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2012年2月29日水曜日

借り手にも貸し手にもなるな(ジェレミー・グランサム)

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ファンド・マネージャーのジェレミー・グランサムによる最新のレターが少し前に公開されました。こちらのファイルです。「ポローニアスじいさんからの投資の助言」という題名で、10の助言を記しています。今回は、そのうちの1つをご紹介します。

4. 辛抱して、長期でみること
よいカードがくるまで待ってください。とにかく待ち続けて、相場がとことん安いところまで下がったら、それが安全余裕となってくれます。「とてもよい」投資が「格別な」にかわるまで、今はただ苦悩に耐えるときです。個別株はたいてい持ち直しますし、相場全体は必ずそうなります。上述の規則[本引用では省略]に従っていれば、やがては悪いニュースを乗り越えられるでしょう。

4.Be patient and focus on the long term. Wait for the good cards. If you’ve waited and waited some more until finally a very cheap market appears, this will be your margin of safety. Now all you have to do is withstand the pain as the very good investment becomes exceptional. Individual stocks usually recover, entire markets always do. If you’ve followed the previous rules, you will outlast the bad news.


最近の市場での上昇ぶりをみると、この文章は少し前に書かれたものかと思わせる節があります。そうだとしても、以前ご紹介したボブ・ロドリゲスの発言「注意!この先危険」と似ていますね。ちなみに、このお二人は早めに警告を出すタイプです。

なお、ポローニアスとはハムレットの登場人物の一人です。レターの最終ページには、ハムレット第一幕第三場のせりふが引用されています。

2012年2月28日火曜日

バークシャー・ハサウェイの株式ポートフォリオ(2011年度末)

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ウォーレン・バフェットによる「株主のみなさんへ」には保有株式(普通株)の一覧が掲載されています(PDFのp.15)。以下に、2011年度分の保有株式の比率を図にしました。








株式ポートフォリオのおよそ半分を3銘柄で占めています。また上位10銘柄になると、80%占めることになります。ほどほどに集中投資ですね。この他にもワラントを保有しており、例えばBank of Americaの分を全て行使して株式を取得したら、AmexとP&Gの間に追加されます。残りのワラントはGoldman SachsとGEです。

余談ですが、我が家の株式ポートフォリオ配分も似たような比率になっています。3銘柄で半分です。個人的には上位2,3銘柄で半分ぐらいになるのが、調べものや考えるのが集中できてやりやすいです。

2012年2月27日月曜日

今年も反省します(ウォーレン・バフェット)

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ウォーレン・バフェットは「株主のみなさんへ」の中で、自社の経営状況の概要を説明します。他社のトップも同じようなことをしていますが、ウォーレンが大きく違うのは、自分のあやまりを認め、おおやけにする点です。普通の勤め人の感覚だと何ということはないのですが、ある種の人たちにとっては反省できない事情があるのでしょう。大株主という立場を割り引いたとしても、多くの人がウォーレンに親しみを持つのは、そういう当たり前感覚をきちんと持っているからだと思います。前回に続いて今回も、2011年度「株主のみなさんへ」からの引用です。(日本語は拙訳)

なお、ウォーレンは各種の証券投資で名実ともに大投資家となりましたが、今では事業会社を数多く買収し、利益の大半はそれらの子会社があげています。前年度(2011年度)は大震災の支払いで保険事業は低採算でしたが、一般事業(電力エネルギー、鉄道、その他)を合計すると、純利益は5,000億円強でした。

このグループに属する子会社[バークシャーでの報告上の分類。製造、サービス、小売事業が属する] の販売する商品は、ロリポップ[お菓子]からジェット飛行機にまでわたります。すばらしい経済特性を謳歌するものは、純有形資産比で25%から100%超の税引後利益をあげています。それ以外は12%から20%の、そこそこの利益をあげています。しかし、ひどく残念な利益にとどまるものもいくつかあります。資産を配分するのが私の仕事ですが、そこで重大な失敗をおかしたからです。買収対象ビジネスが持つ競争力か、あるいはその所属業界の経済情勢の先行きを見誤ったのです。買収に先立っては10年、20年先を見通そうとするのですが、ときには不十分でした。チャーリーのほうが当たっていました。しくじった買収先の何件かは、検討時に「棄権」とだけ言っていたからです。

This group of companies sells products ranging from lollipops to jet airplanes. Some of the businesses enjoy terrific economics, measured by earnings on unleveraged net tangible assets that run from 25% after-tax to more than 100%. Others produce good returns in the area of 12-20%. A few, however, have very poor returns, a result of some serious mistakes I made in my job of capital allocation. These errors came about because I misjudged either the competitive strength of the business being purchased or the future economics of the industry in which it operated. I try to look out ten or twenty years when making an acquisition, but sometimes my eyesight has been poor. Charlie’s has been better; he voted no more than “present” on several of my errant purchases. (PDFの11ページ目)


ここで重要なのはウォーレンの謝罪ではなく、投資の失敗の原因です。「買収対象ビジネスが持つ競争力か、あるいはその所属業界の経済情勢の先行きを見誤った」としています。これは経営管理や戦略以前の、根本的な次元のものです。以前取り上げた記事「10秒ください」をふりかえってみてください。ウォーレンの判断基準に優先順位がついていますが、フィルター1とフィルター2に見事に当てはまっています。

チャーリー・マンガーは言っています。「自分で痛い目にあうよりも、他人の過ちから学べ」。ウォーレンの反省を他山の石としたいものです。

2012年2月26日日曜日

2011年度「株主のみなさんへ」(ウォーレン・バフェット)

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昨日の2/25(土)に、ウォーレン・バフェットによる2011年度「株主のみなさんへ」がバークシャー・ハサウェイのWebサイトに公開されました。

後半部は、先日Fortuneに掲載されていたものと同じでした。本ブログでも「ゴールドや債券よりも株式がよい理由(ウォーレン・バフェット)」で取り上げています。未見の方はそちらをご覧ください。今回ご紹介するのは、持ち株に加わったIBMに関する話題です。ウォーレン、あいかわらずイケてます。(日本語は拙訳)

IBMを例にしてみましょう。ビジネス界を注視している人でしたらみなさんご存知のように、歴代CEOのルー・ガースナーとサム・パルミサーノはすばらしい業績をあげてきました。20年前には破産寸前だったIBMを立てなおし、今日では際立った存在となっています。彼らのなした経営管理面での業績は、まさにたぐいまれなものでした。

一方、それにひけをとらないほど財務管理面も秀でています。特に近年になって、財務がより柔軟になっています。実のところ、これほど上手に財務管理ができている大企業は他に思いあたりません。IBMの株主にとって望ましい利益を、著しく増やしてくれているのです。同社は借金をうまく活用し、もうけにつながる買収を続けています。買収の対価はほとんどの場合、現金払いです。さらには、自社株買いを積極的に行っています。

現時点のIBMの発行済株式数は11億6,000万株で、私たち[バークシャー]はそのうちの5.5%にあたる6,390万株を保有しています。当然のことですが、同社が今後5年間であげる利益がどうなるかは、私たちにとって非常に重要です。加えて、同社はその期間に4兆円ほどを投じて自社株買いをやるでしょう。では、ここで問題です。バークシャーのような長期投資家にとって、その間はどうなってほしいでしょうか。

速攻でお答えしましょう。その5年間はIBMの株価が低迷するよう祈るべきです。

ちょっと計算してみましょう。IBMの株価がたとえば平均で200ドル[=16,000円]だとします。同社は2億5000万株を買うのに4兆円払うことになります。[自己株式を除いた]発行済株式総数は9億1000万株になり、私たちは同社の7%を保有することになります。逆に5年間の株価が平均300ドルに上がると、IBMは[同じ金額では]1億6700万株しか買えません。すると5年後の発行済株式総数は9億9000万株で、私たちの保有率は6.5%となります。

もしIBMが5年間で1兆6,000億円の利益をあげるとしたら、株価が上がる場合よりも株価が下がって「残念な」場合のほうが、私たちのぶんは80億円多くなります[1兆6,000億円の0.5%]。時がたつと、私たちが[安値で]買った株式は、高値で自社株を買う場合とくらべると、1,200億円ぐらいは価値が大きくなるでしょう。[IBMの現在のPERは15。そのため、80億円 * 15 = 1,200億円]

単純なことです。将来、株を買い増しするつもりであれば、自分のお金を使うのでも、あるいは間接的(投資先の企業が自社株買いをする)になっても、どちらにしても株価が上がれば痛むのはあなたです。逆に株価が打撃を受ければ、あなたが得をします。ですが、人の感情というのは話をややこしくするもので、ほとんどの人は、株を買い増ししようとしている人も含めて、株価が上がるのを見るとうれしくなってしまいます。そういう株主は、まるでガソリンが値上がりしているのに喜ぶマイカー通勤者のようです。
「今日の分はタンクの中にちゃんと入ってるぜ」

チャーリーと私の考え方は、多くのみなさんには納得してもらえないかもしれません。私どもは人の振舞いを十分に観察して、そういうのは無意味だとわかったのですが。ただ、私どもがどうやって計算したのかはわかって頂ければと存じます。ここで打ち明けておくべきでしょう。私も若かった頃には、相場が上昇すると喜んだものでした。そのうち、ベン・グレアムの「賢明なる投資家」を読む機会がありました。第8章を読むと、そこには投資家は株価の変動をどう捉えるべきか書いてありました。読むや否や、目からうろこが落ちました。それからというもの、株価の下落を歓迎するようになったのです。そのような本に巡り合えたのは、人生のうちでもっとも幸運だったことの一つです。

最後になりますが、IBMへの投資の成否は、第一には今後どれだけ利益をあげてくれるかにかかっています。しかし、その次に重要なのは、同社がそれなりの規模で自社株をどれだけ買ってくれそうか、という点です。もし自社株買いが進んで、発行済株式総数が6,390万株[すなわち、バークシャーの持株数]になるようであれば、私も節約家の看板を下ろして、バークシャーの社員のみなさん[270,000名]に有給休暇をお贈りします。

Let’s use IBM as an example. As all business observers know, CEOs Lou Gerstner and Sam Palmisano did a superb job in moving IBM from near-bankruptcy twenty years ago to its prominence today. Their operational accomplishments were truly extraordinary.

