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2024年9月11日水曜日

戦略とはなにか(『良い戦略、悪い戦略』より)

『良い戦略、悪い戦略』(2012年初版)という本を読みました。本書は、事業における「戦略」という概念に興味をもっている人に、強くおすすめしたい一冊です。つまり、実際に戦略を立てて指揮をする人だけでなく、そのような人物あるいは戦略を実行する組織を評価する人(たとえば株式投資家)も得るものが多い著作だと思います。


本書を通読する前には、そもそも「戦略」という言葉の本来的な意味を把握できていないと自覚していました。わかったようでいてわかっていない、漠然とした状態でした。たとえば組織の最上位だけでなく、それを構成するさまざまな階層や機能単位において「戦略」という言葉が用いられていることは認識しているものの、それが適切なのか判然としないまま、通り過ごしてきました。そして、その疑問を積極的に解消しようと行動することもありませんでした。


ところが最近になって『戦略の要諦』という本(同じ著者による新刊)が評判になっている記事を目にしました。装丁に目をやると「ミッション、パーパスは無意味である」という一文。これは奮った文句だと感じました。というのも最近の企業経営の説明において、ミッションやパーパスといった言葉をぽつぽつとみかけるようになってきたからです。ただし、その内容は個人的にはなかなか心に響いてこず、もてあましていたところでした。それを「無意味」と一刀両断してくれる著者ならば、戦略について明快に説明してくれるかもしれない。そう考えたことで心機一転でき、さらには同書の前に発表された著作があることを知り、急がば回れで本書を手に取ることにしました。


本書のなかから今回引用するのは、戦略という言葉を端的に説明した最重要な文章です。


戦略を野心やリーダーシップの表現とはきちがえたり、戦略とビジョンやプランニングを同一視したりする人が多いが、どれも正しくない。戦略策定の肝は、つねに同じである。直面する状況の中から死活的に重要な要素を見つける。そして、企業であればそこに経営資源、すなわちヒト、モノ、カネそして行動を集中させる方法を考えることである。(p.4)

たとえば産業界では、大半の買収や合併、高価な新しい施設・設備への投資、重要なサプライヤーやクライアントとの交渉、大きな組織の設計などはすべて「戦略的」とされる。だが戦略で重要なのは、意思決定を下す人の地位ではない。戦略とは、組織の存亡に関わるような重大な課題や困難に対して立てられるものであり、それらと無関係に立てられた目標とは異なる。戦略とは、そうした重大な課題に取り組むための分析や構想や行動指針の集合体と考えればよい。(p.10)

もうひとつ、おまけの文章です。


がんばることは人生において大事ではあるが、「最後のひとふんばり」をひたすら要求するだけのリーダーは能がない。リーダーの仕事は、効果的にがんばれるような状況を作り出すことであり、努力する価値のある戦略を立てることである。(p.71)

(次回につづきます)

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