<質問> ヨーロッパにとって、ユーロという存在は建設的なものだったのでしょうか、それとも否定的なものでしょうか。またフランスはユーロから脱退すべきでしょうか。
<マンガー> 「通貨ユーロを確立する」という崇高なる目標をヨーロッパは抱いていました。しかしこれほど異なる国家をひとつにするには欠陥のある仕組みでしたね。加わるべきでない国が数ヶ国入っています。フランスが問題なのではありません。大きな試練はギリシャやポルトガルにあるのです。義理の兄弟が軽薄で酔いどれだとしたら、事業のパートナーにできるわけないでしょうが。
<バフェット> まだ数多くの仕事が必要ですが、ヨーロッパがとっていた金融政策は良い考えだったと思います。しかし欠陥があるのでしたら、それに立ち向かう必要があります。合衆国の憲法も、修正された箇所がいくつかあります。ユーロが完璧に設計されていないからと言って、破棄すべきだと責めるのはよくないと思います。この国もカナダと共通の通貨を持つことになるかもしれませんが、そうなればうまくやっていくでしょう。ですが、「地球のこちら側半分における共通通貨」ということにはならないでしょう。実のところ、一貫して規則が適用されるユーロ通貨は望ましいものだと思っています。当初あったユーロの規則を、早い頃に破ったのはドイツとフランスでした。ギリシャではありません。
<マンガー> ユーロに加入する許可を得るために、いくつかの国家に対してバランスシートに虚偽を加える手伝いをしたのは投資銀行でしたね。
<バフェット> もっと団結した金融政策を実施できる道をみつけられれば、ユーロは存続できると思います。しかし現在の形態では続かないでしょう。
<マンガー> 実際私は、けっこうな数になる人たちの感情を逆なでしたことになりますね。
When asked if the Euro has been positive or negative for Europe and whether France should quit the Euro, Charlie said Europe had a noble goal in establishing the Euro, but it's a flawed system to put countries so different together. They have countries in there that shouldn't be there. France is not the problem. The big strains are in Greece and Portugal. He wryly said, "You can't form a business partnership with your frivolous, drunken brother-in-law."
Buffett said European monetary policy was a good idea that still needs a lot of work. If there are flaws, they need to face them. We wrote a Constitution that took a few Amendments. Buffett said he doesn't think the fact that the Euro wasn't perfectly designed should condemn it to being abandoned. We could have had a common currency with Canada. We would have worked it out. However, we couldn't have had a hemisphere-wide currency. Buffett actually thinks it is desirable to have a Euro currency with rules applied consistently. There were rules on the Euro originally that were broken early on by the Germans and French, not the Greeks.
Charlie noted that it was investment banker aided fraud that permitted some countries to come up with the balance sheets to join the Euro.
Buffett said he thinks the Euro can survive, if they can figure out a way to conduct monetary policy with more cohesion. In its present form, it will not work.
Charlie concluded the topic with "I think I've offended enough people."
2015年7月20日月曜日
2015年バークシャー株主総会;ユーロについて
5月2日に開催されたバークシャー・ハサウェイの年次株主総会から、ユーロに関する話題です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)
2015年7月18日土曜日
価値評価の実例:エスコ・エレクトロニクス社(3)(セス・クラーマン)
セス・クラーマンの著書『Margin of Safety』から、第8章の価値評価に関するエスコ社の話題がつづきます。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)
エスコ社に投資している者が、将来の業績について別のシナリオも検討したいと考えるのは、まずまちがいないだろう。たとえば、連邦政府との契約で係争となった案件のうち少なくとも1件が敗訴する可能性は明らかにあった。また広く予想されていた国防予算の削減が実現することで、同社にとって利益のあがる契約を失ったり新規に受注できなかったりする可能性も考えられた。新たに独立した同社はほとんどの競合他社よりも小規模だったために、エマーソン社を離れて事業を進める上で困難に直面する可能性もあった。
それとは別の見方として、連邦政府との契約に関する訴訟でエスコが完勝するか、あるいは容認できる条件で和解する見込みも考えられた。実のところ新たな経営陣は、過去の難題はさっさと忘れて心機一転したいと考えていたようだ(実際にその係争は、スピンオフした何ヶ月後かにエスコ社にとって好ましい条件で暫定的な合意に達した)。さらにその新経営陣は「自分たちのねらいが売上よりもキャッシュフローを最大化することにある」との意向を示した。新規の契約が承認される際には、名声を得たかったり売り上げ増を達成したいとの願いではなく、収益性の面でリスクが小さいことが判断基準となるのだ。そのため、「不採算の契約が完了して採算のとれる契約が加わることで、利益が次第に増加していく」とする見方はそれなりに妥当な考えだった。
また正味現在価値分析だけでなく、他の評価手段も考慮したいと考えるかもしれない。しかしこのエスコ社の事例では相対取引価値分析は適用できなかった。というのも、それなりの規模となる国防関連企業の買収案件が近年はほとんどなかったからだ。仮にあったとしても、エスコ社を丸ごと買収しようと望む者はだれであろうと、破格の安値であればともかく、同社が抱えていた係争中の案件によって意欲を削がれただろう。実際のところ、スピンオフに先立ってエスコ社の売却話が打診されたが、エマーソン社が許容できる価格で名乗り出た買い手は皆無だった。
その反対に、エマーソン社がハゼルティン社をわずか4年前に買収した際には1億9千万ドルを支払ったが、ハゼルティンはスピンオフ時点のエスコ社が営む事業のわずかな部分を占めるにすぎなかった。ハゼルティン案件に近い倍率で買収金額を考えたとしても、エスコ社全体の価値はその時点の株価の何倍にもなっただろう。ハゼルティン社分だけでもエスコ社1株あたり15ドルの価値があったのだ。
Investors in Esco would certainly want to consider alternative scenarios for future operating results. Obviously there was some chance that the company would lose one or more of its contract disputes with the U.S. government. There was some possibility that a widely anticipated reduction in national defense spending would cause the company to lose profitable contracts or fail to receive new ones. There was a chance that the newly independent company, smaller than most of its competitors, would face difficulties in trying to operate apart from Emerson.
