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2022年3月1日火曜日

2021年度バフェットからの手紙(1)保有現金について

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バークシャー・ハサウェイのウォーレン・バフェットが、2/26(土)付けで2021年度の「バフェットからの手紙」を公開しました。本文の文章量は10ページ分と、今年もさらに薄くなっています。その内容はあくまでも当社の株主に向けたものですが、そうでない一般投資家の方にも参考になるところがあると思います。

今回からの投稿では、いくつかの文章を拙訳付きでご紹介します。今回はバークシャーの資産における現金比率についてです。

SHAREHOLDER LETTER 2021 [PDF] (Berkshire Hathaway)

米国財務省証券

バークシャーの貸借対照表をみると、現金及びその等価物が1,440億ドル(約15兆円)となっています(ただしBNSF[鉄道子会社]とBHE[エネルギー子会社]が保有する分を除く)。このうち、1,200億ドルは米国財務省証券として保有しています。それらの満期はいずれも1年以内で、民間が保有する米国債のうちの約0.5%をバークシャーが受け持っていることになります。

チャーリーそしてわたしは、「バークシャー(とBNSFおよびBHEを除く子会社で)は、常に300億ドル以上の現金及び現金等価物を保有していくつもりだ」と公言してきました。みなさんの保有する当社が金銭的に堅固な会社であり、決して他者(やその友人)の好意にすがることがないよう、わたしどもは望んでおります。二人とも夜はぐっすり眠りたいですし、当社の債権者や被保険者や株主であるみなさんにも同じであってほしいと考えています。

しかし1,440億ドルとは、どうしたものでしょうか。

はっきり申し上げておきますが、この目をつく金額は血迷ったゆえに抱いた愛国心のあらわれなどではありません。またビジネスを保有したいという強い望みを、チャーリーやわたしが失ったわけでもありません。実際のところ、わたしがはじめてその情熱ぶりをあらわにしたのは80年前のことでした。1942年3月11日にシティーズ・サービス社の優先株を3株購入したときです(参考記事)。購入金額は114.75ドルで、貯金をすべて注ぎこみました。(その日のダウ工業平均終値が99ドルだったのは驚嘆すべき事実ですね。米国に逆らう賭けをしてはなりません)

初期に低下したものの、わたしは常に純資産の80%以上を株式に投じてきました。その状態を100%にしたいとずっと考えてきましたし、今でもそう思っています。現在のバークシャーがビジネスに資金を投じている割合が80%程度なのは、長期保有をする上でわたしどもが定めた条件を満たすような買収対象の企業やその一部分(つまり流通株式)を、わたしが見つけ出せていないからです。

現金保有率の高い同様な時期は過去にもあり、チャーリーとわたしはその状況を忍んできました。そういった時期は居心地のいいものではないですが、永続するわけでもありません。そして幸運にも2020年から2021年には資金を投じる若干魅力的な別の投資先を見つけることができました。つづきをお読みください。

U.S. Treasury Bills

Berkshire's balance sheet includes $144 billion of cash and cash equivalents (excluding the holdings of BNSF and BHE). Of this sum, $120 billion is held in U.S. Treasury bills, all maturing in less than a year. That stake leaves Berkshire financing about 1/2 of 1% of the publicly-held national debt.

Charlie and I have pledged that Berkshire (along with our subsidiaries other than BNSF and BHE) will always hold more than $30 billion of cash and equivalents. We want your company to be financially impregnable and never dependent on the kindness of strangers (or even that of friends). Both of us like to sleep soundly, and we want our creditors, insurance claimants and you to do so as well.

But $144 billion?

That imposing sum, I assure you, is not some deranged expression of patriotism. Nor have Charlie and I lost our overwhelming preference for business ownership. Indeed, I first manifested my enthusiasm for that 80 years ago, on March 11, 1942, when I purchased three shares of Cities Services preferred stock. Their cost was $114.75 and required all of my savings. (The Dow Jones Industrial Average that day closed at 99, a fact that should scream to you: Never bet against America.)

After my initial plunge, I always kept at least 80% of my net worth in equities. My favored status throughout that period was 100% - and still is. Berkshire's current 80%-or-so position in businesses is a consequence of my failure to find entire companies or small portions thereof (that is, marketable stocks) which meet our criteria for longterm holding.

Charlie and I have endured similar cash-heavy positions from time to time in the past. These periods are never pleasant; they are also never permanent. And, fortunately, we have had a mildly attractive alternative during 2020 and 2021 for deploying capital. Read on.

