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2015年4月30日木曜日

2015年デイリー・ジャーナル株主総会(3)他人の知らぬMoatをみつけたい

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チャーリー・マンガーが臨席するデイリー・ジャーナル社の株主総会の記事から、Moat(モート)に関する質疑応答を引用します。チャーリーらしさがみなぎった受け答えです。引用元は前回と同じForbesですが、今回はPart4からになります。なおMoatとは経済的な堀を意味する言葉で、転じて「堅牢強固な強み」を示しています。(日本語は拙訳)

Charlie Munger's 2015 Daily Journal Annual Meeting - Part 4 (Forbes)

<質問者> ビジネスに関するMoatの中で、ほとんど取りあげられなかったり、もっとも誤解されているものには、どんなMoatがあるとお考えですか。

<マンガー> 誤解されたMoatを見出したいとは、実にだれもが考えていることです。そういった人の中でも、あなたは最高に欲ばりですね。(笑)

自分には理解できるが、他の人には理解できない。そんなMoatを知っているかという質問ですから、ささやかなお望みですな。(笑)

91歳の人間に向かって、その方法を問いかけているわけですね。ならば、私の好きな小話のひとつを紹介しましょう。モーツァルトのところに来た若者がこう言ったそうです。「わたしにも交響曲が作曲できるよう、あなたのお力添えを頂きたいのです」

モーツァルトは答えました。「交響曲を作曲するには、まだ若すぎです」

その若者は答えました。「しかし、あなたは10歳のときに交響曲を生みだしたではないですか。もはやわたしは21歳です」

モーツァルトは答えました。「たしかに。ですがわたしのときは、そのやりかたを訊いて回ることはなかったですから」(拍手)

Q: What do you think is the least talked about or most misunderstood moat around a business ?

Mr. Munger: Everybody would really like to have a misunderstood moat. You're the greediest fellow that's spoken.

[laughter]

All you want to know is if I have a moat that you can understand that other people don't. A modest wish.

[laughter]

You're going to ask a 91-year-old man how to do it? Reminds me of one of my favorite stories. A young man comes to Mozart and says, "With your help I want to compose symphonies."

Mozart says, "You're too young to be composing symphonies."

He says, "Look, you were doing symphonies when you were 10 years of age. I'm 21."

Mozart says, "Yes, but I wasn't running around asking other people how to do it."

[applause]

2013年6月14日金曜日

確信をもって安全余裕を確保するには(セス・クラーマン)

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ファンド・マネージャーのセス・クラーマンの著書『Margin of Safety』からの引用です。今回は第6章「バリュー投資: 安全余裕の重要性について」(Value Investing: The Importance of a Margin of Safety)からご紹介します。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

安全余裕はどれだけあればよいのか。その答えは投資家ごとに異なりうる。悪運に見舞われたら、どこまで耐えられるか。[金利上昇などによって]ビジネスの価値が変動しても、どれだけ吸収できるか。自分がまちがっていたときに、どこまで辛抱できるか。そういったことは、各人が損失をどこまで許容できるかによって決まってくる。

投資先に対して安全余裕を見出そうとする投資家は、ごく一部である。株式のことを単に売り買いする紙切れとみなし、つねに全額投資している機関投資家は、安全余裕がとれていない。また市場動向や流行りものに付きしたがう欲深い個人投資家も、それと同様だ。ウォール街が売り出す商品や先進的な金融商品を信用建てで買う投資家には、きわどい思いをする未来が待っている。

適切な安全余裕とはなにかと問えば、バリュー投資家のあいだでも異論がある。大きな成功をおさめた投資家はバフェットもそうだが、無形資産の価値をますます重視している。無形資産には放送ライセンスや清涼飲料水の調合法といったものがあるが、そういった企業では事業を維持継続するのに追加投資を少しも必要とせずに、企業価値を成長させてきた過去がある。生みだされたキャッシュが、実質的にそのままフリー・キャッシュ・フローとなっている。

しかし私が考えるところ、無形資産には安全余裕がほとんどもしくはまったく存在しないという点で問題がある。例としてあげるとドクターペッパー/セブンアップの有するもっとも価値ある資産とは、同社の清涼飲料水を独特の風味に仕立てる調合法にある。そのような無形資産が同社の価値を有形資産比で高い倍率にしている。しかし風味を変更したり、競合他社に侵食されるといったまずい事態になれば、安全余裕は大幅に減少するだろう。

それとくらべて有形資産はずっと確実性のある価値であるため、投資家が大きな損失を負わないようにする役割をはたす。有形資産はたいていの場合、他の用途に使用できる価値を有しており、それが安全余裕となっている。たとえば小売りチェーン店が赤字になったときに、投資家としては会社を清算する、つまり売掛金を回収して、リースを移転し、不動産を売却する道を選ぶこともできる。一方、ドクターペッパーの味に消費者が興味を示さなくなれば、投資家の損失を吸収できるほどの有形資産は残されていない。

投資家が確信をもって安全余裕を確保するにはどうすればいいだろうか。まずは、どんなときでも事業の根底にある価値から大幅に割安な値段で買い、その際には無形資産よりも有形資産に重きをおくこと。(だからといって、価値ある無形資産を有する事業にすばらしい投資機会はみつからない、とは言っていない)。現在の所有状況を見直し、より割安なものに置きかえること。本質的な価値にみあった価格が付けられた時には、いかなる投資でも売却すること。そして他の魅力的な投資があらわれるまで、現金のまま保有することである。(p.93)

What is the requisite margin of safety for an investor? The answer can vary from one investor to the next. How much bad luck are you willing and able to tolerate? How much volatility in business values can you absorb? What is your tolerance for error? It comes down to how much you can afford to lose.

Most investors do not seek a margin of safety in their holdings. Institutional investors who buy stocks as pieces of paper to be traded and who remain fully invested at all times fail to achieve a margin of safety. Greedy individual investors who follow market trends and fads are in the same boat. The only margin investors who purchase Wall Street underwritings or financial-market innovations usually experience is a margin of peril.

Even among value investors there is ongoing disagreement concerning the appropriate margin of safety. Some highly successful investors, including Buffett, have come increasingly to recognize the value of intangible assets - broadcast licenses or soft-drink formulas, for example - which have a history of growing in value without any investment being required to maintain them. Virtually all cash flow generated is free cash flow.

The problem with intangible assets, I believe, is that they hold little or no margin of safety. The most valuable assets of Dr Pepper/Seven-Up, Inc., by way of example, are the formulas that give those soft drinks their distinctive flavors. It is these intangible assets that cause Dr Pepper/Seven-Up, Inc., to be valued at a high multiple of tangible book value. If something goes wrong - tastes change or a competitor makes inroads - the margin of safety is quite low.

Tangible assets, by contrast, are more precisely valued and therefore provide investors with greater protection from loss. Tangible assets usually have value in alternate uses, thereby providing a margin of safety. If a chain of retail stores becomes unprofitable, for example, the inventories can be liquidated, receivables collected, leases transferred, and real estate sold. If consumers lose their taste for Dr Pepper, by contrast, tangible assets will not meaningfully cushion investors' losses.

