バークシャー株を保有する独特かつ貴重な個人投資家の集団をみれば、わたしどもがウォール街のアナリストや機関投資家の関心をひきたがらない理由が、いっそう理解しやすくなるかもしれません。わたしどもは望むべき投資家をすでに得ております。そしてあらゆる点を考慮すれば、彼らが別の人たちに置き換わってしまうとは考えていません。
バークシャーの株主数には「発行済株式数」という制限があります。わたしどもは、すでにその席を占めているみなさんをとても好ましく思っております。
もちろんですが、その「パートナー全体」でみれば出入りはあるでしょう。しかしそれが最小限にとどまることを、わたしもチャーリーも望んでいます。つまるところ、「友だちやご近所の知り合いや配偶者が、頻繁に変わってほしい」と考える人がいるものでしょうか。
1958年に、フィル・フィッシャーは投資に関する卓越した本を書きました(和訳書)。その本の中で彼は、公開企業を経営する姿をレストラン経営にたとえています。彼いわく、「食堂を手がける場合には、ハンバーガーにコーラを添えるか、あるいは異国のワインを合わせたフレンチを出せば、客を惹きつけて繁盛できる」と。しかしここでフィッシャーは、「唐突にそれらを互いに入れ替えてはいけない」と警告しています。「見込み客に向けたメッセージは、彼らが店に入ってすぐに目の当たりにするものと一貫していなければならない」と説いています。
バークシャーでは56年間にわたって、ハンバーガーとコーラを出してきました。その料理に惹かれるみなさんを、わたしどもは大事にしていきます。
(つづく)
Berkshire's unusual and valued family of individual shareholders may add to your understanding of our reluctance to court Wall Street analysts and institutional investors. We already have the investors we want and don't think that they, on balance, would be upgraded by replacements.
There are only so many seats - that is, shares outstanding - available for Berkshire ownership. And we very much like the people already occupying them.
Of course, some turnover in "partners" will occur. Charlie and I hope, however, that it will be minimal. Who, after all, seeks rapid turnover in friends, neighbors or marriage?
In 1958, Phil Fisher wrote a superb book on investing. In it, he analogized running a public company to managing a restaurant. If you are seeking diners, he said, you can attract a clientele and prosper featuring either hamburgers served with a Coke or a French cuisine accompanied by exotic wines. But you must not, Fisher warned, capriciously switch from one to the other: Your message to potential customers must be consistent with what they will find upon entering your premises.
At Berkshire, we have been serving hamburgers and Coke for 56 years. We cherish the clientele this fare has attracted.
2021年3月15日月曜日
2020年度バフェットからの手紙(7)ハンバーガーとコカ・コーラ
2021年3月11日木曜日
2020年度バフェットからの手紙(6)もしかして長生きの秘訣だろうか
そこまでお話ししたあとに、5番目のバケツに対してわたしとチャーリーが特別な親近感を抱かないとしたら、わたしどもは人間としてどうかしていると思います。100万人を超える個人投資家のみなさんがもっぱら信頼して、未来に何が起ころうと自分たちの持分の扱いをわたしどもに任せているのですから。当社の仲間に加わった彼らは、株主をやめるつもりはありませんでした。そして、わたしどもが共にしていた当初のパートナーと同様の心持ちを抱いていました。実際のところ、パートナーシップ時代からの多数の投資家や、さらにはその後裔のみなさんは、かなりのバークシャー株を保有しつづけています。
そのような古株の典型としてスタン・トルーセン氏があげられます。彼は快活な気前のよいオマハの眼科医で、わたしの友人でもあります。2020年11月13日には100歳になりました。スタンは1959年にまだ若きオマハの医師10名とともに、わたしを加えたパートナーシップを設立しました。彼らは新たな組織にEmdee(エムディー)と独創的な名前を付けました。わたしと妻はわが家に彼らを招き、お祝いの夕食会を毎年催しました。
1969年にわたしたちのパートナーシップがバークシャー株を分配したときに、医師たちの全員が受けとった株をそのまま保有しました。投資や会計の細かなことがわからなかったのかもしれません。しかし彼らは、バークシャーにおいてもパートナーの一人として扱われることは理解していました。
Emdee時代からのスタンの親友2名は、今では90代後半の年齢になりましたが、なおもバークシャー株を保有しています。チャーリーが97歳、わたしが90歳である事実とあわせると、この集団における仰天の永続力からは興味ぶかい疑問がわいてきます。もしかして、バークシャー株を保有すると寿命が延びるのではないかと。
(つづく)
All of that said, Charlie and I would be less than human if we did not feel a special kinship with our fifth bucket: the million-plus individual investors who simply trust us to represent their interests, whatever the future may bring. They have joined us with no intent to leave, adopting a mindset similar to that held by our original partners. Indeed, many investors from our partnership years, and/or their descendants, remain substantial owners of Berkshire.