2022年2月27日日曜日

かいじゅうおどりをはじめよう(ジェレミー・グランサム)

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年頭になると、GMOのジェレミー・グランサムは株式市場全般の動向について触れることが通例になっています。「バブルの予言者」として名高い彼は、今年もその見解を披露してくれました。まず今回はその文章から、彼が言うところの「バブル」の定義をご紹介します。(日本語は拙訳)

LET THE WILD RUMPUS BEGIN (GMO)

バブル及びスーパーバブルの定義

当社GMOでは20年間以上にわたって、投資上のバブルを統計的にみた極端さによって定義してきました。すなわち、価格傾向からの乖離幅が2シグマに達したものをバブルとしています。たとえば、真正な硬貨を投げたときにでる表裏の回数が無秩序かつ正規分布することから、2シグマの事象とは一連のコイン投げを44回試行したときに、分布の各方向に1回生じる計算になります。

しかしながら現実の世界では、人間は(経済学的な意味において)効率的ではありません。もっと非合理にふるまいがちで、我を忘れてしまうこともあります。そのため、2シグマの非常事態はランダムすなわち44年毎ではなく、35年毎に生じてきました。私たちは金融史に登場するあらゆる資産クラスに関する入手可能なデータを調べてきました。そして300を超える2シグマ級の事象を発見しました。発展した証券市場で過去100年の間に生じた2シグマ級の株式バブルは、いずれも最終的にはバブルが形成される以前の価格傾向の水準へ完全に戻るまで下落していました。

The Definition of a Bubble and a Superbubble

We have defined investment bubbles at GMO for over 20 years now by a statistical measure of extremes - a 2-sigma deviation from trend. For a random, normally distributed series, like the sum of tosses of a fair coin, a 2-sigma event should occur once every 44 trials in each direction. This measure is arbitrary but seems quite reasonable.

In real life, though, humans are not efficient (in the economic sense) but are often quite irrational and can get carried away so that 2-sigma outliers occur more often than random - not every 44 years, but every 35 years. We studied the available data across all asset classes over financial history and found a total of more than 300 2-sigma moves. In developed equity markets, every single example of a 2-sigma equity bubble in the last 100 years has eventually fully deflated with the price moving all the way back to the trend that existed prior to the bubble forming.

「35年毎」というマジックナンバーは、よく言われるように「世代間の間隔」とおよそ一致しているように思えます。言いかえれば、「人間は、なかなか歴史から学べるようになれない」といったところでしょうか。

もうひとつ、こちらは備考です。本投稿の題名『かいじゅうおどりをはじめよう』は、絵本『かいじゅうたちのいるところ』(神宮輝夫訳)から借りたものです。原文の注釈において、タイトル"LET THE WILD RUMPUS BEGIN"は"Where the Wild Things Are."から引用した旨が記されています。

2022年2月7日月曜日

株式を売却するのは価格が下落したから(ハワード・マークス)

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ハワード・マークスをとりあげた投稿のつづきです。今回の話題は、投資家が株式を売却する理由のひとつについてです。前回分の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)

下落したから売却する

「単に利益を確定させたいがために、値上がりした資産を売却する」行動が誤っているように、値段が下がっているという理由だけで売却するのも悪いことです。それにもかかわらず、多くの人がそうしているに違いないと思います。

投資における掟とは「安く買って高く売ること」です。しかし、あきらかに多くの人が資産の値段が下がるにつれてますます売却したくなります。実際のところ、値段が上昇中の資産を買い続けることでやがては強気相場がバブルへ発展するのと同じように、値下がりするものを売却する動きが広まれば、下落相場は暴落相場へと移り変わります。投資家がどちらの方向にも極端に動き続けるゆえに、バブルと暴落に至るわけです。

私の脳裏には次のような映像がめぐります。典型的な投資家がある対象を100ドルで買いました。それが120ドルに値上がりすると、「このまま保有しよう。そうだ、買い増しなければ」。150ドルに達すると、「まさしくこれだよ、賭け分を倍に増やさないと」。逆に値段が90ドルに値下がりすれば、「平均コストを下げるために持分を増やそうと思う」。しかし75ドルに下がれば、平均コストをさらに下げる前に、抱いていた仮説を見直すべきだと結論付けます。下落が50ドルに至れば、「買い増しする前に、事態が落ちつくまで待ったほうがよい」。いよいよ20ドルともなれば、「0ドルになりそうだよ。もうやめだ、こんなのは」と嘆きます。

Selling Because It's Down

As wrong as it is to sell appreciated assets solely to crystalize gains, it's even worse to sell them just because they're down. Nevertheless, I'm sure many people do it.

While the rule is "buy low, sell high," clearly many people become more motivated to sell assets the more they decline. In fact, just as continued buying of appreciated assets can eventually turn a bull market into a bubble, widespread selling of things that are down has the potential to turn market declines into crashes. Bubbles and crashes do occur, proving that investors contribute to excesses in both directions.

In a movie that plays in my head, the typical investor buys something at $100. If it goes to $120, he says, "I think I'm onto something - I should add," and if it reaches $150, he says, "Now I'm highly confident - I'm going to double up." On the other hand, if it falls to $90, he says, "I'm going to think about increasing my position to reduce my average cost," but at $75, he concludes he should reconfirm his thesis before averaging down further. At $50, he says, "I'd better wait for the dust to settle before buying more." And at $20 he says, "It feels like it's going to zero; get me out!"