How can investors be certain of achieving a margin of safety? By always buying at a significant discount to underlying business value and giving preference to tangible assets over intangibles. (This does not mean that there are not excellent investment opportunities in businesses with valuable intangible assets.) By replacing current holdings as better bargains come along. By selling when the market price of any investment comes to reflect its underlying value and by holding cash, if necessary, until other attractive investments become available.


無形資産について少し手厳しい調子で書かれていますが、個人的にはチャーリー・マンガーのやりかたに組みこまれていると感じています。無形資産はあくまでもMoat(経済的な堀)を形成する要素のひとつととらえて、その潜在的な価値は確率的に判断する(順列、組み合わせ)考え方です。つまり無形資産の金額は何円かと定量的に判断するのではなく、利益の安定度や成長性といった事業の質を推定するために使うやりかたです。

ただし実際に銘柄を選定する際には、有形資産の状況はほぼ必ず着目するようにしています。当座資産(現預金+売掛金+有価証券)が総負債を大幅に超過していることを判断材料のひとつにしているためです。この点は、ベン・グレアムやセス・クラーマンの教えに近いものです。また自社株買いや買収用の資金準備という意味では、経営者の資質や行動力を問うウォーレン・バフェットの見方も含めています。

2013年5月6日月曜日

アマチュア投資家の問題点(ウォーレン・バフェット)

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バークシャー・ハサウェイの今年の年次株主総会は、先週の5月4日(土)でした。質疑応答のトランスクリプトがいずれ公開されると思いますが、ダイジェスト的な記事はたとえばThe New York Timesの経済ニュースサイトDealBookなどに掲載されています。今回は同記事から、ウォーレン・バフェットとチャーリー・マンガーの回答のうち、個人的にもっとも印象に残った2つをご紹介します。(日本語は拙訳)

Berkshire Hathaway's 2013 Shareholder Meeting (DealBook - The New York Times)

まずはウォーレンです。
午後3時17分の質疑応答 「インデックスに打ち勝つには」

ある投資家の質問「アメリカで最高の企業20社の株を買えば、インデックスファンドに投資するよりもよい成績をあげられますか」。

バフェット氏「たぶん同じぐらいの結果になると思います」。彼はもっと大きな観点に立つ話へと進んだ。「プロの投資家がいる一方で、アマチュアで投資をしている人もいます。プロであるためには多大な労力や調査が要求されます。ふつうのアマではそんなに時間はとれないか、やろうという気もおきないものです」。

バフェット氏「ほとんどの人にとって大きな問題なのは、プロであることが要求されるゲームにおいてそれほど時間を費やしていないのに、プロのように振る舞おうとしていることです」。

3:17 P.M.Trying to Beat the Index

A shareholders asks if buying shares in the 20 best companies in the United States would be better than investing in an index fund.

Mr. Buffett replies that the results would probably be similar. Then he launches into a bigger point: there are professional investors, and then there are amateurs who invest. Being the former requires a lot of work and research, which many, many amateurs don't have the time or inclination to do.

The main problem for most people, he says, is "trying to behave like a professional when you aren't spending the time in the game needed to be a professional."

つぎにチャーリーです。あいかわらずのユーモアです。
午前11時52分の質疑応答 「バークシャーとは」

Fortune誌のルーミス女史が、聴衆の株主の代理で質問した。「13歳の娘に対して、バークシャーとその中核をなす価値観をどのように説明すればよいでしょうか」。

バフェット氏がシーズ・キャンディーのファッジをつまんでいるかたわらで、マンガー氏が話しだした。「他の人たちがばかげたことをしているときでも、我々は分別を持ちつづけるようにしてきました。これはひとつの競争優位ですね」。さらにこう付け加えた。「子会社にとっては良き世話役であり、同時に良きパートナーであるよう心がけています」。

「非常にうまいやりかたでした」、彼はユーモアをこめて言った。「これが狙ってできていたらなあ、と思いますよ」。

11:52 A.M.Defining Berkshire

Ms. Loomis of Fortune asks a question on behalf of a shareholder in the audience: How would you explain Berkshire and its value premise to the investor's 13-year-old daughter?

Mr. Munger takes first crack as Mr. Buffett helps himself to some See's Candy fudge: "We like to stay sane while others go crazy. That's a competitive advantage." He also notes that the company tries to be a good steward to its subsidiaries and a good partner.

"This was a very good idea," he says drolly. "I wish we'd done it on purpose."

2013年3月5日火曜日

2012年度バフェットからの手紙(3)配当政策について(1/3)

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ウォーレン・バフェットの2012年度「株主のみなさんへ」から、今回は「配当政策」の文章をご紹介します。少し長いので、3回にわけて引用します。なお、前回の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)

配当について

仲のよいわたしの友人も含めて、少なからぬバークシャーの株主の方が、バークシャーが配当金を支払うことを望まれています。株式を保有する大多数の企業から支払われる配当金をバークシャーは享受しているにもかかわらず、自分たちには何も配当されないことに納得がいかないようです。それではここからは、株主に対する配当が妥当あるいはそうでないのはどのようなときなのか、みていきましょう。

儲けをだせる企業は、利益をさまざまな形で配分することができます(それらは重複することもあります)。会社の経営者が第一に検討すべきことは、現在の事業に再投資できるかどうかです。一層の効率化をめざすプロジェクト、地域の拡大、製品群の拡張・改善など、競合他社をひきはなす経済的な堀を拡大できるならばなんであれ、可能性を秘めています。

当社の子会社の経営者に対してわたしからは、堀をひろげる機会をやむことなく追求してほしいとお願いしています。かれらは経済的にみて妥当な事案を数多く見出してくれますが、ときには外してしまうこともあります。よくある失敗の原因は、最初の時点で何をしたいのかを念頭においてしまい、そこから逆に理由付けを考えだしてしまうことです。もちろん、このプロセスは無意識に行われるので、なおさら危険なものといえます。

みなさんの会長たるわたしも、この罪業と無縁ではありません。1986年度の年次報告書では、従来からの当社の織物業に対する20年間にわたる経営陣の努力と資産改善が、いかに無駄骨だったかをご説明しました。その事業で成功したかったので、その願望をかなえたいばかりに悪い決定をいろいろ下してしまったのです(実に、ニューイングランドの別の織物会社も買収しています)。しかし、願えばかなうのはディズニーの映画だけです。ビジネスにおいては、それは有害なものです。

過去にそのような失着を打ってきましたが、余剰資金の使い道としては今後も、当社の手がける多様な事業においてうまく使えるか検討することを、再優先してまいります。2012年には121億ドルを固定資産に投資したり、既存事業を拡張する買収に費やしたように、このやりかたはバークシャーが資金を配分する上で実り豊かな領域です。また、われわれの強みも発揮することができます。経済全体の多様な領域にわたって事業を行っているため、われわれのように幅広い選択を享受できる企業はほとんどありません。どれにするか決める際に、雑草を飛ばして花に水をやることができるのです。