A prototype of those veterans is Stan Truhlsen, a cheerful and generous Omaha ophthalmologist as well as personal friend, who turned 100 on November 13, 2020. In 1959, Stan, along with 10 other young Omaha doctors, formed a partnership with me. The docs creatively labeled their venture Emdee, Ltd. Annually, they joined my wife and me for a celebratory dinner at our home.
When our partnership distributed its Berkshire shares in 1969, all of the doctors kept the stock they received. They may not have known the ins and outs of investing or accounting, but they did know that at Berkshire they would be treated as partners.
Two of Stan’s comrades from Emdee are now in their high-90s and continue to hold Berkshire shares. This group’s startling durability - along with the fact that Charlie and I are 97 and 90, respectively - serves up an interesting question: Could it be that Berkshire ownership fosters longevity?
2021年3月9日火曜日
2020年度バフェットからの手紙(5)大きな5つのバケツ
現在バークシャーの株を保有する人たちは、大きな5つの「バケツ」に分けて考えることができます。その一つは「創業者」的なバケツで、わたしがそこを占めています。わたしの保有する株式はさまざまな慈善団体へ毎年寄贈されているので、やがてそのバケツはカラになります。
残る4つのバケツのうち、2つは機関投資家によって占められています。彼らはどちらも他人の資金を扱っています。しかし両者のバケツの類似点はそこでおわりです。彼らの投資手順がもっと異なることはありえませんでした。
機関投資家バケツのひとつには、インデックス・ファンドが入っています。これは、投資の世界において巨大かつ急速に拡大している領域です。それらのファンドは、単に追跡対象としている指数の値動きを模倣しています。インデックス投資家のお気に入りはS&P500で、その指数にはバークシャーも含まれています。ここで強調しておきますが、インデックス・ファンドがバークシャー株を保有するのは、単にそうしなければならないからです。「組み入れ率」に従うがために、自動運転によって売買を執行しています。
もう一方の機関投資家バケツに含まれるのが、顧客の資金を運用管理するプロフェッショナルです。それらのファンドは、裕福な個人や大学や年金基金などに関わっています。それらプロ運用者は、価値評価や将来予測の面でくだした判断に基づき、ある投資対象から別の対象へと資金を移すように委託されています。これは敬意を払うべき職業ですが、難しい仕事でもあります。
わたしどもは、そういった「アクティブな」集団のために喜んで働きます。ただしその間にも、彼らは顧客の資金を投下すべき優れた対象を探し求めています。長期的な視点に立って非常にまれにしか売買しない運用者がいることは、たしかです。コンピューター上でアルゴリズムを走らせて、ナノ秒単位で株式の売買を指示できる人もいます。マクロ経済上の観点で判断し、それによって出入りを決めるプロ投資家もいるでしょう。
4番目のバケツには、先に記したアクティブな機関投資家と同じようなやり方で運用している個人投資家が含まれます。そのような株主は、みずからの保有するバークシャー株を、他に魅力的な投資先が見つかったときに利用できる資金源とみなします。これは理解できることで、そのような姿勢に異議を唱えるつもりはありません。当社で保有している株式にはそのように考えているものもあるからです。
(つづく)
Ownership of Berkshire now resides in five large "buckets," one occupied by me as a "founder" of sorts. That bucket is certain to empty as the shares I own are annually distributed to various philanthropies.
Two of the remaining four buckets are filled by institutional investors, each handling other people's money. That, however, is where the similarity between those buckets ends: Their investing procedures could not be more different.
In one institutional bucket are index funds, a large and mushrooming segment of the investment world. These funds simply mimic the index that they track. The favorite of index investors is the S&P 500, of which Berkshire is a component. Index funds, it should be emphasized, own Berkshire shares simply because they are required to do so. They are on automatic pilot, buying and selling only for "weighting" purposes.
In the other institutional bucket are professionals who manage their clients' money, whether those funds belong to wealthy individuals, universities, pensioners or whomever. These professional managers have a mandate to move funds from one investment to another based on their judgment as to valuation and prospects. That is an honorable, though difficult, occupation.
