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2012年7月30日月曜日

誤判断の心理学(実例)旅客機からの脱出試験(チャーリー・マンガー)

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このシリーズでは主に、チャーリー・マンガーが挙げている25種類の心理学的傾向をとりあげています。今回は順序が入れ替わりますが、チャーリーがすべての傾向を説明した後に触れている実例の部分をご紹介します。本ブログで未紹介のものも含まれていますが、いずれも文意から想像がつくものです。(日本語は拙訳)

二番目の自問自答に進みましょう。これまで私がとりあげてきたシステムを使って、心理学的傾向が複合的にあらわれている実例を挙げてもらえますか。ミルグラムがやった心理学の実験のようなものではなくて、ちゃんと因果関係がわかるように互いに影響したやつですよ。わかりました、私が気に入っている例をご紹介しましょう。マクドネル・ダグラス社[現ボーイング社]が新型旅客機の脱出試験を行ったときの話です。新型機を販売する前には、政府が決めた脱出試験に合格することが義務付けられています。これは、所定の短い時間のうちに定員の乗客が脱出することを要求するものです。政府は現実に即した形で試験を実施するよう定めているので、試験に参加する乗客をたとえば20歳の運動選手だけで構成するというのは認められません。そこでマクドネル・ダグラスは、脱出要員として年の入った人も少なからず手配し、薄暗い格納庫で試験を実施するよう計画しました。格納庫のコンクリートの床から乗客席のある高さまではおよそ6メートル、ごくふつうの軟らかさのゴム製シューターを使って脱出するという手はずです。最初の試験が実施されたのは午前中でしたが、20名の重傷者がでました。脱出に時間がかかって制限時間を超過し、試験結果は不合格でした。そこでマクドネル・ダグラスが講じた手は何かというと、その日の午後に同じ試験を繰り返したのです。結果はまたしても不合格。今度も重傷者20名以上、そのうち1名は麻痺が残るほどでした。

My second question is: Can you supply a real-world model, instead of a Milgram-type controlled psychology experiment, that uses your system to illustrate multiple psychological tendencies interacting in a plausible diagnosable way? The answer is yes. One of my favorite cases involves the McDonnell Douglass airliner evacuation test. Before a new airliner can be sold, the government requires that it pass an evacuation test, during which a full load of passengers must get out in some short period of time. The government directs that the test be realistic. So you can't pass by evacuating only twenty-year-old athletes. So McDonnell Douglas scheduled such a test in a darkened hangar using a lot of old people as evacuees. The passenger cabin was, say, twenty feet above the concrete floor of the hangar and was to be evacuated through moderately flimsy rubber chutes. The first test was make in the morning. There were about twenty very serious injuries, and the evacuation took so long it flunked the time test. So what did McDonnell Douglas next do? It repeated the test in the afternoon, and this time there was another failure, with about twenty more serious injuries, including one case of permanent paralysis.


このお粗末な結末に影響を及ぼしたのはどのような心理学的傾向だったのでしょうか。さきに私が挙げてきた一連の傾向をチェックリストとして使って説明してみましょう。試験に合格しないと旅客機を販売できないため、マクドネル・ダグラス社は「報酬に過剰反応する傾向」に従って作業を急ぎます。次に後押しするのが「疑いを持たない傾向」で、ある決定を下した後は、惰性的にそのまま物事を進めようとしています。一方、政府が現実的な試験を実施するように要請したことで、マクドネル・ダグラスは「権威によって、誤って影響される傾向」によって過剰に反応し、危険なこと明白な試験方法を採用しました。そして実行方針が決まったことで「終始一貫しようとする傾向」が働き、常識はずれともいえる計画のまま進むこととなったのです。さて試験の当日、ご年輩の実験参加者全員が暗い格納庫へ入場してきた様子をみたマクドネル・ダグラスの従業員。見上げた先には乗客席、一方の床はコンクリート製。これは怪しいのではないかと感じたことでしょう。ところが他の従業員や監督からは反対の声があがりませんでした。ここで「社会的証明の傾向」が登場し、疑念の上に覆いかぶさったのです。さらなる「権威によって、誤って影響される傾向」によって導かれ、試験はそのまま実行されましたが、失敗におわっただけでなく、重傷者を出す結果となりました。しかしマクドネル・ダグラスは午前中の失敗で得られた強力な反証を無視しました。確証バイアスとともに「剥奪されることに過剰反応する傾向」が強く働いたことで、当初の計画を固守する道を選んだのです。まるで、大損したギャンブラーが躍起になって最後の大勝負にでるようなものです。予定通りに試験に合格しないと、マクドネル・ダグラスは大きな損失をかかえる恐れがあったからですね。別の心理学的観点からもっと説明できるかもしれませんが、私の申し上げたシステムが役に立つことをチェックリスト的に使って説明するという意味では、これで十分にお話しできたかと思います。

What psychological tendencies contributed to this terrible result? Well, using my tendency list as a checklist, I come up with the following explanation. Reward-Superresponse Tendency drove McDonnell Douglas to act fast. It couldn't sell its airliner until it passed the test. Also pushing the company was Doubt-Avoidance Tendency with its natural drive to arrive at a decision and run with it. The government's direction that the test be realistic drove Authority-Misinfluence Tendency into the mischief of causing McDonnell Douglas to overreact by using what was obviously too dangerous a test method. By now the course of action had been decided, so Inconsistency-Avoidance Tendency helped preserve the near-idiotic plan. When all the old people got to the dark hangar, with its high airline cabin and concrete floor, the situation must have made McDonnell Douglas employees very queasy, but they saw other employees and supervisors not objecting. Social-Proof Tendency, therefore, swamped the queasiness. And this allowed continued action as planned, a continuation that was aided by more Authority-Misinfluence Tendency. Then came the disaster of the morning test with its failure, plus serious injuries. McDonnell Douglas ignored the strong disconfirming evidence from the failure of the first test because confirmation bias, aided by the triggering of strong Deprival-Superreaction Tendency, favored maintaining the original plan. McDonnell Douglas' Deprival-Superreaction Tendency was now like that which causes a gambler, bent on getting even after a huge loss, to make his final big bet. After all, McDonnell Douglas was going to lose a lot if it didn't pass its test as scheduled. More psychology-based explanation can probably be made, but the foregoing discussion is complete enough to demonstrate the utility of my system when used in a checklist mode.