現有の事業に対してたっぷりと資金を投じた後でさえも、バークシャーは多額のキャッシュを定期的に生み出します。ですからわたしどもは次のステップとして、現在の事業とは関連しない買収先を探すことになります。ここで決め手となるのは簡単です。この取引をすれば、1株あたりでみたときに買収前とくらべて株主がより裕福になる。チャーリーとわたしが、そう考えられるかどうかです。

過去の買収では幾多の過ちをおかしてきましたし、今後もやってしまうでしょう。しかし全体としてみれば、資金を買収に使うかわりに自社株買いや配当に回していたらどうなったかを考えると、今日の株主はより裕福になっています。その意味で、わたしどものあげた成果は満足のできるものでしょう。

しかし、よくある断わり書きのように、過去にあげた成果は将来の成績を保証するものではないですし、バークシャーには殊に当てはまります。現在のわれわれの規模となると、有意義で思慮ある買収を果たすのは以前よりずっと難しくなっています。このような状況は過去には稀なものでした。

それにもかかわらず大規模な取引ができれば、1株あたりでみた本源的価値を大幅に上昇させる可能性をもたらしてくれます。BNSF[バーリントン・ノーザン・サンタフェ鉄道]がその例です。現在の同社の価値は、無形固定資産控除後簿価[原文はcarrying value]よりも大幅に増加しています。しかし、この買収にかかった資金を配当や自社株買いに使っていたとしたら、ずっと良くない状況だったでしょう。BNSFのような巨額の取引ができることはめったにありませんが、大海にはまだクジラが泳いでいます。

3番目の資金の使い方、つまり自社株買いですが、保守的に算出した本源的価値とくらべて十分に割安な値段で株を買うのであれば、賢明なやりかたといえます。実際のところ、規律にしたがって自社株を買戻すのは、余剰資金を賢く使うもっとも手堅い方法です。1ドル札を80セント以下で買っていれば、まず失敗することはないでしょう。昨年の報告書で当社における自社株買いの条件を説明しましたが、機会がやってくれば大量の株を買い戻すつもりです。当初は簿価の110%までしか支払わないと申しましたが、現実的な金額ではありませんでした。まとまった株数が簿価の116%で手に入るとなったため、12月に限度額を120%に引き上げました、

しかし、お忘れのないように。自社株買いに踏みきる際には、価格こそがもっとも重要な点です。本源的価値を超えた金額で購入すれば、価値は霧散してしまいます。上限120%で自社株を購入する施策は、継続保有される株主のみなさんも意味ある形で恩恵をこうむられるものと、わたしも含めた取締役一同は信じております。(PDFファイル18ページ)

Dividends

A number of Berkshire shareholders - including some of my good friends - would like Berkshire to pay a cash dividend. It puzzles them that we relish the dividends we receive from most of the stocks that Berkshire owns, but pay out nothing ourselves. So let's examine when dividends do and don't make sense for shareholders.

A profitable company can allocate its earnings in various ways (which are not mutually exclusive). A company's management should first examine reinvestment possibilities offered by its current business - projects to become more efficient, expand territorially, extend and improve product lines or to otherwise widen the economic moat separating the company from its competitors.

I ask the managers of our subsidiaries to unendingly focus on moat-widening opportunities, and they find many that make economic sense. But sometimes our managers misfire. The usual cause of failure is that they start with the answer they want and then work backwards to find a supporting rationale. Of course, the process is subconscious; that's what makes it so dangerous.

Your chairman has not been free of this sin. In Berkshire's 1986 annual report, I described how twenty years of management effort and capital improvements in our original textile business were an exercise in futility. I wanted the business to succeed and wished my way into a series of bad decisions. (I even bought another New England textile company.) But wishing makes dreams come true only in Disney movies; it's poison in business.

Despite such past miscues, our first priority with available funds will always be to examine whether they can be intelligently deployed in our various businesses. Our record $12.1 billion of fixed-asset investments and bolt-on acquisitions in 2012 demonstrate that this is a fertile field for capital allocation at Berkshire. And here we have an advantage: Because we operate in so many areas of the economy, we enjoy a range of choices far wider than that open to most corporations. In deciding what to do, we can water the flowers and skip over the weeds.

Even after we deploy hefty amounts of capital in our current operations, Berkshire will regularly generate a lot of additional cash. Our next step, therefore, is to search for acquisitions unrelated to our current businesses. Here our test is simple: Do Charlie and I think we can effect a transaction that is likely to leave our shareholders wealthier on a per-share basis than they were prior to the acquisition?

I have made plenty of mistakes in acquisitions and will make more. Overall, however, our record is satisfactory, which means that our shareholders are far wealthier today than they would be if the funds we used for acquisitions had instead been devoted to share repurchases or dividends.

But, to use the standard disclaimer, past performance is no guarantee of future results. That's particularly true at Berkshire: Because of our present size, making acquisitions that are both meaningful and sensible is now more difficult than it has been during most of our years.

Nevertheless, a large deal still offers us possibilities to add materially to per-share intrinsic value. BNSF is a case in point: It is now worth considerably more than our carrying value. Had we instead allocated the funds required for this purchase to dividends or repurchases, you and I would have been worse off. Though large transactions of the BNSF kind will be rare, there are still some whales in the ocean.

The third use of funds - repurchases - is sensible for a company when its shares sell at a meaningful discount to conservatively calculated intrinsic value. Indeed, disciplined repurchases are the surest way to use funds intelligently: It's hard to go wrong when you're buying dollar bills for 80¢ or less. We explained our criteria for repurchases in last year's report and, if the opportunity presents itself, we will buy large quantities of our stock. We originally said we would not pay more than 110% of book value, but that proved unrealistic. Therefore, we increased the limit to 120% in December when a large block became available at about 116% of book value.

But never forget: In repurchase decisions, price is all-important. Value is destroyed when purchases are made above intrinsic value. The directors and I believe that continuing shareholders are benefitted in a meaningful way by purchases up to our 120% limit.

2012年8月29日水曜日

経営陣がなすべき責務(チャーリー・マンガー)

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前回に続いて経営者の話です。今回はチャーリー・マンガーがWescoの株主総会で語った内容から引用します。引用元はSeeking Alphaの以下の記事です。(日本語は拙訳)

2008 Wesco Shareholder Meeting: Detailed Notes (Seeking Alpha)

企業の経営陣がなすべき責務はただひとう、Moat[経済的な堀]を広げることです。それをめざして毎日のように力を尽くさなければなりません。競争上の優位を有している以上、Moatを築かなければならない。そうするのが難しい時期もあるでしょうが、Moatを広げることこそ、やるべき仕事なのです。世間では、それと違うことをやっている例がいくつもみられますが、自らの持つ競争優位を守れるようにMoatを広げることに集中すべきです。かつてイングランドのある将軍は、こう言いました。「きみらの父の息子に劣らぬ息子を残せ、それでこそ神は女王を守り給う」。ヒューレット・パッカードでは、自分の後任になれる人を育てあげることが要求されています。これは全然複雑なことではなくて、ちちんぷいぷいといったところでしょう。今日のテキサスでは、メソポタミアのころと同じやりかたでレンガをつくっています。大切なのは少しばかりのエートス、とくに工学上のエートスを体得することです。システム全体の観点から考え、安全余裕をとること。この予備用マイクのように、です。

The only duty of corporate executive is to widen the moat. We must make it wider. Every day is to widen the moat. We gave you a competitive advantage, and you must leave us the moat. There are times when it is too tough. But duty should be to widen the moat. I can see instance after instance where that isn’t what people do in business. One must keep their eye on ball of widening the moat, to be a steward of the competitive advantage that came to you. A General in England said, ‘Get you the sons your fathers got, and God will save the Queen.’ At Hewlett Packard, your responsibility is to train and deliver a subordinate who can succeed you. It is not all that complicated - all that mumbo jumbo. We make bricks in Texas which use the same process as in Mesopotamia. You need just a few bits of ethos, and particularly engineering ethos. Think through the system, and get a margin of safety. Like this backup microphone.