We are happy to work for this "active" group, while they meanwhile search for a better place to deploy the funds of their clientele. Some managers, to be sure, have a long-term focus and trade very infrequently. Others use computers employing algorithms that may direct the purchase or sale of shares in a nano-second. Some professional investors will come and go based upon their macro-economic judgments.
Our fourth bucket consists of individual shareholders who operate in a manner similar to the active institutional managers I've just described. These owners, understandably, think of their Berkshire shares as a possible source of funds when they see another investment that excites them. We have no quarrel with that attitude, which is similar to the way we look at some of the equities we own at Berkshire.
2021年3月8日月曜日
2020年度バフェットからの手紙(4)想いは今も同じ
チャーリー[・マンガー]は1962年に自身のパートナーシップを設立し、わたしと同じように良好に運営していました。わたしも彼も機関投資家を抱えたことはありませんでした。そのため、わたしどものパートナー[=有限責任組合員]のなかに、金融面で洗練された人はほとんどいませんでした。わたしどもの企てに参画してくれた人たちは、わたしどもがおのれの資金と同じように彼ら自身の資金も扱ってくれるものだと、単純に信頼してくれました。直感的に、あるいは友人からの助言に従ったことで、その人たちは次の点を正しくも判断しました。わたしやチャーリーが資本を恒久的に欠損させる事態を著しく忌避する上に、十分にうまい成果をあげられると期待できなければ、彼らの資金をあずからないだろうと。
1965年にバフェット・パートーナーシップ(BPL)がバークシャーの経営権を獲得したことで、わたしは企業経営に足を踏み入れることになりました。BPLを解散しようと決めたのは1969年になってからでした。BPLはその年末に、持分の割合に応じた分配を実行することとなりました。現金と3社の株式をです。そのうち価額がもっとも大きかったのは、BPLで70.5%分を保有していたバークシャー株でした。
一方のチャーリーは、1977年に店じまいをしました。彼がパートナーに対して分配した資産には、ブルーチップ・スタンプ社の持分が大量にありました。彼のパートナーシップとバークシャーとわたしが共同で、同社の経営権を握っていたのです。そのためブルーチップ社は、わたしがBPLを解散した際に分配した3社の株式のひとつでもあります。
1983年にバークシャーとブルーチップ社は合併し、バークシャーに記載登録されている株主数は1,900名から2,900名に増加しました。わたしもチャーリーもすべての株主が、つまり継続株主・新規株主・見込み株主のいずれもが、理解を同じにしてほしいと考えました。
それゆえ1983年度の年次報告書では、バークシャーにおける「事業上の主要な原則」を冒頭のページに掲載しました。第一の原則は次のように始まっています。「わたしたちは会社法人の形態をとっているものの、わたしたちの心持ちはパートナーシップにあります」と。わたしたちの関係は1983年にそのように定められましたが、その定めは今も同じです。私もチャーリーもそして取締役諸氏も同様に、これから何十年にもわたってその宣言が、バークシャーにとってうまく働くにちがいないと考えております。
(つづく)
Charlie formed his partnership in 1962 and operated much as I did. Neither of us had any institutional investors, and very few of our partners were financially sophisticated. The people who joined our ventures simply trusted us to treat their money as we treated our own. These individuals - either intuitively or by relying on the advice of friends - correctly concluded that Charlie and I had an extreme aversion to permanent loss of capital and that we would not have accepted their money unless we expected to do reasonably well with it.
I stumbled into business management after BPL acquired control of Berkshire in 1965. Later still, in 1969, we decided to dissolve BPL. After yearend, the partnership distributed, pro-rata, all of its cash along with three stocks, the largest by value being BPL's 70.5% interest in Berkshire.
Charlie, meanwhile, wound up his operation in 1977. Among the assets he distributed to partners was a major interest in Blue Chip Stamps, a company his partnership, Berkshire and I jointly controlled. Blue Chip was also among the three stocks my partnership had distributed upon its dissolution.
In 1983, Berkshire and Blue Chip merged, thereby expanding Berkshire's base of registered shareholders from 1,900 to 2,900. Charlie and I wanted everyone - old, new and prospective shareholders - to be on the same page.