But their financial management was equally brilliant, particularly in recent years as the company’s financial flexibility improved. Indeed, I can think of no major company that has had better financial management, a skill that has materially increased the gains enjoyed by IBM shareholders. The company has used debt wisely, made value-adding acquisitions almost exclusively for cash and aggressively repurchased its own stock.

Today, IBM has 1.16 billion shares outstanding, of which we own about 63.9 million or 5.5%. Naturally, what happens to the company’s earnings over the next five years is of enormous importance to us. Beyond that, the company will likely spend $50 billion or so in those years to repurchase shares. Our quiz for the day: What should a long-term shareholder, such as Berkshire, cheer for during that period?

I won’t keep you in suspense. We should wish for IBM’s stock price to languish throughout the five years.

Let’s do the math. If IBM’s stock price averages, say, $200 during the period, the company will acquire 250 million shares for its $50 billion. There would consequently be 910 million shares outstanding, and we would own about 7% of the company. If the stock conversely sells for an average of $300 during the five-year period, IBM will acquire only 167 million shares. That would leave about 990 million shares outstanding after five years, of which we would own 6.5%.

If IBM were to earn, say, $20 billion in the fifth year, our share of those earnings would be a full $100 million greater under the “disappointing” scenario of a lower stock price than they would have been at the higher price. At some later point our shares would be worth perhaps $1.5 billion more than if the “high-price” repurchase scenario had taken place.

The logic is simple: If you are going to be a net buyer of stocks in the future, either directly with your own money or indirectly (through your ownership of a company that is repurchasing shares), you are hurt when stocks rise. You benefit when stocks swoon. Emotions, however, too often complicate the matter: Most people, including those who will be net buyers in the future, take comfort in seeing stock prices advance. These shareholders resemble a commuter who rejoices after the price of gas increases, simply because his tank contains a day’s supply.

Charlie and I don’t expect to win many of you over to our way of thinking - we’ve observed enough human behavior to know the futility of that - but we do want you to be aware of our personal calculus. And here a confession is in order: In my early days I, too, rejoiced when the market rose. Then I read Chapter Eight of Ben Graham’s The Intelligent Investor, the chapter dealing with how investors should view fluctuations in stock prices. Immediately the scales fell from my eyes, and low prices became my friend. Picking up that book was one of the luckiest moments in my life.

In the end, the success of our IBM investment will be determined primarily by its future earnings. But an important secondary factor will be how many shares the company purchases with the substantial sums it is likely to devote to this activity. And if repurchases ever reduce the IBM shares outstanding to 63.9 million, I will abandon my famed frugality and give Berkshire employees a paid holiday. (PDFの6ページ目)

2012年2月25日土曜日

誤判断の心理学(6)好奇心(チャーリー・マンガー)

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以前取り上げた「投資で成功するのに大切なこと」では、チャーリー・マンガーは正しい気性を持つよう、発言していました。しかし、それだけでは足りなくて、好奇心を持ち続けることも必要だとしています。

今回の話題「好奇心」は、他の心理学的傾向とは異なり、望ましいものとして取り上げられています。そのせいか文章も短めで、今回ご紹介するもので全てです。(日本語は拙訳)

誤判断の心理学
The Psychology of Human Misjudgment

(その6)好奇心
Curiosity Tendency

哺乳類はうまれつき好奇心にあふれていますが、人間以外で筆頭に挙げられるのは類人猿や猿でしょう。そして人間の好奇心は、それらの真猿類よりもさらに強くなっています。進んだ文明圏では、知識が進展した文化ゆえに好奇心はいっそう役立つものへつながります。たとえば、アテネやその植民地アレキサンドリアでは、純粋な好奇心から数学や科学が発達しました。一方のローマは、それらにはほとんど貢献せず、そのかわりに鉱山、街道、水道橋といった「現実的な」工学面に注力しました。近代教育の最高峰(語義上は、ほんの一握り)がその範囲を広げ続けていますが、好奇心は身近なところで大いに役立つものです。他の心理学的傾向はよからぬ結果につながるものですが、そうならないようにしたり、減らしたりしてくれるからです。また好奇心があれば、学校を出た後でも末永く、楽しみをえたり、知恵を身につけることができます。

There is a lot of innate curiosity in mammals, but its nonhuman version is highest among apes and monkeys. Man's curiosity, in turn, is much stronger than that of his simian relatives. In advanced human civilization, culture greatly increases the effectiveness of curiosity in advancing knowledge. For instance, Athens (including its colony, Alexandria) developed much math and science out of pure curiosity while the Romans made almost no contribution to either math or science. They instead concentrated their attention on the "practical" engineering of mines, roads, aqueducts, etc. Curiosity, enhanced by the best of modern education (which is by definition a minority part in many places), much helps man to prevent or reduce bad consequences arising from other psychological tendencies. The curious are also provided with much fun and wisdom long after formal education has ended.

2012年2月24日金曜日

注意!この先危険(ボブ・ロドリゲス)

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今回ご紹介するのは、ファンド・マネージャーの「超慎重派」ボブ・ロドリゲスが2/18に富裕層投資家のグループ向けに行った講演Caution: Danger Aheadです。

講演の前半では、欧日米の当局が放漫な財政や金融政策を続けている状況を取り上げ、低金利の続く現在の債券市場の危うさやインフレへの懸念を示しています。次に株式市場に対する見方が続きます。あくまでも、主に米国在住の投資家を前にした講演なので、日本の状況とは違うものです。個人的には、日本の個別銘柄はもっと楽観的にみています。そのような前提ですが、興味深かった発言を以下に引用します。(日本語は拙訳)

まずは、米国株式市場の低PERについてです。
図7では、黄色の線はS&P500のPERを示しています。この12年間はずっと下がり続け、1950年代半ば以来見られなかった水準まできています[1970年代からの株式の死と言われた頃にも、10以下になっている模様]。この低下傾向は、これまでの半世紀でもっとも長く続いています。そのため、株価はほどほどか割安だと考える人が多くなっていますが、歴史的にみれば、現在の価格には様々なリスクが考慮されていません。私もそうだったのですが、企業の収益の回復ぶりには驚いた人が多いでしょう。最近の記録的な税引前利益率は最たるものです。並み以下のこの経済成長下にも関わらずです。



ですから、この状況もおしまいになります。ただし、それほど急速ではないでしょう。細かく調べてみると、非金融企業の税引前利益率の増加の73%は、低金利(38%)や低賃金(35%)によるものでした。加えて、S&P500企業の売上の45%は、国外であげたものです。そのため、ヨーロッパや日本が景気後退にむかえば、さらなるリスクとなります。ヨーロッパから飛んでくる火の粉を甘くみないでください。新興国への貸出しの大部分は、ヨーロッパの銀行が占めているからです。株式市場のPERが下がっているのは、さまざまなリスクの高まりをおりこんでいるものと、私は考えています。利益率の低下、悲観的な経済成長の見通し、財政政策のあやまり、世界経済の不透明さといったリスクです。株価の騰落が大きくなっているのも、そのひとつに加えられるでしょう。ポートフォリオ・マネージャーたちは入ってきたニュースをほぼ即座に解釈して反応するからです。企業活動の先行きが低成長になるとみられると、現在の高水準の利益率や株価騰落が大きい状況とあいまって、投資家は株価を低PERへと押し下げます。マーケットがこんな状況ですから、株式に資金の多くを投じるのであれば、より低PERを心がけて安全余裕を大きくとらなければなりません。個人的には、今後10年間の平均的なリターンは、一桁台前半から中ほどになるのでは、と考えています。それでも楽観的かもしれませんが。

Exhibit 7 shows that the S&P 500’s P/E ratio, the yellow line, has declined over the past 12 years to a level not seen since the mid-1950s and is the longest sustained decline in a half century. Many consider the stock market reasonably or cheaply valued, when compared to history, so, its current valuation discounts numerous risks. The corporate earnings recovery surprised many, including me, particularly with near record pre-tax profit margins, despite substandard economic growth;

therefore, case closed--but not so fast. Upon closer examination, 73% of the non-financial corporate pre-tax profit margin expansion resulted from lower interest (38%) and labor (35%) costs.(note 19) Furthermore, approximately 45% of the S&P’s revenues are internationally sourced, so European and Japanese recessions pose additional risks. Contagion from Europe should not be underestimated since European banks dominate emerging market lending. I believe the market’s P/E decline reflects the growing risk of profit margin contraction, a sluggish economic growth outlook, fiscal policy mismanagement and international economic uncertainty. Increased market volatility adds to this list, as portfolio managers digest and react to news almost instantaneously. When a company’s operations are viewed as having low growth expectations, combined with peak margins and high volatility, investors typically ascribe a lower P/E valuation to the company’s stock. This portrayal describes the market and, therefore, a higher margin of safety, through a lower P/E, should be required for an aggressive equity allocation. In my opinion, low to mid single-digit returns will be the norm for the next decade and this may prove to be optimistic.

次は、今後の運用環境についての彼の考えです。
みなさんの中には、もっと何かをするような策を私が出すだろう、と期待していた方も多くいらっしゃるかと存じます。しかし、私としては元本を減らさないことを最上の務めとしています。今は辛抱のときです。私が思うに、世界的に高水準となっている債務が招くリスクや混乱を、多くの投資家が過小評価しています。今はまだ、経済や金融市場が不安定のまま拡大していく第2段階です。このような時勢で投資から際立った成果をあげるには、柔軟であること、現金比率を高くすること、適切ならば集中投資をすることが求められます。資金全額を投資し、インデックスにあわせてポートフォリオ中の配分を見直すような時代は、一昔前に終わったのです。

I know many of you would like more actionable ideas but principal protection is uppermost in my mind. Patience is required now. I believe many investors underestimate the potential risks and disruptiveness from high global financial leverage. We are in phase 2 of a continuing and expanding economic and financial market instability. Flexibility, high liquidity, and concentrated asset deployment, when appropriate, will be key elements in attaining superior investment performance. The era of being fully invested and adjusting portfolio weights relative to an index has been over for more than a decade.