2022年1月27日木曜日

投資信託を買う投資家の平均的な成績(ハワード・マークス)

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ハワード・マークスをとりあげた前回投稿のつづきで、投資信託を買う投資家一般を評した話題です。(日本語は拙訳)

上述した人たちのような誤った行動[未訳]を、投資家は本当にとっているのでしょうか。これには数多くの事例が証拠としてあげられています。たとえばある調査研究では、「投資信託に資金を投じる平均的な投資家は、平均的な投資信託よりも劣った成績をあげている」としています。どうすればそのようなことになるのか。持分を単に保有しつづければ、あるいは投資家自身が起こす過ちが無秩序であれば、平均的な投信投資家は語義どおり平均的投信と同じ成果をあげるものです。では、いかにしてその研究結果どおりになるのか。それには結果的に、投資家がこれから好成績をあげるファンドへ投じていた資金を減らし、これから成績が悪化するファンドへの資金配分を増やす必要があります。別の言いかたをしてみましょう。「投信を買う投資家とは平均的にみれば、直近で最高の成績をあげたファンドに付いていくために(それゆえ帰り道を味わうでしょう)、最悪の成績だったファンドを売却する傾向がある(価格回復の可能性を捨ておいて)」。

Do investors really make behavioral errors such as those I've described? There's plenty of anecdotal evidence. For example, studies have shown that the average mutual fund investor performs worse than the average mutual fund. How can that be? If she merely held her positions, or if her errors were unsystematic, the average fund investor would, by definition, fare the same as the average fund. For the studies' findings to occur, investors have to on balance reduce the amount of capital they have in funds that subsequently do better and increase their allocation to funds that go on to do worse. Let me put that another way: on average, mutual fund investors tend to sell the funds with the worst recent performance (missing out on their potential recoveries) in order to chase the funds that have done the best (and thus likely participate in their return to earth).

2022年1月20日木曜日

0.8%の期間を逃すな(ハワード・マークス)

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オークツリーのハワード・マークスが1月13日付でメモを公開していました。今回は株式売買の「売り」に関する話題を取りあげています。一般的な内容なので、参考になると思います。いくつかの文章をご紹介していきます。(日本語は拙訳)

Selling Out (Oaktree Capital Management)

[マネー・マネージャーの]ビル・ミラーが触れた[株価の]「急騰」とは、どのようなものでしょうか。J.P.モルガン・アセット・マネジメント社が著した2019年版『引退に関する手引』にでてくる数字が、[投資情報サイトの]モトリー・フールの記事(2019年4月11日付)に引用されていたので、取りあげます。1999年から2018年までの20年間におけるS&P500の上昇率は、年率5.6%でした。しかし最上の10日間(全取引日に対する割合は約0.4%)を逃すと、上昇率は年2.0%にとどまるとのことでした。また最上の20日間を逃した場合、儲けがまったくあがらなかったとしています。過去を振り返ってもたびたび見られたように、結局のところ投資利益は少ない日々に集中していました。それにもかかわらず、頻繁に行動を起こす投資家諸氏は市場との出入りをくりかえします。売買取引で生じる費用を負担し、譲渡所得にかかる税を支払い、前述した「急騰」を逃すリスクをとりつづけています。

 

What are the "sharp bursts" Miller talks about?  On April 11, 2019, The Motley Fool cited data from JP Morgan Asset Management's 2019 Retirement Guide showing that in the 20-year period between 1999 and 2018, the annual return on the S&P 500 was 5.6%, but your return would only have been 2.0% if you had sat out the 10 best days (or roughly 0.4% of the trading days), and you wouldn't have made any money at all if you had missed the 20 best days.  In the past, returns have often been similarly concentrated in a small number of days.  Nevertheless, overactive investors continue to jump in and out of the market, incurring transactions costs and capital gains taxes and running the risk of missing those "sharp bursts."

2022年1月3日月曜日

2021年の投資をふりかえって

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 今年度は魅力的な機会をみつけられず、ひとにぎりの銘柄を追加購入しただけでした。一方の売却については、全般的に好調な米国株から2銘柄を売却しました。その結果、昨年と同様に手元資金を純増させています。


銘柄ごとの売買概況は、以下のとおりです(銘柄コード順。リンク先は株価チャート)。また、昨年度分の投稿はこちらです。


<新規購入(New Buy)>

なし。ただし調査検討中の銘柄が1社あり。


<買増し(Add)>

・武田薬品工業(4502); 1年間にわたって都度購入。

・日精エー・エス・ビー機械(6284); 11月に購入。


<現状維持(Hold)>

・クラレ(3405)

・塩野義製薬(4507)

・メック(4971)

・日進工具(6157)

・マニー(7730)

・任天堂(7974)

・アップル(AAPL)

・バークシャー・ハサウェイ(BRK.B)

・インテル(INTC)

・iShares シルバー・トラスト(SLV)

・従来からの銘柄


<一部売却(Reduce)>

・マイクロソフト(MSFT); 夏から秋に売却。ひきつづき、大部分は現状維持。


<全部売却(Sell)>

・モザイク(MOS); 春に売却。