2012年7月29日日曜日

必ず朝食の前にやりたいこと(動物行動学者ローレンツ)

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自分が誤った考えをしているときにどうすれば気がつけるのか、本ブログで何度かとりあげています。いま読んでいる本『ビジュアル版 科学の世界』で、それと少し関連する文章が目にとまったのでご紹介します。

多くの科学者は、うぬぼれるどころか、科学は仮説の反証によってのみ進歩すると考えている。動物行動学の祖、コンラート・ローレンツは、自分の仮説を必ず朝食の前に1つは反証してみたいと言っていた。それは、とくに動物行動学の大御所の言葉としてはおかしな話だが、科学者が、何よりもみずからの誤りを認めることで仲間に一目置かれることも確かなのだ。

大学の学部生だった頃の私に人格形成上大きな影響を及ぼしたのは、オックスフォード大学動物学科の高名な老教授が、自分の惚れ込んでいた仮説について、ある客員講師におおっぴらに誤りを立証されたときにとった対応である。老教授は大教室の教壇へ大股で歩み寄り、講師と温かい握手を交わし、高揚した口調で朗々と述べた。「君に感謝したい。私はこれまで15年間、間違っていた」聴衆は、手のひらが赤くなるほど拍手をした。(p.8)

この文はまえがきの一部ですが、『利己的な遺伝子』で有名なリチャード・ドーキンスが寄稿したものです。

2012年7月27日金曜日

(問題)逆向きに考えると簡単に解けます

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Yahoo Japanで紹介されていた頭の体操クイズ、よくあるマッチ棒のならびかえ問題です。はじめは直感的に解いてみようとしたものの、どうもうまくいきません。そこで、やっかいな問題を解く秘訣「逆向きに考える」をやってみました。自分で感心してもしょうがないのですが、あっさり解けました。引用元のサイトでは回答も載っていますので、ぜひ逆から解いてみてはいかがでしょうか。

【頭の体操クイズ】マッチ棒を2本動かして、5つの正方形を4つにして下さい


ミッションはいたってシンプル。上の画像に写し出されたマッチ棒16本のうち、2本だけを動かして、5つの正方形を4つの正方形にしてほしい。

ここで守って頂きたいルールは、4つの正方形は「すべて同じ大きさ」でなければならないということ。ひとつの正方形だけ大きかったり、小さかったりしてはダメ。4つの正方形すべてが、同じ大きさでなければならない。またこの他にも、次のルールを守って頂きたい。

1.マッチ棒を重ねてはダメ
2.マッチ棒はすべて正方形の一辺として使わなければならない

「逆向きに考える」ことについては、本ブログでたびたびとりあげています(過去記事の例: チャーリー・マンガーの名言「逆だ、いつでも逆からやるんだ」ダーウィンの「逆ひねり」)。

2012年7月25日水曜日

(映像)チェリーコーク好きのウォーレン・バフェット..

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Bloombergのサイトに、ウォーレン・バフェットがチェリー味の各種コーラを飲み比べする動画が掲載されていました。愛飲しているコカ・コーラ社のチェリーコークを当てよという趣向です。

Boomberg: Will This Video Break Hearts of Cherry Coke Fans?



ウォーレンは確率や心理学に強いはずです。それに留意しながら映像を見ると、二重にも三重にも楽しめるような気がします。(ただの考えすぎかもしれません)

2012年7月24日火曜日

アインシュタインの警句を守る(チャーリー・マンガー)

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以前の投稿で、チャーリー・マンガーの投資における意思決定プロセスを、『Poor Charlie's Almanack』の編者ピーター・カウフマンが書いた文章をご紹介しました(過去記事)。今回の文章も同氏によるものですが、もう少し一般的な表現でチャーリーのやりかたを描いています。(日本語は拙訳)

自分の置かれた状況がどうであれ、チャーリーはどう進めたらいいかを考えはじめる前に、何をすべきでないかのほうに焦点をあてることが多い。彼のお気に入りの言い回しに、こういうのがある。「どこで死ぬかさえわかっていれば、そこには行かないようにしますよ」。日常生活と同様で、ビジネスにおいても勝ち目の低い次の一手はさっさと切り捨てる。このやりかたがチャーリーに大きな優位を与えている。時間を節約し、より建設的な分野に集中できるからだ。複雑な状況にでくわすと、彼は本質的で感情の入らない基本原理まで還元しようと努める。しかしながら、合理性や単純さを追求するうちに、彼自身のいう「物理学羨望症」にかかってしまわないように注意してきた。経済学のような格段に複雑なシステムを、ニュートンによるいくつかの法則のようなもので説明しようとするのは人の性だが、彼はそうせずに、アルバート・アインシュタインが残した警句のほうを忠実に守ってきたのだ。「科学法則はできるだけ簡潔にすべきだが、必要以上にやってはならない」。チャーリー自身の発言も挙げておこう。「自分がまさにしたことを、害をなさずして益をなすだろうと考えて満足にひたるのは、わたしには賛成できませんね。おわかりですか、高度に複雑なシステムの中では、あらゆるものがお互いに影響を及ぼしあっているのですよ」

Often, as in this case, Charlie generally focuses first on what to avoid ? that is, on what NOT to do ? before he considers the affirmative steps he will take in a given situation. “All I want to know is where I'm going to die, so I'll never go there” is one of his favorite quips. In business as in life, Charlie gains enormous advantage by summarily eliminating the unpromising portions of “the chess board,” freeing his time and attention for the more productive regions. Charlie strives to reduce complex situations to their most basic, unemotional fundamentals. Yet, within this pursuit of rationality and simplicity, he is careful to avoid what he calls “physics envy,” the common human craving to reduce enormously complex systems (such as those in economics) to one-size-fits-all Newtonian formulas. Instead, he faithfully honors Albert Einstein's admonition, “A scientific theory should be as simple as possible, but no simpler.” Or in his own word, “What I'm against is being very confident and feeling that you know, for sure, that your particular action will do more good than harm. You're dealing with highly complex systems wherein everything is interacting with everything else.”


ウォーレン・バフェットの伝説的な文句で"Rule No.1: Never lose money."というのがありますが、逆から考えるチャーリーのやりかたが強く影響したのかもしれませんね。

2012年7月21日土曜日

誤判断の心理学(12)盗んだのはわたしです(チャーリー・マンガー)

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今回ご紹介するのは、自分を過信する傾向についてです。(日本語は拙訳)

誤判断の心理学
The Psychology of Human Misjudgment

(その12) 自尊心過剰の傾向
Twelve: Excessive Self-Regard Tendency

人が行き過ぎた自尊心を持つ様子はよくみられるものです。ほとんどの場合、自分を高く評価しすぎています。たとえばスウェーデンでは、車を運転する人の90%が自分の技量を平均以上だと自任しています。この手の見当違いは、自分に関係する人や物にもあてはまります。妻や夫のことをかいかぶったり、自分の子供となると客観的にみるよりも高く評価してしまいます。また、ちょっとしたものでも過大評価しがちです。いくらなら払うかと質問されると、まだ所有していないものよりも、すでに自分のものとなったほうに高い値段をつけるのです。このような自己の所有物を過大評価する現象に対して、心理学では「授かり効果」と命名しています。そうです、自分の下すあらゆる決断は、決断する前とくらべると突如としてより良いものへ変わるわけです。

We all commonly observe the excessive self-regard of man. He mostly misappraises himself on the high side, like the ninety percent of Swedish drivers that judge themselves to be above average. Such misappraisals also apply to a person's major “possessions.” One spouse usually overappraises the other spouse. And a man's children are likewise appraised higher by him than they are likely to be in a more objective view. Even man's minor possessions tend to be overappraised. Once owned, they suddenly become worth more to him than he would pay if they were offered for sale to him and he didn't already own them. There is a name in psychology for this overappraise-your-own-possessions phenomenon: the “endowment effect.” And all man's decisions are suddenly regarded by him as better than would have been the case just before he made them.