Therefore, the 1983 annual report - up front - laid out Berkshire's "major business principles." The first principle began: "Although our form is corporate, our attitude is partnership." That defined our relationship in 1983; it defines it today. Charlie and I - and our directors as well - believe this dictum will serve Berkshire well for many decades to come.
2021年3月7日日曜日
2020年度バフェットからの手紙(3)バフェット・パートナーシップ
バークシャー・パートナーシップ
バークシャーはデラウェア州に設立された会社です。そのため、当社の取締役は同州の法律に従わなければなりません。そのひとつとして、取締役会に所属する者は会社及び株主にとっての最善の利益のために行動する義務を負っています。当社の取締役はその原則を受け入れています。
もちろんですがそれに加えて、バークシャーの取締役は当社に対して次の点を望んでいます。顧客を満足させること。36万名になる従業員の技量を高め、それに対して報いること。資金の貸し手には敬意をもって接すること。事業を営むさまざまな都市や州においては良き市民とみなされること。当社ではそれらの4者を重要な支持者として大切に考えています。
しかしながら、それらのどの集団も次の各件について票決する権利は有していません、配当金の支払い、会社の戦略的方向、CEOの選出、そして企業買収や部門売却の是非についてです。それらの要件を果たす責任は、バークシャーの取締役のもとに帰着します。そして彼ら取締役は、会社やその所有者の長期的な利益を忠実に代表しなければなりません。
わたしやチャーリーは法的な責任だけでなく、バークシャーの株を保有する数多くの個人投資家に対して特別な義務を感じています。ここでちょっとした身の上話をすることで、わたしどもが常ならぬこだわりを抱いているわけや、そのことがわたしどもの行動をどのように御しているのか、わかりやすくなるかと思います。
* * * * * * * * * * * *
バークシャーに携わる以前には、わたしは一連のパートナーシップを使って多数の個人が出資する資金を運用していました。最初の3つのパートナーシップは1956年に設立しました。ときが経つにつれて複数の組織を扱うのがやっかいになってきたので、1962年に12件あったパートナーシップを1つの組織に融合させました。それがバフェット・パートナーシップ(BPL)です。
その年までには、わたしの保有する実質的にすべての資金は、さらには妻のものも同様に、多数の有限責任組合員の資金とともに投資されていました。わたしは給料や手数料をもらっていませんでした。そのかわりに、有限責任組合員[=出資者]が年率6%の利益を確保した上で、それを超える利益をあげた場合にだけ、無限責任組合員[=資産運用者]としての報酬が支払われました。もし年間の利益がその水準を超えられなかった場合には、不足分はわたしが将来受ける報酬と相殺するように、次年度へ持ち越される決まりとしていました(幸運なことに、そうなったことは一度もありませんでした。パートナーシップのあげた利益は、[ゴルフの]「ボギー」と言える6%の成績をいつも超えていたからです)。ときが経つうちに、わたしの両親や兄弟姉妹や叔母や叔父やいとこや義理の親族が保有する資金のかなりの部分が、そのパートナーシップへ投資されることになりました。(p. 10)
(つづく)
The Berkshire Partnership
Berkshire is a Delaware corporation, and our directors must follow the state's laws. Among them is a requirement that board members must act in the best interest of the corporation and its stockholders. Our directors embrace that doctrine.
In addition, of course, Berkshire directors want the company to delight its customers, to develop and reward the talents of its 360,000 associates, to behave honorably with lenders and to be regarded as a good citizen of the many cities and states in which we operate. We value these four important constituencies.
None of these groups, however, have a vote in determining such matters as dividends, strategic direction, CEO selection, or acquisitions and divestitures. Responsibilities like those fall solely on Berkshire's directors, who must faithfully represent the long-term interests of the corporation and its owners.
Beyond legal requirements, Charlie and I feel a special obligation to the many individual shareholders of Berkshire. A bit of personal history may help you to understand our unusual attachment and how it shapes our behavior.
* * * * * * * * * * * *
Before my Berkshire years, I managed money for many individuals through a series of partnerships, the first three of those formed in 1956. As time passed, the use of multiple entities became unwieldy and, in 1962, we amalgamated 12 partnerships into a single unit, Buffett Partnership Ltd. ("BPL").
By that year, virtually all of my own money, and that of my wife as well, had become invested alongside the funds of my many limited partners. I received no salary or fees. Instead, as the general partner, I was compensated by my limited partners only after they secured returns above an annual threshold of 6%. If returns failed to meet that level, the shortfall was to be carried forward against my share of future profits. (Fortunately, that never happened: Partnership returns always exceeded the 6% "bogey.") As the years went by, a large part of the resources of my parents, siblings, aunts, uncles, cousins and in-laws became invested in the partnership.