Alternatively, there was some prospect that Esco would either win both of its contract disputes outright or settle with the government on acceptable terms. Indeed, the new top management would likely wish to start afresh, putting past difficulties behind them. (The disputes were, in fact, tentatively settled within months of the spinoff on terms favorable to Esco.) Further, new management expressed its intention to maximize cash flow rather than sales; new contracts would be accepted on the basis of low-risk profitability rather than prestige or the desire to achieve revenue growth. Thus it was not unreasonable to think that earnings would grow over time as unprofitable contracts were concluded and profitable contracts added.
Investors would want to consider other valuation methods in addition to NPV. The private-market value method, however, was not applicable in the case of Esco because there had been few recent business transactions involving sizable defense companies. Even if there had been, Esco's pending contract disputes would put a damper on anyone's enthusiasm to buy all of Esco except at an extreme bargain price. Indeed Esco had been put up for sale prior to spinoff, and no buyers emerged at prices acceptable to Emerson.
Conversely Emerson had only four years earlier paid $190 million for Hazeltine, which comprised only a fraction of Esco's business at the time of spinoff. At a takeover multiple even close to that of the Hazeltine transaction, all of Esco would be worth many times its prevailing stock market price, with Hazeltine alone worth $15 per Esco share.
2015年7月16日木曜日
2015年デイリー・ジャーナル株主総会(10)シンガポールについて
デイリー・ジャーナル社の株主総会の記事から、チャーリー・マンガーお気に入りのリー・クアンユーの話題です。引用元の記事はいつもと同じですが、今回は記事Part3からです。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)
Charlie Munger's 2015 Daily Journal Annual Meeting - Part 3 (Forbes)
Charlie Munger's 2015 Daily Journal Annual Meeting - Part 3 (Forbes)
<質問> オーストラリアのシドニーから参りました。チャーリー、リー・クアンユーの話に戻りたいのですが、彼がシンガポール政府で築いた文化が、現在あるいは将来において維持される可能性はどれぐらいでしょうか。
<マンガー> あの国はうまくやっていますよ。リー・クアンユーは昔のやりかたを変えました。腐敗を排除するとともに、それが生じにくいように変えたのです。かなりの額の報酬を与えることになりました。ですから、シンガポールでは盗みをして得をする理由がありません。議会や上級の政府役人は、たとえば相当な報酬を得ていますし、尊敬も集めています。
彼がシンガポールに残したことは、今後もうまく機能し続けると思います。ただし「彼がそうやって成功した頃には、中国はまだそうしていなかった」、それは言えるはずです。現在のシンガポールは中国と厳しい競争をしなければなりません。
<質問> 彼のご子息や前任者が起こした変化はどうですか。たとえばシンガポールにもカジノが許可されましたが。
<マンガー> それはおぞましいですね。ほかの通常のビジネスとくらべて、カジノの経営は大いに儲かります。在庫はいらないうえに、紙幣を印刷する認可を得ているようなものですから、その誘惑に逆らえないのです。だから彼としては、カジノでは外国人だけがプレーできるようにしたわけですよ。自国民を堕落させたくなかったのですね。私は悪魔と褥を共にしたいとは思いません。しかし、カジノを許可するとなった時には、すでにクアンユーは実権を握っていませんでした。彼がもっと若ければそうしなかった、と思いたいですね。
この国ではカジノやくじがそこらじゅうに創り出されています。米国にとってそれが望ましいとは、私は考えていません。発展した社会において望むべき展開ではないからです。アホな政治家はその毒を加えることで短期的な問題を解決しようとします。なんとも彼らには地獄の底がお似合いですよ。つまり「事実上彼ら全員をお払い箱にしたい」と言っているのです。というのは、事実上彼ら全員がそうしてきたからです。新しいカジノができない場所など見当たらないでしょう。テレビのコマーシャルでは、テーブルを囲む連中が勝ちをあげて喜んでいますね(笑)。
あの宣伝は偽りです。「トントンまで戻れば」と思いつめる絶望的な顔をした連中が勝負の席についている姿を出すべきですよ。そういった映像が茶の間のテレビに映し出されるのを想像してみたらどうですか。
Q: Charlie, I'm here from Sydney, Australia. I'd like to just come back to Lee Kuan Yew. What are the chances of that culture continuing with the current government and future governments of Singapore?