トルストイの書いた言い回しでよく知られたものに、過剰な自尊心が持つ力に光をあてたものがあります。「極悪非道の犯罪者は、自分はそれほど悪者ではないと考えている」。それゆえ、罪になるようなことはしていないとか、これまでの人生で受けた逆風や不利を考えれば情状を考慮してもらえる、と信じるに至るのです。

この「トルストイ効果」の後ろの部分は非常に重要です。というのは、お粗末な成果をもっと改善できるのに、筋の通らない言い訳ばかりしてやりすごそうとする人が大半だからです。そういうおろかな生き方をつづけて駄目になってしまわないように、個人に限らず、組織においても対策を講じることがとても重要です。まず個人としては、純然たる2つの事実に立ち向かうべきです。第一に、もっとよい成果をだせるのに手を打たないでいるのは悪しき性質であるということ。この症状は進みやすく、言い逃れをするほど更なる害をもたらします。もうひとつは、スポーツチームやGEのように成果が要求される場では、やるべきことをしないで弁解ばかりしていると、戦力外への道をまっしぐらということ。次に、組織として取り組む方策ですが、第一に、公正かつ実績を重視した上で成果を求める文化をはぐくむこと。加えて、士気を高めるやりかたで人を扱うこと。第二に、始末におえない者をクビにすること。もちろん、自分の子供のように縁を切れない場合には、できるかぎりの力をつくして子供が改心するよう努めねばならないでしょう。50年前に親からうけた教えをまだ覚えていると語ってくれた人がいます。これこそ、効きめのある子供への教育の好例ですね。子供だった頃のできごとを語ってくれたのは、USCの音楽学校の学部長をつとめたことのある人物です。彼は雇い主の在庫からチョコを拝借したところを父親にみつかってしまいました。あとで元に戻すつもりだったと弁解したところ、父親からこう言われたのです。「いいか、お前。そんなことをするぐらいなら、ほしいだけ全部盗ってしまって『盗んだのはわたしです』とふれまわったほうがいいぞ」

過剰な自尊心のせいでバカなことをしでかさないためにはどうしたらよいか。何か自分のものについて考えるときは、より客観的に判断するよう自分を律すること、これが一番です。自分自身だったり、家族や友人のことだったり、自分の財産だったり、過去にしたことや将来やることの重要性といったものを考えるときです。そう簡単にはできませんし、完璧にやれるものでもありません。しかし、心理学が指摘するようなありのままの心に任せるよりは、このやりかたのほうがうまくいきます。

There is a famous passage somewhere in Tolstoy that illuminates the power of Excessive Self-Regard Tendency. According to Tolstoy, the worst criminals don't appraise themselves as all that bad. They come to believe either (1) that they didn't commit their crimes or (2) that, considering the pressures and disadvantages of their lives, it is understandable and forgivable that they behaved as they did and became what they became.

The second half of the “Tolstoy effect”, where the man makes excuses for his fixable poor performance, instead of providing the fix, is enormously important. Because a majority of mankind will try to get along by making way too many unreasonable excuses for fixable poor performance, it is very important to have personal and institutional antidotes limiting the ravages of such folly. On the personal level a man should try to face the two simple facts: (1) fixable but unfixed bad performance is bad character and tends to create more of itself, causing more damage to the excuse giver with each tolerated instance, and (2) in demanding places, like athletic teams and General Electric, you are almost sure to be discarded in due course if you keep giving excuses instead of behaving as you should. The main institutional antidotes to this part of the “Tolstoy effect” are (1) a fair, meritocratic, demanding culture plus personnel handling methods that build up morale and (2) severance of the worst offenders. Of course, when you can't sever, as in the case of your own child, you must try to fix the child as best you can. I once heard of a child-teaching method so effective that the child remembered the learning experience over fifty years later. The child later became Dean of the USC School of Music and then related to me what his father said when he saw his child taking candy from the stock of his employer with the excuse that he intended to replace it later. The father said, “Son, it would be better for you to simply take all you want and call yourself a thief every time you do it.”

The best antidote to folly from an excess of self-regard is to force yourself to be more objective when you are thinking about yourself, your family and friends, your property, and the value of your past and future activity. This isn't easy to do well and won't work perfectly, but it will work much better than simply letting psychological nature take its normal course.

2012年7月20日金曜日

B/Sを読む(5310東洋炭素、2012/5月期)

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前回の投稿ではB/Sの重要性にふれました。今回は、最近気になったB/Sの具体的な例をとりあげて分析します。対象企業は東洋炭素株式会社(5310)です。

(1) 東洋炭素について
社名が示すとおり、当社では炭素を素材とする製品を製造しています。当社の製品は電気伝導性や熱伝導性、機械的特性がすぐれていることから、たとえば半導体製造装置やシリコン製造炉で使われる部材として産業用に使われています。製品の品質が物性に依存するため、製造工程やプロセス上のノウハウが重要で、当社の属する業界は国際競争力を失わずに比較的高い利益率を守っています。同業他社の東海カーボンなども同水準の利益をあげています。

当社は香川県を発祥とする独立系の企業で、2006年に株式公開されました。創業者一族が株式の半数近くを保有しており、取締役会会長は創業家の近藤純子氏がつとめています。

個人的には、当社のような利益率が高い材料系のメーカーは注視しています。当社を知ったのは昨年の末ごろで、あまりなじんでいないため、少しずつ情報を蓄えているところです。

(2) 経営成績
ここでは直近2期の数字を挙げました。

(単位:千円)前々期(2011年5月期)前期(2012年5月期)
売上高  37,557,80138,714,106
営業利益 5,868,2296,055,421
純利益 3,699,5713,466,829

減益決算となりましたが、収益性は変わっていません。売上高当期純利益率 は9.0%と、まずまずの水準を保っています。

(3) 決算短信を読む
前期の決算短信をひととおり読みすすめたところ、次の2点がひっかかりました。ひとつは会計方針の変更で、もうひとつは製品在庫の増加傾向です。

・会計方針の変更
次期の見通し(PDFファイル4ページ目)で、次のような記述がありました。

当社グループの有形固定資産の減価償却方法は、国内では主として定率法で行っておりましたが、次期より定額法へ変更します。この変更により減価償却費は約23億円減少する見込みです。

ご存知のとおり、定率法は直近の費用負担が大きく、次第に小さくなっていく方式です。そのため、定額法に変更することは、費用負担を将来へ繰り延べることになります。

今期の業績として営業利益55億円(前期比9.2%減)を見込んでいますので(PDFファイル1ページ目)、この変更がなければ今期の予想営業利益は30億円強になります。これは前期の60億円と比べると半減に近い数字です。

競合動向が変化したなどの合理的な理由があれば、この変更はすんなり納得できるものですが、手持ちの情報では判断しきれません。不明なものは厳しくみるとすれば、この件は将来の帳簿上の利益を先食いしたものと捉えられます。

