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2012年6月30日土曜日

集団を頼るよう隠れた脳が指令する

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前々回にご紹介した『隠れた脳』から、今回は集団行動に関する話題を引用します。

進化の歴史を見れば、集団でいるほうが、安全が保たれる。ときとしてそれが裏目に出る場合もあるが、私たちの脳は、総合的にうまくいく手段がわかるよう進化しているし、進化で身につけた自己保存のための本能は、必然的に単純である。警報が鳴ると不安が引き起こされ、集団を頼るよう隠れた脳が指令する。それは私たちの祖先の時代から、集団でいたほうが危険にさらされる可能性が低く、安心と安全が手に入りやすかったからだ。

しかし今の時代、集団でいる安心感を優先すると、個人が危険にさらされるケースが以前より増えた。それは現代の危険があまりにも複雑で、一体何が起こっているのか、誰にもわからない場合が多いからだ。私はここで、集団の行動は常に間違っていると言いたいわけではない。集団は誰も気づかないうちに、個人の自主性を奪ってしまうことがあると言いたいだけだ。同僚たちは間違っているかもしれないが、彼らについていくほうが、自分で考えて行動するよりはるかに楽だ。集団は安心を与えてくれる一方、自主性は不安を引き起こす。しかし災害に巻き込まれた状況では、不安こそが正しい反応なのだ。根拠のない安心は死を招きかねない。
(p.168)


ちなみに、上に挙げた引用が登場する場面では、911アメリカ同時多発テロ事件のときにWTCで働いていた人たちを取り上げて、何が生死をわけたのか考察しています。

2012年6月29日金曜日

レストランを品定めするように(ジョン・テンプルトン)

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ジョン・テンプルトンの「投資で成功するための16のルール」から、今回はルールその5「株式を買う際には、優良企業の中から割安なものを選びなさい」の説明文です。引用元はこちらです。(日本語は拙訳)

どういう企業であれば質が高いといえるのでしょうか。例えば、成長市場で売上のリーダーとして足場を固めていたり、技術革新を要する分野において技術面でリードしていたり、過去の実績に裏付けられた強力な経営陣がいたり、新規市場に最初に踏み入れた企業の中でも十分な資本を有していたり、有名かつ信頼のおけるブランドで消費者向け製品を提供して高い利益を得ている、といった企業があてはまるでしょう。

当然ですが、そういった様々な「質」を個別に考えるべきではありません。たとえば、低コストが売り物の企業であっても、自社の製品が顧客の望むものではなくなっていたら、質の高い株とはいえません。同様に、ある技術面でリードしていても、事業を拡大したりマーケティングを進めるのに必要な資本が不足していれば、あまり意味がないのです。

株の質を見極めるには、レストランを品定めするように考えるとよいでしょう。完全無欠というのは難しいですが、優れたところがなければ3つ星や4つ星はあげられない、といった具合です。

Quality is a company strongly entrenched as the sales leader in a growing market. Quality is a company that's the technological leader in a field that depends on technical innovation. Quality is a strong management team with a proven track record. Quality is a well-capitalized company that is among the first into a new market. Quality is a wellknown trusted brand for a high-profit-margin consumer product.

Naturally, you cannot consider these attributes of quality in isolation. A company may be the low-cost producer, for example, but it is not a quality stock if its product line is falling out of favor with customers. Likewise, being the technological leader in a technological field means little without adequate capitalization for expansion and marketing.

Determining quality in a stock is like reviewing a restaurant. You don't expect it to be 100% perfect, but before it gets three or four stars you want it to be superior.


アメリカのファンド・マネージャーは、しばしば「質が高い」(high quality)という表現をします。本ブログでもgonchanさんがコメントして下さっていますが(過去記事)、具体的に何をさしているのだろう、とわたしも気にはなっています。今回ご紹介したテンプルトン卿は大御所だけあって漠然とした感もありますが、噛みしめてみるとなかなか味わい深いですね。

2012年6月27日水曜日

気づかぬ間にオートパイロットが働いている

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以前とりあげたセス・クラーマンの話題の中で、「人の脳では2つのシステムが共存して働いている。システムその1は素早く考えるようにできており、システムその2のほうはじっくり考えるようにできている」とする心理学者ダニエル・カーニマンの主張がありました(過去記事)。最近読んだ本『隠れた脳』が、これを主題としていたのでご紹介します。題名から想像できるように、主にシステムその1の働きに焦点をあてています。

今回は、隠れた脳とはどういうものかを説明した箇所を引用します。

なぜ人間は意識的な脳と、隠れた脳の両方を持っているのか、説明する方法はいくつもある。一つ例をあげてみよう。わたしたちの経験には二種類ある。新しい経験と、繰り返されるおなじみの経験だ。意識的な脳は合理的で、慎重で、分析的なので、新しい状況に対処するのが得意だ。しかし状況を理解し、問題を解決するルールを見つけたら、その経験をするたびに考え込む必要はない。見つけたルールを使って、機械的に対処すればよい。こうした作業には、隠れた脳のほうが向いている。決まった作業を効率よく行うため、頭の中で思考の近道をすることをヒューリスティックスというが、隠れた脳はこのヒューリスティックスの達人である。スキルを身につけるということは、たいていの場合、隠れた脳にひとまとまりのルールを教えるということなのだ。初めて自転車に乗るときは、倒れないよう意識を集中しなければならない。しかしバランスを取るためのルールをいったん覚えたら、あとは隠れた脳に作業をすべて任せてしまえばいい。考えなくても、自然にできるようになるのだ。言葉についても同じで、新しい言葉を覚えるときは、一つ一つ単語を覚えたり文法を勉強したりしなければならないが、マスターすれば、苦労して単語を思い出したり、正しい文法を考えたりはしない。 (p.26)

隠れた脳は効率を重視するため、正確さは二の次になるとも述べています。

つづいて、意識にあらわれている脳と隠れた脳が並んで働く場合について。

自分の意見を言えと指示されると、頭の中で意識的な脳と隠れた脳が対峙して議論を始めるが、勝つのは常に意識的な脳だ。理論的な分析は、幼稚なヒューリスティックよりも強いからだ。意識的な脳がパイロットだとすれば、隠れた脳はオートパイロット機能である。パイロットは常にオートパイロットより優先するが、パイロットが注意を払っていないときはオートパイロットの出番となる。 (p.109)


「パイロットが注意を払っていないときはオートパイロットの出番となる」とありますが、チャーリー・マンガーであればもっと厳密に書くのではないでしょうか。「パイロットが気づかぬ間にオートパイロットが働いている」と。つまり、注意しているつもりでも隠れた脳が働くということです。

われわれが失敗をふりかえるとき、「それは想定していなかった」とか「そこまで読めなかった」とか「そもそもの仮定が間違っていた」といった声をあげるものです。頭の中でオートパイロットが働いて近道をしたということですね。それ以前に経験不足ということもあるでしょう。ささいなことならともかく、影響が大きいときにはひと悶着の始まりです。当たり前のことですが、影響が大きい意思決定を行なう際にリスクを下げるには、オートパイロットがおかす誤りをみつけてくれる仕組みが望まれるでしょう。そういえばウォーレン・バフェットも、自分の誤りを指摘してくれるパートナーのことをいつも自慢していますね。