Mr. Munger: They're pretty good. Lee Kuan Yew left a base, eliminated the corruption, made it hard to get in, and paid the people a lot. There's no real incentive to steal in Singapore. Either in Parliament or as an advanced government administrator, you get paid very well, and you're admired, and so forth.
I think what he's left in Singapore will continue to do very well. But of course, he rose when he was doing it and China wasn't. Now Singapore has to compete with China. China makes it harder.
Q: What about the changes since his son or predecessor came in, for example, allowing casinos to come into Singapore…
Mr. Munger: I would have hated that. You make so much money running a casino, compared to any normal human business. There are no inventories, it's like having license to print money, and people just can't stand the temptation. So, he organized a casino business. Only foreigners can play; he didn't want to ruin the locals. I would not have slept with the devil that much. But Yew was no longer really in power when that happened. If he'd still been young, I'd like to think he would not have done that.
I do not consider it desirable in the United States that we've created casinos and lotteries everywhere. That was not a desirable development in an advanced civilization, and the damn politicians that solve their short-term problems by bringing in this poison deserve to be in the lowest circle of hell. That means that I'm consigning practically all of them, since practically all of them have done it. I can hardly find a place where they aren't putting in new casinos. And the advertising on TV is happy people winning at the table.
[laughter]
Talk about false advertising! You should look at the desperate faces of people trying to get even at the table. Imagine making your living putting those kinds of images on television.
2015年7月14日火曜日
ウォーレン・バフェットの私信から学んだこと(レオン・クーパーマン)
レオン・クーパーマン氏というヘッジ・ファンドのマネージャーが、ウォーレン・バフェットに関する話題を打ち明けた記事が、以下のWebサイトに掲載されています。講演用の原稿をレビューしてもらおうとウォーレンに依頼したところ、彼からもらった返信に教えられたとのことです。今回はウォーレンの返事の部分などを引用してご紹介します。(日本語は拙訳)
Warren Buffett revealed this 'great philosophy of life' in a letter to a hedge fund manager (Business Insider)
*
お亡くなりになったことが昨日発表された任天堂の岩田社長も、個人的に尊敬していた人物です。持ち株は少ないながら、任天堂のことは情報収集を続けてきました。多くの人から愛される経営者として、岩田さんはウォーレン以上だったかもしれません。人がだれかの言動に共感を寄せたり、見習いたいと心のうちで感じるのは、テレビや新聞、ネット記事や新刊本といったマスメディアにではなく、誠実さや真剣さがにじむ人物の小さな行動の積み重ねにあると思います。岩田さんが示した人生訓は、静かに力強く受け継がれていくと思います。
Warren Buffett revealed this 'great philosophy of life' in a letter to a hedge fund manager (Business Insider)
[リー・クーパーマン氏はバリュー投資家向け講演でとりあげる事例として、ロウズ社(Loews)による自社株買いとテレダイン社のヘンリー・シングルトンを取りあげたいと考えた。以下は、それに対するウォーレンの所感]
2007年11月23日
リー殿へ、
前略
この2件よりも適した題材は挙げられないと思います。[テラダイン社の]ヘンリー[・シングルトン](参考記事)は、投資家やCEO、将来のCEOやMBAの学生のだれもが学ぶべき経営者です。最終的に彼の判断は100%合理的でした。わたしからそのように表現できるCEOは、ほんのわずかな人だけです。
自社株買いはわたしにとって大いに興味をひく状況です。答えが単純だからです。自社株買いをする時期とは、1ドルを買うために明らかに大幅な安い金額を支払うときで、なおかつ買っていいのはそのときだけです。
あくまでも全般的な見方ですが、30年前に自社株買いをしていたほとんどの企業は正しい理由でそうしていました。しかし、現在はまちがった理由でそうする企業ばかりだと言えます。時が移るなかで、流行に乗りたがったり無意識のうちに株価を支えたいと考える経営者をみてきました。いつでも正しい理由に基づいて自社株を買い戻してきた企業の例として、ロウズ社はとてもふさわしいと思います。それとは反対の例をいろいろあげることもできますが、わたしは次の格言にしたがうことにしています。「称賛するときには名指しで、批判するときには領域全体を指し示すこと」。
草々
ウォーレン
「わたしはその手紙を息子2人に見せることにしました」、クーパーマンはリゾルツにそう言った。「これはすばらしい人生訓だと思います。ウォーレンが公の場で特定の人物を批判したのをみたことがないでしょう。彼が投資銀行家という表現で批判したことはあるかもしれません。ヘッジファンド全体を批判したかもしれません。しかし特定のだれかを追い回したりはしません。良き人生哲学だと個人的には考えています」
November 23, 2007
Dear Lee,
I don't think you could have picked two better subjects. Henry is a manager that all investors, CEOs, would-be CEOs, and MBA students should study. In the end, it was 100% rational and there are very few CEOs about whom I can make that statement.
The stock-repurchase situation is fascinating to me. That's because the answer is so simple. You do it when you are buying dollar bills at clear cut and significant discount and only then.
As a general observation I would say that most companies that repurchased shares 30 years ago were doing it for the right reasons, and most companies doing it now are wrong when doing so. Time after time, I see managers who are attempting to be fashionable or subconsciously hoping to support their stock. Loews is a great example of a company that's always repurchased shares for the right reasons. I could give examples of the reverse, but I follow the dictum praise by name, criticize by category.