・製品在庫の増加
連結貸借対照表(PDFファイル12ページ目)によれば、製品在庫の期末評価額は以下のようになっています。

(単位:千円)前々期(2011年5月期)前期(2012年5月期)
商品及び製品  4,761,6187,315,218

絶対額ベースで25億円、前年比では50%以上増加しており、よい傾向ではありません。大きな受注が控えているのであればこれも納得できますが、受注残は漸減傾向なので(PDFファイル27ページ目)、その可能性は低いと思われます。これは、需要予測が大きくはずれたか、あるいは決算数字をつくったものと想像してしまいます。製造業の会計では、当期に発生した固定費でも製品在庫として棚卸資産の勘定項目にある間は費用として認識されません。固定費が重くて困った年度にこのやりかたをとれば、つまり作りすぎをしておけば、費用を先送りすることができます。翌期の需要を平準化する目的で先行生産するのであれば理にかなった行動といえますが、それでは意図を判断する一材料として過去の経営状況をふりかえってみましょう。

以下の図は当社の棚卸資産の推移です。適正水準を判断するために、あわせて売上高の推移も載せています。これをみると、ここ数年間で棚卸資産が相対的に増加しているのがわかります。また製品在庫については、前期の伸びが大きいこともわかります。このことから、前期の製品在庫ひいては棚卸資産全体が適正水準から離れていると考えられます。つまり、数年前から資産の過剰な拡大基調が続いていたということです。







ただし、当社としても過剰在庫リスクは認識しており、有価証券報告書で喚起しています。前々期分(2011/5月期)の有価証券報告書では次のように記載されています(PDFファイル20ページ目)。

当企業グループでは、等方性黒鉛材料の需要予測を毎月行い、生産計画を作成することで、過剰在庫を持たないように努めておりますが、予想以上に等方性黒鉛材料の需要が落ち込んだ場合には、製品自体に系時変化はないものの一時的に過剰在庫となる可能性があります。

(4)B/Sを読む
最後になりましたが、貸借対照表を読んでみます。「読む」というからには以前のものと比較します。前期(2012年5月期)(PDFファイル12ページ目)と2009年5月期(PDFファイル46ページ目)をくらべてみてください。大きな違いに気づかれると思います。この数年間で資産をふくらませる方向で経営してきたのがみてとれます。流動資産と固定資産のどちらも増加しているのですが、2つの点が気になります。ひとつは、上に挙げたように棚卸資産の割合が大きくなっていること、そしてもうひとつは、現預金残高が縮小し、借入金が増えていることです。このツケを払う日がくるのかこないのか。前回前々回の投稿を読み返すと、当社にとって興味深い時期はまさしくこれからと感じます。

ここでさらなる観点を加えておきます。上でとりあげた2009年5月期の決算が終わってまもなく、同年8月に新社長が就任しています(人事異動のお知らせ)。近藤尚孝氏という方で、創業者である故近藤照久氏の娘婿であり、会長近藤純子氏からみると義弟にあたる人物です。その社長が、今年の5月末日付けで社長及び取締役を辞任しました(人事異動のお知らせ)。健康上の理由ということです。

2012年7月18日水曜日

P/Lは見るもの、B/Sは読むもの(スター精密社長佐藤肇)

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前回とりあげた売掛金のような話題となると、実情が生々しく伝わってくるのは実際の経営者の言葉です。そういうわけで、もうひとつ手にとってみた本が『社長が絶対に守るべき経営の定石』です。著者はスター精密社長の佐藤肇氏で、創業者だった父親から受け継いだ経営上の定石を実践咀嚼した上で、具体的な数字を使って簡明に説明しています。題名が示すように、経営で悩む社長向けに書かれた本ですが、投資家の参考になる話題もあちこちにみられます。

今回は、貸借対照表の重要性を説いた部分をご紹介します。個人的には、企業分析の際には損益計算書だけでなく、貸借対照表やキャッシュフロー計算書にも目を通してきました(過去記事)。今回の引用文を読むと、そういったやりかたが有益なことを感じさせてくれます。

P/Lは見るもの、そしてB/Sは読むもの、というのが私の持論である。

P/Lは一番上にある売上高から下に目をやっていくだけで、いくら経費を使って最終的にいくら儲かったか、単純な引き算である。したがって、見ればすぐわかる。

一方、B/Sをただ眺めていても、会社の実態は一向に見えてこない。しかし、会社の実態というのはB/Sにこそ示されているものであり、B/Sの体質が良くなったのかどうか、経営としてはそれが重要である。利益は出たがB/Sが良くないというのでは、優れた経営とはいえない。利益が出て、なおかつB/Sが良くなり、会社が効率のいい会社に生まれかわる、ここにこそ、経営の定石を守る意義があると、前頁で申し上げたとおりだ。(p.374)


B/Sというのは、会社創業以来の蓄積の結果をあらわしたものである。言ってみれば、創業以来10年も20年もかけて蓄積してきた会社の力量、会社が現在有している体力のすべてを示しているのがB/Sなのである。

そこには、事業の歴史と社長の折々の判断が、良いも悪いも含めて、すべて凝縮されたカタチであらわされている。例えば、B/Sの右側は、その会社が持っている自分のカネ、利益、それと信用の累計であり、結局はこれだけの資金を使って会社経営ができるという「資金の調達力」をあらわしている。いわば、何十年もかけて蓄積してきた、会社の現時点における体力をあらわしているといっていい。

このように、B/Sの右側は資金の調達力をあらわしたものだが、それだけではない。さらに、どういうところから資金を調達しているのか、自分のカネなのか銀行からの借金なのか、信用によって仕入先から買掛債務として調達しているカネなのかといった「資金の調達先」もあらわしている。

一方のB/Sの左側は、右側で調達した資金をどのように使っているか、「資金の使い道」「資金の使途」をあらわしている。つまり、調達した資金を売掛金や手形でもっているとか、機械設備や土地でもっているとか、あるいは投資勘定でもっているといったことをあらわしている。そして、必要以上に在庫が多いとか、売掛債権が多いとか、自己資本以上に固定資産を持っているとか、万一不渡りをくらったときに、手元にすぐ金になるものがいくらあるとか、創業からこれまで資金をどう調達して、どう使ってきたか、いわば会社の体質、体力、もっといえば社長の性格、経営のやり方そのものが、B/Sには示されているといっていい。

だから過去3期分なり5期分なりのB/Sを拝見すれば、「売上の割に儲からない体質」とか「万一のときにどの程度の抵抗力があるか」だとか、その会社の実態が読み取れるのだ。

こういうことはP/Lだけ見ていても、決してわからない。基本的にP/Lで出る利益というのは、つくられた数字、いわば帳簿上の数字であって、利益が上がったからカネが増えるわけではないからだ。はっきり言ってしまえば、実際のカネと利益というのは直接関係がないのだ。(p.348)

2012年7月17日火曜日

売掛債権とは本物のカネではない(大竹愼一)