最後になりますが、本書では、実際に起きた各種のできごとを題材に取り上げて話題を展開しながら、隠れた脳がどのように働いているかを検証・考察しています。著者がワシントン・ポスト紙のライターというだけあって、選んだ素材だけでなく、話しの進め方も上手です。翻訳もなめらかです。個人的には惹き込まれた一冊でした。

2012年6月26日火曜日

あなたが秀才かどうかはどうでもよい(リチャード・ファインマン)

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仮説・検証とくれば、昨今はコンサルタントの専売特許のような感もありますが、肩肘張らずに考えれば子供でも自然にやっていることですね。先日ご紹介したファインマンの『物理法則はいかにして発見されたか』でも、科学者が新法則を探す際の手順として触れていますのでご紹介します。

一般にいって、私どもはつぎのような手順で新しい法則を捜すのです。初めに推測によってある仮説をたてる。つぎに、それにもとづいて計算を行ない、その仮説からの帰結を調べます。つまり正しいと仮定した法則から何が出るかを見るのです。その計算の結果を自然、すなわち実験、経験につき合わせる。観測と直接に比較してうまく合うかどうかチェックいたします。もし実験と合わなければ、当の仮説は間違いである。この単純きわまる宣言のなかに科学の鍵はあるのです。仮説がどんなに美しかろうと、それは問題ではありません。あなたが秀才かどうか、これはどうでもよい。だれが仮説をたてたか、名前はなんというのか、これも関係ない。もし実験に合わないならば、その仮説はまちがいなのです。これがすべてであります。 (p.239)


こちらはおまけです。「なにが科学的なのか」という命題に対して、やわらかく答えています。ファインマンらしい表現が登場していて楽しい一幕です。

科学畑でない人々は、仮説をたてたり推測をしたりするのを非科学的と思っていることが多いようですが、それは誤りです。何年か前に、私はある街のおやじさんと空飛ぶ円盤について話し合いました。私は科学者だから円盤のことをなんでも知っていると思われたのです! 「空飛ぶ円盤なんてあるとは思いませんな」と私は言いました。おやじさんはこれに反抗して、「空飛ぶ円盤はありえないって? あんた、その証明ができるのかね?」「いや、証明はできません。」私は答えました。「きわめてありそうもないことだと思うだけです。」これを聞くとおやじ、「あんた非科学的だな。証明ができないのに、ありそうもないなんて、どうして言える?」でも、科学的とはこういうことなのです。何がありそうか、何がありそうにないか、これだけ言うのが科学的なので、ことごとに可能か不可能かを証明することではありません。あのとき、おやじにこう言ってやれば私の考えが明確に伝わったかもしれない。「現にこの私をとりまいている世界のことならいくらか知識もあるつもりですが、それから考えると、空飛ぶ円盤を見たという報告は地球人の例のいかれた頭の産物のようです。いかれ加減は既知ですからな。地球外の未知の頭脳の合理的な努力の産物というのよりも、はるかにありそうなことです。」よりいっそうもっともらしく思われるーそれだけのことなのです。 (p.254)

2012年6月25日月曜日

自社株買いの利点(マイケル・モーブッシン)

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少し前にご紹介したレッグ・メイソンのストラテジストであるマイケル・モーブッサンが新しいレポートを書いていました。題名は「自社株買いをあらゆる方向からさぐる」(Share Repurchase from All Angles)。前回とりあげたウォーレン・バフェットの引用(過去記事)は、実はこの文章の中に登場していたものです。

今回は、企業の経営者は自社株買いをどのように考えるべきか触れている箇所をご紹介します。なお、このレポートの前半では自社株買いと配当の長短比較もされています。(日本語は拙訳)

自社株買いをしようとする経営陣は次の原則に従わなければなりません。「想定される企業価値より安い値段で買うことができ、なおかつこれに勝る投資の機会が他にない場合に限る」。このきまりの前半では、経営陣は既存株主の価値を最大化する道を模索すべしとしています。後半のほうは優先順位を説いたもので、設備投資や買収といった他の事案とくらべて自社株買いのほうが有利な理由をはっきりさせよとしています。

事業に投資するよりも自社株買いのほうが望ましい時があるのですが、ほとんどの経営者はこの考えに耳を傾けようとしません。というのも、ビジネスを大きくすることが最大の使命と考えているからです。しかし、成長をめざすことが既存株主の長期的価値を最大化させるという目的と合わないこともあります。現にそういう例が見受けられるものです。ほとんどの場合、企業は資本コスト以上の利益が得られるよう事業に資金を投じることで価値を生み出しています。そういった企業活動を通じて価値をつくりだすことが一番重要なのは、たしかにそのとおりでしょう。しかし、既存株主の利益になるという意味では、自社株買いを上手に実施することも理にかなった重要な施策なのです。

自社株買いは企業買収よりも望ましいことがあります。ほとんどの買収案件では、買い手からみると損得なしの値段で決着しているからです。結局のところ得られるのは払った金額(コスト込)に近いところとなるでしょう。そうなってしまう理由は単純です。魅力的な資産が売りに出されるといろんな買い手が集まってくるので、シナジー[買収後のリストラ等]から得られる価値の大半は、買い手ではなくて売り手のものとなってしまうのです。そう考えると、経営陣にとって有利になる可能性を秘めているのは、買収よりも自社株買いのほうです。企業買収の場合、まず買収先の事業継続価値を適切に判断してキャッシュフローを予測します。その上で買収先を支配するのに必要な対価として、想定されるシナジーの現在価値を超えない範囲で上乗せして払える金額を検討します。つまり、2つのハードルを飛び越える必要があります。ひとつめは市場で織りこまれた期待にこたえること、もうひとつはシナジーより低いプレミアムを設定すること。それと比べれば、買収先のキャッシュフローより自社のものを見積もるほうが簡単でしょうし、上手に自社株買いをすればプレミアムを払う必要もありません。それどころか、割安料金で株を取得できることもあるのです。

Executives should follow the golden rule of share buybacks: A company should repurchase its shares only when its stock is trading below its expected value and when no better investment opportunities are available. The first part of this rule reinforces the notion that executives should seek to maximize value for the ongoing shareholders. The second part of the rule addresses prioritization and makes clear that executives should assess the virtue of a buyback against alternative investments, including capital spending and M&A.

Buybacks can be more attractive than investing in the business. Most executives don’t want to hear this because they think that their prime responsibility is to grow the business. But the objective of growth can, and often does, come into conflict with the proper objective of maximizing long-term value for ongoing shareholders. In most cases, companies achieve value creation through operations - investments in the business that earn above the cost of capital. And building value through operations should remain their top priority. But properly executed buybacks can provide a legitimate and significant lever to build value for ongoing shareholders.