Best regards
Warren
"And I showed that letter to my two sons," Cooperman told Ritholtz. "And it's a great philosophy of life. You never see Warren criticize any one individual in public. But he might criticize investment bankers. He might criticize hedge funds. But he doesn't go after anyone. And that's a good philosophy of life, in my opinion."
*
お亡くなりになったことが昨日発表された任天堂の岩田社長も、個人的に尊敬していた人物です。持ち株は少ないながら、任天堂のことは情報収集を続けてきました。多くの人から愛される経営者として、岩田さんはウォーレン以上だったかもしれません。人がだれかの言動に共感を寄せたり、見習いたいと心のうちで感じるのは、テレビや新聞、ネット記事や新刊本といったマスメディアにではなく、誠実さや真剣さがにじむ人物の小さな行動の積み重ねにあると思います。岩田さんが示した人生訓は、静かに力強く受け継がれていくと思います。
2015年7月12日日曜日
2015年バークシャー株主総会;国富論と資本主義について
5月2日に開催されたバークシャー・ハサウェイの年次株主総会から、資本主義に関する短い質疑応答です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)
<質問> 『国富論』を読んだことで何を学びましたか。
<バフェット> 経済学について学びました。ビル・ゲイツが初版本をくれたのです。アダム・スミスやケインズやリカードの本、それから『投資家のヨットはどこにある?』からはたくさんの知恵が得られます。
<マンガー> アダム・スミス[の思想]は実に持ちこたえてきましたね。彼は史上もっとも賢明だった人間の一人ですよ。資本システムが持つ生産的な威力を見せてくれました。共産主義があれほど見事に失敗したことで、彼の教えが十分に納得できたと思います。
<バフェット> 資本主義の持つ力によって生産性は向上してきました。つまり他人には彼らのいちばん得意なことをやってもらい、自分は自分のいちばん得意なことに集中するという考えです。自分にとって最も成果を発揮できる領域で働いたほうが良いわけです。
<マンガー> そうですよ。ウォーレンも自分の内臓の手術を、自分ではやらなかったのですから。
When asked what he learned from reading Wealth of Nations, Buffett said he learned economics from it. Bill Gates gave Buffett an original copy of the book. Buffett said if you read Adam Smith, Keynes, Ricardo, and “Where Are the Customers' Yachts,” you will have a lot of wisdom.
Charlie added that Adam Smith has really worn well. He is one of the wisest people that ever came along. He demonstrated the productive power of the capital system. The lesson was really learned when communism failed so spectacularly.
Buffett agreed saying the power of capitalism has improved productivity. The idea is that you let other people do what they do best at and stick to what you're best at. You should work in the field that is most productive for you.
Charlie agreed by noting that Buffett did not do his own bowel surgery.
2015年7月10日金曜日
2015年デイリー・ジャーナル株主総会(9)おバカさんでも大儲けできる
デイリー・ジャーナル社の株主総会の記事から、おなじみの話題ですがチャーリー・マンガー式の投資スタイルについてです。前回分はこちらです。引用元の記事は本シリーズ5回目の投稿と同じです。(日本語は拙訳)
<質問> 近年になって金融経済学者が、高収益で質の高い企業はそうでない企業よりも良い投資先であることを再発見しています。彼らはそのアイデアがどこからきたのか見いだそうとしたところ、バフェットにたどりつきました。そしてバフェットの示した人があなたです。しかしあなたは弁護士だった1950年代や1960年代初期に見抜いておられましたが、そのアイデアにはどうやって到達したのですか。当時のあなたは、まだチャーリー・マンガーではなかったのですから(笑)。
<マンガー> 少しでも常識があれば、他社よりもうまくやっている企業があることはだれにだってわかりますよ。ところがそういった企業には資産や利益などと比較して高い値段が付けられているときます。それでむずかしくなるわけです。だから、このゲームが楽しくなっているわけですね。「他社よりも良い会社はどこなのか」、それをみつけるだけならば、おバカさんでも大儲けできるはずです。しかし価格が上昇し続けることで勝率も変化します。
私にはわかりきっていました。「株式市場は効率的な場所だから、それをしのぐことはだれにもできない」と私の同僚たちは教えられていました。しかしオマハにいたころに、他人より馬のことを熟知していた人たちがパリミュチュエル方式を打ち負かしていたのを私は知っていました(参考記事)。だから、その考えはバカげているとわかっていたのです。そして若いころにビジネス・スクールには一切近づきませんでした。異常な考えに汚染されなかったのは、そのおかげですね(笑)。
その説[=市場効率仮説]を信じたことはないですね。それに、エデンの園には口をきくヘビがいるなどと信じたこともありません。つまり、どうしようもないことを識別する才能はありました。ですが、特別なところはなにもなかったですよ。他人にもできないようなすばらしい眼識など、一切持ち合わせていません。他人よりも少しばかり徹底してバカなことを避けてきただけです。
他人は賢明であろうとしていますが、私がやっているのはバカなことをしないように努めるだけです。人生を歩む上でどうすべきなのか悟ったのです。「バカなことはせずに長生きする」、それだけです。しかしバカなことをしないでいるのは、たいていの人が想像する以上にむずかしいことですよ。
Q (Phil DeMuth): Financial economists in recent years have rediscovered that highly profitable, high quality companies are better investments than other companies. They try to figure out where this idea came from, it takes them back to Buffett, and then Buffett points to Munger. But this is an insight you had in the 1950s, or maybe the early 1960s, when you were an attorney. How did you come upon this idea? You weren't even Charlie Munger then.
