります。それはバリュー投資家も同じです。上昇相場が継続中の間であっても、割安な証券がみつかればバリューに飢えた投資家は前進して買いに出るのはまちがいないでしょう。しかしほどなくして、その多くはまるでバーゲンでなかったことが明らかになります。世界全体が悪化するにつれて、それゆえに強気筋が拒絶していた欠陥がますます明白となるからです。株式市場が30%下落した時点で、今後どうなるのかを言い当てる術はありません。「あらゆる下落相場は大恐慌につながる」と予想するのは愚かしいことですが、「割高な水準から下落してずっと妥当な水準に達すれば、そこからはひどく激しい下落が起こるなどありえない」と期待するのも、同じようにまちがったことだと思います。(p. 2)
After a 30% drop, who knows how much further it might go?
Klarman: Of course, getting in too soon as the market falls involves great risk for all investors, including value investors. Certainly, when a few securities start to get cheap even as the bull market continues, a valuestarved investor will step up and buy them. Soon enough, many of these prove to be no bargain at all, as the flaws that caused them to be rejected by the bulls become more glaringly apparent when the world gets worse. After a stock market has dropped 30%, there's no way to tell how much further it might have to go. It'd be silly to expect every bear market to turn into the Great Depression. But it would be equally wrong to expect that a fall from overvalued to more fairly valued couldn't badly overshoot on the downside.
2016年1月6日水曜日
フィランソロピー円卓会議での朝食会(チャーリー・マンガー)
本ブログでは、チャーリー・マンガーの講演・講話を集めた『Poor Charlie's Almanack』に収録されている原文を、当方の和訳付きでご紹介してきました。今回からは講演その7(Talk Seven)を全訳でご紹介します。2000年3月にITバブルが弾けて、株式市場が下落しはじめた時期の講話です。いつものように、インターネット上に原文がアップロードされているサイトがありますので、お急ぎの方はたとえば以下のサイトをご参照ください。
The Philanthropy Round Table (Mungerisms)
なお本シリーズを以って、同書に収録されている全11話をひとまず取りあげたことになります。
The Philanthropy Round Table (Mungerisms)
なお本シリーズを以って、同書に収録されている全11話をひとまず取りあげたことになります。
フィランソロピー円卓会議での朝食会
2000年11月10日
今日は、米国普通株の価格が上昇したことで生じた、いわゆる「資産効果」について話をします。
まずは早々に申し上げますが、「資産効果」が経済学における学問的原理の一部であることは、認めざるを得ません。それから、私自身は経済学に関する講義をひとつも履修していませんし、マクロ経済的な変化を予測して儲けようとしたことはビタ一文ない点も付け加えておきます。
それにもかかわらず、「現在の極端な状況下で普通株が『資産効果』に対してもたらす影響力を、博士号を取得した経済学者のほぼ全員が過小評価している」と私は判断しています。
次の2点は異論がないと思います。第一に、消費の傾向は株価が上がれば上向きへ、株価が下がれば低迷する方向へと影響を受ける点。第二に、消費という傾向がマクロ経済学的に著しく重要な要素である点。しかしながら、「資産効果」の規模や発生時期だったり、それが他の効果とどのように相互作用するかについては、その分野の専門家同士でも見解が一致していません。たとえば、消費が拡大することで株価を押し上げる傾向が生じる一方、株価自身の上昇につられて消費が押し上げられる、といった明らかに複雑な相互作用についてです。もちろんですが消費が横ばいであっても、株価上昇によって企業があげる利益を増加させることができます。たとえば株価がひきつづき上昇傾向の際に、年金費用の計上を減額するやりかたです。つまるところは、物理学の理論のように鮮やかなものとはほど遠く、まるでうまく解けないかもしれない。「資産効果」は、そのような数学的パズルを伴っているのです。
Breakfast Meeting of the Philanthropy Roundtable
November 10, 2000
I am here today to talk about so-called “wealth effects” from rising prices for U.S. Common stocks.
I should concede, at the outset, that “wealth effects” are part of the academic discipline of economics and that I have never taken a single course in economics, nor tried to make a single dollar, ever, from foreseeing macroeconomic changes.
Nonetheless, I have concluded that most Ph.D. economists underappraise the power of the common-stock-based “wealth effect”, under current extreme conditions.
Everyone now agrees on two things. First, spending proclivity is influenced in an upward direction when stock prices go up and in a downward direction when stock prices go down. And, second, the proclivity to spend is terribly important in macroeconomics. However, the professionals disagree about size and timing of “wealth effects”, and how they interact with other effects, including the obvious complication that increased spending tends to drive up stock prices while stock prices are concurrently driving up spending. Also, of course, rising stock prices increase corporate earnings even when spending is static, for instance, by reducing pension cost accruals after which stock prices tend to rise more. Thus, “wealth effects” involve mathematical puzzles that are not nearly so well worked out as physics theories and never can be.