文中で登場する「予備用マイク」とは有線マイクのことです。当初使う予定だった無線のものが壊れたため、使うことになりました。ここでもチャーリーは教訓を引き出しています。「システムは複雑にしないこと」(有線のほうが信頼性が高い)、「バックアップを用意すること」。あえてもうひとつ加えるとしたら「バックアップには異なる種類のものを選ぶこと」でしょうか。

また工学については過去記事「最も信頼できるモデルとは(チャーリー・マンガー)」でも取り上げています。

なおイングランドの将軍の言葉の和訳は、以下の作品からお借りしました。
ハウスマン全詩集』「シュロプシァの若者 一番 1887年」森山泰夫・川口昌男 訳、沖積舎

2012年5月27日日曜日

習慣を変えると連鎖反応がうまれる

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雑誌The Economist 2012/4/7号の書評で興味深いものがありましたので、一部をご紹介します。本の題名は『The Power of Habit』、習慣がもたらす影響力を取り上げたものです。(日本語は拙訳)

第二編では組織の話題が取り上げられている。著者のダヒッグ氏は、かなめとなる習慣をいくつか変えたことによって、経営陣が会社全体を変革できた例を紹介している。アルミ最大手のアルコアでは、ポール・オニールがゼロ災害を徹底させたことから始まり、同社を変革した。またスターバックスのハワード・シュルツは従業員に対して顧客サービスに注力するようにしむけたことで、同社は喫茶店業界の巨人となった。このように、かなめとなる習慣を変えると連鎖反応がうまれ、新たな習慣が組織全体へ波及するのみならず、他の習慣をも変えていくのである。

The second part of the book concentrates on organisations. Mr Duhigg shows how managers can change entire firms by changing a handful of “keystone habits”. Paul O’Neill transformed Alcoa, an aluminium giant, by aiming to establish a perfect safety record. Howard Schultz turned Starbucks into a coffee superpower by focusing his employees on customer service. Changing these “keystone habits” creates a chain reaction, with the new habits rippling through the organisation and changing other habits as they go.

成功している企業をみると、クセが強く感じられるところもあります。たとえば、ファナック、キーエンス、京セラといった企業はわかりやすいですね。しかし、そのクセはまぎれもなく企業文化にしみこみ、さまざまな習慣を生み出していることでしょう。そしてクセが強いほど他社は模倣しにくく、競争優位の源泉にもなっているのかもしれません(過去記事)。

「強いクセは、すなわちニッチである」と捉えれば、その企業が生き残るのかどうかを判断する材料にも使えそうです。

*

前回記事であげた問題の回答は「厚生労働省が推定に用いた数量はドッグフードの消費量であった」でした。引用元の本は『いかにして問題をとくか・実践活用編』です(p.82)。そういえば、我が家で猫を飼っていた頃にはペットショップにせっせと通い、サイエンス・ダイエットを買い求めていました。

2012年5月21日月曜日

安くなくても、まあいいでしょう(マイケル・ポーター)

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企業戦略を分析する上でマイケル・ポーターの「5つの競争要因」は使いやすいフレームワークです。投資先の弱点探しをする際には、わたしも頻繁に使っています。詳しい説明がなされている同氏の著書『競争の戦略』は企業戦略の定番教科書ですが、投資家にとっても役立つものです。先日取り上げた『企業戦略論 競争優位の構築と持続』でも、大きく取り上げられていました。

要約すると5つの競争要因とは、企業の生き残りを考える際には次の5つの観点で考えるとよい、というものです。
  1. 既存企業同士の競争
  2. 新規参入者の脅威
  3. サプライヤーの交渉力
  4. 買い手の交渉力
  5. 代替品や代替サービスの脅威
少し前のDIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー誌を読んでいて、同書の入門的な記事がありましたので、ご紹介します。2011年6月号に掲載されているポーター自身の論文「[改訂]競争の戦略」です。今回はその文章から「買い手の価格感度」の話題を引用します。

まずは、企業が高い収益性を保つ要因のいくつかについて。
先端技術やイノベーションは、それだけで業界構造を魅力的(または魅力に乏しいもの)にするわけではない。ありふれたローテク業界でも、買い手の価格感度が低い、スイッチング・コストが高い、あるいは規模の経済のために参入障壁が高い場合には、ソフトウェア業界やインターネット業界などライバルたちを呼び寄せる魅力度の高い業界よりも、よほど収益性が高い。(p.47)

スイッチング・コストや規模の経済は、以前に本ブログでも軽く取り上げています(過去記事1過去記事2)。もうひとつ、「買い手の価格感度が低い」という表現が登場していますが、これは買う側のほうが、うるさく値下げを迫らなかったり、そのままの値段で買ってくれたり、さらには値上げを容認してくれるといった意味ですね。ありがたいお客さまです。以下では、その具体的な傾向を説明しています。
製品が買い手の原価構造や支出において取るに足らない程度であれば、一般的に買い手の価格感度は低くなる。

儲かっており、現金も潤沢な買い手は、一般的に価格感度が低い。

調達する製品しだいで品質に大きな影響を生じる場合、買い手は通常あまり価格にこだわらない。たとえば、大手映画制作会社が撮影用の高品質カメラを購入またはレンタルする場合、価格は気にせず、最新機能付きで信頼性の高いものを選ぶ。

その業界の製品やサービスが、パフォーマンスの向上あるいは人件費や原材料費などのコスト削減によって、通常の何倍も儲かる場合には、買い手はたいてい価格よりも品質に関心があるといえる。たとえば投資銀行業務など、パフォーマンスが低いとコスト高や面倒な事態を招きかねないサービスには、価格にこだわらない傾向がある。(p.42)

個人的には、価格感度の低さは投資候補企業のMoat(経済的堀)をはかる上で重要視している要因です。この要因は、スイッチング・コストやチャーリー・マンガー言うところの心理学的な傾向と合わさることによって、相乗効果を発揮するものと捉えています。