Buybacks can be more attractive than M&A. Most M&A deals are close to value neutral for the buyer, which means that they earn something close to the cost of capital. The reason is pretty simple: attractive assets typically lure multiple buyers, so most of the value of synergies goes to the sellers than to the buyers. Buybacks offer executives a potential advantage over M&A. In M&A, a company must properly forecast the cash flows of the target as an ongoing business and then attempt to pay a premium for control that is less than the present value of synergies. So a deal must clear two hurdles: deliver on the expectations already in the market and deliver on a positive spread between the synergies and the premium. It may be easier for an executive to assess the cash flows of his own business than the cash flows of an acquisition target. Further, with smart buybacks the company pays no premium - in fact, the company can acquire the shares at a discount.


「他社」を買収するのではなくて「自社」を買収する。そう考えれば、自社株買いの利点がはっきりと理解できます。恥ずかしながら、これほど単純なことに気がついていませんでした。個人的には、今回の文章には目が開かれました。ウォーレンがIBMに入れ込んでいるのも、納得がいきました。

2012年6月23日土曜日

自社株買いについて(ウォーレン・バフェット)

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今回は自己株式購入について、ウォーレン・バフェットによる1984年度「株主のみなさんへ」から引用します。

並はずれた事業を営んでいて財務が安定している企業が市場に目を向けたとき、自社の株が本源的価値よりずっと低い値段で取引されていたら、株主の利益になるもっとも確実な施策は、自社株を買うことでしょう。

When companies with outstanding businesses and comfortable financial positions find their shares selling far below intrinsic value in the marketplace, no alternative action can benefit shareholders as surely as repurchases.

景気が悪く、株価が低迷している時期に自社株買いができる日本企業はどれぐらいあるのでしょうか。前にとりあげたファナックは見事な例でしたが(過去記事)、勉強不足で他の企業が思いあたりません。自分が投資している企業では、成長株が多いという理由もありますが、厳しい時期に自社株買いをするところはありません。平時であれば数年おきに買ってくれる企業がありますが、ウォーレンの基準には少し届いていません。

2012年6月22日金曜日

できるだけ遠くまで拡張する(リチャード・ファインマン)

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チャーリー・マンガーは、様々な学問分野で培われてきた原理原則は別のことにも役立つと主張しています(過去記事)。別の学問分野や日常生活、投資の上でも使えるというわけです。今回は、それと似たようなことを物理学者のリチャード・ファインマンが触れていたのでご紹介します。引用元は彼の講演2本が収められた『物理法則はいかにして発見されたか』からです。

まずは主題となる部分です。
粒子とか軌道とかの概念を原子の世界にまで勝手に持ち込んでよいのか、拡張の保証はあるのかと苦情を述べる人がよくあります。心配はご無用、拡張なら何を試みてもよいのです。既知の領域を超えて、すでにわがものとした考え方を乗り越えて、できるだけ遠くまで拡張しなければならない。拡張はすべきものであり、私どもはつねにそれを行なっております。危険なことだというのですか? そうです。危険です。不確かでいけない? その通り、不確かです。しかし、それをあえてしなければ進歩がない。不確かな道ですが、科学を有用なものにするためにはどうしても必要なのです。科学というものは、かつてなされたことのない実験について何ものかを教えてくれるからこそ有用なのです。すでにわかっていることだけ教えてくれるのでは、なんのご利益もありません。テストされた領域の外まで概念を広げることが必要です。 (p.252)

つづいて、アイデアを拡張した具体的な例です。惑星の運動に関するケプラーの第2法則(下図参照)を拡張して、別のものの挙動を説明するのに使っています。文中では「角運動量保存の法則」という別の法則としても言及されています。








数多くの星どもが互いの引力で集まってまいりまして星雲が形成されていくところをご想像ください。初めは、みんな遠くの遠くにあって、中心からの動径は長いのですけれども、動きがのろいために、動径の生成する面積もそれほど大きくはないのです。お互いが近寄ってくるにつれて中心までの距離が小さくなる。星どもみんながうんと真ん中に寄ってきたときの動径はごく短い。そうしますと、毎秒毎秒に前と同じだけの面積を生成するためには、何倍も何倍も速く動かなければならないことになります。星たちは、真中に集まってくるにつれて速度を増し、激しく渦巻くようになるわけです。渦状星雲の形は定性的にはこのようにして理解されるのであります。

スケート選手がスピンをするのも同じようにして理解できます。初めは足を開いてゆっくり走りますが、やがて足をすぼめるとスピンが速くなる。足を開いておけば、毎秒なにがしかの面積を得するのですが、すぼめてしまいますと、その分の面積をかせぐために、ひとりでにスピンが速くなるわけであります。しかし、私は、スケート選手の場合の証明をまだしておりません。スケート選手は筋力を使うのであって、重力ではありません。それでも、角運動量保存の法則はスケート選手にもあてはまるのです。

これはおもしろい問題です。重力の法則みたいに物理のある一隅から導き出した定理が、その実、はるかに広い範囲で正しいことが判明する。こんなことがしばしばあるからおもしろいのです。 (p.68)

2012年6月20日水曜日

深層防護という工学的アプローチ

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少し前に取り上げた『福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書』(過去記事)では、今回の事故で何がまずかったのか、様々な観点から考察しています。今回ご紹介するのは、原子力発電所というシステムの設計や運用に対して、システム工学的な見地から反省をうながした箇所です。

まずは、原発の安全性を確保するための設計上のアプローチ、「深層防護」の説明です。
 高い信頼性を維持するための工学的なコンセプトが、深層防護という考え方である。深層防護とは、英語のDefense in Depthを訳したもので、安全対策を重層的に施して、万が一いくつかの対策が破られても、全体としての安全性を確保するという考え方である。(中略)また、設計時に用意した対策がすべて失敗した場合に備えて、人と環境を放射線の影響から守れるような対策が立てられてきた。 (p.254)

深層防護は、各階層が互いに独立しているべきである。ある階層の効果が、前後の階層に依存すべきではない。つまり、各階層は自分が最後の砦になったつもりで、対策を行わなければならない。こうした思想の下、5つの階層すべてを強化していくことにより、初めて深層防護と呼べるのである。

原子力の危険性を指摘する議論の中には、前段の階層の対策が不十分であるから、防災対策などの後段の階層が必要になるのだ、と考える向きがある。しかし、この議論は、深層防護という工学的アプローチの理解不足に起因するものである。 (p.255)

これを実際に起きたことにあてはめてみると、前段の階層が「地震のゆれを感知して原子炉を安全に停止させた」部分にあたり、後段の階層が「津波等の影響で全交流電源を失った」部分になるかと思います。電源喪失を防護する対策が不十分だったわけです。

では、なぜこのような設計運用が行われてしまったのか、本書のメンバーは以下のように分析しています。
 わが国では、定期検査などの枠組みの中で、個別の機器や構造物の性能が、定期的、かつ詳細に評価されてきた経緯がある。したがって、海外と比較して、個別の機器の信頼性は高い傾向にある。一方で、プラント全体の安全性については、評価が不十分であった可能性が指摘できる。 (p.259)

福島第一原子力発電所も含め、わが国の原子力発電所では、定期安全レビューの中で、内部事象(機器の故障や配管の損傷など)に起因する確率論的安全評価が、自主的に実施されてきた。しかしながら、外部事象(地震等)に起因する確率論的安全評価については、手法が十分確立していなかったこともあり、取り組みが遅れていた。また、規制機関にも、確率論的安全評価の結果を、積極的に規制に活用するという姿勢がなかった。