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常々拝見しているブログ『賢明なる投資!バフェる!グレアムる!フィッシャる!』で売掛金の話題がとりあげられていましたので、今回は同じ話題になります。たまたま手に取った本からの引用になりますが、題名は『おカネの法則』。2003年の初版と、不況で苦しむ経営者向けの内容ですが、個人的にはオーソドックスなものと感じました。著者の大竹愼一氏はアメリカでファンドマネージャーをやっているとのこと、その筋では有名な方のようです。売掛金回収や顧客の検収を待つときのゴタゴタは、そういった職務上の責任を実際に負ったことのある方にとっては日常茶飯事のことと思いますが、たまには正論もいかがでしょうか。

まずは、著者からみた売掛金の位置づけです。

私が企業のバランスシートを見るときは、真っ先に、売掛債権と買掛債務の項目に注意して、その企業の問題点をそこからえぐり出そうとするのが常である。なぜなら、キャッシュフローを大きく変動させる要因の主なものが流動資産で、その中でも最大なものは、売掛債権と在庫の残高だからである。

私の考えでは、この売掛債権は最も重要な要素であるにもかかわらず、経営者が最も軽く見ているものである。言い換えれば、今回の不況に生き残るには、売掛債権を減らすことによって流動資産を圧縮し続けることが重要である。さもないと回転差(期間差)資金がなくなって、資金繰りが急速に悪化してしまうからだ。売掛債権とは本物のカネではない。そういう意味で、経営者は「現金」というものが経営にとって、とても意味の深いものだということを肝に銘じる必要がある。

そして、私が売掛金にこだわるのは、あくまでも売上の性格をつかまえたいからである。もちろん売上が立たないと、利益は出ない。しかし、売上が増えたとしても、利益が増えるとは限らないことに注目せねばならない。

無理に売上を増やそうとすると、大幅な値引き販売になったり、売上の回収期間が長くなったり、金利負担が増えたり、あるいは取引先が倒産して焦げ付いたりすることがある。これはお客の顔色を見ながら、二割引、三割引と売値を割り引いていく日本の伝統商法ではよくあることだ。とくに、この長い不況の中で、販売条件をさらに悪くしてでも、売上を取ろうとする企業が多い。

しかし、こういう商売をやっていると、次第に本当の利益がわからなくなってくる。

いわゆる、骨折り損のくたびれ儲けになって、忙しそうにみんな働いているが、働けば働くほど、知らぬうちに損が累積していく。こういう会社が資金繰りに苦しめば、たちどころに倒産してしまう。(p.109)


次は、売掛金の質を向上させる管理会計の一例です。

医薬品卸大手の東邦薬品・故松谷義範会長は、売掛債権のコントロールに長けた名経営者であった。これまでの医薬品卸業界は、得意先である医師へ売り込むために、極端な増量サービスや長期の手形決済などで対応するのが常であった。

業界ではプロパーと呼ばれる営業マンは、自社の薬品をなんとか買ってもらおうと、他社との増量競争や手形の延長競争に走り、利益なき繁忙を続けていたのである。

そこで、松谷会長は、売掛債権の回収期間の適正水準を設け、水準を超える債権については、独自の金利をかけ、予定粗利益額から金利分を差し引く仕組みをつくったのである。回収の遅い売上について名目上では多少の利益が出ていても、金利を引かれると赤字になる。

それによって、給料やボーナスにまで反映させる仕組みだから、たちどころに営業マンの意識を変えることに成功したのである。

不況が深刻になればなるほど、営業マンは目先の売上を取るために、法外な値引きや回収の長期化に走りがちになる。ここで経営者が、売上のもつ恐ろしい性格を知っていれば、利益の出ない売上や回収できそうもない売上をいかに減らすかに腐心するはずだ。(p.111)


ところで、引用元の本は定価が約10,000円と、いい値段がつけられています。図書館向きの本です。この手の本が高価なのは、たとえばセミナーの場で販売するからでしょうかね。

2012年7月14日土曜日

帰り道をまちがえる(チャーリー・マンガー)

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Poor Charlie's Almanack』に掲載されているチャーリー・マンガーの写真には、本を手にした姿がいくつかあります。なかでもわたしのお気に入りは、歩きながら本を読んでいる写真です。今回の引用は、そんなチャーリーの思索的日常生活を息子デイヴィッドが書き記したものです(David Borthwick; 再婚した妻の連れ子)(日本語は拙訳)。

毎晩のように、父はお気に入りの椅子に座って何かを読むのに没頭していました。このときの様子はおもしろおかしいとしか言いようがありませんでした。はしゃぎまわる小さな子供たち、騒々しいTVの音、夕食の準備ができたと呼ぶ母さんの声。そういうのが父の耳にはほとんど入っていなかったのです。

何かを読んでいないときでも、父は静かに深く考えこむことがよくありました。たとえば、モリーとウェンディー[娘たち]をむかえに行ってパサデナへ帰るいつもの道でも、母さんが正しい方向へ指示しないと、まちがってサン・バーナーディノにいく道へ進んでしまったものです。そのようなときに父が何を考えていたのか、わたしにはわかりません。ですが、アメフトの試合やゴルフでの打ち損じを思い起こしていたわけではありませんでした。父が成功した要因はいろいろあるでしょうが、自分が熟考しているところに割り込んでくるじゃまものを固く閉め出すことができたのも、それらと同じように重要なことだったと思います。父の関心をひくことには楽しみがある一方で、歯がゆいところもあったものでした。

You have a dead-on comedic take on Father night after night in his favorite chair poring over something, all but deaf to the roughhousing younger children, a blaring TV, and Mom trying to summon him to dinner.

Even when not reading, Father was often so deep in contemplation that a routine drive to take Molly and Wendy back to Pasadena could have turned into an excursion to San Bernardino without Mom calling out the correct freeway turnoffs. Whatever was on his mind, it wasn't the outcome of a football game or a botched golf shot. Father's ability to Chinese wall off the most intrusive distractions from whatever mental task he was engaged in - a practice alternately amusing and irritating if you were trying to get his attention - accounts as much as anything else for his success.


蛇足ですが、わたしも歩きながら読書派です。自転車読書もやりますが、ときどき見知らぬ人から叱られています。

2012年7月11日水曜日

若かった頃の株式ポートフォリオ構成比率(ウォーレン・バフェット)

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ウォーレン・バフェットのバークシャー・ハサウェイが保有する株式ポートフォリオの話題を以前取り上げました(過去記事)。今回は、ウォーレンがまだパートナーシップをやっていた頃の株式ポートフォリオの構成比率をご紹介します。1961年度のLetterからの引用です。(日本語は拙訳)

なお、この文章の前段では、投資戦略として3つのカテゴリーに投資している旨を説明しています。今回の話題に登場する一般的な投資の他には、公開買付け等のスペシャル・シチュエーション、それから経営権掌握目的の2つがあります。

最初のカテゴリーに入るのは、まあよくあるやつですが、過小評価された証券への投資です。この手の投資は、企業のポリシーに対して何か物申すわけでもないですし、過小評価が訂正されるのがいつになるかもわかりません。過去何年にもわたって最大の投資先は、このカテゴリーに入るものでした。そのため、他のカテゴリーより多くの利益をあげています。たいていの場合、各銘柄はそれなりのポジションをとります。資産全体の5%から10%ずつを、5~6件の銘柄に投資します。また、その他に10~15件程度の小さめのポジションをとっています。

The first section consists of generally undervalued securities (hereinafter called "generals") where we have nothing to say about corporate policies and no timetable as to when the undervaluation may correct itself. Over the years, this has been our largest category of investment, and more money has been made here than in either of the other categories. We usually have fairly large positions (5% to 10% of our total assets) in each of five or six generals, with smaller positions in another ten or fifteen.