2012年5月18日金曜日

御社の強みはなんですか

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前々回は『企業戦略論 競争優位の構築と持続』から「製品差別化」の源泉の話題を取り上げましたが、今回はそれより上位概念の「競争優位」の源泉について引用します。

1つの戦略を実行するコストを相対的に理解しようとする際、一般に企業は2つの誤りを犯す可能性がある。1つは、自社のコントロールする経営資源の独自性を過大評価してしまうことである。たしかに個々の企業の歴史はすべて独自のものであり、まったく同じマネジメント・チームは2つとして存在しない。だが、これをもってその企業の保有する経営資源やケイパビリティが稀少であるとはならない。似たような業界で似たような歴史を経験してきている企業は、多くの場合同じようなものを醸成してきているものだ。もしも企業が自社の経営資源やケイパビリティの稀少性を過大評価してしまうと、その企業は自社の競争優位を獲得する能力も過大評価してしまうことになる。

たとえば、自社の競争優位の最も重要な源泉は何かと問われて、多くの企業は、そのトップ経営陣の質の高さ、保有する技術の質の高さ、そして自社の企業活動のすべてにわたって最高を追求するコミットメントの強さなどを列挙するだろう。だが、それらの企業が今度は競合他社のほうはどうか、と聞かれれば、競合も同じように質の高いマネジメント・チームや、質の高い技術や、最高を求めるコミットメントを持っていると認めるだろう。つまり、これら3つの属性は競争均衡の源泉とはなり得ても、競争優位の源泉とはなり得ないのである。(上巻 p.284)

決算説明会などの資料で自社の強みを謳っているのを読むことがありますが、個人的には「なるほど、そういうものなのか」と鵜呑みにしがちです。あれは営業トークのようなもの、と冷静に捉えるべきなのですね。本当のところは何が強みなのか、それは長持ちするだろうか、といった疑問をいだき、客観的に自答できるよう訓練していきたいものです。

2012年5月15日火曜日

製品差別化戦略と模倣コスト

3 件のコメント:
少し古い本ですが『企業戦略論 競争優位の構築と持続』(3分冊)を読んでいます。邦訳では副題にまわっていますが、原書のほうのタイトルは『Gaining and Sustaining Competitive Advantage』と投資家好みの直球です。また原書は第4版まで改訂されていますが、かなりいい値段がついています。

さて、今回は中巻から「製品差別化」について引用します。

まずは、製品やサービスを差別化する利点と注意点です。
製品差別化戦略を実行することにより、企業は自社の製品やサービスに対し、平均総コストを上回る価格を付与でき、それによって経済価値を生み出すことができる。製品の差別化に成功した企業は、外部環境のさまざまな脅威を減らし、かつ外部環境に存在する機会を活用することができる。しかし、ある戦略がその企業に単に経済価値をもたらすのみならず、持続的競争優位を生じさせるには、その戦略が稀少で模倣コストの大きな内部組織上の強みと弱みに裏打ちされていなければならない。
(p.138)

次に、製品やサービスを差別化する代表例です。他社がそれらを模倣しようとするときの難易度を3つの観点で評価しています。(*マークが多いほど、模倣コストが高くなる傾向)。

#製品差別化の源泉歴史的経路依存性因果関係不明性社会的複雑性
1製品の特徴や機能---
2製品の品揃え***
3他企業との連携*-**
4製品のカスタマイゼーション*-**
5製品の複雑性*-*
6消費者マーケティング-**-
7機能横断的なリンケージ****
8タイミング****-
9ロケーション***--
10評判********
11流通チャネル*****
12アフターサービスとサポート****

3つの観点の説明は、次のとおりです。
  • 歴史的経路依存性
    企業がたどってきた歴史的経緯に独自のものがあり、模倣コストに影響すること。
  • 因果関係不明性
    因果関係はよくわからないが、競争優位に関係すること。
  • 社会的複雑性
    企業がシステマチックに管理したりコントロールしたりする能力の限界を超えているようなこと。たとえば、企業内におけるマネジャーたちの相互コミュニケーション能力、企業文化、サプライヤーや顧客の間での自社の評判などである。

模倣コストが高くつくと評価されているものの中に、8.タイミングと10.評判が含まれているのが興味ぶかいです。「タイミング」は先行者有利の好例ですし、一方の「評判」は時間をかけて築くものです。大成功している企業を思い浮かべると、そのどちらも兼ね備えているように思えてきます。

2012年5月4日金曜日

競争優位性をさぐる例(ウォーレン・バフェット)

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いよいよ明日5/5(土)はウッドストック音楽祭ならぬ、バークシャー・ハサウェイの年次株主総会です。最近では、質疑応答の様子があっというまにトランスクリプトに起こされてインターネットに公開されるので、ありがたく読んでいます。とはいっても株主のはしくれとして、いつかはオマハ詣でをしたいと考えてはいるのですが、もたもたしていると時間切れになってしまうかもしれません。

今回は昨年の年次総会の質疑応答から、ウォーレンがMoat(経済的な堀、転じて長続きする競争優位性)を探るくだりについてご紹介します。ファンドマネージャーでもあるiluvbabyb女史が作成したトランスクリプトから引用させて頂きました。(日本語は拙訳)

デイヴィッド・ソコルがバフェットにルーブリゾールへ投資したらどうかと紹介したとき、バフェットは皆目見当もつかないビジネスだと答えた。[同社製品の]潤滑油添加剤のことは化学的な観点では理解できないだろうが、それは必須というほどではない。重要なのは業界における経済的な力関係を理解することだ。競争力の点でMoatがあるか。業界には容易に他社が参入できるのか。バフェットは、石油のことはチャーリーのほうがうまく判断できるから彼にきいてみる、とソコルに答えた。数日後にチャーリーと話したが、彼もそのビジネスのことはわかっていないと返事をした。

When David Sokol mentioned Lubrizol to Buffett as an investment idea, Buffett said it struck him as a business he didn't know anything about initially. He said he would never understand the chemistry of petroleum additives, but that's not necessarily vital. What is important is that he understands the economic dynamics of the industry. Is there a competitive moat? Is there ease of entry into the industry? Buffett suggested to Sokol that he contact Charlie with the idea since Charlie is a lot smarter about oil than Buffett felt he was. When Buffett talked to Charlie a few days later, Charlie said he didn’t understand the business either.

その後、ウォーレンはルーブリゾールの経営陣と話をして、「Moatがある」と判断しています。
「かれらは特許を山ほど保有していますが、それ以上なのが顧客と密な関係を保っている点です。たとえば顧客が新型のエンジンを開発しているときには共に働き、適切な添加剤を開発するのです。そのような話をしているうちに、化学のことはいっこうに理解が深まっていなかったのですが、ビジネスの経済的な側面については合点のいくところがありました。イスカル社の人と話をしたときと同じような感じです。そのときも、採掘したタングステンを精錬した原料から、炭化タングステンの小型超硬工具をつくって、といったことが競争優位として長続きするのではという話になりました。最終的にはもう少し調べた上で、イスカルは持続する競争優位を有しているだろうと判断しました」

They've got lots and lots of patents, but more than that they have a connection with customers. They work with customers when new engines come along to develop the right kind of additive. So I felt that I had an understanding --didn't understand one thing more about chemistry than when I started, but I felt I had an understanding of the economics of the business, the same way I felt when the Iscar people talked to me. I mean, who would think you can take some Tungsten out of the ground and shine it and put it in little carbide tools and that you could have some durable competitive advantage, but I decided Iscar had some durable competitive advantage after looking at it for a while.