日本原子力学会標準委員長の宮野廣氏は、「一面から見た安全尺度の採用と過信」を事故の遠因に挙げ、「わが国の原子力発電所では計画外スクラム(停止)の頻度が極めて低いことは、世界的にも有名である。そこに安全神話が形成されてしまったのではないか。…従って、確率論的安全評価(PSA)のニーズが少なく、"せっかく安全だというのに"という思いから取り組みが遅れてしまったのではないか」と述べている。

このことは、深層防護の考え方の根本である防護レベルの独立性が、十分に理解されていなかったことを示している。つまり、第1層の指標である計画外停止頻度だけでなく、第3層の指標である炉心損傷確率についても、より積極的に評価されるべきであった。 (p.260)

工学的な知恵が理解されていなかったという点に、われわれの文明水準の程度が表われているようです。システム工学というのは難しい概念の集まりではなく、むしろ常識や見識と通じるところが多いように思われます。このようなものの見方や考え方は、社会的に大きな影響力をもつ人ほど、いっそう要求されるのではないでしょうか。

***

ここからは投資の話になります。まずはチャーリー・マンガーの言葉から。世知を語る中で、信頼できるモデルのひとつとして工学を挙げています。例えば次のような発言です。「工学上の概念としてバックアップ・システムや破断点がありますが、これらはとても強力なモデルです」(過去記事)。ここでは一言で済ませていますが、上に挙げた深層防護とはまさしくバックアップ・システムの一形態です。正しく使えば信頼できるモデルです。

つづいて、ウォーレン・バフェットの言う「投資先を評価する観点」です。順を追ってみると、それぞれの項目が独立しており、重層的に評価できるようになっています。

1. 長期的に見た場合に、ビジネスの特性がどうなっていくのか
株式投資を行う際の最重要の評価項目で、ビジネス自体の質が高いかどうかを問うものです。これによって、長期的なリターンと確実性を判断します。

2. 経営者がビジネスの潜在力を最大限に生かし、キャッシュをうまく活用できるかどうか
せっかくよいビジネスなのに、経営者が足をひっぱることがあります。例えば、むやみにシェア拡大をめざして設備投資したり、関連の少ない新規事業に手を出したり、場当たり的な企業買収を行うといった例。これはビジネスのリターンを悪化させる恐れがあります。
また、絶好の機会なのにキャッシュを使わないのも慎重すぎでしょう。あるいは単なる保身なのかもしれませんが。
ここで問われているのは、企業が持つ複利効果の質です。

3. 経営者がビジネスで得た利益を株主へ還元することを一義とし、無駄づかいしていないかどうか
よくある例は、高い株価で自社株式を買い戻すことです。間の悪い時期に自社ビルを購入するのも、株主にとってはありがたくないかもしれません。質の高いビジネスが稼いだお金をどうやって株主へ返すのか。そのプロセスの質が、ここでは問われています。

4. 株価
ここまでの基準を満たした企業でも、株を買うのに高い金額を払うのは誰にでもできることです。想定リターンに対してどこまで対価を支払うのか。ここでは、投資家が下す判断の質が焦点になります。チャーリーは、すばらしい企業にそこそこの金額を払うのだったら気にすることはないとしていますが、安いに越したことはありません。

このような4階層にわたる深層防護がきちんと働くことで、納得のいくリターンが期待できると共に、元本の安全性も高い投資先が残るのではないでしょうか。ウォーレンやチャーリーの判断基準は何気ないようにみえますが、実はよく考えられているようですね。


2012年6月19日火曜日

成功している投資家とそうでない人の違い(ジョン・テンプルトン)

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ジョン・テンプルトンの「投資で成功するための16のルール」から、今回はルールその11「自分の過ちから学びなさい」の説明文をご紹介します。引用元はこちらです。(日本語は拙訳)

(ルールその11) 自分の過ちから学びなさい

失敗を避ける唯一の方法、それは投資をしないことです。が、実はそれこそ最大の失敗ですね。ですから、落ち込んだりしないで、失敗した自分を許してやってください。なにより、損した分を取り返そうとして、より大きなリスクをとらないことです。そうではなくて、失敗を教訓として学ぶのです。なにがまずかったのか正しく把握し、同じ失敗を繰り返さないためにどうしたらよいのか見定めてください。

「今回はこれまでとは違うんだ」と力説する投資家がいます。それは、投資の歴史においてもっとも高くついてきた言葉を口にしていますね。実のところ、過去に起きた顛末が、また繰り返されているのです。

成功している投資家とそうでない人では何が大きく違うのか。それは、成功している人は自らの過ちや他人の失敗から学んでいるという点なのです。

No. 11 LEARN FROM YOUR MISTAKES

The only way to avoid mistakes is not to invest - which is the biggest mistake of all. So forgive yourself for your errors. Don’t become discouraged, and certainly don’t try to recoup your losses by taking bigger risks. Instead, turn each mistake into a learning experience. Determine exactly what went wrong and how you can avoid the same mistake in the future.

The investor who says, “This time is different,” when in fact it’s virtually a repeat of an earlier situation, has uttered among the four most costly words in the annals of investing.

The big difference between those who are successful and those who are not is that successful people learn from their mistakes and the mistakes of others.


よく聞く話だとお感じになった方、たしかにその通りです。同じような助言を過去に何度か挙げています(「投資で成功するのに大切なこと」「注意!この先危険」)。ここで重要なことが2つあると思います。ひとつめは、著名な投資家が口をそろえて指摘していること。もうひとつは、この助言を受けて自分がどのように行動しているかです。

2012年6月18日月曜日

結婚式の介添え(チャーリー・マンガー)

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ウォーレン・バフェットは温厚な性格が人を惹きつけますが、対するチャーリー・マンガーには気軽に話しかけにくい雰囲気があります。このシリーズでは、そんなチャーリー・マンガーがあまり表に出さない、もうひとつの顔をご紹介します。引用元は『Poor Charlie's Almanack』です。

今回は、彼と同じ名前を受け継いだ息子、チャールズ・T・マンガー・ジュニアが見た父親の思い出です。

15歳の頃に家族でサン・バレーへスキー休暇に行ったときのことです。最終日に、帰宅便の飛行機に乗る時刻が迫っていたのですが、父はわたしを連れてそれまで乗っていた赤いジープで雪道へ戻りました。別の道を10分ぐらい進んだところで、ガソリンスタンドに立ち寄りました。わたしは、ガソリンがタンクにまだ半分残っているのをみて驚きました。けっこう残っているのにどうして、とたずねたところ、父は諭すように言いました。「いいかい、チャーリー。他の人から車を借りたら、ガソリンは満タンにして返すものだよ」

わたしがスタンフォードに入学した年に、ある知り合いが車を貸してくれることになりました。その人がわたしをよく知っているというよりも、共通の友人が強く説得してくれたおかげでした。借りた車は赤のアウディ・フォックス、ガソリンタンクには半分入っていました。はたと、昔のジープのことを思い出しました。それで車を返す前にガソリンを満タンにしておいたのです。知り合いのほうも気づいてくれました。それがきっかけで、我々は良き友人としてつきあうことになったのです。結婚式のときには、彼に介添えをつとめてもらいました。