2016年1月4日月曜日
2015年の投資をふりかえって(1)全般について
2015年にとった投資上の行動も一昨年(2014年)とほぼ同じようなものでした。要約すると次のとおりです。
・シルバー関連の銘柄を買い増しした。
・従来からの主力銘柄を売却して持ち分を減らした。
・その他の銘柄は現状維持。
価格水準の観点からみれば、価格下落がつづいたコモディティー関連の銘柄を買い増しした一方、割高あるいは割高気味となった日本株を売却し、価格水準がそれほど過熱していない銘柄は現状維持のままとしたのが、基本的な方針でした。
ただしシルバー関連銘柄は価格変動に応じて持ち株数を調整したり、損失を確定させることで、平均購入単価を下げました。また現状維持などの銘柄では、つなぎ売りをして価格下落時に買い戻したものもありました。
銘柄ごとの売買概況は以下のとおりです(各分類での並び順は、持ち株の評価額が大きなものから)。
<新規購入(New Buy)>
・メック(4971); 9/29に購入したのみで、全ポートフォリオ中の割合は微小です。
<買増し(Add)>
・シルバー・ウィートン(SLW)
・iSharesシルバーETF(SLV)
・モザイク(MOS)
<現状維持(Hold)>
・マイクロソフト(MSFT)
・バークシャー・ハサウェイ(BRK.B)
・クラレ(3405)
・インテル(INTC)
・任天堂(7974)
・サンリオ(8136); ただし1単元だけ売却しました。
・日精エー・エス・ビー機械(6284)
・しまむら(8227)
・日東電工(6988)
・マニー(7730)
<一部売却(Reduce)>
・従来からの主力銘柄
・日進工具(6157)
・シルバー関連の銘柄を買い増しした。
・従来からの主力銘柄を売却して持ち分を減らした。
・その他の銘柄は現状維持。
価格水準の観点からみれば、価格下落がつづいたコモディティー関連の銘柄を買い増しした一方、割高あるいは割高気味となった日本株を売却し、価格水準がそれほど過熱していない銘柄は現状維持のままとしたのが、基本的な方針でした。
ただしシルバー関連銘柄は価格変動に応じて持ち株数を調整したり、損失を確定させることで、平均購入単価を下げました。また現状維持などの銘柄では、つなぎ売りをして価格下落時に買い戻したものもありました。
銘柄ごとの売買概況は以下のとおりです(各分類での並び順は、持ち株の評価額が大きなものから)。
<新規購入(New Buy)>
・メック(4971); 9/29に購入したのみで、全ポートフォリオ中の割合は微小です。
<買増し(Add)>
・シルバー・ウィートン(SLW)
・iSharesシルバーETF(SLV)
・モザイク(MOS)
<現状維持(Hold)>
・マイクロソフト(MSFT)
・バークシャー・ハサウェイ(BRK.B)
・クラレ(3405)
・インテル(INTC)
・任天堂(7974)
・サンリオ(8136); ただし1単元だけ売却しました。
・日精エー・エス・ビー機械(6284)
・しまむら(8227)
・日東電工(6988)
・マニー(7730)
<一部売却(Reduce)>
・従来からの主力銘柄
・日進工具(6157)
2016年1月2日土曜日
早すぎることと誤っていることが区別できないとき(セス・クラーマン)
金融危機の影響で株式市場が底をつけた2009年3月に、OID誌(Outstanding Investor Digest)がセス・クラーマンの記事を掲載した号を発行していました。インターネット上を検索したところ、同記事のPDFファイルがアップロードされていたため、一部を引用してご紹介します。なお同誌はバリュー投資家に人気のある投資雑誌で、インタビューや講演をとりあげた記事が秀逸です。(日本語は拙訳)
seth-klarman-oid-interview-march-2009 [PDF] (Above Average Odds Investing)
はじめは、2008年初めの頃にセス・クラーマンが抱いていた市場全般に対する見方です。
次は、2008年10月にセス・クラーマンが講演した際の発言からです。
なお「早すぎることと誤っていることの区別」については、以前取り上げたハワード・マークスの記事「連続正解数1回」でも触れられています。
seth-klarman-oid-interview-march-2009 [PDF] (Above Average Odds Investing)
はじめは、2008年初めの頃にセス・クラーマンが抱いていた市場全般に対する見方です。
彼は[2008年の早い時期に書かれたアニュアル・レポートの]最後でこう触れていた。「いわゆる『2008年1月のバーゲン』が本当に割安だったのか、それともバリューに飢える投資家を誘う単なる危険な誘惑だったのだろうか。それが明らかとなるには、かなりの時間がかかると思います」。そして彼が記した判断は、言うまでもなく正しかったのである。
and finally, that, “We will not be certain until much later whether the so-called bargains of January, 2008 were truly undervalued or merely dangerous temptations to value-starved investors.” Well, needless to say, that verdict is in.
次は、2008年10月にセス・クラーマンが講演した際の発言からです。
<クラーマン> 何年も前からですが、「自分のポートフォリオを運用する投資家として、いちばん恐れることは何か」との質問を受けることがありました。それに対して、「よくある非常に割高な水準から下落する際に、早すぎる時点で買いに踏み切っていること」と答えました。市場が崩壊する可能性はわかっていました。しかし「市場が頂点を付けた1年後、つまり30%下落した1930年に私がいたらどうなっただろうか」と何度か想像してみました。その当時、魅力的なバーゲンがあったのはまちがいないでしょう。しかしそれからの3年間に市場が大きく下落したことで粉々にされたのも確実だと思います。1929年を100%とすると、20%を下回る水準まで下落したからです。70が20に下落する場合と100が20に下落する場合をくらべても、20に落ちたときにはほぼまったく同じように感じられるでしょう。早すぎることと誤っていることは、ときとして区別できなくなるわけです。(p. 2)
For years, when someone asked me what my biggest fear was as an investor in managing my portfolio, my answer was that it was buying too soon on the way down from often very overvalued levels. I knew a market collapse was possible. And sometimes, I imagined that I was back in 1930 after the market had peaked the year before, and then dropped 30%. Surely, there would've been some tempting bargains then. And just as surely, you'd have been crushed by the market's subsequent plunge over the next three years - down to below 20% of 1929 levels. A fall from 70 to 20, and from 100 to 20, would feel almost exactly the same by the time you hit 20. Sometimes being too early becomes indistinguishable from being wrong.
なお「早すぎることと誤っていることの区別」については、以前取り上げたハワード・マークスの記事「連続正解数1回」でも触れられています。
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