2012年3月15日木曜日

最高のリターンをあげているビジネス(ウォーレン・バフェット)

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今回の話題は「最高のリターンを挙げているビジネス」です。早速ですが、ウォーレン・バフェットによる1987年度「株主のみなさんへ」から引用します。

私どもの経験では、最高のリターンを挙げているビジネスは、5年前10年前とよく似たことを今も続けている企業ばかりです。むろん、経営者がそれに甘んじてよいとは言っておりません。ビジネスには、サービス、製品群、製造技術などを改善する機会がいつでもあるので、それらは取り組むべきでしょう。ですが、度々大きな変化にさらされるビジネスは、大失敗をするリスクも大きくなります。その上、激しく動き続ける、いわば「経済的な」地域に、堅固鉄壁なフランチャイズを築くのは難しいときたものです。そのてのフランチャイズこそ、高いリターンをあげ続けるための鍵なのですが。

Experience, however, indicates that the best business returns are usually achieved by companies that are doing something quite similar today to what they were doing five or ten years ago. That is no argument for managerial complacency. Businesses always have opportunities to improve service, product lines, manufacturing techniques, and the like, and obviously these opportunities should be seized. But a business that constantly encounters major change also encounters many chances for major error. Furthermore, economic terrain that is forever shifting violently is ground on which it is difficult to build a fortress-like business franchise. Such a franchise is usually the key to sustained high returns.


ウォーレンの「5年前10年前云々」はトートロジー的に聞こえますが、別の言い方をすれば「製品やサービスの寿命が長い」ということだと思います。そこを足場に、何らかの強みをいかしてMoatを築く。ウォーレンやチャーリー・マンガーが好むビジネスの姿です。

そういえば、「製品寿命が長い」という戦略は、マニーの社長が強調していたのを思い出します(例えば第51期決算説明会資料のPDFファイルp.18)。同社の株価は最近の上昇相場には追いつけていませんが、間違いなく注目に値する企業のひとつです。

ウォーレンの文章でもうひとつ重要な点が、赤字で示した「度々大きな変化にさらされるビジネスは、大失敗をするリスクも大きくなる」。さりげなく確率論的な表現ですが、ウォーレンもチャーリーも数学好きですので、こういう思考は自然に浮かび上がるのでしょう。

2012年3月7日水曜日

「フランチャイズ」と「ビジネス」の違い(ウォーレン・バフェット)

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ウォーレン・バフェットとチャーリー・マンガーは、投資候補の企業がMoat(経済的な堀)を持っているかどうかを重要視しています。Moatとはあいまいな表現ですが、今回引用する言葉「フランチャイズ」は、もう少しかみくだいた例を示しています。ウォーレンによる1991年の「株主のみなさんへ」からの引用です。(日本語は拙訳)

経済的な「フランチャイズ」を有している製品やサービスには、次のような特徴があります。第一に、必需品あるいは嗜好品である。第二に、顧客にとって他に似たような代わりがない。第三に、価格統制の対象外である。その3つがそろった企業は、価格改定を定期的かつ大胆に実施できます。これは高い資本利益率へとつながります。その上、経営上の失敗があっても「フランチャイズ」にはそれに耐える力を持っています。無能な経営陣が「フランチャイズ」から得られる利益を減らすことはあっても、致命傷を負わせるほどにはなりません。

反対に、「ビジネス」から素晴らしい利益を挙げるには、低コストに徹するか、製品やサービスの供給がタイトな場合に限られます。供給がタイトな状況というのは長くは続きません。また優れた経営が行われている企業では、それよりは長い期間にわたって低コスト体質を維持できるかもしれません。ですが、競合企業との絶え間ない競争からは逃れられません。「ビジネス」が「フランチャイズ」と違うのは、経営が悪いと会社がおしまいになることがある点です。

An economic franchise arises from a product or service that: (1) is needed or desired; (2) is thought by its customers to have no close substitute and; (3) is not subject to price regulation. The existence of all three conditions will be demonstrated by a company's ability to regularly price its product or service aggressively and thereby to earn high rates of return on capital. Moreover, franchises can tolerate mis-management. Inept managers may diminish a franchise's profitability, but they cannot inflict mortal damage.

In contrast, "a business" earns exceptional profits only if it is the low-cost operator or if supply of its product or service is tight. Tightness in supply usually does not last long. With superior management, a company may maintain its status as a low- cost operator for a much longer time, but even then unceasingly faces the possibility of competitive attack. And a business, unlike a franchise, can be killed by poor management.


個人的には、この3つの基準でしぼりこむのは厳しいので、別の基準とあわせて使っています(過去記事「競争優位性とは」)。いずれにせよ、「顧客が離れにくい」とか「顧客が集まりやすい」点が決定的だと捉えています。

2012年2月3日金曜日

チャーリー・マンガーによる投資対象の評価手順

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ウォーレン・バフェットはバークシャー・ハサウェイの年次報告書を通じてビジネスや投資に関する示唆を行ってきましたが、一方のチャーリー・マンガーはそのような場を積極的には求めていません。本ブログでご紹介しているような講演が主な発言の場ですが、その内容も投資やビジネスには限定されず、より一般的で抽象度の高い、いわば「とっつきにくい」ものが多くみられます。今回ご紹介するのはチャーリー自身の企業分析のプロセスですが、実はこの文章は本人によるものではなく、引用元の「Poor Charlie's Almanack」の編者ピーター・カウフマン(Peter D. Kaufman)が著したものです。だからといって価値が低いかというと、そうではありません。ピーターは非公開の製造業のCEO及び会長を務めるかたわら、チャーリーが会長を務めるWesco Financialの取締役に2003年から就いています。同様に、チャーリーが会長を務めるデイリー・ジャーナルの取締役にもなっています。ですから、チャーリーとは親交が深く、彼の意思決定や思考プロセスになじんでいることは容易に想像されます。ですので、この文章はチャーリーのやりかた全てをあらわしたものではないでしょうが、目のつけどころを学ぶきっかけにはなるかと思います。(日本語は拙訳)

チャーリーは包括的に評価を行っていくが、データに盲従しているわけではない。対象企業及び業界について内外問わず、互いに関連する全ての観点を考慮にいれる。特定しにくいとか、測りにくいとか、数値化しにくくてもだ。しかし完璧にやるからといって、彼のエコシステム的な主題をおろそかにするわけではない。ときには、ある要因を最大化したり、最小化したり、(特筆すべきは、彼が好んで指摘するコストコの低価格倉庫店のような「特化」)、そういったことを行う。すると、その要因が大きく取り上げられ、重要なものとなる。