スタンフォードを卒業した後になって、例の休暇のときに滞在した家とジープは、父の友人のリック・ゲリンのものだったことを知りました。リックがサン・バレーへ戻ったときには車は問題なかったでしょうし、そもそもガソリンが減っていても気がつかなかったと思います。そうだとしても、父は公正を重んじ、配慮を忘れなかったでしょう。そのようにしてわたしは、どうすればよい友人を得られるか、さらにはその友情を保つにはどうしたらよいかを教わったのです。

On the last day of a family ski vacation in Sun Valley when I was fifteen or so, my dad and I were driving back in the snow when he took a ten-minute detour to gas the red jeep we were driving. He was pressed for time to have our family catch the plane home, so I was surprised to notice as he pulled into the station that the tank was still half-full. I asked my dad why we had stopped when we had plenty of gas, and he admonished me: “Charlie, when you borrow a man's car, you always return it with a full tank of gas.”

My freshman year at Stanford, an acquaintance lent me his car, more because friends we had in common twisted his arm than that he knew me all that well. The tank was half-full, and the Audi Fox was red. So I remembered the jeep and topped the tank before I brought the car back. He noticed. We've had a lot of good times since, and he stood as a groomsman at my wedding.

After Stanford, I learned that on that vacation we had been staying at Rick Guerin's house and driving Rick Guerin's jeep. Rick is one of my dad's friends who, on his return to Sun Valley, certainly wouldn't have been troubled, and was unlikely even to notice, if his jeep had less gas than when he left it. My dad still didn't skip a point of fairness and consideration. So I was taught that day not only how to get a good friend, but also how to keep one.

2012年6月16日土曜日

今般の津波は当社の想定を大きく超えるものだった

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テレビなし、新聞なしの生活をしているので、昨年起きた大震災に関する情報にはあまり触れてきませんでした。意識的にそうしていたところもあったのですが、そろそろ集中して知るべきと考え、『福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書』を読んでみました。完璧な本というわけではありませんが、自分の知らなかったことが多く記されており、参考になるところが多かったです。

チャーリー・マンガーが「他人の失敗から学べ」と説いているように、この本を通じて今回の失敗から何かを吸収できればと思います。今回は、同書から「想定外」について引用します。

 今回もまた、東京電力は、「今般の津波は当社の想定を大きく超えるもの」だったと主張している。しかし、三陸一体を襲った貞観津浪(西暦869年)の研究が進み、その意味合いが注目を集めるようになるにつれ、もはや津波の高さは「想定外」ではなくなっていたし、実際、東海第二原発では津波の想定される高さを上げ、海水ポンプの津波対策を強化していた。また、東京電力女川原発では建設当初より高い津波を想定し、敷地高に余裕を持たせていた。実は、東京電力の原子力技術・品質安全部は福島原発が「想定」した以上の高さの津波の来る可能性を示すシミュレーション結果を2006年に発表していたが、これは東電原子力部門上層部から「アカデミック」との理由で却下された。

津波の襲来は「想定外」ではなかった。多くの研究がそれを「想定」していたのに、東京電力は聞く耳を持たなかった。要するに東京電力の「想定が間違っていた」ということである。「想定外」を口にすることは、リスクマネジメントを放棄することにほかならない。ただ、規制当局も、津波リスクに対する新たな知見を織り込むよう事業者に勧めたものの、具体的措置は求めず、それを規制対象とはしなかった。(p.386)

「想定外」というよりは、実のところは非公式なリスク要因として挙げられたのかもしれません。ただし、その発生確率を過小評価して、対策をとらないことにしたのではないでしょうか。誰かがどこかで書いていたのを思い出します。どんなに賞金が高くても、ロシアン・ルーレットには挑戦しないと。発現すると致命傷に至るリスクは別格に扱え、ということですね。

ウォーレン・バフェットは「CEOはChief Risk Officerであれ」と言っています。今回の件で学べることは、その経営者や企業風土も経営資源のひとつと捉えた上で、企業全体のリスクを評価することが投資家に求められるということです。リスクの話題は今後も少しずつ触れていきたいと考えています。

2012年6月15日金曜日

TOPIX Core30ひとかじり(2)任天堂(岩田社長、円高の見解)

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任天堂の経営陣が、E3でアナリスト向けにプレゼンテーションを行った様子が公開されています。その中で、現在の円高をどのように捉えているか岩田社長が答えていますので、ご紹介します。引用元は、2012 E3 アナリスト Q&Aセッション質疑応答4ページ目です。

<A10 岩田社長>
(前半省略)
ただ一方で、かなり長いレンジで考えますと、国のファンダメンタルズ(経済指標)から考えて、今の為替レートが今のまま長く続くというようには私は見ておりません。また潮目が変わるときが必ず来ると思っており、そのときのことも考えながらいろいろな対策をしています。二度と元に戻れないような方法を選ぶのが正しいとは思っていません。

この質疑に限らず、アナリストが当社の今後の業績に不安を抱いているのが、全体を通して感じられます。個人的には、そこに機会があるとみて、当社の株式を若干買い始めています。平均購入単価は9,550円で、現在の価格は9,000円前後。8,700円まで下げたことがあるので、少し早かったようです。次の買い増しは、それよりもう少し下の予定です。ただし、当社はこれまでの自分の投資基準からはずれた企業なので、あまり入れ込まないように注意しています。

もうひとつおまけです。財務体質を生かす機会はあるのかという主旨の質問に対する、岩田社長の回答です。投資家好みの言葉がでてきています。引用元は1ページ目です。

<A3 岩田社長>
まず、任天堂の強固な財務体質をどう生かすべきかということに関してはさまざまな可能性を考えています。

(中略)

来年お会いするときまでに、「任天堂はお金の使い方が下手だ」と言われないように努力したいと思います。

2012年6月13日水曜日

ウォーレン・バフェットに勝つつもりですか(ボブ・ロドリゲス)

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何度かとりあげている「超慎重派ファンド・マネージャー」ボブ・ロドリゲスの最新インタビュー記事が、彼の率いる会社FPAのWebサイトで公開されていました(FPA's Bob Rodriguez: Investors, Wall Street Never Learn...)。主な話題は、アメリカの財政赤字について。マクロな話題はあまり気にしないほうがいいのですが、彼の言動はついつい追いかけています。とはいいつつ、彼の投資スタイルが顔をのぞく場面もありましたので、そのひとつをご紹介します。(日本語は拙訳)

2003年のことです。私が委員を務めていたある年金制度で、協議をしていたコンサルタントが大型の公的年金制度の期待収益率は8.5%だと発言するのを聞きました。

すかさず、私は言いました。「すみませんが、それは賛成できませんね。ここの普通のマネージャーが年率8.5%で運用するというのですか。どうも投資のことが何もわかっていない御仁がいるようですね。ウォーレン・バフェットがどうしているか、ご存知の方はいないのですか。彼の会社では退職金制度の期待収益率を6.5%に下げたのですよ。ここのマネージャーのみなさんが、現代最高の投資家よりも三分の一も上回る成績を上げ続けるというのですか。それはいささか自惚れが強いのではないでしょうか」。しかしながら、同じようなことが今日でもまだ続いているのです。

One of the pension plan boards I was on, back in '03, was talking to consultants and was told that the assumed rate of return on a large public pension plan was 8.5%.