聞き手は富裕層が中心なので、全額投資うんぬんのくだりはそれに見合った資産規模を想定した発言かと思われます。個人的には、給与所得などの比率がそこそこ高い時期は、現金比率を気にする必要性は小さいと考えています。

最後に、聴衆のみなさんへの助言になります。
最後になりますが、これまでの長い経歴の中で、私はたくさんの過ちを犯してきました。そういった過ち自体もそうですが、なぜそうなったのか考え直すようにしたおかげで、物事の行く末を予測する助けになりました。[著述家の]ノーマン・カズンズはこう言っています。「知恵とは、結末を予測することからできている」。失敗をしたらいい経験ができたと考え、そこから何かを学んでください。なぜ起こったのか分析し、お金に関する知恵を増やしてください。混沌としたこの時期に、みなさんがよき収獲をえて、無事な旅を過ごされますように。

「この先危険につき、注意」どうぞ、お忘れなく。

In closing, during my long career, I have made many mistakes. These mistakes, and my pursuit of understanding why they occurred, have been instrumental in helping me to anticipate consequences. As Norman Cousins said, “Wisdom consists of anticipation of consequences.” When you make a mistake, embrace it as a learning experience, analyze why it occurred, and increase your financial wisdom. I wish you all good hunting and safe journey through these turbulent times.

Remember, CAUTION: DANGER AHEAD.

同氏はマクロ予測だけでなく、個別企業に対しても徹底した分析を行いますが、最近は立場がかわったため、マクロの話題が目につきます。個人的にはマクロ予測には振り回されないようにしていますが、心構えと資金を準備するために参考にしています。そういえば、先日ご紹介したウォーレン・バフェットの発言も似ており、債券市場に対して注意の声をあげていましたね。

2012年2月23日木曜日

ウォルター・シュロスの投資成績

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前々回にウォルター・シュロスが亡くなった話題を取り上げましたが、今回は脂がのっていた頃の彼の投資成績についてです。

ベンジャミン・グレアムの会社をやめてから、ウォルター・シュロスは自分のファンドを立ち上げました。1955年のことです。ウォーレンが同氏を「大投資家」と紹介した講演資料に彼の成績を残しているので、グラフの形で以下にご紹介します。なお、Y軸の目盛は対数表示です。








青線がシュロスのパートナーシップの成績です。シュロスへの報酬をひいた後の金額です。当初元本が28年間で67倍になっています。赤線はS&P(500?)の配当込みのリターンですが、こちらは12倍弱にとどまっています。インフレによってドルは1/3程度に減価しているので額面どおりには受け取れないのですが、1975年以降の成績はあざやかです。1973年から1974年の厳しい下げの時期も、年率1ケタ台の減少で乗り切っています。

もう一つ引用があります。こちらはウォーレン・バフェットの2006年度「バークシャーの株主のみなさんへ」からで、同氏を取り上げた一節です。(日本語は拙訳)

ウォルターはビジネススクールだけでなく、大学にも行きませんでした。1956年当時、彼の事務所にはファイル・キャビネットが1本あるだけでした。2002年までには、それが4本に増えました。ウォルターは、秘書や事務員、会計係を雇いませんでした。ただ、息子のエドウィンとだけ、仕事に勤しみました。エドウィンはノースカロライナ芸術学校の卒業生です。ウォルターとエドウィンは、インサイダー情報には一切近寄りませんでした。彼らが手にしたのは公開された情報だけで乏しいものでしたが、ウォルターがベン・グレアムのもとで働いていた頃に学んだ簡単な統計手法を使って株式を選び出しました。ウォルターとエドウィンは、1989年にOutstanding Investors Digest[バリュー投資家に好評のインタビュー誌]のインタビューで、こう聞かれています。「おふたりのやりかたを一言でいうと、どうなりますか」。エドウィンの答えは「株を安く買うようにつとめています」。モダンポートフォリオ理論、テクニカル分析、マクロ経済の見解、複雑なアルゴリズム。そういうのはお呼びじゃなかったのです。

Walter did not go to business school, or for that matter, college. His office contained one file cabinet in 1956; the number mushroomed to four by 2002. Walter worked without a secretary, clerk or bookkeeper, his only associate being his son, Edwin, a graduate of the North Carolina School of the Arts. Walter and Edwin never came within a mile of inside information. Indeed, they used “outside” information only sparingly, generally selecting securities by certain simple statistical methods Walter learned while working for Ben Graham. When Walter and Edwin were asked in 1989 by Outstanding Investors Digest, “How would you summarize your approach?” Edwin replied, “We try to buy stocks cheap.” So much for Modern Portfolio Theory, technical analysis, macroeconomic thoughts and complex algorithms.
(p.21)

ウォルター・シュロスが残してくれた投資家へのメッセージ「株式投資で利益をあげるのに必要な16の要因」、ご興味を持たれた方はごらんになってください。

2012年2月22日水曜日

TOPIX Core30ひとかじり(2)任天堂(過去の価格政策)

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最近読んだ本『ニンテンドー・イン・アメリカ: 世界を制した驚異の創造力』で、過去の新ゲーム機発売前の価格政策に触れている文章がありましたので、ご紹介します。

まずはファミコンです。
山内は、ファミコンはヒットすると確信していたので、アーケード部門を廃止し、資金と経験をファミコンに集中投下した。価格は、山内が決して譲歩できない重要なポイントだった。ファミコンは安くしなければならない--市場のどの製品よりも安く。確かに、アップルのリサやゼロックスのスターは最高級マシンだったが、価格が高すぎたために大失敗に終わった。

山内は1万円を切る小売価格にして、その上利益を出そうとした。これは言わば二部料金制のビジネスモデルにおいて、基本料金からも大きな利益を期待するようなものだ。たとえば、このビジネスモデルでよく知られる剃刀メーカーのジレット社では、1度しか買わない剃刀本体の価格を安く、継続的に買わなければならない刃の価格を高く設定している。山内はゲームとゲーム機の両方で儲けたいと主張した。 (p.78)

次はゲームボーイです。
横井は、着脱式のカートリッジが使える携帯型ゲーム機ができないものかとブレーンストーミングをはじめる。実は以前にも考えたことがあったのだが、当時は満足なものができなかった。表示が不鮮明で、なにしろ馬鹿高い。適正価格、ハードウェアの能力、プレイのしやすさ、消費者の興味関心--横井はこれらをよく理解していた。今度はできるはずだ。

ファミコンと同様、価格は何よりも重要だった。安さは絶対条件だったが、安っぽい作りではだめだ。横井は、発売直後で高価な、実績のない先端的な技術ではなく、既存の技術を利用するよう強く主張した。彼の哲学である「枯れた技術の水平思考」とは、既存の技術や部品を新しいアイデアで活かすという意味だ。テクノロジー、メモリ、トランジスタ。あらゆるものがどんどん小さく、安くなっている。ではなぜわざわざ高い最新の部品を採用して、そのコストを顧客に転嫁しなければならないのだ?これは島国の経済学の初歩だ。材料を輸入し、付加価値をつけ、利益が出る価格で売る。

たとえば、液晶画面のバックライトなど問題外だった。高価でバッテリーを食う上に重い。確かにゲームボーイ(この機械の呼び名だ)は暗いところでは遊べないと苦情が来るだろう。だが軽く安くバッテリーが長持ちする製品という条件のほうが、バックライトの長所より重要だった。

さらに驚いたことに、液晶画面はカラーではなかった。カラーもバッテリーを消耗するので、横井はグレーというか、ソ連の軍服のようなオリーブグリーン一色のモノクロ画面を提案したのだ。彼はシャープがこのグレー画面の開発に莫大な投資をするのを、胃が痛くなる思いで見ていた。シャープの初期製品は画面を正面から見ると非常に見づらく、見る角度によっては室内や太陽の光が映り込んでしまうような状態だった。

だが横井とシャープは最後の最後でやり遂げる。4階調の緑がかったグレーがきちんと表示されるようになったのだ。「ほうれん草ペーストの色」とライバル企業が広告で馬鹿にした色だ。横井はそうした雑音などまったく気にかけなかった。ゲームボーイにはイヤホンがついているので、よりプライベートにゲームを楽しめ、サウンドもモノラルではなくステレオにできる。バッテリー寿命も延びた。1つの電池パックで約40時間プレイできる。通信ケーブルを使えば2人同時プレイも可能だった。その他にもカートリッジをロックするスイッチなどさまざまな工夫をこらしたので、耐久性も上がり、なおかつスマートなゲーム機になった。

(中略)

ゲームボーイ本体も売れ続け、1億1800万台と言う驚異的な数に達する。 (p.126)

昨年発売された新型機3DSは、当初は価格が25,000円だったため、普及に苦労しました(値下げ後の現在は15,000円)。もちろん、楽しめるソフトがそろっていなかったことも大きな原因でしょう。ですが本書を読むと、製品価格も同じように、当社の経営層が細心の注意を払って意思決定してきた課題のようです。昨年の3DSの失敗で、岩田社長は前社長の山内氏にお灸をすえられたのでは、と邪推してしまいます。

今年の新製品Wii Uでは同じミスを繰り返さないはずです。思わず財布のひもがゆるむような、魅力的な価格をつけてくるでしょうか。

2012年2月21日火曜日

ウォルター・シュロス氏死去

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ウォーレン・バフェットの旧友であり、また彼から「大投資家」と呼ばれたウォルター・シュロス氏が亡くなりました。享年95歳になります。情報元は、ブルームバーグのこちらの記事です。Walter Schloss, ‘Superinvestor’ Who Earned Praise From Buffett, Dies at 95
今回は、同記事から何箇所か引用します。(日本語は拙訳)

はじめは、ウォーレン・バフェットの言葉です。

「ウォルター・シュロスとは親しくお付き合いさせて頂いて、61年になります」
バフェットは昨日の声明の中で述べた。
「彼は飛びぬけた投資成績をあげてきましたが、それ以上に重要なのは、投資ビジネス界で誠実さのお手本になったことです。顧客が大きな利益をあげないかぎり、ウォルターはびた一文受けとりませんでした。つまり、固定報酬はとらずに、あがった利益の一部を受けとったのです。信義という面でも、投資能力に匹敵していました」

“Walter Schloss was a very close friend for 61 years,” Buffett said yesterday in a statement. “He had an extraordinary investment record, but even more important, he set an example for integrity in investment management. Walter never made a dime off of his investors unless they themselves made significant money. He charged no fixed fee at all and merely shared in their profits. His fiduciary sense was every bit the equal of his investment skills.”