ウォーレンがみずからに課した報酬基準は、自信に裏付けられていたとは思いますが、実直で好感が持てるものです。彼やチャーリーの魅力は、能力や実績が秀でている点だけでなく、こういった行動規範をすこしずつ積み上げることで、職業倫理を高めたり人格を陶冶してきた点にもあると感じています。
2021年3月6日土曜日
2020年度バフェットからの手紙(2)楽に稼げるほうがいい
わたしとチャーリーがコングロマリットたる当社に望んでいることは次のとおりです。「すぐれた経済的特性を有し、さらにはすぐれた経営者に率いられたさまざまな分野にわたる諸企業の、全部あるいは一部を保有してほしい」と。しかし、それらの企業を経営支配できるかどうかは、わたしどもにとって重要ではありません。
わたしがそのように悟るまでには、しばらく時間がかかりました。しかしチャーリーのおかげで、さらにはわたし自身がバークシャーを引き継いだあとに繊維事業で20年間にわたって悪戦苦闘した末に、ようやくわたしにもよく理解できました。すばらしい企業の言わば非支配株主持分を保有するほうが、ずっと儲かる上にずっと愉快であり、さらには伸び悩む企業を100%まるごと保有して苦心するよりも、はるかに労力がかからないことを。
そういった理由からコングロマリットたる当社はこれからも、経営面で支配下におさめた企業とそうでない企業を併せて保有していく方針です。わたしとチャーリーは、候補企業の永続的競争力や経営陣の手腕・性格そして価格を踏まえた上で、もっとも妥当だと確信できるのであればどこであれ、株主のみなさんからあずかっている資本をいちずに投下していきます。
そのような戦略をとる際に、わたしどもの労力がほとんどあるいはまったく必要ないとすれば、なおさらありがたいことです。飛込競技で採用されている採点規則とは対照的に、ビジネスの取り組みに対して「高難度」だからと加点されることはありません。さらには、ロナルド・レーガン[元大統領]も次の警句を残しています。「精励尽力して命を落とす人はいないと言うが、そもそもどうしてそうするのだろうね」と。
Charlie and I want our conglomerate to own all or part of a diverse group of businesses with good economic characteristics and good managers.Whether Berkshire controls these businesses, however, is unimportant to us.
It took me a while to wise up. But Charlie - and also my 20-year struggle with the textile operation I inherited at Berkshire - finally convinced me that owning a non-controlling portion of a wonderful business is more profitable, more enjoyable and far less work than struggling with 100% of a marginal enterprise.
For those reasons, our conglomerate will remain a collection of controlled and non-controlled businesses. Charlie and I will simply deploy your capital into whatever we believe makes the most sense, based on a company's durable competitive strengths, the capabilities and character of its management, and price.
If that strategy requires little or no effort on our part, so much the better. In contrast to the scoring system utilized in diving competitions, you are awarded no points in business endeavors for "degree of difficulty." Furthermore, as Ronald Reagan cautioned: "It's said that hard work never killed anyone, but I say why take the chance?"