I just said, "I'm sorry. I don't buy this. You're telling me that your average manager is going to earn 8.5%? Well, there's a little guy out there that doesn't know anything about investing. Have any of you ever heard of Warren Buffett? In his corporation's retirement plan, they just lowered the assumed rate of return down to 6.5%. So you're telling me that your stable of managers is basically going to earn approximately one-third higher on a sustained basis than the greatest investment manager in the history of time? Isn't that a little bit egotistical?" But that same sort of thing is still going on today.


参考までに日本での年金の状況ですが、厚生年金などを運用する年金積立管理運用では、運用利回りを「名目賃金上昇率プラス1.1%」としています。(平成22年度業務概況書 PDFファイルのp.29)

また企業年金の期待収益率(2010年度)の例は、トヨタ自動車が3.8%、東芝が3.6%、日本電産が2.3%、京セラが2.0-2.2%となっています。トヨタの数字が大きめなのは、北米拠点の従業員割合が大きいからでしょうか。

なお、上記でご紹介したインタビューの最後では日本のことも触れています。「こんなに悪い状況はみたことがない」、さすがは「超慎重派」です。

2012年6月12日火曜日

わたしも含み損だった頃(ウォーレン・バフェット)

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手持ちの株の評価額をみて元気が出ないときは、1970年代半ばにウォーレン・バフェットのバークシャー・ハサウェイが抱えていた含み損の金額でもみてください。今回は、ウォーレンによる1975年度「株主のみなさんへ」から引用します。(日本語は拙訳)

1974年末の時点での株式ポートフォリオは、1,700万ドル[現在価値で60億円]の含み損でした。ですが、そのときはこう申し上げました。全体としてみれば、このポートフォリオは払った代金以上の価値があります、と。1975年には税額控除前で288.8万ドル[10億円]の実現損がでましたが、1976年は実現益がでると現段階では予想しています。1976年3月末の時点で、株式の含み益は1,500万ドル[53億円]となっています。当社では数社に集中して株式投資を行っていますが、各企業の経済的特性は良好で、有能かつ正直な経営陣に率いられています。また購入価格の面では、相対で取引する場合と比べても魅力的な値段で買うことができました。

そういった条件が満たされた企業であれば、わたしどもとしては長きにわたって株式を保有したいと考えております。うちあけますと、当社の最大の投資先はワシントン・ポストです。クラスB株を467,150株、1,060万ドル[38億円]で購入しました。同社の株は永久に保有するつもりです。

このような方針なので、株価が変動するのはそれほど大したことではありません。もちろん、絶好の買い場となるのであれば別の話です。大切なのはビジネスの結果のほうです。そういう意味では、当社が投資している主な企業のほとんどは、満足できる結果を挙げています。

At the end of 1974 the net unrealized loss in the stock section of our portfolio amounted to about $17 million, but we expressed the opinion, nevertheless, that this portfolio overall represented good value at its carrying value of cost. During 1975 a net capital loss of $2,888,000 before tax credits was realized, but our present expectation is that 1976 will be a year of realized capital gain. On March 31, 1976 our net unrealized gains applicable to equities amounted to about $15 million. Our equity investments are heavily concentrated in a few companies which are selected based on favorable economic characteristics, competent and honest management, and a purchase price attractive when measured against the yardstick of value to a private owner.

When such criteria are maintained, our intention is to hold for a long time; indeed, our largest equity investment is 467,150 shares of Washington Post "B" stock with a cost of $10.6 million, which we expect to hold permanently.

With this approach, stock market fluctuations are of little importance to us - except as they may provide buying opportunities - but business performance is of major importance. On this score we have been delighted with progress made by practically all of the companies in which we now have significant investments.

2012年6月11日月曜日

客観的に判断できる人の割合は?(マイケル・モーブッシン)

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資産管理会社の大手レッグ・メイソンといえば、以前は絶頂を誇ったビル・ミラー氏が有名でした。しかしここ数年の失敗の後、彼のファンドの看板はマイケル・モーブッサン氏に変わってきています。彼のための専用のWebサイトも用意されています。

モーブッサンはチャーリー・マンガーやウォーレン・バフェットの教えを踏まえているようで、彼の文章を読むと共感できるものがあちこちにみられます。ただし彼の場合は、より定量的に迫ろうとしている点が特徴的ですが、個人的にはそちらにはあまり近寄らないようにしています。

今回はモーブッサンの著書の翻訳『まさか!?―自信がある人ほど陥る意思決定8つの罠』から、心理学的な落とし穴のひとつを引用します。日本語の題名はともかく、個人的にはこの本も楽しんで読めました。

仕事にかかる時間やコストを見積もるのは難しい。正しく見積もれない場合というのは通常、時間とコストを少なく見積もりすぎるのだ。心理学者は、これを計画錯誤と読んでいる。大多数の人は何かを計画する時に主観的な視点でしか見られないのだ。自分や他人の経験から基準となる客観的なデータを得て、そこからスケジュールを立てる、といったやり方ができる人はわずか4人に1人であるという研究結果が報告されている。(p.35)


なぜ人々は客観的な視点を持たないのかについて。

周りの人間と比べて自分は特別で優秀であるとほとんどの人が思い込んでいるからである。(p.36)


チャーリー・マンガーも、自身を過大評価する傾向は人の判断を誤らせると指摘しています。できないことをできると考えれば失敗するのは当たり前ですが、なぜ人は自分のことを過大評価するのかという疑問は、興味深いテーマだと感じています。

なお、モーブッサンがこの秋に出す本のタイトルは『THE SUCCESS EQUATION』(成功するための方程式)。この本も期待して待ちたいと思います。

2012年6月9日土曜日

ニッチを占める動物は繁栄する(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーによる世知の続きで、今回は「ミクロ経済学」。個別企業の意思決定の話題ですので、ここまでくるとビジネスや投資判断にそのまま使えそうですね。(日本語は拙訳)

人の持つ知恵としては信頼性がいくぶん下がりますが、次に登場する話題はミクロ経済学です。ここでは、自由市場経済を一種の生態系のようなものと捉えれば、いろいろ考える際に便利です。部分的な自由市場であっても同様です。

しかし、この考え方は実に評判が悪いですね。ダーウィンの考えが登場した初期の頃に、泥棒男爵と呼ばれた人たちが次のようにうそぶいていたからです。適者生存の教えは、自分たちこそ権力を持つに値する者だと認めている、と。「一番の金持ちなのだから、われこそ最高なのだ。神、そらに知ろしめす」、などなど。

そのような泥棒男爵のふるまいは大衆をいらだたせました。そのため、経済を生態系のように考えるやりかたは人気がなくなったのです。しかし実のところ、経済は生態系と非常によく似ています。同じような結末にたどり着くことがよくあるのです。

生態系の中にいる場合と同じで、狭い範囲に特化すれば小さなニッチを占有しやすくなります。ニッチを占める動物は繁栄しますが、これはビジネスの世界でも同じで、特定の領域に特化して好業績を挙げている人たちは、他のやり方ではみつけられないような、いい商売をつかみやすくなります。

Now we come to another somewhat less reliable form of human wisdom - microeconomics. And here, I find it quite useful to think of a free market economy - or partly free market economy - as sort of the equivalent of an ecosystem.