続いて、シュロス氏自身の言葉です。

「ふつうは割安になっている株を買うのが好みなので、もっと下がったときにもっと買うだけの度胸がいります
1998年に開催されたGrant’s Interest Rate Observer協賛の会合で、シュロスは述べた。
「それこそが、ベン・グレアムがずっとやってきたことなんですよ」

“Basically we like to buy stocks which we feel are undervalued, and then we have to have the guts to buy more when they go down,” Schloss said at a 1998 conference sponsored by Grant’s Interest Rate Observer. “And that’s really the history of Ben Graham.”


最後に、同氏の息子さんの言葉です。

エドウィン・シュロスはすでに引退しているが、昨日のインタビューで、父親の投資上の哲学と長命の間には因果関係があったのでは、と述べた。

「最近のマネー・マネージャーには、四半期ごとの決算も気になっている人が多いですね。朝の5時まで[眠れずに]爪をかじりあげているようですが、私の父は四半期決算の動きなんて、全然気にしてませんでした。だから、ぐっすり寝てましたよ」

Edwin Schloss, now retired, said yesterday in an interview that his father’s investing philosophy and longevity were probably related.

“A lot of money managers today worry about quarterly comparisons in earnings,” he said. “They’re up biting their fingernails until 5 in the morning. My dad never worried about quarterly comparisons. He slept well.”


シュロス氏のことは本ブログでも2回とりあげました。「あるファンドの始まり」と、「株式投資で利益をあげるのに必要な16の要因」です。最初の記事には粋な同氏の写真も載せています。未見の方は、ぜひごらんください。

2012年2月20日月曜日

50年間待ちました(ウォーレン・バフェット)

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前々回にご紹介したウォーレン・バフェットのインタビューで、IBMの株式を購入するきっかけについて、やりとりがありました(5分過ぎ)。原文のトランスクリプトは"Person to Person": Warren Buffettから引用しています。

そうです、チャーリー[・ローズ]。IBMの年次報告書はだいたい毎年読んできて、50年になります。今年のを読んでいて納得できるものがありましたので、8,000億円ほど投資することにしました。

Yeah. Charlie, I'd been reading IBM's annual report, literally, every year for 50 years. And then this year...I saw something that sort a clicked in terms of adding to my-- feeling of confidence. And -- so we spent $10-plus billion. (CLEARS THROAT)


ウォーレンの答えはさすがです。50年前というと1960年過ぎです。IBMが大ヒット作のメインフレーム・コンピューターSystem/360を出したのが1964年ですので、ウォーレンは絶頂期の頃からずっと同社を見守ってきたことになります。1987年にCoca-Colaの株式を買い始めたときも、長く待ち続けた後のことでした。彼らの辛抱強さや継続して取組む姿勢は、そっくり見習いたいものです。

2012年2月19日日曜日

誤判断の心理学(5)自縄自縛(チャーリー・マンガー)

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今回は、前回の傾向「疑いをもたないようにする傾向」とつながる話題をご紹介します。併せてお読みください。(日本語は拙訳)

誤判断の心理学
The Psychology of Human Misjudgment

(その5)終始一貫しようとする傾向
Inconsistency-Avoidance Tendency

人の脳は、回路の領域を節約するために変化を厭うようになりました。これは、一貫しないのを避けるという形で現れており、良くも悪くも習慣の面に影響しています。たくさんの悪癖を克服できた人は稀でしょうし、一つも克服できていない人もいるかもしれません。まあ、実のところ誰もが悪い癖をすごくたくさんもっています。よくないと思いつつも、ずっとそのままにしているのです。こんな状況ですから、若い頃に身についた習慣を運命とみる人が多いのも不思議ではありません。[ディケンズのクリスマス・キャロルで]マーリの哀れな幽霊が言った「この世でじぶんがつくった鎖で、じぶんをしばっているのだ」にでてくる鎖とは、習慣のことを指しています。はじめは軽くて感じられないほどですが、やがては硬くて外せなくなってしまうのです。

良き習慣を多く身につけ、悪しき習慣には近寄らないか直してしまう。そのような賢明な生き方ができる者は稀です。ですからここでも、ベンジャミン・フランクリンの『プーア・リチャードの暦』にでてくる大切な教訓の力を借りましょう。「1オンスの予防は、1ポンドの治療と同じ」。フランクリンがいくぶん説いているのは、人には終始一貫しようとする傾向があるので、ついてしまった習慣を改めるよりも、そもそも身につけないようにするほうが楽だ、ということです。

この変化をきらう傾向がゆえに現状維持しやすい例としては、前言、忠誠心、徳性、約束、社会的に認知された役割などが挙げられます。なぜ人の脳が疑念を速やかに払い、変化をきらうように進化したのか、完全にはわかっていません。が、以下の要因が組み合わさり、この変化嫌いを生みだす原動力になった、と私は考えています。

(1) ヒト以前のご先祖様だった時分は、捕食者から生き残るには意思決定の速さが決め手だったので、この変化嫌いが素早く意思決定する際に役立った。

(2) ご先祖様の頃に仲間と協力したほうが生き残りやすかったので、この変化嫌いが役立った。みんなが毎度違う反応を返すようだとなかなか難しいからだ。

(3) 読み書きが始まってから複雑な生活を営む現代に至るまでの限られた世代では、この変化嫌いこそが、進化によって導き出された最高の解決策だった。

The brain of man conserves programming space by being reluctant to change, which is a form of inconsistency avoidance. We see this in all human habits, constructive and destructive. Few people can list a lot of bad habits that they have eliminated, and some people cannot identify even one of these. Instead, practically everyone has a great many bad habits he has long maintained despite their being known as bad. Given this situation, it is not too much in many cases to appraise early-formed habits as destiny. When Marley's miserable ghost says, "I wear the chains I forged in life", he is talking about chains of habit that were too light to be felt before they became too strong to be broken.

The rare life that is wisely lived has in it many good habits maintained and many bad habits avoided or cured. And the great rule that helps here is again from Franklin's Poor Richard's Almanack: "An ounce of prevention is worth a pound of cure." What Franklin is here indicating, in part, is that Inconsistencey-Avoidance Tendency makes it much easier to prevent a habit than change it.

Also tending to be maintained in place by the anti-change tendency of the brain are one's previous conclusions, human loyalties, reputational identity, commitments, accepted role in a civilization, etc. It is not entirely clear why evolution would program into man's brain an anti-change mode alongside his tendency to quickly remove doubt. My guess is the anti-change mode was significantly caused by a combination of the following factors:

(1) It facilitated faster decisions when speed of decision was an important contribution to the survival of nonhuman ancestors that were prey.

(2) It facilitated the survival advantage that our ancestors gained by cooperrating in groups, which would have been more difficult to do if everyone was always changing responses.

(3) It was the best form of solution that evolution could get to in the limited number of generations between the start of literacy and today's complex modern life.


続いてダーウィンの話題です。こちらは以前にご紹介した「逆ひねり」と同様のものです。

最初に出した結論にこだわってしまう縛りから最もうまく自らを解放できた一人が、チャールズ・ダーウィンです。彼は若いうちから、自分の仮説を否定するような証拠がないか徹底的に検討することを、自らに課しました。自説が特によいと思えるときほど、念を入れました。このダーウィンのやり方と対極に来るのが、確証バイアスと呼ばれているものです。いい意味では使われない言葉ですね。ダーウィンは鋭くも、ヒトの持つ知覚上の誤りは、一貫しないのを避ける傾向によるものと認識していました。だからこそ自らのやりかたを律したのです。彼がたくさんの心理学的な洞察例を正しく残してくれたおかげで、最上の知的活動を推し進める際に役立ってきました。

One of the most successful users of an antidote to first conclusion bias was Charles Darwin. He trained himself, early, to intensively consider any evidence tending to disconfirm any hypothesis of his, more so if he thought his hypothesis was a particularly good one. The opposite of what Darwin did is now called confirmation bias, a term of opprobrium. Darwin's practice came from his acute recognition of man's natural cognitive faults arising from Inconsistency-Avoidance Tendency. He provides a great example of psychological insight correctly used to advance some of the finest mental work ever done.


自説にこだわるというのは投資面でもよくあることでしょう。誤った投資先から手を引けなかったり、柳の下に二匹目のどじょうがいると考えたり。最初の結論に縛られてしまうのは、以前ご紹介した他の傾向「愛好/愛情の傾向」や「嫌悪/憎悪の傾向」とあいまって、投資先への評価を誤らせる大きな落とし穴のように思えます。

なお、クリスマス・キャロルの翻訳は、以下の本からお借りしました。
クリスマス・キャロル(岩波少年文庫 村山英太郎訳)

2012年2月18日土曜日

(映像)これが私のオフィスです(ウォーレン・バフェット)

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以前にウォーレン・バフェットのオフィスの写真をご紹介しましたが、奇しくも同じ日にCBSでチャーリー・ローズがウォーレンにインタビューをしていました。オマハのバークシャーのオフィスからです。ウォーレンはあいかわらずのジョーク連発ですが、まじめな会話への切り替わりが自然で、どちらがホストなのか戸惑うほどです。

"Person to Person": Warren Buffett(トランスクリプトあり)



デール・カーネギーの話し方教室を受講したのは伝説的な逸話ですが、壁面に飾られた証書が映像に出てきます(6分過ぎ)。記録マニアのウォーレン、面目躍如です。

彼のしゃべりはテンポが速く、私の耳ではなかなか聴き取れません。最後のジョージ・クルーニーのジョークがいまひとつわからなかったのですが、トランスクリプトを読んでみたら、お得意のパターンのやつでした。

2012年2月17日金曜日

市場は自ら助くる者を助く(ウォーレン・バフェット)

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このところ日本の市場でも株価が上がっていますね。ここ最近の急上昇は目につきますが、日経平均で見ると、1年前と比べても高いといえる水準には達していないのですね。ここから上がるのか下がるのか、先のことはまるでわかりません。蛇足ですが、個人的にはどちらかというと株価が下がるほうが元気がでてきます(カラ元気?)。ウォーレン・バフェットの例の名言と同じです。

さて、今回はそのウォーレン・バフェットによる1982年の「株主の皆さんへ」からの引用です。(日本語は拙訳)

[バークシャーが市場で株式を買って企業を]部分所有するやりかたをうまく続けられるのは、魅力的なビジネスが魅力的な値段で買える場合だけです。それには、ほどほどの株価になっている市場が必要です。市場は、主と同じように「自ら助くる者を助く」のですが、主とちがって、市場は自分が何をしているのかわかっていない者は容赦しません。ですから、素晴らしい企業でも高すぎる株価で買ってしまうと、商売がその後も順調に進んだとしても、投資家にとっては帳消しで終わるかもしれないのです

Our partial-ownership approach can be continued soundly only as long as portions of attractive businesses can be acquired at attractive prices. We need a moderately-priced stock market to assist us in this endeavor. The market, like the Lord, helps those who help themselves. But, unlike the Lord, the market does not forgive those who know not what they do. For the investor, a too-high purchase price for the stock of an excellent company can undo the effects of a subsequent decade of favorable business developments.