2021年3月5日金曜日
2020年度バフェットからの手紙(1)2匹でお支払いしましょう
バークシャー・ハサウェイのウォーレン・バフェットが、2/27(土)付けで2020年度の「バフェットからの手紙」を公開しています。今回とりあげている内容は同社株主向けの話題が中心になっており、一般投資家からすれば興味を持てない文章かもしれません。しかし個人的には同社の株主を長く続けており、昨年には持ち株を買い増しする機会を久しぶりに得て、さらには今後も買い増ししたいと願っています。今回の文章もそのような株主を唱導してくれる内容であり、ひきつづき株主でありたいと思わせてくれるものでした。
今回からの投稿では、同レターの中からいくつかの文節を拙訳付きでご紹介します。まずはコングロマリットに関する話題をとりあげます。
・SHAREHOLDER LETTER 2020 [PDF] (Berkshire Hathaway)
当社の方針は二段構え
バークシャーは「コングロマリット企業」と呼ばれることがよくあります。これは「たがいに無関係である各種事業を闇雲に保有している持株会社」を示すために使われる否定的な言葉です。もちろんこの言葉はバークシャーを描写してはいます。しかし、それはごく一部に限られます。それでは当社が、コングロマリットの原型とはなぜどのように異なっているのかを理解するために、コングロマリットの歴史を若干振り返ってみたいと思います。
概してコングロマリット企業は、「事業を買う際には丸ごとで」という制約を長期間にわたってみずからに課してきました。しかしながら、その戦略には2つの大きな問題がつきまといました。第一の問題点は「真に傑出した企業は、他社に買収されたいとはまず考えなかった」ことです。しかもこれは対処不可能な問題です。その結果、買収案件を渇望するコングロマリットの経営者たちは、重要かつ永続的な競争力を有していない、そこそこの企業に狙いを定めるしかありませんでした。「釣りをするにはもってこいの池」ではなかったのです。
そのうえコングロマリット屋たちは「散々な事業の世界」へと入り込んだ際に、獲物を捕らえるためには驚くほどの「経営権としての」割増金を支払う羽目になると気づいたものでした。意欲的なコングロマリット屋たちは、この「支払いすぎる」問題を解決する方法を知っていました。値の張る買収に使える「通貨」として、大幅に割高な自社の株式を生み出せればよいと考えたのです(そちらの犬の値段は1万ドルですか。では、うちの猫は5,000ドルなので、2匹でお支払いしましょう)。
コングロマリット企業の株式を割高な株価へと育む道具としては、喧伝するための各種技術や、「想像力ゆたかな」会計操作がよく使われました。後者は欺瞞的と呼べればいいほうで、ときには詐欺の領域へ踏みこんでいました。そのような仕掛けが「成功」したときには、被買収候補企業に対してたとえば企業価値の2倍で買収したいと条件提示できるように、そのコングロマリット企業の株価は企業価値の3倍へと押し上げられました。
投資という名の幻想が、おどろくほど長期間にわたって続くこともあります。ウォール街の金融家はその手の取引がもたらす手数料にすり寄り、報道機関は華やかな仕掛け人らが繰り出す話題に惹かれるものです。そしてまた、吹聴されている株式の値段が高騰しているという事実が、幻想ならず現実である「証拠」とみなされる時期があるものです。
もちろんですが結局のところ、祭りは終わりをむかえて、「皇帝」とみなされていた事業家たちの多くが衣服をまとっていなかったとわかります。金融の歴史には、有名なコングロマリット経営者の名前が満ちあふれています。当初の彼らは、ジャーナリストやアナリストや投資銀行家から「ビジネスの天才」と崇められていました。しかし彼らの創造した産物は、やがては廃品集積所と成り果てたのです。
そしてコングロマリット企業は悪評をこうむることになりました。(p. 4)
(つづく)
Two Strings to Our Bow
Berkshire is often labeled a conglomerate, a negative term applied to holding companies that own a hodge-podge of unrelated businesses. And, yes, that describes Berkshire - but only in part. To understand how and why we differ from the prototype conglomerate, let's review a little history.
Over time, conglomerates have generally limited themselves to buying businesses in their entirety. That strategy, however, came with two major problems. One was unsolvable: Most of the truly great businesses had no interest in having anyone take them over. Consequently, deal-hungry conglomerateurs had to focus on so-so companies that lacked important and durable competitive strengths. That was not a great pond in which to fish.
Beyond that, as conglomerateurs dipped into this universe of mediocre businesses, they often found themselves required to pay staggering "control" premiums to snare their quarry. Aspiring conglomerateurs knew the answer to this "overpayment" problem: They simply needed to manufacture a vastly overvalued stock of their own that could be used as a "currency" for pricey acquisitions. ("I'll pay you $10,000 for your dog by giving you two of my $5,000 cats.")
Often, the tools for fostering the overvaluation of a conglomerate's stock involved promotional techniques and "imaginative" accounting maneuvers that were, at best, deceptive and that sometimes crossed the line into fraud. When these tricks were "successful," the conglomerate pushed its own stock to, say, 3x its business value in order to offer the target 2x its value.
Investing illusions can continue for a surprisingly long time. Wall Street loves the fees that deal-making generates, and the press loves the stories that colorful promoters provide. At a point, also, the soaring price of a promoted stock can itself become the "proof" that an illusion is reality.
Eventually, of course, the party ends, and many business "emperors" are found to have no clothes. Financial history is replete with the names of famous conglomerateurs who were initially lionized as business geniuses by journalists, analysts and investment bankers, but whose creations ended up as business junkyards.
Conglomerates earned their terrible reputation.