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2016年3月12日土曜日

2015年度バフェットからの手紙(6)イノベーションによる代償

2015年度「バフェットからの手紙」より、前回につづいて生産性向上に関する引用です。(日本語は拙訳)

労働者として長く雇用されてきた人たちが直面するのは、それとはちがった複雑な状況です。効率を求めてイノベーションと市場システムが互いにやりとりするようになると、多くの労働者は不要とされ、その技能は時代遅れになることがあります。人によっては、そこそこの仕事を他所でみつけられるかもしれません。しかしそうでない人たちには、取るべき道が残っていません。

低コスト競争によって製靴業のアジアへの移転が促進されたことで、ひとときは大成功していたデクスター・シューズ社[=バークシャーが買収した一社]は店じまいすることとなり、メイン州の小さな町で働いていた従業員1,600名をクビにしました。彼らは、他の技能を身に付けることのできる年齢を通り過ぎてしまった人ばかりでした。わたしたちが投じた資本はすべて失われましたが、それは許容できました。しかし労働者のみなさんの多くは、取り換えのきかない生計を失うことになりました。当社が元来営んでいたニュー・イングランドでの織物事業でも、それと同じ筋書きがゆっくりゆっくりと広がりました。終わりになるまでの20年間にわたって奮闘したのです。胸の痛む一例をあげますと、ニュー・ベッドフォードの工場で働いていた年かさの労働者の多くは、ポルトガル語を話す人たちでした。仮に英語ができたとしても、話せるうちには入りませんでした。ですから彼らには、代わりとなる次善の策がありませんでした。

しかしそのような破壊が生じるからといって、生産性を向上させる動きを阻止したり禁止することが解答にはなりません。かつて1,100万人ものアメリカ人が終生にわたって農場で働くよう強いられていたら、わたしたちが今日送っているような生活は得られなかったことでしょう。

そうするかわりの解決策があります。それは、働く意思を持っているものの、市場の力学ゆえに自身の技能に対して小さな評価しか受けられない人々へ、ほどほどの生活ができるような多様な救済策を講じるやりかたです(わたし個人としては、給付付き勤労所得税額控除制度(EITC)を改正・拡大するのが良いと考えています[過去記事]。働く意思のある人にとって米国はふさわしい国である、それを体現しようとする一例になるからです)。大多数のアメリカ人がますます豊かな生活を送れるからといって、その代償に不幸な人たちが貧しさにあえぐべきではないと思います。(PDFファイル23ページ目)

A long-employed worker faces a different equation. When innovation and the market system interact to produce efficiencies, many workers may be rendered unnecessary, their talents obsolete. Some can find decent employment elsewhere; for others, that is not an option.

When low-cost competition drove shoe production to Asia, our once-prosperous Dexter operation folded, putting 1,600 employees in a small Maine town out of work. Many were past the point in life at which they could learn another trade. We lost our entire investment, which we could afford, but many workers lost a livelihood they could not replace. The same scenario unfolded in slow-motion at our original New England textile operation, which struggled for 20 years before expiring. Many older workers at our New Bedford plant, as a poignant example, spoke Portuguese and knew little, if any, English. They had no Plan B.

The answer in such disruptions is not the restraining or outlawing of actions that increase productivity. Americans would not be living nearly as well as we do if we had mandated that 11 million people should forever be employed in farming.

The solution, rather, is a variety of safety nets aimed at providing a decent life for those who are willing to work but find their specific talents judged of small value because of market forces. (I personally favor a reformed and expanded Earned Income Tax Credit that would try to make sure America works for those willing to work.) The price of achieving ever-increasing prosperity for the great majority of Americans should not be penury for the unfortunate.

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