一例として、マイクロソフト(MSFT)の10年チャートを挙げました。最近の上昇で若干プラスになりましたが、ほぼ横ばいです(配当は除く)。2002年当時のPERは40前後でした。たしかに高いですね。ちなみに現在のPERは12程度です。

2012年2月16日木曜日

慣れるように習え、そして慣れよ。(チャーリー・マンガー)

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前回取り上げた「学ぶ方法」は、学校だけではなく、企業でも重要視されている話題かと思います。「learning process」のようなキーワードで検索すると、インターネット上でも多くの検索結果が得られます。いずれそのような話題をとりあげるかもしれませんが、しばらくはチャーリー・マンガーの語りを咀嚼しつづけたいと思います。今回の引用は、おなじみの「Poor Charlie's Almanack」から、以前に取り上げた「世の中の働きと驚くほど一致する」に続く文章です。どうやって学べばよいのか、一例を示しています。(日本語は拙訳)

[順列や組み合わせといったやりかたを]無意識のうちには、なかなか実行できないものです。なぜそうなのかは、基本的な心理学に通じていれば、すぐにわかるでしょう。そう、脳の中の神経回路は、長きにわたった遺伝的、文化的な進化によって培われたものであり、パスカルとフェルマーの考えのようにはできていないからです。脳は物事を大雑把に見定めてしまうのです。パスカル・フェルマー的な要素も持ってはいますが、うまく働いていません。

だからこそ、この基礎的な数学[=順列、組み合わせ]を使いやすい形で学び、そして実生活で繰り返し使わなければならないのです。ゴルフがうまくなりたくても、もって生まれた体の動きでは自然にスイングできないのと同じです。ゴルファーとして自分がどこまでやれるのかわかるには、正しい握りを覚え、別のスイングを覚えなければならないのです。

By and large, as it works out, people can't naturally and automatically do this. If you understand elementary psychology, the reason they can't is really quite simple: The basic neural network of the brain is there through broad genetic and cultural evolution. And it's not Fermat/Pascal. It uses a very crude, shortcut-type of approximation. It's got elements of Fermat/Pascal in it. However, it's not good.

So you have to learn in a very usable way this very elementary math and use it routinely in life - just the way if you want to become a golfer, you can't use the natural swing that broad evolution gave you. You have to learn to have a certain grip and swing in a different way to realize your full potential as a golfer.


振り返ってみると、小学校で学んだことはきちんと身についているものです。例えば割り算の筆算だったり、分数の割り算だったり。幾度となく繰り返してきたものです。反対に、大学入試の直前に身につけた大量の知識や解法は、入学後まもなくすると消え失せてしまいました。他方、社会人になって身につけたスキルは、日常的な仕事でいやになるほど使ったせいか、これもよく定着しています。こうしてみると、実際的な形で身についていないのは、チャーリーの説くような基本的な学問(高校レベル)のようです。

それらを再学習する際に「使いやすい形で学び、実生活で繰り返し使う」、まだまだ実践できていないのですが、個人的にはこのテーマにこだわって取り組んでいきたいと考えています。

2012年2月15日水曜日

文明の進歩、自身の向上(チャーリー・マンガー)

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前々回(ゴルフと同じです)、それから前回(最高の助言)と、学ぶことについて取り上げましたが、今回は学び方について、チャーリー・マンガーの一言です。おなじみの「Poor Charlie's Almanack」からの引用です。(日本語は拙訳)

文明が進歩できたのは発明の方法が発明されてからだったように、自分自身を向上させるには、まず学ぶ方法を学ばなければなりません。

Just as civilization can progress only when it invents the method of invention, you can progress only when you learn the method of learning.

2012年2月14日火曜日

偉大な投資家からの、最高の助言(ボブ・ロドリゲス)

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極めつけの慎重派」として以前に取り上げたファンド・マネージャーのボブ・ロドリゲスが、FortuneのインタビューBob Rodriguez: The best advice I ever gotに応じていました。個人的には同氏の言行に注目しており、ファンドのWebサイトは度々訪れています。今回は若い頃に同氏が受けた助言についてです。(日本語は拙訳)

1974年の秋には、USCの大学院で投資上のポートフォリオ管理のコースを受講していました。金融市場は厳しい時期で、なぜそんなにひどい値段で証券が売られているのか、私にはわかりませんでした。グレアムとドッドが書いた著書『証券分析』に出会ったばかりの頃で、外部からきた講師の話をきくことになりました。チャーリー・マンガーという名のその人は、バリュー投資について熱心に語ってくれました。講義が済んだ後、チャーリーに近寄り、優れた投資のプロになるには何をしたらよいのか、たずねました。彼はこう答えました。「歴史を読むこと。読んで、読みまくるのです」。そんなわけで私は、歴史一般に限らず、経済史や金融史も読み、いっぱしの歴史家となったわけです。

私は、危機に直面した人々について学ぶことができました。ですから、2008年に金融危機がおきた時は、昔なじみのように思えました。1907年の銀行危機とよく似ていたからです。チャーリーの助言に従って歴史に親しんできたおかげで、類似点を文脈の中で捉えられました。

In the fall of 1974 I was in graduate school at USC taking a portfolio-management investment course. The financial markets were in difficulty, and I didn't understand how securities were being sold at such depressed levels. I had only recently discovered Security Analysis by Graham and Dodd when we had a guest lecturer come in named Charlie Munger, who went on about this idea of value investing. After the class was over, I walked up to Charlie and asked him if there was one thing that I could do that would make me a better investment professional. His answer was, 'Read history, read history, read history.' And so I became a good historian, reading both economic and financial history as well as general history.

What I learned is that people relate to the crises they have experienced. So when the crisis of 2008 came, it felt like an old friend to me because it had so many similarities to the banking crisis of 1907. Asking Charlie's advice and then reading history allowed me to put those things in context.


同氏は現在、USCのビジネススクールに設立されている投資関連の研究所で、アドバイザーを務めています。同研究所の学生は、実際にファンドを運用しながら学んでいるようです。

歴史から学ぶといえば、ジム・ロジャーズもどこかで書いていましたね。

2012年2月13日月曜日

ゴルフと同じです(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーは幾度となく、学ぶことの大切さにふれていますが、今回は未経験の投資分野でも通用すると説いたものです。おなじみの「Poor Charlie's Almanack」からの引用です。

とんとん拍子で大投資家になった人は皆、学んでいます。ウォーレンに知り合ってからいろんな優れた投資家がいましたが、彼は飛びぬけた一人ですね。このゲーム[=投資]は、すなわち学び続けることなのです。学んで習得する過程自体を好きにならなきゃね。

ウォーレンの様子を何十年もみてきましたが、彼は多くのことを学んできました。だからこそ、ペトロチャイナのような企業に投資できるまでに、自分の守備範囲を広げられたわけです。

投資を始めると、全然経験のない分野に投資することもでてきます。しかし、少しずつでも前進し続ければ、ほぼ確実に好成績をおさめられるような投資を始められるでしょう。大切なのは、規律を守り、勤勉に努め、実践を積むことです。ゴルフでうまくなりたいのと同じです。せっせと励まなければなりません。

学ぶのをサボっていると、他の人に追い越されますよ。

I don't know anyone who [learned to be a great investor] with great rapidity. Warren has gotten to be one hell of a lot better investor over the period I've known him, as have I. So the game is to keep learning. You gotta like the learning process.

I've watched Warren for decades. Warren has learned a lot, which has allowed him to [expand his circle of competence so he could invest in something like PetroChina].

If you're going to be an investor, you're going to make some investments where you don't have all the experience you need. But if you keep trying to get a little better over time, you'll start to make investments that are virtually certain to have a good outcome. The keys are discipline, hard work, and practice. It's like playing golf - you have to work on it.

If you don't keep learning, other people will pass you by.