チャーリーは、財務諸表やその前提となる会計に対して、中西部人らしく懐疑的にみる。企業の本源的価値が計算しきれるものではなく、せいぜい初めの一歩になるものと捉えている。彼の調べる要因は他にも延々と続く。たとえば、今後の法規制の風向き具合、労働環境、供給者や顧客との関係、技術の進展による潜在的な影響、競争優位性や弱点、価格決定力、拡張性、環境問題。潜在的な脅威がないかは、特に注意している(もちろん、チャーリーはリスクのない投資候補などありえないことは承知しており、容易に理解できるリスクがほとんどない企業を探している)。彼は財務諸表上の数字を、自身の目にうつる現実にあてはめなおす。例えば、フリー・キャッシュ、在庫、運転資金、固定資産、のれんのような過大評価されがちな無形資産といったもの。またストック・オプション、年金給付、退職者向け健康保険給付が実のところどう響いてくるのか、将来をみすえて評価する。貸借対照表の負債についても同じように精査する。例えば、適切な環境下ではフロートを債務とみるのは適切でないとし、資産とみなす。フロートとは、[保険業界において]支払い請求がされるまでは何年間も払い戻す必要がない準備金のこと。さらに経営陣に関しては、よくやるような数字の解読以上に厳しく精査する。現金をどのように使ったのか、株主のために賢く使ったのか、それとも自分自身に過大な報酬を出したのか、あるいはエゴを満たすような、成長のための成長を追求したのか、という風にだ。

結局のところ、彼はあらゆる観点を考慮して競争優位性とそれがいつまで続くのかを評価し、理解しようとつとめる。観点には、製品、マーケット、商標、従業員、物流チャネル、社会的トレンドなどが含まれる。チャーリーは企業の競争優位性を「堀」とみる。侵入しようとするものに対して築かれている、目に見えない物理的な障壁だ。優れた企業は深い堀をもち、いつまでも守り抜けるように、それを広げ続けている。同じように、チャーリーは破滅的な競争に至る道も注意深く考慮する。長期的にみると、ほとんどの企業が囚われてしまうからだ。マンガーとバフェットはこの問題を注視する。ときには痛い目にあいながらも、長期にわたるビジネス上の経験で彼らは学んできたのは、何世代にもわたって生き延びるビジネスはほとんどないということだ。そういうわけで、その厳しい選別をくぐりぬけられそうなビジネスをみわけ、それだけを買うように力を注いでいる。

Throughout his exhaustive evaluation, Charlie is no slave to a database: He takes into account all relevant aspects, both internal and external to the company and its industry, even if they are difficult to identify, measure, or reduce to numbers. His thoroughness, however, does not cause him to forget his overall “ecosystem” theme: Sometimes the maximization or minimization of a single factor (notably specialization, as he likes to point out regarding Costco's discount warehouses) can make that single factor disproportionately important.

Charlie treats financial reports and their underlying accounting with a Midwestern dose of skepticism. At best, they are merely the beginning of a proper calculation of intrinsic valuation, not the end. The list of additional factors he examines is seemingly endless and includes such things as the current and prospective regulatory climate; state of labor, supplier, and customer relations; potential impact of changes in technology; competitive strengths and vulnerabilities; pricing power; scalability; environmental issues; and, notably, the presence of hidden exposures (Charlie knows that there is no such thing as a riskless investment candidate; he's searching for those with few risks that are easily understandable). He recasts all financial statement figures to fit his own view of reality, including the actual free or “owners” cash being produced, inventory and other working capital assets, fixed assets, and such frequently overstated intangible assets as goodwill. He also completes an assessment of the true impact, current and future, of the cost of stock options, pension plans, and retiree medical benefits. He applies equal scrutiny to the liability side of the balance sheet. For example, under the right circumstances, he might view an obligation such as insurance float ? premium income that may not be paid out in claims for many years ? more properly as an asset. He especially assesses a company's management well beyond conventional number crunching ? in particular, the degree to which they are “able, trustworthy, and owner-oriented.” For example, how do they deploy cash? Do they allocate it intelligently on behalf of the owners, or do they overcompensate themselves, or pursue ego-oriented growth for growth's sake?

Above all, he attempts to assess and understand competitive advantage in every respect ? products, markets, trademarks, employees, distribution channels, societal trends, and so on ? and the durability of that advantage. Charlie refers to a company's competitive advantage as its “moat”: the virtual physical barrier it presents against incursions. Superior companies have deep moats that are continuously widened to provide enduring protection. In this vein, Charlie carefully considers “competitive destruction” forces that, over the long term, lay siege to most companies. Munger and Buffett are laser-focused on this issue: Over their long business careers they have learned, sometimes painfully, that few businesses survive over multiple generations. Accordingly, they strive to identify and buy only those businesses with a good chance of beating these tough odds.


2012年1月6日金曜日

TOPIX Core30ひとかじり(1)ファナック

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市場で適切に評価されていない銘柄を探して投資対象としているので、有名だったり大きな日本企業はあえて避けていました。ですから、それらの企業については表面的な知識しか持っておらず、分析はほとんどしていません。しかし、思うところがあり、日本を代表する企業も少しずつ勉強したいと考えるようになりました。まずは浅く事実を知る程度ですが、TOPIX Core30から順に触れていくつもりです。

TOPIX Core30とは東証TOPIXのサブインデックスで、東証市場第一部に上場する内国普通株式のうち、時価総額、流動性の特に高い30銘柄が含まれています。現時点の構成銘柄はここに一覧されています。アメリカのDow Jones Industrial Average(DJIA)と雰囲気が少し似ていますね。

世間でも注目されている会社ばかりですので、屋上屋を架して各社を説明する必要はないかと思います。印象に残った点を記述していきます。

今回取り上げるのは、その中でもROAが最高水準の企業、ファナックです。当社のことは以前に一度だけ簡単に調べたことがありますが、今回は有価証券報告書に一通り目を通しました。優良企業は何かしらの特徴が目につくものですが、当社も独特な強い匂いがします。以下、感じた点を3点ほど。

1.自己株式取得の判断がよい
もともと自己株式を13%保有していましたが、2009年8月の取締役会で追加取得を決議しています。890億円で1,200万株(約5%分)取得ですので、1株平均7,500円程度で買っています。底値では買っていませんが、業績が悪かった年度(当期純利益375億円)に決断したのは見事です。

2.一味違うリスク認識
「事業等のリスク」で自然災害を挙げることが多いものですが、当社は富士山噴火を明記しています。富士山周辺に本社を抱える大企業は少ないと思いますが、小さな確率でも壊滅的な影響を及ぼすリスクです。最悪時の対応は検討済かもしれません。

3.現時点での割安度は?
(現預金+売掛金+有価証券)から負債合計をひいた残額は、1株あたり3,000円弱。それを考慮すると、現在のPERはそこそこ妥当に見えます。2009年のような自社株買いができる企業であれば、内部留保の使い方に安心感を覚えます。もっと分析を行って、Moatが長続きするか検討する価値のある企業だと感じました。