当時も現在も、基本的なところはあまり変わっていないようですね。

2012年7月10日火曜日

規模の経済(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーによる世知入門、これから何回か「規模の経済」の話題が続きます。今回はテレビCMの話題がでてきますが、この講演は1990年代のものなので、やや時代を感じさせる指摘となっています。(日本語は拙訳)

たとえば、世界中のすべてのビジネススクールでは、規模の経済がもつ最大の利点は経験曲線効果によるコスト削減だと教えています。人は複雑な作業をこなす場合でも、改善しようと試みたりあるいは金勘定のおもわくが働くことで、効率よく進められるようになります。

大量にこなすのが自分たちであれば、他の人よりうまくなるのは至極当然のことです。これはすごく有利なことで、事業の成否に大きく影響しています。

ここで不完全ではありますが、規模の経済として考えられるものを列挙してみましょう。まずは簡単な幾何学の応用から。何かを収容する巨大なタンクを造るとしましょう。このとき、タンクの外側を覆う鋼板の所要量は2乗のペースで増えていきますが、体積は3乗で増加します。つまり大きく造るほど、鋼板の単位面積あたりの容量は増えることになります。

これと同じで、簡単な幾何学、すなわちありふれた現実世界においても、あらゆる局面で規模の経済が登場します。

たとえば、テレビで流れるCMがそうです。テレビCMは、音声付きのカラー画像が茶の間に入ってきた頃に始まりましたが、これはもう圧倒的でした。当時は放送局が3つしかなく、視聴者のおよそ9割をおさえていたのです。

P&Gの経営者であれば、この新しい広告の手段を使うのに問題はないでしょう。莫大な量の商品が売れるので、全国ネットのテレビCMにかかる高額な広告料でも難なく支払えます。しかし、小さな会社ではこうはいきません。一部だけを買うというのはできないので、使いようがありません。結局のところ、大量に売れる見通しがないかぎり、このもっとも効率的な広告手段であるテレビCMを使うことはできないのです。

For example, one great advantage of scale taught in all of the business schools of the world is cost reductions along the so-called experience curve. Just doing something complicated in more and more volume enables human beings, who are trying to improve and are motivated by the incentives of capitalism, to do it more and more efficiently.

The very nature of things is that if you get a whole lot of volume through your operation, you get better at processing that volume. That's an enormous advantage. And it has a lot to do with which businesses succeed and fail.

Let's go through a list - albeit an incomplete one - of possible advantages of scale. Some come from simple geometry. If you're building a great circular tank, obviously, as you build it bigger, the amount of steel you use in the surface goes up with the square and the cubic volume goes up with the cube. So as you increase the dimensions, you can hold a lot more volume per unit area of steel.

And there are all kinds of things like that where the simple geometry - the simple reality - gives you an advantage of scale.

For example, you can get advantages of scale from TV advertising. When TV advertising first arrived - when talking color pictures first came into our living rooms - it was an unbelievably powerful thing. And in the early days, we had three networks that had whatever it was - say ninety percent of the audience.

Well, if you were Procter & Gamble, you could afford to use this new method of advertising. You could afford the very expensive cost of network television because you were selling so damn many cans and bottles. Some little guy couldn't. And there was no way of buying it in part. Therefore, he couldn't use it. In effect, if you didn't have a big volume, you couldn't use network TV advertising - which was the most effective technique.

2012年7月9日月曜日

(答え)イノベーションで事業の限界をのりこえる例

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今回は、前回とりあげた問題「石油産業が限界をこえるために、ITをどのように活用したのか」の回答になります。『探求―エネルギーの世紀』の引用です。

第一の発達は、マイクロプロセッサの急速な進歩が膨大なデータの分析を可能にしたことで、地球物理学者は地下構造の解析を大幅に改善させることができ、探鉱の成功率が向上したことだ。コンピュータの性能が高まると地震探査による地下構造ー層、断層線、キャップロック、トラップーの測量を、二次元ではなく三次元で行なえるようになった。三次元の地下構造測量によって、失敗がなくなるわけではないが、地下資源探査技師たちは深い地中の地質についてずっとよく理解できるようになった。

第二の発達は、水平掘削の到来だった。従来の油井は垂直に掘削していたが、数千メートル垂直に掘ってから、角度をつけ、場合によっては真横に掘ることもできるようになった。精密に制御し、数メートルごとに高性能の機器で計測しながら掘削する。これにより、原油を採掘しやすくなり、したがって生産量も増えた。

第三の大躍進は、ソフトウェアとコンピュータによる可視化の発達だった。石油産業で応用されたこのCAD/CAM(コンピュータ支援設計・コンピュータ支援製造)テクノロジーは、建設費10億ドルの海上油田の細部に至るまでコンピュータの画面上で設計できるようにした。さらに、最初の鋼板の溶接がはじめられる前から、その施設の弾性や効率をさまざまな角度から検証することができるようになった。

1990年代にはいると、情報・通信テクノロジーが普及し、通信コストが画期的に安くなったため、地球物理学者たちは世界各地にいながらにして、仮想チームとして作業することができた。ある場所におけるある分野の経験や知識が、他の場所で同様の問題を解こうとしているものたちに、瞬時に教えられる。そんなわけで、当時、ある企業のCEOはいささか誇張をこめて、科学者とエンジニアは「学習を重ねなくても、経験が蓄積される」と表現している。

こうしたさまざまなテクノロジーの進歩により、企業はすこし前までは達成できなかった物事ーたとえば、あらたな有望鉱区を見つける、以前なら開発できなかったような油田に取り組む、より複雑なプロジェクトに着手する、石油採掘量を増やす、まったく新しい油田を切り拓くといったことーができるようになった。(上巻 p.26)

今回の例ではテクノロジーがビジネスの限界を広げていますが、それぞれの企業や業界によって、いろいろな限界の乗り越え方があるかと思います。一株式投資家としては、各企業のとりくみに耳を傾け、進捗を見守ると同時に、事業の持つ可能性を自分なりに見定めた上で、投資候補の企業をトレードオフする必要があると思います。「事業の持つ可能性」は経営者の手腕によるところもありますが、気になっている企業の経営動向を適宜確認していると温度差はさまざまで、おもしろいものです。

ところで、上の引用にあった「学習を重ねなくても、経験が蓄積される」は、失敗事例にもうまく当てはまっているものなのか、気になるところではあります。

2012年7月7日土曜日

(問題)イノベーションで事業の限界をのりこえる例

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投資候補の企業価値をおしはかる際には、事業の将来性を見極めようとするものです。そのとき、マーケットの大きさや価格競争、ライフサイクルなどを考えると、一事業や一製品群からの売上や収益はいずれ限界にぶつかると想定するのは、妥当な見方と思います。限界という観点でみると一見わかりやすいのが資源系の企業です。原油や天然ガスのような地下資源を扱う川上の企業となれば、限りある可採埋蔵量が企業価値に直結しています。