2012年2月12日日曜日

めざましい成功を収めるには(マイケル・バーリ)

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遅まきながらマイケル・バーリという投資家のことを知りました。サブプライム・ローン危機を題材にした『世紀の空売り』に登場する隻眼の相場師です。Vanity Fairに同書の抜粋が紹介されており、シリコン・バレーの自宅のオフィスで撮影された彼の写真が印象に残っていました。住宅バブルが傾くほうに賭けた彼ですが、本来は根っからのバリュー投資家です。今回は同書からの引用になります。

まずは、マネー・マネージャーになる前の彼に対する寸評です。

「何よりまず、マイク・バーリはいつこんなことをしているんだ、って思ったよ。本業は研修医だろう?こっちの目に入るのは、彼の一日のうち医者じゃない部分だけで、なのにすごいとしか言いようがない。バーリは自分の取引内容をみんなに公開している。みんなはリアルタイムでそれをまねしてる。ドットコム・バブルのまっただ中に、バリュー投資を実践しているんだ。バリュー志向の株を買ってて、それはうちの会社も同じなんだが、うちは損をしている。顧客も失ってる。ぽっと出てきたバーリは、勝ち続けだ。利回り50パーセント。常識はずれだよ。人間わざじゃない。あっけに取られて見てたのは、うちの会社だけじゃないだろう」 (p.71)


次はバーリの発言です。

投資は一個の定石に煎じ詰められるものではないし、ひとつのロールモデルから習得できるものでもない、というのがバーリの考えだった。バフェットについて学べば学ぶほど、そのまねはできないという思いが強くなった。バフェットから得られた教訓は、めざましい成功を収めたければ、めざましい非凡さを身につけよというものだ。バーリは言う。

「偉大な投資家になろうと思ったら、自分の身の丈にあった流儀を持たなくてはなりません。ウォーレン・バフェットは、ベン・グレアムのよいところを全部学び取りながら、ベン・グレアムのまねをせず、自分の道へ足を踏み出し、自分のやりかたで、自分のルールで、金を動かしました。そのことに気づいたとき、わたしはすぐに、偉大な投資家になる方法を教えてくれる学校などないという真理を胸に刻みました。そんな学校があったら、世界一人気のある学校になって、とてつもなく高い授業料を取ることでしょう。だから、そんな学校は存在しないんです」

投資とは、自分ひとりの力で、自分にしかできないやりかたで、学ぶべきものなのだ。 (p.68)


彼のプライベート・ファンドのWebサイトはこちらです。メディアで取り上げられた記事や寄稿へのリンクが載せられています。また過去の年次報告書を読むと、けっこうな下落だった2001年に55%のゲインをあげています。見事です。

2012年2月11日土曜日

ゴールドや債券よりも株式がよい理由(ウォーレン・バフェット)

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ウォーレン・バフェットはアメリカの経済金融誌Fortuneに時折寄稿していますが、今週号(2/27)の記事Warren Buffett: Why stocks beat gold and bondsでは代表的な投資先3つ(株式、債券、金)のうち、株式がよいことを改めて説いています。ウォーレンがきまぐれに話題を取り上げることは少ないので、それなりのサインや警鐘をこめているかと思われます。一部を抜粋してご紹介します。(日本語は拙訳)

まずは債券などの通貨ベースの投資についてです。

通貨に裏付けられた投資先としては、MMF、債券、モーゲージ証券、銀行預金などがあります。それらはたいてい安全な投資とみなされていますが、実際は最も危険な資産に含まれるものです。ベータ[=価格変動の相対的な度合い]はゼロかもしれませんが、リスク[=バフェット言うところの購買力の低下]は大きいのです。

数世紀にわたって、それらの投資対象は多くの国で投資家の購買力を低下させてきました。発行条件通りに利息が支払われ、満期償還されてもです。この好ましからぬ事態は、今後も繰り返されることでしょう。各国政府は貨幣の究極的な価値を決定しますが、ときにはシステミックな要因が働いて、インフレを招くような政策をとらせることにもなるでしょう。が、そのような政策は、ときには手のつけようがなくなるものです。

Investments that are denominated in a given currency include money-market funds, bonds, mortgages, bank deposits, and other instruments. Most of these currency-based investments are thought of as "safe." In truth they are among the most dangerous of assets. Their beta may be zero, but their risk is huge.

Over the past century these instruments have destroyed the purchasing power of investors in many countries, even as these holders continued to receive timely payments of interest and principal. This ugly result, moreover, will forever recur. Governments determine the ultimate value of money, and systemic forces will sometimes cause them to gravitate to policies that produce inflation. From time to time such policies spin out of control.


現在の状況では、通貨関連の投資には手を出したくありません。それでも、バークシャーとしては、主に短期のものになりますが、その手の投資先に多大な資金を投じています。

Under today's conditions, therefore, I do not like currency-based investments. Even so, Berkshire holds significant amounts of them, primarily of the short-term variety.


次に、ゴールドへの投資についてです。

この手の投資が成功するには、買い手が増えていかなければなりません。同様にその買い手たちも、これからも別の買い手が増えると信じているからこそ、集まってくるのです。つまり保有者たちの心にあるのは、資産自体が何かを生みだすかではなく、むしろ他人がもっと熱心に欲するだろうと信じていることなのです。まあ、ゴールドはこれからもじっとしたままでしょうが。

This type of investment requires an expanding pool of buyers, who, in turn, are enticed because they believe the buying pool will expand still further. Owners are not inspired by what the asset itself can produce -- it will remain lifeless forever -- but rather by the belief that others will desire it even more avidly in the future.


確かに、ゴールドは産業用や装飾用にも使われています。しかし、それらの需要は限られており、新産金を吸収できるほどではありません。

True, gold has some industrial and decorative utility, but the demand for these purposes is both limited and incapable of soaking up new production.


今日では、世界中のゴールドは合計で17万トンになります。これを全て集めて溶かすと、一辺が20メートル強の立方体をつくれます。野球場の内野にすっぽり入るような感じの大きさです。現在の価格が1オンス1,750ドルなので、立方体全部では約750兆円です。この立方体を「金の山」[pile Au]と呼びましょう。

次に、同じ金額をかけて「商いの山」[pile Business]を作ってみましょう。まずアメリカ合衆国の全ての農地を買い上げます。総面積は160万平方キロメートルで[=およそ日本4個分]、毎年の生産高は16兆円になります。それからエクソン・モービル16社分を付け足します。同社は純利益3.2兆円で、世界で最も利益をあげている企業です。それだけ買っても、手元にはまだ80兆円残ります(これだけ派手に買い物をした後ですから、すっからかんになったとは感じないでください) 。どうでしょう、750兆円を持っている投資家が「商いの山」をやめて「金の山」を選ぶなんて、想像がつくでしょうか。

Today the world's gold stock is about 170,000 metric tons. If all of this gold were melded together, it would form a cube of about 68 feet per side. (Picture it fitting comfortably within a baseball infield.) At $1,750 per ounce -- gold's price as I write this -- its value would be about $9.6 trillion. Call this cube pile A.

Let's now create a pile B costing an equal amount. For that, we could buy all U.S. cropland (400 million acres with output of about $200 billion annually), plus 16 Exxon Mobils (the world's most profitable company, one earning more than $40 billion annually). After these purchases, we would have about $1 trillion left over for walking-around money (no sense feeling strapped after this buying binge). Can you imagine an investor with $9.6 trillion selecting pile A over pile B?


最後に、株式投資についてです。

我が国のビジネスは、市民の求める商品やサービスを効率的に提供し続けるでしょう。たとえてみると商業的な「牛」といえるものですが、世紀をこえて生き永らえ、ますます大量の「ミルク」を出してくれるのです。その価値は交換手段[=貨幣]によってではなく、どれだけ「ミルク」を出してくれるかで決まるものでしょう。ミルクの売上から得られる利益は複利で増えて飼い主へ報います。20世紀の間に、ダウ平均が66から11,497へ上昇したようにです。(それから、配当も山ほどありました)

Our country's businesses will continue to efficiently deliver goods and services wanted by our citizens. Metaphorically, these commercial "cows" will live for centuries and give ever greater quantities of "milk" to boot. Their value will be determined not by the medium of exchange but rather by their capacity to deliver milk. Proceeds from the sale of the milk will compound for the owners of the cows, just as they did during the 20th century when the Dow increased from 66 to 11,497 (and paid loads of dividends as well).


バークシャーは、第一級のビジネスをより多く所有することを目標としています。できればまるごと所有したいのですが、それなりの量の株式を保有することもあります。この種の投資はある程度の期間でみれば、先にあげた3種類の投資の中で大きな勝ちをおさめるものと信じています。そして、ずっと大切なのは、もっとも安全だろうということです。

Berkshire's goal will be to increase its ownership of first-class businesses. Our first choice will be to own them in their entirety -- but we will also be owners by way of holding sizable amounts of marketable stocks. I believe that over any extended period of time this category of investing will prove to be the runaway winner among the three we've examined. More important, it will be by far the safest.


ウォーレンの主張は常に一貫しており、少し先の未来をみすえています。必ず当たるわけではないですが、彼やチャーリー・マンガーによる予兆めいた発言には、耳を傾けたいと思います。個人的には少しばかり銀に投資しているので、ちょっと耳の痛い話でした。

2012年2月9日木曜日

TOPIX Core30ひとかじり(4) コマツ

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当社の本社所在地は、東京都港区赤坂二丁目3番6号。最寄り駅は東京メトロ銀座線溜池山王駅で、出てすぐのところです。溜池の交差点に面しているビルとは気がつきませんでした。Googleの写真をみると、竣工時の年代を感じさせるビルです。屋上の庭園は有名なようですね。

さて、本題になります。今回は有価証券報告書と20-Fを読んでみました。またキャタピラーの10-Kも若干参考にしました。

(1)現在の業績
好調です。今期末の予想では、売上高2兆円、純利益が1,860億円です。一方の前期実績は、1.84兆円と1,500億円でした。中国市場は低迷していますが、鉱山部門が世界的に好調を維持しています。目につくのが地域別売上構成。偏りが少ないです。意図したものでしょうが、見事な手綱さばきです。

(出典:当社Webサイト)








業界での位置づけは第2位。最大手キャタピラーには離されていますが、後続の日立建機、Volvo、CNH、斗山、現代、John Deere等は、売上や純利益で大きく離しています。両社の築いたMoatは大きいものと思われます。

(2)この10年間の上げ潮にうまくのった
以前からジム・ロジャーズが主張していた通りになりましたが、商品の強気相場が続いています。例えば、以下はLMEの銅価格です。1998年から2012年初までのチャートで、1目盛が1年です。2000年当初は停滞していましたが、2003年頃からは上昇基調です。








建設・鉱山機械業界は恩恵にあずかったようで、当社の売上高は10年前と比べて2倍になっています。キャタピラーの売上も同様に推移しています。









(3)従業員一人あたりの生産性が高い
当社対キャタピラーの比較ですが、一人当たり売上高(2010年度)は、およそ45対33。一方、純利益になると3.8対2.1です。相対的には、高付加価値で勝負していることになります。(1ドル=80円で換算)

