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2024年9月17日火曜日

持続可能な競争優位性(『良い戦略、悪い戦略』より)

本書の話題をつづけるのは理由があって、このサイトで取り上げている各種の主題と親和性が高いと感じているからです。例によって、これは好ましい情報です。見識ある別々の人物が同じ方向を向いた主張をする場合、それらが重要である確率はより高く見積もれるからです。


今回引用する文章は、ウォーレン・バフェットもしばしばとりあげる「持続可能な競争優位」についてです。これは本書の著者が戦略として取り組むべき要素の一つとしてあげているだけでなく、投資家が企業価値を評価する上でも重要性の高い概念です。以下の引用部では、その概念をかたちづくる基本原理を簡潔に述べて、アップルの実例を一連の文章で説明しています。また、それとは別に第12章では、競争優位に関する話題を興味深く展開しています。


ウォーレン・バフェットも「持続可能な競争優位」を基準に企業を評価すると述べている。 競争優位の基本的な定義はきわめて明快である。競争相手より低いコストで生産できるとき、競争相手より高い価値を提供できるとき、あるいはその両方ができるとき、競争優位があると言う。ただし、コストは製品や用途によってちがってくるし、顧客も所在地、知識、好みなどがまちまちである。その点に気づくと、競争優位の定義は明快とは言えなくなってくる。(中略)


加えて、「持続可能」という言葉がじつに微妙である。優位性が持続可能であるためには、競争相手に容易にまねされないこと(模倣困難性)が条件になる。より正確に言えば、優位性を生み出すリソースをまねされないことが重要だ。そのためには、いわゆる「隔離メカニズム」を持つことが必要になる。たとえば、一定期間の独占を可能にする特許は、その最もわかりやすい例である。より複雑な隔離メカニズムとしては、評判、取引関係や人脈、ネットワーク効果、規模の経済、暗黙知や熟練技能などが挙げられる。


たとえばアップルのiPhone事業は、ブランド力、評判、iTunesの補完的なサービス、専用アプリなどによるネットワーク効果によって守られている。どれも経営陣が巧みに形成してきたものであり、持続可能な競争優位を確立するプログラムに組み込まれている。競争相手にとっては対抗しうるリソースを妥当なコストで得るのがむずかしいという点で、これらのリソースは稀少資源と言えよう。(p.219)


(参考記事) 投資先企業を見極める基準「競争優位性」とは


(つづきます)

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