This is a very unfashionable way of thinking because early in the days after Darwin came along, people like the robber barons assumed that the doctrine of the survival of the fittest authenticated them as deserving power - you know, “I'm the richest. Therefore, I'm the best. God's in his heaven, etc.”

And that reaction of the robber barons was so irritating to people that it made it unfashionable to think of an economy as an ecosystem. But the truth is that it is a lot like an ecosystem. And you get many of the same results.

Just as in an ecosystem, people who narrowly specialize can get terribly good at occupying some little niche. Just as animals flourish in niches, similarly, people who specialize in the business world - and get very good because they specialize - frequently find good economics that they wouldn't get any other way.


個人的にはニッチ企業が好きで、ポートフォリオの過半はニッチ・トップの企業が占めています。マーケット自体が小さいので、そのような企業には別のリスクがつきものです。悪い目がでたときのシナリオを想定しながら、投資の是非を判断しています。

2012年6月8日金曜日

ウサギとカメ(チャーリー・マンガー)

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2007年に開催されたWescoの年次株主総会で、ウォーレン・バフェットがなぜあんなにすごいのか、その理由をチャーリー・マンガーが説明しています。今回は、そのなかで最重要とされているものをご紹介します。ティルソンのメモからの引用です。(日本語は拙訳)

これはきわめて重要ですよ。勉強熱心なカメは野うさぎを追い越すものですが、ウォーレンの勉強好きといったら世界でも指折りです。もし学ぶのをやめてしまえば、あっというまに置いてきぼりですからね。運も味方をしたようで、彼は引退の年頃を過ぎたというのに未だ上手に学びつづけ、技能を磨いています。65歳を過ぎてからの投資術の向上ぶりは一目瞭然でしょう。ウォーレンのやることなすことをみてきましたが、初期の頃に持っていた知識のままだったら、今とは違って、うすぼんやりとした業績にとどまっていたでしょう。

This is really crucial: Warren is one of the best learning machines on this earth. The turtles who outrun the hares are learning machines. If you stop learning in this world, the world rushes right by you. Warren was lucky that he could still learn effectively and build his skills, even after he reached retirement age. Warren’s investing skills have markedly increased since he turned 65. Having watched the whole process with Warren, I can report that if he had stopped with what he knew at earlier points, the record would be a pale shadow of what it is.


Wesco社をご存じない方は、過去記事の説明がご参考になるかと思います。

2012年6月6日水曜日

いつ株を買うのですか(ジョン・テンプルトン)

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以前にジョン・テンプルトンの「投資で成功するための16のルール」を取り上げましたが、今回はルールその4「安く買うこと」の説明全文をご紹介します。転載されたものですが、原文のファイルはこちらにあります。(日本語は拙訳)

(ルールその4) 安く買うこと

あたり前だと思われるでしょうが、しかし市場ではそうなってはいません。株価があがると、大勢の投資家がどんどん買いにまわりますし、買い手が少ないときは株価は低いものです。投資家が手を引くと、みんな失望して悲観的になります。

ほとんどの人がいっせいに悲観するときには、市場全体が落ちこみます。特定のセクターの銘柄だけが下落するのはよくあることですし、自動車メーカーや損害保険といった業界は定期的な周期で動いています。ときには貯蓄組合や大手の金融機関のような株全体が不人気になることもあります。まあ、理由は何であれ、そんなときに投資家は財布のひもをしめて身を引くのです。人はこう言います、「安く買って高く売れ」と。しかし、そういう人の大半は、高く買って安く売っているのです。「では、いつ株を買うのですか」と尋ねてみてください。たいていはこう返ってくるでしょう。「アナリストが明るい見通しに同意した後ですね」

愚かしいことですが、これが人の常なのです。流れに逆らって進むのはすごく難しいのです。誰もが売っていたり、お先真っ暗だったり、市場全体やある業界やある企業を指して、今買うのは危ないと専門家が口をそろえている、そんなときに株を買うのはすごく難しいことです。

ですが、みんなと同じ株を買うのであれば、成績も同じです。マーケット全体を買うということは、定義上はマーケットの成績を超えることはできません。またみんなと同じものを買うということは、既に割高になった後に手を出していることになります。偉大なる証券アナリストの先駆者ベンジャミン・グレアムの言葉に耳を傾けましょう。「専門家も含めたほとんどの人が悲観的なときに買うこと。そしてすごく楽観的になったら売ること」

大統領の政治顧問だったバーナード・バルークは、もっと簡潔に言っています。「大衆の向かうほうへ進んではならない」。かんたんなことですが、そうするのは難しいものです。

No.4 Buy Low

Of course, you say, that's obvious. Well, it may be, but that isn't the way the market works. When prices are high, a lot of investors are buying a lot of stocks. Prices are low when demand is low. Investors have pulled back, people are discouraged and pessimistic.

When almost everyone is pessimistic at the same time, the entire market collapses. More often, just stocks in particular fields fall. Industries such as automaking and casualty insurance go through regular cycles. Sometimes stocks of companies like the thrift institutions or money-center banks fall out of favor all at once. Whatever the reason, investors are on the sidelines, sitting on their wallets. Yes, they tell you: "Buy low, sell high." But all too many of them bought high and sold low. Then you ask: "When will you buy the stock?" The usual answer: "Why, after analysts agree on a favorable outlook."

This is foolish, but it is human nature. It is extremely difficult to go against the crowd - to buy when everyone else is selling or has sold, to buy when things look darkest, to buy when so many experts are telling you that stocks in general, or in this particular industry, or even in this particular company, are risky right now.

But, if you buy the same securities everyone else is buying, you will have the same results as everyone else. By definition, you can't outperform the market if you buy the market. And chances are if you buy what everyone is buying you will do so only after it is already overpriced. Heed the words of the great pioneer of stock analysis Benjamin Graham: "Buy when most people…including experts…are pessimistic, and sell when they are actively optimistic."

Bernard Baruch, advisor to presidents, was even more succinct: "Never follow the crowd." So simple in concept. So difficult in execution.

2012年6月5日火曜日

単に読めばいいというものではない(チャーリー・マンガー)

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今回は読書のしかたについて、「本の虫」チャーリー・マンガーの考えを『Poor Charlie's Almanack』から引用します。(日本語は拙訳)

我々はたくさん読みますよ。たくさん読まないで賢くなったという人は聞いたことがないですね。ただし、読むだけでは不十分です。そこからなにかアイデアを得ようとする姿勢が必要ですし、その上で理にかなった行動に結びつけなければなりません。ほとんどの人は、正しいアイデアをつかめていないか、アイデアはわかっていても何をしたらよいかわかっていないのです。

We read a lot. I don't kow anyone who's wise who doesn't read a lot. But that's not enough: You have to have a temperament to grab ideas and do sensible things. Most people don't grab the right ideas or don't know what to do with them.