[laughter]
Mr. Munger: Everybody with any sense at all knows that some companies are better than others. What makes it difficult is they sell at higher prices in relation to assets, and earnings and so forth, and that takes the fun out of the game. If all you had to do was figure out which companies were better than others, an idiot could make a lot of money. But they keep raising the prices to where the odds change.
I always knew that. They were teaching my colleagues that the stock market was so efficient that nobody could beat it. But I knew people who beat the pari mutuel system in Omaha by knowing more about horses than other people. I knew it was bull. When I was young I never went near a business school so I didn't get polluted by the craziness.
[laughter]
I never believed it. I never believed there was a talking snake in the Garden of Eden. I had a gift for recognizing twaddle, and there's nothing remarkable about it. I don't have any wonderful insights that other people don't have. I just avoided idiocy slightly more consistently than others.
Other people are trying to be smart; all I'm trying to be is non-idiotic. I've found that's all you have to do to get ahead in life, be non-idiotic and live a long time. It's harder to be non-idiotic than most people think.
2015年7月8日水曜日
価値評価の実例:エスコ・エレクトロニクス社(2)(セス・クラーマン)
毎度ながら少し間隔があきましたが、マネー・マネージャーのセス・クラーマンの著書『Margin of Safety』、第8章の価値評価に関する話題のつづきです。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)
1990年10月時点でのエスコ社の価値を評価するためには、業績を理解することからはじめた。つまり利益とキャッシュフローである。エスコ社があげる将来の利益を予測するのは殊にむずかしい作業だった。特に直前2年間の各年度において、多額の非継続性損失を計上したからだ。ベアー・スターンズ社のアナリストは、1991年の会計年度における利益を収支トントンと予測していた。その数字には、新しく設定された740万ドルの費用が含まれていた。これは1991年から1995年に毎年発生するエマーソン社向けの債務で、継続中だった国防関連の契約を保証するものだった。この支出によって当該5年間の報告利益が減少することになるが、これは特殊なもので、真の事業の姿を示す費用ではなかった。
利益を抑制しつづけた他の要因として、ハゼルティン社買収によって損金不算入分ののれん償却費が年額500万ドルほど発生していた件があった。のれんの償却費用は現金の支出を伴わないので、これに由来するだけでも500万ドルすなわち1株当たり45セントのフリー・キャッシュフローが生じた。
正味現在価値分析によってエスコ社の価値をはかるには、同社が将来実現できそうなキャッシュフローを予測する必要がある。今ふれたように1株当たり45セントになるのれん償却費はフリーキャッシュだった。また740万ドルの保証費用がなくなる1996年からは、税引き後利益に45セントが追加される。さらに将来の利益を考える上では、いくつかの点を仮定する必要があった。
妥当な仮定のひとつとしておそらくもっとも可能性が高いものが、現在はゼロである利益の額が少しずつ増加する見方だ。不採算の案件はいずれ終結するし、キャッシュフローの留保分からは利子が得られる。もうひとつ別の見方としては、当時の停滞した業績水準が無期限に継続する可能性が考えられた。
キャッシュフローを評価するためには、将来の利益を予測することに加えて、今後行うと考えられる事業での支出を伴う投資や投資引き揚げを見積もる必要がある。例えば近年の減価償却費はおおよそ設備投資額に相当していたので、それが将来も続くと想定するのは保守的な見方だと思われた。また継続中の不採算案件に拘束されている運転資本は、時期は不定ながらもいずれは解放されて他の用途に回すことができる。売上高とくらべた運転資本の比率はその時点では過大だったものの、国防に関連する電子業界での同様な他社と比較できる水準になれば、利用可能な現金におよそ8,000万ドルが加わるだろう。ただし保守的な見方のほうでは、ここから生じる分のフリー・キャッシュフローは見込まないこととした。
低迷する業績水準から脱却できないままだとしたら、エスコ社の価値はどう考えられただろうか。キャッシュフローの面で5年間は1株当たり45セント、その後はエマーソン社に対する保証費用が終了するので90セントになる。割引率を12%あるいは15%とすると、それらの現在価値は1株当たり5.87ドルあるいは4.7ドルとなった。各々の割引率には想定される不確実性を反映している。もしキャッシュフローが増加するとなれば、当然ながら価値も増大する。
一方、横ばいだったエスコのキャッシュフローを、10年間にわたって毎年約220万ドルつまり1株当たり20セント増加させることができたらどうなるだろうか。それらを含めた金額を12%あるいは15%で割り引いた際の現在価値は、14.76ドルあるいは10.83ドルになる。つまり上述した諸々の仮定にしたがうと、エスコ社の現在価値は保守的な見方では1株当たり4.7ドル、悲観しない見方では14.76ドルと算出された。たしかに広い幅ではあるが、どちらの場合でも3ドルの株価は十分に上回っており、またひどく楽観的な仮定もしていなかった。(p.138)
The first step in valuing Esco in October 1990 was to try to understand its business results: earnings and cash flow. Esco's future earnings were particularly difficult to forecast, especially because in each of the preceding two years the company had taken significant nonrecurring charges. An analyst at Bear Steams estimated break-even earnings for fiscal year 1991. This estimate was after the deduction of a newly instituted charge of $7.4 million, payable by Esco to Emerson each year from 1991 to 1995, for guaranteeing outstanding defense contracts. Although this charge would have the effect of reducing reported earnings for five years, it was not a true business expense but rather more of an extraordinary item.