蛇足ですが、当社の有価証券報告書の「役員の状況」も一味違います。NTTや三菱UFJでもしていない略歴の書き方です。

2011年12月20日火曜日

液晶パネル企業とガラス企業の例(赤門マネジメント・レビュー)

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ガラスメーカーに関する情報を集めていたところ、参考になる文章がありましたのでご紹介します。2008年に発表されたものなので現状とは違うかもしれませんが、組立系メーカーの部材購買政策の一例として参考になるかと思います。赤門マネジメント・レビューに掲載されている「ものづくりアジア紀行第二十一回 韓国液晶産業における製造技術戦略」(新宅純二郎)から引用します。

部材の供給をサードパーティのサプライヤーに依存する企業にとって、特定の部材産業が寡占的であると、価格交渉力で不利になり、利益確保が困難になる。液晶パネルの製造コストでは、購入する部材コストが高く、大型パネルでは製造コストの6割程度が部材費であると言われている。今回調査した企業のひとつは、液晶用の薄型ガラス基板がパネル製造コストの3割程度に及ぶと指摘していた。ガラス基板、液晶材料、偏光板などの主要部材では上位数社への集中度が高い。

とりわけ、ガラス基板は、集中度が高くて価格も高い上に、供給量が限られていた。ガラスの製造は設備集約的な工程であり、設備投資によって供給能力が制約される。韓国の企業が第5世代に投資するにあたっては、ガラス・メーカーが第5世代向けの設備投資と大型化を実現する開発投資をしなければ、パネルは製造できない。

また、初期のTFT 液晶パネル製造工程では、同一メーカーの同じガラス基板を使用しないと、パネル製造の歩留まりをあげることができなかったという。その理由のひとつは、パネル製造工程での熱収縮の問題があったからである。パネル製造では、上側のガラスにカラーフィルターを、下側のガラスにTFT を形成し、その2枚のガラスで液晶材料を挟み込む。その際、熱を加える工程があり、ガラスが若干収縮する。上下のガラスの収縮率に微妙な違いがあると、カラーフィルターの画素セルとTFT のセルとがずれてしまい、適切に表示できなくなる。そこで、熱収縮率が同じガラスを使っていた。しかし、そのような状況だと、特定のパネル工場は、特定のガラス・メーカーの供給に依存することになる。

そこで、韓国の液晶パネル企業は、第4世代の頃から、特定のガラスに依存しない工程開発を進め、第5世代以降では複数のガラス・メーカーのガラスを混在して使えるようになったという。ガラスとパネル工程の依存性の問題は、現在でも完全には解決していないそうだが、ほぼ9割方は解決したとの評価であった。三星コーニング精密というグループ企業を抱えている三星電子でさえ、三星コーニング精密以外からも購入している。三星電子では、基本的には二社購買の政策をとっており、同じスペックのものを2社から調達することで部材メーカーのコスト競争による調達コスト削減を狙っている。偏光板も、同じスペックで2社から購入している。ただし、化学品は配合が微妙に異なると特性に影響を与えるので、2社購買が難しい。液晶材料がその典型で、液晶材料の微妙な差が偏光板やカラーフィルター、バックライトの仕様に影響を与える。(p.65)


と、赤色をつけた箇所がガラスメーカーに関する話題なのですが、それよりも気になる記述がありました。

ただし、化学品は配合が微妙に異なると特性に影響を与えるので、2社購買が難しい。液晶材料がその典型で、液晶材料の微妙な差が偏光板やカラーフィルター、バックライトの仕様に影響を与える。


やはりアナログ感覚に訴える混ぜ物系は、差別化につながりやすいようですね。コカ・コーラのレシピと似ていますね。

余談ですが、この赤門マネジメント・レビューの編集委員として、生産管理分野で著名な藤本隆弘教授が参画していました。同氏の研究は、ものづくり経営研究センターのWebサイトで読めます。こちらも参考になります。

2011年11月28日月曜日

長続きする競争優位性を見極める

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チャーリー・マンガーが会長を務めていたWescoはバークシャーに100%買収され、非公開企業となりました。Wescoの株主がマンガー「会長」と対話できる最後の会合が7月に開催されました。そのメモがScribdにアップロードされているので、その中から引用します。

(質問24)長続きする競争優位性を見極めるには、何を最重要視しますか。

(マンガー)ウォーレンも私も、コア・コンピタンシーのある産業や企業しか注目しませんね。みなさんもそうしたほうがよいですよ。時間も才能も限りがあるわけですから、上手に使うべきです。

Q24: When assessing durable competitive advantages, what does he consider the most?

Munger: He and Warren only look at industries and companies that they have a core competency in.Every person has to do the same thing. You have a limited amount of time and talent and you have toallocate it smartly.

そういえば、ウォーレン・バフェットがチャーリーから学んだ知恵として、次の発言を繰り返しています。

すばらしい企業にそこそこの値段がついているほうが、そこそこの企業にすばらしい値段がついているよりも良い。

A great business at a fair price is superior to a fair business at a great price.

2011年10月15日土曜日

投資先企業を見極める基準「競争優位性」とは

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前回取り上げたバフェットの評価基準「長期的に見た場合に、ビジネスの特性がどうなっていくのか」とは、一面では「競争優位性がいつまで続くのか」と捉えることもできます。バフェットは競争優位性のことをMoat(経済的な堀)とも呼んでいますが、彼とマンガーは、企業へ投資する際にMoatを最重要視しているようにみえます。

このあいまいな言葉Moatとは具体的に何を指すのか、を記した本があります。『千年投資の公理』です。わざと売れないようにしたのかと思える日本語の題名ですが、原題は簡明で「The Little Book That Builds Wealth」です。米モーニングスターのリサーチ部門責任者だった著者パット・ドーシーは、Moatの例として次の4つを挙げています。

1.無形資産
例えば、ブランド、特許、行政の認可など。

2.顧客の乗り換えコスト
顧客にとって手放しがたいこと。

3.ネットワーク効果
利用する人の数が増えることで物やサービスの価値が上がること。

4.コストの優位性
生産過程や場所、規模、独自のアクセスなどによって製品やサービスをライバルよりも安い価格で提供できること。

一方、以下は「誤解されている堀」として、要注意としています。

1.すばらしい製品
他社によって容易にコピーされないか。

2.大きなマーケットシェア
容易にマーケットシェアを奪われないか。

3.ムダのない業務執行
簡単にまねのできない独自の過程に基づくものでなければ、継続的な優位性にはならない。

4.優れた経営陣
天まで昇る人気を誇ったあと、地に落ちた経営者がどれほどいたか。

余談ですが、本書の裏表紙の推薦文にGEICOのルー・シンプソンが含まれています。これだけでも、本書の価値を裏付けてくれます。GEICOはバークシャー・ハサウェイの中核的な保険会社です。最近になって引退しましたが、ルーは長い間GEICOの株式運用に携わり、見事な成績を挙げてきました。ウォーレンも株主への手紙(2006年度PDFファイル16ページ目)で激賞しています。