一方でそういった限界をのりこえる人たちは、ねばりづよい工夫をみせてくれます。彼らの努力は投資家による評価をのりこえ、新たな価値を拓きます。今回ご紹介するのは以前にもとりあげた『探求―エネルギーの世紀』からで、石油産業がITを活用して果たしたイノベーションの一例です。

石油産業の歴史を通じて、テクノロジーの発達はこれが限度で、業界の”道路の突き当たり”が見えてくるという説が、しじゅう口にされてきた。すると新しいテクノロジーが現われて、能力を飛躍的に拡大させる。その図式が何度もくりかえされてきた。(上巻 p.26)

この文につづいて、どのような取り組みやイノベーションによって限界を超えたのか、具体的に説明されています。答えのほうは次回にご紹介しますので、どんな手が打たれたのか、お考えになってみてください。本書では3つの事例が挙げられていますが、次のようなことをねらって実行されています。

1. 埋蔵資源を掘り当てる確率を高める(開発成功率の向上)
2. 掘削時の取りこぼしをへらす(採収率の向上)
3. 設備投資や保守コストをさげる(損益分岐点の改善)

2012年7月6日金曜日

発明の方法を発明する(アルフレッド・ノース・ホワイトヘッド)

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「学んだことをうまく生かしたい」、あるいはその逆に「うまく生かすには、どう学ぶのがいいのか」という思いを抱いており、本ブログでも少しずつ取り上げています。なかでもチャーリー・マンガーが引用していた次の言葉は、頭のすみにひっかかっていました。「文明が進歩できたのは発明の方法が発明されてからだったように、自分自身を向上させるには、まず学ぶ方法を学ばなければならない」(過去記事)。気になっていた前半について、発言が含まれている文脈を読めば主旨が確かめられると考え、引用元の原典をさがしてみました。

書いた御本人は数学者のアルフレッド・ノース・ホワイトヘッド(Alfred North Whitehead)で、引用元の著作は『科学と近代世界』のようです。全集『世界思想教養全集(第16巻)』に含まれているテキストで確認しました。チャーリーは他でもホワイトヘッドの主張をたびたび引用しているので、たぶん合っていると思います。なお、晩年のホワイトヘッドはハーバード大学で教えていたとありますので、チャーリーは講義を聴講する機会があったかもしれません。

今回は同書から「発明の方法を発明する」のくだりを引用します。

19世紀の最大の発明は、発明法の発明であった。ひとつの新たな方法が人生に加わった。われわれの時代を理解するためには、鉄道、電信、ラジオ、紡績機械、合成染料、などのような変化を形づくる個々のものをことごとく無視してさしつかえない。われわれは方法そのものに注意を集中せねばならない。この方法こそ真に新しいもので、古い文明の基礎を破壊した。(中略)

この変化全体は新しい科学知識から生じた。原理よりも成果から考えられた科学は、利用できる着想を貯えた、人目につく倉庫である。しかしこの世紀の間に起こったことを理解しようとすれば、倉庫に譬える[たとえる]よりもむしろ鉱山に譬えた方がよい。また、生のままの科学的着想は出来合いの発明で、拾い上げて使いさえすればよいものだ、と考えることは大きな誤まりである。その間には、想像的工夫を凝らす緊張した時期がある。新たな方法に含まれた一つの要素はまさに、もろもろの科学的着想と最後の産物との間の間隙を埋めにかかる方法の発見である。それは、もろもろの困難に次から次へと挑みかかる、規則正しい攻撃の過程である。

近代技術のもっていたもろもろの可能性は、富裕な中産階級の勢力によって、英国において始めて実際に現実化された。したがって産業革命は英国から始まった。しかしドイツ人は、科学の鉱山の中でより深い鉱脈に達する方法を、明らかに会得した。かれらは行き当りばったりの研究方法を廃止した。かれらの工業学校や工科大学では、ときおりの天才やときおりの好運な思いつきを待たなくても、進歩が見られた。19世紀を通じてかれらが示した学問的妙技は、世界の讃嘆の的であった。この知識の訓練は、技術を越えて純粋科学に、科学を越えて学問全般に適用される。それは素人から専門家への変化を表わしている。

特定の思想領域にその生涯を捧げる人びとが、昔からつねに存してはいた。とくに法律家とキリスト教会の牧師とは、そのような専門の明白な実例である。しかしあらゆる部門にわたる知識の専門化の力や、専門家を作り出す方法や、技術の進歩に対する知識の重要性や、抽象的知識が技術に結びつけられる方法や、技術の進歩のもつ限りなき可能性など、これらすべてのことを充分自覚的に会得することは、19世紀において、かつ列国の中でも主としてドイツにおいて、初めて完全に成しとげられたのである。

かつては人間の生活は牛車の歩みで送られた。将来は航空機の速さで送られるであろう。速度の変化はけっきょく質の差として現われてくる。(p.113)


翻訳の雰囲気は別として、ホワイトヘッドが指摘している内容は現代企業における技術経営やイノベーション創出のプロセス、産学連携と似たところがあり、古さを感じさせません。逆にみれば、「自覚的に会得する」のが難しいからこそ、こういった取り組みが現代でも課題として挙げられているのかもしれません。

2012年7月4日水曜日

両手があかないときにどうやったのか(チャールズ・ダーウィン)

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チャーリー・マンガーは思考や認識の誤りをみつける方法として、科学者ダーウィンのやりかた「持論をくつがえすよう努力する」ことを強調しています(過去記事)。『ダーウィン自伝』を読んだところ、ダーウィン本人がそのやりかたに触れていたのでご紹介します。

私はまた、多年にわたって、次の鉄則を遵守してきた。それは、公表された事実であれ、新しい観察や考えであれ、なんでも私の一般的な結論に反するものに気がついたときには、それを漏れなく、すぐに覚え書きにしておくということである。というのは、このような事実や考えは、都合のよい事実や考えよりもずっと記憶から逃げてしまいやすいということを、私は経験で知っていたからである。この習慣のおかげで、私がすでに気づいてそれに答えようとしたのでない異論が私の見解に向けて提起されるということは、ほとんど起こらなかった。(筑摩叢書 p.111)


このやりかたを身につけるに至っては、科学者の友人たちとの親交も影響していたかもしれません。

私は、結婚以前にも以後にも、他のだれよりもライエルLyellによく会った。かれの心は、明晰さ、注意深さ、健全な判断力、豊富な独創力を特徴としているように思われた。私が地質学についてかれに何か意見を述べると、かれは問題全体を明確に知るまでは信用しようとはせず、そしてしばしば、私がその問題をいっそう明確にみるようにさせた。かれは、私の意見にたいして可能な異論をすべてだしてみせ、それらをだしつくしたあとでもなお長いあいだ疑わしく思っているのがつねであった。(p.87)