Another ongoing depressant to earnings was Esco's approximately $5 million per year charge for nondeductible goodwill amortization resulting from the Hazeltine acquisition. Since goodwill is a noncash expense, free cash flow from this source alone was $5 million, or forty-five cents per share.
In order to value Esco using NPV analysis, investors would need to forecast Esco's likely future cash flows. Goodwill amortization of forty-five cents a year, as stated, was free cash. Beginning in 1996 there would be an additional forty-five cents of after-tax earnings per year as the $7.4 million guaranty fee ended. Investors would have to make some assumptions regarding future earnings.
One reasonable assumption, perhaps the most likely case, was that earnings, currently zero, would gradually increase over time. Unprofitable contracts would eventually be completed, and interest would be earned on accumulated cash flow. An alternative possibility was that results would remain at current depressed levels indefinitely.
In addition to predicting future earnings, investors would also need to estimate Esco's future cash investment or disinvestment in its business in order to assess its cash flow. Depreciation in recent years had approximated capital spending, for example, and assuming it would do so in the future seemed a conservative assumption. Also, working capital tied up in currently unprofitable contracts would eventually be freed for other corporate uses, but the timing of this was uncertain. Were Esco's working capital-to-sales ratio, currently bloated, to move into line with that of comparable defense electronics firms, roughly $80 million in additional cash would become available. To ensure conservatism, however, I chose to project no free cash flow from this source.
What was Esco worth if it never did better than its current depressed level of results? Cash flow would equal forty-five cents per share for five years and ninety cents thereafter when the guaranty payments to Emerson had ceased. The present value of these cash flows is $5.87 and $4.70 per share, calculated at 12 percent and 15 percent discount rates, respectively, which themselves reflect considerable uncertainty. If cash flow proved to be higher, the value would, of course, be greater.
What if Esco managed to increase its free cash flow by just $2.2 million a year, or twenty cents per share, for the next ten years, after which it leveled off? The present value of these flows at 12 percent and 15 percent discount rates is $14.76 and $10.83, respectively. Depending on the assumptions, then, the net present value per share of Esco is conservatively calculated at $4.70 and less pessimistically at $14.76 per share, clearly a wide range but in either case well above the $3 stock price and in no case making highly optimistic assumptions.
2015年7月6日月曜日
2015年バークシャー株主総会;法人税や譲渡所得税について
5月2日に開催されたバークシャー・ハサウェイの年次株主総会から、法人税や譲渡所得にかかる税金の話題です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)
<質問> この国の税法はもっと簡素にしたほうがよいのでしょうか。
<バフェット> そうですね。法改正には下院で218票、上院で51票の賛成が必要ですし、さらには大統領が法案に署名する必要があります。企業の長はだれもが現行の税率に不平を言っていますが、GDPに占める企業利益の割合は過去最高に達しています。40年前の法人税はGDPの4%に相当していましたが、現在はおよそ2%です。もっと合理的な税制を実現する能力が議会にはあります。支出額がGDPの21-22%に相当するのであれば、GDPの19%は税収でまかなうべきです。2-3%の赤字であればやっていけます。ところが17兆5千億ドルになる経済から19%分となると、実際のお金の話をしているわけですから、どこからどれだけとるのかで角を突き合わせることになります。
海外に留保した資金を企業は米国に還流させることができますが、法人税率分は納税しなければなりません。法人税という面では、もっと公平な税制になるかもしれません。しかし現在の法人税率に悲しんではいません、米国企業はそれでも繁盛しているのですから。企業は有形資産比で15%の利益をあげているので、GDP2%分の支払いは厄介というほどの数字ではありません。預金者が譲渡性預金で得ている利率は0.25%や0.5%です。それとくらべると株式の保有者は厚遇されています。
<マンガー> 私の住んでいるカリフォルニア州では譲渡所得税率が13.5%ですよ。とんでもないですね、金持ちはカリフォルニアから逃げ出せと言わんばかりです[それに加えて連邦税率がたとえば20%かかる]。ハワイやフロリダ州はちゃんとわかってますよ。金持ちがあれこれと犯罪をおかすことはないですし、医療費には多額の金を出しますし、公立学校制度には負担をかけません。「金持ちに住み着いてもらって、金を落としてほしい」と考えない州などあるのでしょうかね。カリフォルニア州の税政はひどいものです。しかし連邦税が悪いとはちっとも思いませんね。
<バフェット> 今後1年間のうちに法人税が改正される可能性はかなりあると思います。
When asked if the U.S. needs a simpler tax code, Buffett said it takes 218 members of the House and 51 US Senators to make the change and the President to sign the legislation. Despite current tax rates that all the corporate chieftains complain about, the share of corporate profits to GDP is at a record. Corporate taxes 40 years ago were 4% of GDP and today they are now running about 2%. Buffett thinks Congress is capable of working out something to make the tax code more rational. If spending is 21%-22% of GDP, we should raise 19% of GDP in taxes. We can run a 2%-3% deficit. However, if you take 19% of a $17.5 trillion economy, you're talking real money. How much you get from where is a fight up the line.