(4)KOMTRAX
機器の稼働監視を行う本システムは当社の強みとして謳われていますが、他社でも同様のシステムを展開しています。しかし当社は導入時期が早く、稼動台数は1年半ほど前の時点で17万台になっています。先行者利益を享受できていると考えられます。

(出典:当社WebサイトのKOMTRAX紹介映像より)








例えば、野路社長によるKOMTRAXの紹介映像が当社Webサイトに掲載されており、その中でKOMTRAXで収集した稼動データを3ヶ月間先までの生産計画立案に使っていると発言されています(6分40秒)。「母数が大きいと、的確な分析がしやすくなる」とも。需要予測が的確であれば、サブASSYなどの部材を無駄なく先行手配できるようになり、納期がタイトな受注競争では戦いやすくなります。

(5)今後の見通し
中長期のマクロ要因がどうなるのかうまく判断できませんが、どちらかといえば追い風と思われます。特に主力のアジア太平洋地域は、大きな伸びしろが期待できそうです。

(6)株価について
現時点の株価(2,100円強)は、やや割安な程度にみえます。もちろん、商品市況が一時的にでも大きく下落すれば、当社株価もそれに追随するでしょう。しかし、当社の強力なMoatと今後のマクロ環境(資源高と新興国開発)を考えると、10年スパンでみれば安心して投資できる企業と思われます。

2012年2月8日水曜日

こんな仕事もしています(ウォーレン・バフェット)

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先月の1/23のTime誌、表紙はウォーレン・バフェットでした。タイトルはThe Optimist、景気が厳しい時期でも落ち込まない方です。今回の引用は彼の習慣を語る、ほんの一節です。(日本語は拙訳)

バフェットの小さなオフィスの給湯室にあるのは、古ぼけた木製のテーブル、人工皮革のL字ソファ、Formicaのカウンターだ。ちなみに、彼はいつも空室の電気を消してまわっている。

The company canteen in his small office suite, where he has a habit of walking around turning off lights in empty rooms, features a beat-up wooden table, a faux-leather sectional couch and Formica countertops.
(p.22)

なお、こちらのサイトではウォーレンのオフィスを訪れたときの写真が掲載されています。奥の壁には、お父さんのハワードの写真が飾ってありますね。

2012年2月7日火曜日

専門家の予測能力は高いのか?

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今回も「競争優位で勝つ統計学---わずかな差を大きな勝利に変える方法」からの引用です。専門家の意思決定の質に関する孫引きになります。

専門家の直感が未来を予測する力については、これまで多くの研究がなされてきた。その結果は、専門家の直感に大きな信頼を寄せる人々にとっては少しばかり期待はずれなものだ。カリフォルニア大学バークレー校組織行動学教授だったフィリップ・テトロックは著書『専門家の政治判断、その真価を問う』で、専門家は一般的に思われているほど予測能力が高いわけではないと示唆している。彼は、専門家は自己の見解を述べたりプレゼンテーションをする方法には長けているが、それはどちらかというと表面的な要素にすぎず、客観的に見ると意思決定の質の面では往々にして物足りないと述べる。多くの場合その原因は、過剰な自信から目の前の問題に対する十分な検討を怠っていることにある。つまり、データを軽視し、綿密な調査よりも似たような場面での経験に依存する傾向にあるというのだ。

これが本章の教訓だ。優れた意思決定の根底には、例外なく何らかのデータと、特定の状況についての綿密な調査結果が存在する。その工程はスプレッドシートやコンピューターの分析結果としては残らないかもしれないが、あくまでも科学であって技ではない。(p.272)


この一文は専門家の持つ知見やテクニックを疑うものではなく、人間の脳に潜む落とし穴を指摘したものと捉えられます。特定の分野に特化するほど接する情報が見慣れたものになり、意思決定が短絡になる。チャーリー・マンガーが言うところの「疑念を払う傾向」の一面であり、また「自意識過剰の傾向(Excessive Self-Regard Tendency)」でもあります。ファインマンのやりかたも思い出されます。

2012年2月6日月曜日

(答え)戦闘機の防御性能を高めるには; 選択バイアスについて

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まずは、前回とりあげた問題の回答です。

調査の対象は戦闘から帰還した機体に限られているので、攻撃を受けた戦闘機の一部しか見ていないのだ。さらに重大な問題は、実は調査されていない戦闘機の方が重要なサンプルだということだ。補強が必要な箇所を特定するには、基地に戻れないほど致命的な損傷を受けた戦闘機を調査しなければならない。

これは選択バイアスの典型的な例だ。一部のデータにのみ着目したことで誤った結論を導いている。 (p.76)


正解された方が多いと思いますが、いかがでしたでしょうか。このように文書にまとめて改まった形で問題が提起されると、人は冷静に解決できるように思います。どこかのスイッチが入ってモードが切りかわり、バイアスがかからないよう注意するのでしょうか。一方、自分だけなのかもしれませんが、実生活で短時間で判断を迫られる場合には、問題解決がずっと下手になります。あとになってじっくり考えるとアイデアがわくのに、その場では出てこない。チャーリー・マンガーのいう「人は速やかに疑念を払う」を地でいっています。

本書に戻りますと、著者のジェフリー・マーは、バイアスを起こさないためにデータ収集の指針を記しています。以下に引用します。

軍関係者が帰還した戦闘機だけでなくすべての戦闘機を調査していたなら、機体の補強すべき部分についてかなり異なった結論に至っただろう。確証バイアス[参考記事1,参考記事2]と選択バイアスの具体例は、過去のデータを漫然と眺めるだけではいけないことを教えてくれる。肝心なのは過去のすべてのデータに目を配ることだ。もちろん、データとして適切なサンプルを選び出すことも重要である。

では、データが適切であるという確信を得るにはどうすればよいか。一言で言えば、データを見るときは一部ではなく、必ず全体を見よということだ。

(中略)

それでは、データ収集においてよく見られる失敗を避けるため、いくつかのルールを設けよう。まずは、これまでに述べたバイアスを回避するにはどうすべきか。確証バイアスを回避するには、自説を裏付けるデータだけでなく、あらゆるデータを客観的に検討することが重要だ。選択バイアスを避けるには、包括的なデータを揃える必要がある。意識的であろうとなかろうと、抽出されるデータは母集団の一部を無視したものであってはならない。どちらのバイアスについても、原則は可能なかぎり多くのデータを検討することだ。

だが、ここで興味深い問題が生じる。データの重みは一律ではないということだ。データには、それ自体は客観的かつ包括的であるのに、将来を予測する力をほとんど持たないものもある。そして、将来を予測する力こそが私たちがデータに期待する最も重要な特徴だ。データは将来の予測に役立つものでなくてはならない。 (p.77)


ただし、いかによいデータがそろっていても解釈するのは人間ですから、データ収集プロセスだけではバイアスを完全には回避できないと思います。意思決定の際にもバイアス回避の仕組みが必要ですね。

(2012/2/26追記)コメント欄に、raccoon様よりマンガーの「まるごと抜粋」があります。そちらも、どうぞご覧になってください。


2012年2月5日日曜日

(問題)戦闘機の防御性能を高めるには

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今読んでいる本『競争優位で勝つ統計学---わずかな差を大きな勝利に変える方法』は、統計の知識を駆使してブラックジャックで大勝ちをおさめたMIT出身のジェフリー・マーによるものです。客観的なデータの重要性を説くだけでなく、人間が陥りやすい心理上のバイアスについても触れています。今回は、同書からバイアスの一例を引用します。ちょっとした問いですので、どこが誤っているのかお考えになってください。答えは次回にご紹介します。

[第二次世界大戦において]アメリカ軍が帰還した戦闘機の損傷を調査したところ、「機体の部位によって敵の攻撃を数多く受ける箇所とそうでない箇所がある」ことがわかった。そこで、機体の銃痕のパターンの分析結果をもとに、戦闘機の防御性能を高めるため、攻撃を受けやすい部分を補強した。

いかにも理にかなっているようだが、この分析には明らかな欠陥がある。(p.75)

2012年2月3日金曜日

チャーリー・マンガーによる投資対象の評価手順

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ウォーレン・バフェットはバークシャー・ハサウェイの年次報告書を通じてビジネスや投資に関する示唆を行ってきましたが、一方のチャーリー・マンガーはそのような場を積極的には求めていません。本ブログでご紹介しているような講演が主な発言の場ですが、その内容も投資やビジネスには限定されず、より一般的で抽象度の高い、いわば「とっつきにくい」ものが多くみられます。今回ご紹介するのはチャーリー自身の企業分析のプロセスですが、実はこの文章は本人によるものではなく、引用元の「Poor Charlie's Almanack」の編者ピーター・カウフマン(Peter D. Kaufman)が著したものです。だからといって価値が低いかというと、そうではありません。ピーターは非公開の製造業のCEO及び会長を務めるかたわら、チャーリーが会長を務めるWesco Financialの取締役に2003年から就いています。同様に、チャーリーが会長を務めるデイリー・ジャーナルの取締役にもなっています。ですから、チャーリーとは親交が深く、彼の意思決定や思考プロセスになじんでいることは容易に想像されます。ですので、この文章はチャーリーのやりかた全てをあらわしたものではないでしょうが、目のつけどころを学ぶきっかけにはなるかと思います。(日本語は拙訳)

チャーリーは包括的に評価を行っていくが、データに盲従しているわけではない。対象企業及び業界について内外問わず、互いに関連する全ての観点を考慮にいれる。特定しにくいとか、測りにくいとか、数値化しにくくてもだ。しかし完璧にやるからといって、彼のエコシステム的な主題をおろそかにするわけではない。ときには、ある要因を最大化したり、最小化したり、(特筆すべきは、彼が好んで指摘するコストコの低価格倉庫店のような「特化」)、そういったことを行う。すると、その要因が大きく取り上げられ、重要なものとなる。