きっとチャーリーは、自分のまわりにいる人たちを観察してきて、このような結論に至ったのでしょうね。チャーリーの言うとおり、個人的にはどちらにも当てはまっています。

2012年6月4日月曜日

株価が上がりそうだから買うのではない(ウォーレン・バフェット)

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アメリカの経済誌Forbesの1974年11月1日号に掲載されたウォーレン・バフェットのインタビューは、次の有名な言葉で締めくくられています。「今こそ投資をして、お金持ちになりましょう」(Now is the time to invest and get rich.)。今回は同記事の中から、株を買うときにはどうしたらよいか、ウォーレンの助言をご紹介します。(日本語は拙訳)

常識的なものになりますが、あきれるほど安値になっている株を買うことです。どういう基準で安いのかというと、以前から使われているような、純資産、簿価、継続価値[DCF等]といった指標があります。あまり手を出しすぎるのではなく、自分の知っているものにこだわることです。自分で理解しているビジネスだけに的をしぼり、さきほど挙げた評価額や、よい経営者がいるか、厳しい時期でも深手を負わなくてすむかといった点で評価し、基準に達しないものは除きます。わたしの場合はハイテク企業やコングロマリットは理解できないので、手を出しません。そして、株価が上がりそうだから買うのではなく、自分で所有したいと思う企業を買うのです。

Just commonsense ones. Buy stocks that sell at ridiculously low prices. Low by what standards? By the conventional ones of net worth, book value, the value of the business as a going concern. Above all, stick with what you know; don't get too fancy. "Draw a circle around the businesses you understand and then eliminate those that fail to qualify on the basis of value, good management and limited exposure to hard times." No high technology. No multicompanies. "I don't understand them," says Buffett. "Buy into a company because you want to own it, not because you want the stock to go up." (p.41)

以下の図は、この記事が掲載された頃のS&P500のチャートです。赤の矢印は、掲載号の発売日を示しています。さすがはウォーレン、どんぴしゃりです。








一方の日本市場、株価の底がいつやってくるのかわかりませんが、個人的には5月から株を買い進めています。先走ってしまったので、このところは手綱をひいていますが、アメリカ大統領選の11月に向けて、機をみながら買い続けるつもりです。

2012年6月2日土曜日

「ベンチャーキャピタル」の名前の由来

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読んでいる本『探求―エネルギーの世紀』で、「ベンチャーキャピタル」という名称が生まれた経緯が書かれていたのでご紹介します。

現代のベンチャーキャピタルに似通ったものは、第二次世界大戦直前に出現した。J.H.ホイットニー&カンパニーという独創的な会社の運用資産には、オレンジジュースの<ミニッツメイド>、テクニカラー社、映画『風と共に去りぬ』への出資などが含まれていた。言い伝えによれば、J.H.ホイットニーのパートナーが、この新型投資の最初の名称を考えたというー"プライベート・アドベンチャー・キャピタル"というものだった。しかし、響きがよくなかった。リスクが極端に大きく、無謀であるかのように思えた。責任ある受託者が、思慮深く管理するよう任されたカネを使って、"冒険"に乗り出すわけがない。そこで、それを縮めて、単純かつ廉直な"ベンチャーキャピタル"という名称に変えた。(下巻 p.225)


はずかしながら、わたしが投資している企業の1社が「アドベンチャー」状態です。何年間も成果が実っておらず、果実が得られるには今後も数年間は待つ必要があります。しかも成功する保証はありません。ウォーレン・バフェットならば、絶対に近寄らない投資先です。いずれは、わたしの失敗投資の事例としてご紹介するつもりです。

2012年6月1日金曜日

会社の物品を私用で使ったら(ウォーレン・バフェット)

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ウォーレン・バフェットはバークシャー・ハサウェイの会長兼CEOでありながら、もらっている報酬が低いことで有名です。USドルベースで10万ドル、現在の日本円に換算すると800万円です。「そうはいっても、経費は使いたい放題じゃないの?」と感じた方のために、今回は同社の株主総会招集通知(2012年5月開催分)からご紹介します。

報酬に関する分析

バフェット氏及びマンガー氏の両名は、必要に応じてバークシャーの従業員の助力を得ており、かつ/または、私用目的で使った郵便や電話等の些少な物品及びサービスをバークシャーに負担させている。そのため両名は、バークシャーが支払った費用以上の金額を年度毎に返還している。2011年度分としてバフェット氏がバークシャーに返還した金額は5万ドル[400万円]、マンガー氏は5,500ドル[44万円]である。またバークシャーは、この5年間にわたって身辺保護のためにバフェット氏に対してセキュリティー・サービスを提供してきたが、2011年度の費用は34万6,925ドル[2,800万円弱]だった。この金額は「報酬の要約」において、バフェット氏に関する「その他の費用」に含めてある。なお、多くの大企業では経営トップのために費用のかさむセキュリティー専門の部署を設けているが、各社の株主総会招集通知書面ではその費用細目は公開されていない。バフェット氏及びマンガー氏の両名は社有車を使用せず、あるいは支払が当社名義のクラブには所属していない。さらに両名は社有の航空機を商用目的に限って使用し、私用では使っていない。両名は個人名義でネットジェット[プライベートジェットを扱うバークシャーの子会社]を分割所有し、正規の費用を負担している。

Compensation Discussion and Analysis

Both Mr. Buffett and Mr. Munger will on occasion utilize Berkshire personnel and/or have Berkshire pay for minor items such as postage or phone calls that are personal. Mr. Buffett and Mr. Munger reimburse Berkshire for these costs by making an annual payment to Berkshire in an amount that is equal to or greater than the costs that Berkshire has incurred on their behalf. During 2011, Mr. Buffett reimbursed Berkshire $50,000 and Mr. Munger reimbursed Berkshire $5,500. For about five years Berkshire has provided personal and home security services for Mr. Buffett. The cost for these services was $346,925 in 2011 and is reflected in the Summary Compensation Table as a component of Mr. Buffett’s “All Other Compensation.” It should be noted that many large companies maintain security departments that provide costly services to top executives but for which no itemization is provided in their proxy statements. Mr. Buffett and Mr. Munger do not use Company cars or belong to clubs to which the Company pays dues. It should also be noted that neither Mr. Buffett nor Mr. Munger utilizes corporate-owned aircraft for personal use. Each of them is personally a fractional NetJets owner, paying standard rates, and they use Berkshire-owned aircraft for business purposes only. (p.9)


報酬の返還額に個性が出ているのがおもしろいです。ウォーレンは公私半々といった姿勢ですが、チャーリーは細かく考えているようにみえます。1年が53週間なので1週間あたり100ドルとするか、あるいは1年間に11ヶ月働くとして1ヶ月あたり500ドルとするか。単にわたしの考えすぎかもしれません。

ところで、ウォーレンにセキュリティー・サービスがついているのは、2007年9月に強盗が自宅に侵入しようとした事件があったので、それを踏まえたものと思われます(CNN Money記事)。