In terms of cash parked abroad, companies can bring it back to the U.S., but they will have to pay the corporate tax rate on it. Buffett thinks there can be a much more equitable tax code in terms of corporate tax. However, he would not shed tears on the current corporate tax rate as American businesses are still prospering. Paying 2% of GDP is not an onerous number, when corporations are earning 15% on tangible equity. Equity holders are being treated well, especially in comparison to savers who are only getting 0.25% or 0.5% on CDs.
Charlie added that he lives in California, where there's a 13.5% tax on capital gains. He thinks that's ridiculous as it is driving rich people out of California. Hawaii and Florida have enough sense to know that rich people don't commit a lot of crimes, they make a lot of medical expenditures and they don't burden the public school systems. He asked, "Who the hell doesn't want rich people coming into their state and spending money?" He concluded that California has a stupid tax policy, but he doesn't think the federal tax policy is bad at all.
Buffett said he thinks there is a good chance for corporate tax reform within a year.
2015年7月4日土曜日
2015年デイリー・ジャーナル株主総会(8)イーロン・マスクについて
デイリー・ジャーナル社の株主総会の記事から、イーロン・マスクとテスラモーターズの話題です。前回分はこちらです。また引用元の記事は、ひきつづき本シリーズ5回目の投稿と同じです。(日本語は拙訳)
備考です。イーロン・マスクに対するチャーリーの見立ては過去記事で取りあげています。
<質問> 最近のことですが、イーロン・マスク氏のインタビュー映像をYouTubeで観ました。「あなたと昼食を共にした」と彼は言っていました。そのときにあなたは、テスラが失敗するありとあらゆる種類の理由を彼に言ったそうですね(笑)。
おそれいりますが、なぜテスラが失敗するとお考えになっているのか、ご教授頂けますか。またBYD社はそのことからなにが学べるでしょうか。
<マンガー> 自動車業界は非常に厳しいところですよ。競合が激しく、最高のクルマを作ろうとどの会社も考えています。すでにどの企業も巨大で裕福となっています。だからテスラの商売はし烈だと考えるわけです。イーロン・マスクは天才です。あの仕事をやる人物がだれかと問われれば、たぶん彼こそがその人なのでしょう。
しかし我々はバークシャーでこう発言しています。「天才として評判の高い人物が、経営状況が厳しいことで評判の企業を指揮するときは、勝ち残るのはおそらく企業の評判のほうだ」と。政府の支援がなければ、電気自動車を離陸させるのは実にむずかしい仕事ですよ。しかし中国ではこの国よりもずっとうまくいきます。空気が汚れていますからね。
彼にとって本当に必要なのは、この国全体が致命的な大気汚染に見舞われ、たくさんの人が死に至る状況です。そのようなひどいことがない以上、むずかしくなっていくと思いますよ。彼は天才ですが、そうあらねばならないでしょう。
Q: I recently watched an Elon Musk interview on YouTube, in which he said he had lunch with you and you had given him all sorts of reasons why Tesla would fail.
[laughter]
Would you be kind enough to educate us why you thought Tesla would fail, and what BYD [ticker: BYDDF] can learn from this?
Mr. Munger: I think the auto business is very difficult, very competitive, and everybody is going to make wonderful cars. Everybody already has enormous size and wealth. So, I regarded it as a tough business. Elon Musk is a genius, and so if anybody has a chance to do it, he probably is the man.
But we have a saying at Berkshire that when a man with a reputation for genius takes on a business with a reputation for tough operating conditions, it's the reputation of the business that's likely to prevail. Without government help, getting electric cars off the ground is really hard. In China, it works a lot better than it does here, because their air is worse.
What Elon Musk really needs is for the whole country to have a disastrous smog attack that kills a lot of people. Short of something terrible like that, I think it's going to be difficult. He's a genius, but is going to have to be.
備考です。イーロン・マスクに対するチャーリーの見立ては過去記事で取りあげています。
2015年7月2日木曜日
なにもかも知る必要はない(スティーブン・ローミック)
バリュー志向のファンド・マネージャーであるスティーブン・ローミック氏は、個人的に尊敬しているマネージャーのひとりです。彼が最近講演した内容がファンドのWebサイトに掲載されていたので一読しました。楽しんで読め、全編が参考になりました。徹底したバリュー投資家である彼のファンドでは現金比率を高めており、同業者やインデックスとの比較という意味で厳しい時期のようです。しかし、みずからの方針に疑念を抱かぬ彼がふたたび称賛される日がやってくる可能性は高いと思います。
今回は同文書から2か所を引用します(図表も同じ文書から引用)。ひとつめが米国の債務に関する話題で、もうひとつは彼の投資スタイルについてです。(日本語は拙訳)
Don't Be Surprised - Steven Romick's speech to CFA Society of Chicago [PDF] (FPA)
今回は同文書から2か所を引用します(図表も同じ文書から引用)。ひとつめが米国の債務に関する話題で、もうひとつは彼の投資スタイルについてです。(日本語は拙訳)
Don't Be Surprised - Steven Romick's speech to CFA Society of Chicago [PDF] (FPA)
2008年以来、米国での家計及び金融部門における債務の減少幅は3兆3千億ドルでした。しかし政府部門の債務は6兆7千億ドル増加し、政府と民間を合計した全債務の22%を占めています。6年前とくらべると10ポイント増加しています。
政府自身が輪転機を保有しているので、債務返済の面で個人や企業と同じ原理には拘束されていません。しかし10年前には量的緩和という言葉を聞いたことはなかったのですが、現在の中央銀行はあらゆるものが釘であるかのように、そのかなづちを振るっています。わたしが想像したいと考える以上に、このゲームは長期間つづくかもしれません。その間には通貨価値が潜在的に減価していく影響を伴うでしょう。(PDFファイル11ページ目)
Since 2008, total U.S. household and financial sector debt declined $3.3 trillion but government debt has increased $6.7 trillion and now represents 22% of total public and private debt, up ten percentage points from 6 years ago.