このようなやりとりは、ウォーレン・バフェットとチャーリー・マンガーのようなコンビを思い出させますね。

最後はおまけです。ダーウィンがまだ学生だった頃の思い出です。

しかし、なんといっても、甲虫の採集ほどに私がケンブリッジで熱中し、たのしみにしたことはなかった。それはたんに採集への情熱であった。というのは、私はそれらを解剖したことはなく、外的な特徴を本にでている記述と照らし合わせることもまれでしかなかったからである。しかし、名前だけはなんとかつけた。私の熱中を示す一つの証拠をあげよう。ある日、古い樹皮をひき裂いていると、2匹の珍しい甲虫が見つかったので、1匹ずつ両手につかんだ。ところがさらに3番目の新しい種類のものが見つかった。これをつかまえないのは残念でたまらないので、私は右手につかんでいた1匹を口の中にほうりこんだ。何と! それはものすごく辛い液体を出し、私の舌を焼かんばかりであった。私はやむなくその甲虫を口から吐き出したが、それは逃げ、そしてまた、3番目のやつも逃げてしまった。(p.46)

2012年7月3日火曜日

自社株買いの例(4973日本高純度化学)

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今回は、投資候補として追い続けている企業の一社、日本高純度化学をとりあげます。少し前の投稿で「自分の投資している企業で、厳しい時期に自社株買いをするところはない」と書きましたが(過去記事)、当社はそのような自社株買いを積極的に実施しています。

貴金属めっき液製造のリーダーである当社は、利益率が高いことから優良企業として知られています。社員数45名で純利益が7億円弱なので、1人あたり約1,500万円の利益をあげています。ファナックの約2,600万円には及びませんが、悪くない成績です。

当社の利益の源泉はめっき液の化学組成にあることから、事業の性格はマーケティング及びR&D重視型です。新薬に力を入れている製薬会社と似ており、知的努力を重ねた末の知識の結晶が大きな利益をうみだします。そのため、経営資源として重要視しているのは有能な人材であり、資産規模は一定程度あればひとまず十分、と経営陣は認識しています。

そのような背景の下、経営陣は事業で挙げた利益を積極的に株主へ還元しています。配当金の利回りは4%超とそれなりに目を引きます。そして自社株買いのほうも見るに値します。直近では、株式市場が全般的に低迷した昨年末に実施しています。昨年度の総株主還元性向は100%を超え、純利益を超える資産を株主へ還元しています。

もう少し過去にさかのぼり、当社が自社株買いを実施したタイミングを確認してみます。当社のWebサイトによれば、取締役会で自己株式取得が3回決議されていますが、いずれも株価が低迷している時期に実施されています。








株を買うタイミングは申し分なしのようです。あとは株価自体が割安だったかどうかですが、現段階でのPERが13.5(今年度見込み)程度なので、高くはないが安いというほどでもない、といったところでしょうか。急いで買う必要はなかったかもしれませんが、経営陣自らが当社の将来性を高く評価しているのかもしれません。総合的にみれば、経営陣は株主を重視しているように思います。

いずれは当社に投資したいと考えてから何年かたちましたが、相対的な割安さがもうひとつで踏みだせていません。機会がくるかどうかわかりませんが、これからも動向を追っていきたい企業です。

2012年7月2日月曜日

誤判断の心理学(11)お先真っ暗なとき(チャーリー・マンガー)

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今回ご紹介するのは、苦痛を避ける傾向についてです。(日本語は拙訳)

誤判断の心理学
The Psychology of Human Misjudgment

(その11)ただ苦痛を避けたいがために否認する
Eleven: Simple, Pain-Avoiding Psychological Denial

初めて私がこの現象を印象深く感じたのは、第二次世界大戦のときでした。家族付き合いをしていた人にご子息がおられましたが、彼はスポーツマンの上に模範的な学生でした。しかし、彼は大西洋の向こうへ飛んでいったきり、帰らぬ人となりました。彼の母親はとても聡明な女性だったのですが、息子が戦死したことを決して信じようとしませんでした。ただ苦痛を避けたいがために事実を認めない、そのような心理学的行動をとったのです。人はあまりにも過酷な現実に直面すると、それを受け入れられるようになるまでは事実をねじまげて解釈するのです。人間誰しも何らかの形でそのような行動をとるものですが、ひどい問題に発展してしまうこともあります。極端な場合には、愛や死や薬物依存といったおきまりの災厄にまきこまれてしまうのです。

事実を認められないがゆえに死を選ぶ。そのような行動を良しとする社会では、周りの人が咎めずにいても憤慨する者はいないでしょう。しかし、「希望はなくとも耐え忍ぶことはできる」という冷徹な教えを守ろうとする人も、なかにはいます。そのようなふるまいのできる人には賞賛に値するものがあります。

とことんまで身持ちを崩してしまった薬物中毒の人に見られるのが、「自分はまだちゃんとしているし、将来だって有望だ」と信じている姿です。ますますひどくなるにつれて、現実否定ぶりもお話しにならないところまで達します。私が若かった頃にあったフロイト派による治療法では、薬物依存を治そうとしてもまったく役に立ちませんでしたが、近年のアルコホーリクス・アノニマス[断酒団体]では治癒率50パーセントを継続的に達成しています。この取り組みは仲間と共にアル中に立ち向かうもので、様々な心理学的傾向を活用しています。ただし、治るまでの道のりは概して険しく、燃え尽きがちです。それに残りの半分は失敗しているのです。ですから、薬物依存に陥りそうないかなる行為にも、絶対に近寄るべきではありません。ひどいことになる可能性が小さくてもダメです。

This phenomenon first hit me hard in World War II when the superathlete, superstudent son of a family friend flew off over the Atlantic Ocean and never came back. His mother, who was a very sane woman, then refused to believe he was dead. That's Simple, Pain-Avoiding Psychological Denial. The reality is too painful to bear, so one distorts the facts until they become bearable. We all do that to some extent, often causing terrible problems. The tendency's most extreme outcomes are usually mixed up with love, death, and chemical dependency.

Where denial is used to make dying easier, the conduct meets almost no criticism. Who would begrudge a fellow man such help at such a time? But some people hope to leave life hewing to the iron prescription, "It is not necessary to hope in order to persevere." And there is something admirable in anyone able to do this.

In chemical dependency, wherein morals usually break down horribly, addicted persons tend to believe that they remain in respectable condition, with respectable prospects. They thus display an extremely unrealistic denial of reality as they go deeper and deeper into deterioration. In my youth, Freudian remedies failed utterly in reversing chemical dependency, but nowadays Alcoholics Anonymous routinely achieves a fifty percent cure rate by causing several psychological tendencies to act together to counter addiction. However, the cure process is typically difficult and draining, and a fifty percent success rate implies a fifty percent failure rate. One should stay far away from any conduct at all likely to drift into chemical dependency. Even a small chance of suffering so great a damage should be avoided.


チャーリー・マンガー自身も、精神面、肉体面の両方で大きな苦痛を経験しています。31歳の時には長男を病気で亡くし、56歳の時には手術の甲斐なく左目の視力を失っています。