チャーリーは、財務諸表やその前提となる会計に対して、中西部人らしく懐疑的にみる。企業の本源的価値が計算しきれるものではなく、せいぜい初めの一歩になるものと捉えている。彼の調べる要因は他にも延々と続く。たとえば、今後の法規制の風向き具合、労働環境、供給者や顧客との関係、技術の進展による潜在的な影響、競争優位性や弱点、価格決定力、拡張性、環境問題。潜在的な脅威がないかは、特に注意している(もちろん、チャーリーはリスクのない投資候補などありえないことは承知しており、容易に理解できるリスクがほとんどない企業を探している)。彼は財務諸表上の数字を、自身の目にうつる現実にあてはめなおす。例えば、フリー・キャッシュ、在庫、運転資金、固定資産、のれんのような過大評価されがちな無形資産といったもの。またストック・オプション、年金給付、退職者向け健康保険給付が実のところどう響いてくるのか、将来をみすえて評価する。貸借対照表の負債についても同じように精査する。例えば、適切な環境下ではフロートを債務とみるのは適切でないとし、資産とみなす。フロートとは、[保険業界において]支払い請求がされるまでは何年間も払い戻す必要がない準備金のこと。さらに経営陣に関しては、よくやるような数字の解読以上に厳しく精査する。現金をどのように使ったのか、株主のために賢く使ったのか、それとも自分自身に過大な報酬を出したのか、あるいはエゴを満たすような、成長のための成長を追求したのか、という風にだ。

結局のところ、彼はあらゆる観点を考慮して競争優位性とそれがいつまで続くのかを評価し、理解しようとつとめる。観点には、製品、マーケット、商標、従業員、物流チャネル、社会的トレンドなどが含まれる。チャーリーは企業の競争優位性を「堀」とみる。侵入しようとするものに対して築かれている、目に見えない物理的な障壁だ。優れた企業は深い堀をもち、いつまでも守り抜けるように、それを広げ続けている。同じように、チャーリーは破滅的な競争に至る道も注意深く考慮する。長期的にみると、ほとんどの企業が囚われてしまうからだ。マンガーとバフェットはこの問題を注視する。ときには痛い目にあいながらも、長期にわたるビジネス上の経験で彼らは学んできたのは、何世代にもわたって生き延びるビジネスはほとんどないということだ。そういうわけで、その厳しい選別をくぐりぬけられそうなビジネスをみわけ、それだけを買うように力を注いでいる。

Throughout his exhaustive evaluation, Charlie is no slave to a database: He takes into account all relevant aspects, both internal and external to the company and its industry, even if they are difficult to identify, measure, or reduce to numbers. His thoroughness, however, does not cause him to forget his overall “ecosystem” theme: Sometimes the maximization or minimization of a single factor (notably specialization, as he likes to point out regarding Costco's discount warehouses) can make that single factor disproportionately important.

Charlie treats financial reports and their underlying accounting with a Midwestern dose of skepticism. At best, they are merely the beginning of a proper calculation of intrinsic valuation, not the end. The list of additional factors he examines is seemingly endless and includes such things as the current and prospective regulatory climate; state of labor, supplier, and customer relations; potential impact of changes in technology; competitive strengths and vulnerabilities; pricing power; scalability; environmental issues; and, notably, the presence of hidden exposures (Charlie knows that there is no such thing as a riskless investment candidate; he's searching for those with few risks that are easily understandable). He recasts all financial statement figures to fit his own view of reality, including the actual free or “owners” cash being produced, inventory and other working capital assets, fixed assets, and such frequently overstated intangible assets as goodwill. He also completes an assessment of the true impact, current and future, of the cost of stock options, pension plans, and retiree medical benefits. He applies equal scrutiny to the liability side of the balance sheet. For example, under the right circumstances, he might view an obligation such as insurance float ? premium income that may not be paid out in claims for many years ? more properly as an asset. He especially assesses a company's management well beyond conventional number crunching ? in particular, the degree to which they are “able, trustworthy, and owner-oriented.” For example, how do they deploy cash? Do they allocate it intelligently on behalf of the owners, or do they overcompensate themselves, or pursue ego-oriented growth for growth's sake?

Above all, he attempts to assess and understand competitive advantage in every respect ? products, markets, trademarks, employees, distribution channels, societal trends, and so on ? and the durability of that advantage. Charlie refers to a company's competitive advantage as its “moat”: the virtual physical barrier it presents against incursions. Superior companies have deep moats that are continuously widened to provide enduring protection. In this vein, Charlie carefully considers “competitive destruction” forces that, over the long term, lay siege to most companies. Munger and Buffett are laser-focused on this issue: Over their long business careers they have learned, sometimes painfully, that few businesses survive over multiple generations. Accordingly, they strive to identify and buy only those businesses with a good chance of beating these tough odds.


2012年2月2日木曜日

ディスプレイ用ガラスの今期見通し(コーニング)

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日東電工や旭硝子といった、注目している液晶関連企業の株価が安いです。同じように、ディスプレイ用のガラスでトップ・シェアの米コーニングも安いです。こちらもPBR1倍を割っています。今回ご紹介するのは、1/25に発表された同社年次決算で、CFOの発言した今後の見通しです。コーニングジャパンのWebサイトからの引用です。

ディスプレイ業界は過渡期を迎えており、今後の成長および収益予想の見直しを進めています。顧客の経済的負担軽減を支援するために、顧客と密接に協力しガラス価格の値下げを行っています。これを受けて、前年の第4四半期同様、2012年第1四半期のガラス価格は大幅に低下するでしょう。この2四半期を合わせると、2桁台の大幅な価格低下を予想しています。こうした価格設定および製造能力に関する決定が、これ以降の四半期に、より安定した価格低下の状態に戻る一助となればよいと思っています。

私たちの行った製造能力引き下げにより、液晶ディスプレイ用ガラスの供給量は、エンドマーケットの需要量により近づいたと考えています。当社の小売需要とサプライチェーンの動向予想が正しければ、今年のどこかの時点で、世界のガラスの供給量と需要量のバランスが取れるはずです。コーニングでは、製造能力を元に戻すタイミングとそのペースを注意深く検討していきます。

(中略)

液晶ディスプレイ事業およびダウコーニングのポリシリコン事業が過渡期を迎えていることから、当社は収益の点で新たな段階に近づいていると考えています。今後、この新たな水準から、収益増を図っていく計画を立てています。

(中略)

ディスプレイテクノロジー部門の売上高の伸長は望めませんが、今後も、大きな収益およびキャッシュを生み出すものと予想しています。

液晶ディスプレイの商売が転換期を迎えたのかもしれませんが、見通しがよくない企業にこそ投資の機会が眠っているかもしれないので、これらの企業は今後も注視していくつもりです。

液晶テレビにまつわる蛇足になりますが、ずいぶん前から自宅にテレビがなかったので、出張先のオープン間もないビジネスホテルで大画面の液晶テレビを初めてみたときは、小さな驚きでした。毛穴まで見えるのかよ..。

2012年2月1日水曜日

自然災害リスクの王様、東京

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この報告書「Megacities ? Megarisks Trends and challenges for insurance and risk management」(2005年版)を知ったのは数年前のことでした。作成したのは、Munich Re.(ミュンヘン再保険)、巨大災害リスクを飯の種のひとつにしている会社です。少し前の資料なのでご存知の方も多いかもしれませんが、世界中の50の大都市における自然災害リスクが定量化され、掲載されています。東京(圏)はリスクの指標となる数値が710で最高値でした。これは次に大きいサンフランシスコ湾岸の167を大きく引き離し、「最も高くつく都市」となっています。

浜岡原発が稼動している限り、東海地震が心配されている東京が1位なのは当然だろうと捉えていました。むしろ「遠い国でも、ちゃんと日本のことを見ているんだな」と感じたものです。まあ、再保険屋なので当たり前ですね。昨年の大地震以降、浜岡原発での発電はとまっているため、東京のリスクは以前よりは小さくなっているでしょうが、再保険業界では別の観点も含めた上でリスクを再評価していることでしょう。

ところで、同報告書にあった写真(下のものです)が頭に残っていたので、今回は地震ではなく、富士山噴火リスクについてご紹介します。内閣府の富士山火山防災協議会が作成した富士山ハザードマップ検討委員会報告書から、想定される被害についてです。








7. 噴火の被害想定 (7.54MB / PDF)
・(鉄道) 車輪やレールの導電不良による障害や踏み切り障害等による輸送の混乱
・(航空) 空気中の火山灰による運行不能
・(電気・ガス) 交通の被害等による機能低下
・(水道) 水の濁りが浄水場の排水処理能力を上回り、給水量が減少
・(畑作物) 2cm以上の降灰がある範囲では1年間収穫が出来なくなる
・(稲作) 0.5mmの降灰がある範囲では1年間収穫が出来なくなる
・(健康) 目・鼻・咽・気管支の異常(最大1,250万人に影響。有珠山等の事例から、2cm以上の降灰がある範囲では、何らかの健康被害が出るとした)

雨が降った場合には、電気は「碍子からの漏電による停電(最大約100万世帯)」と被害が拡大(桜島の事例より1cm 以上の降灰がある範囲で停電が起こり、その被害率は18%とした)
降灰が想定される地域はこの資料にあります。









この手の被害予測は当てるのが難しいでしょうから、被害感の参考資料として捉えています。

また地震や火山噴火リスクはいつ起こるかわからないので、個人的には投資面で大がかりなヘッジはしていません。あえて挙げると、固定資産の再建にお金がかかりすぎる企業には近寄らないことと、大きな事件が起きて市場が暴落したときに買える資金をそれなりに残しておくこと、の2点です。

最後に、前にも挙げましたが富士山の近い会社ファナックの有価証券報告書から、同社のリスク認識です。
12 一極集中によるリスク
当社商品は資本財であり、研究所、工場を日本国内に集中させ、そこで開発、製造された製品を全世界に供給することにより、効率化を図っております。
地震、富士山噴火等の自然災害や、長時間にわたる停電などが発生した場合に、当社の開発、製造能力に対する影響を完全に防止または軽減できる保証はありません。また当社工場から各市場への納入途上において何らかのトラブルが発生した場合、物流コストの増加や納入遅延による売上の機会損失などが生じ得ます。(後略)