Since governments own printing presses, they are not bound by the same debt repayment principles as individuals and corporations. I hadn't heard of quantitative easing a decade ago and now central bankers are using that hammer as if everything is a nail. So, the game can be afoot for longer than I care to imagine, with a potential long-term impact of undermining currencies.
そのためわたしたちは、すばらしい企業をまずまずの値段で、あるいはそこそこの企業を破格の値段で買える機会をみつけることに力を尽くしたいと考えます。その際には単純にやっていきたいと思います。打ち明けますと、いつでもそうしてきたわけではないです。初期の頃には、かなり深入りしていました。企業やその業界のことは全部知っていないと済まない性質でした。そこから学んだことがあります。たくさん知らなくても大丈夫だということ、つまりその会社を動かしているものを一つから三つ特定できればいい、ということです。精確さを追求しても得られるものは少ないと強く感じています。それよりも、結果のとりうる範囲を見極めるほうをえらびます。厳密にやってまちがえるよりも、正しい方角を向いていたいと考えます。
わたしたちは次のような問いに答えるために、多くの時間を費やしています。「この事業はいかにして動いているのか」「なぜこの機会が存在するのか」、その上で「もしそうだとしたらどうなるのか」。投資で成功するには、勝者をみつけるのと同じように敗者を避けることも大切です。それがわかったことでわたしたちは、「好ましい主張を逆転させて、薄暗い色のメガネでみつめる」やりかたをとるようにしました。喜ばしいことにそういったすべてが、寝耳に水のありがたくない事態を減らしてくれるのです。
株式に付けられている値段がちがうと、問いかけられる質問もちがうものになります。値段が高いときとくらべると安いときのほうが、答えるべき質問は少ない数で済みます。たとえばコンテナ船を擁する会社に対して、所有する船団をスクラップにした価値しか考慮しない値段がついているとします。そのときには二つ三つの問いに答えれば十分です。「市場が反転するまでに現金がどれだけ費消されうるのか」「財務の状況はそれを支えられるのか」といった質問です。反対に、同じコンテナ船会社のキャッシュフローが現在良好だとします。デイ・レート[1日当たりの傭船料]が高く、簿価の2倍の株価で取引されているとします。その場合にはデイ・レートの水準がどれだけ継続するかにかかってくるでしょう。そしてさらに問われるのが「経営陣がフリー・キャッシュフローを賢明に使うかどうか」です。先にあげた例では、資本配分の意思決定についてはあまり気にする必要がありませんでした。フリー・キャッシュフローと資金的な柔軟性のどちらも欠けていたからです。
今日わたしたちが目を通している価値評価基準のどれもが、企業がいっそう高いほうへ取引されていることを示しています。つまり、さらにむずかしい質問が増えて、その答えをみつけるのにもっと奮闘しなければならないことを意味しています。(PDFファイル12ページ目)
1998年のスティーブン・ローミック氏(当時34歳)、Money誌の表紙に。
We will therefore continue to focus our energies on the search for great businesses at good prices or decent businesses at great prices. We try and keep it simple. I confess that I didn't always operate this way. In my early years, I ended up too much in the weeds. I had to know everything about a company and its industry. I've since learned that knowing less is okay as long as you have identified the one to three things that will drive the company. We believe exactness offers little so we prefer to establish a potential range of outcomes instead. We'd rather be directionally right rather than precisely wrong.
We spend a lot of time asking such questions as: "How does the business work?" "Why does this opportunity exist?" And then, "What if?" Knowing that successful investing is as much about finding winners as it is about avoiding losers, we invert a favorable thesis so as to see it through less rose-colored lenses, all of which hopefully limits negative surprises.
Stocks ask you different questions at different prices. One needs fewer answers at a low price versus a high price. For example, a container ship company priced as if its vessels are worth just scrap value requires only a couple of questions like, "How much cash might be burned before the market rebounds?" and "Can its balance sheet support that?" Whereas if you bought that same container ship company with good current cash flow but day rates are at highs and its stock is trading at two times book value, you'd be far more dependent on the sustainability of the day rate. You'd then have to ask whether or not the management team would spend their free cash flow wisely. In the first case, you'd worry less about their capital allocation decisions because they'd be lacking free cash flow and financial flexibility.
Today, every valuation measure we see points to companies trading on the more expensive side. That means a lot more difficult questions and more of a struggle to find the answers.
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