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2020年6月12日金曜日

醜悪なPL、素敵なBS。しかし、その正体は(マイケル・モーブッシン)

本ブログで何度か取り上げたマイケル・モーブッシン氏が職場を移り、今度はモルガン・スタンレーの一員になっていました。彼がTwitterで紹介していたペーパー(あるいはエッセイ)を読んで、はじめて気がつきました。

それはともかく、その最新エッセイから興味をひいた部分をご紹介します。損益計算書と貸借対照表の読みかたに関わる話題です。(日本語は拙訳)

The Math of Value and Growth [PDF] (Morgan Stanley)

[競争優位性からくる]影響度や投資収益率を理解することは大切だ。[事業上の]投資は伝統的に、貸借対照表に現れる有形資産の形をとっていた。その一例として、運転資本や設備投資の増加があげられる。しかしこの何十年間のうちに、投資の形態は無形資産へと変化した。そのような投資は損益計算書で支出として扱われ、貸借対照表上には概して出現しない(他社を買収する場合を除く)。

これは重要なことである。著しい資金を無形資産へ投下して、その投資から高いリターンをあげる企業は、利益が貧弱だったり、さらには赤字を出す例もよくあるからだ。投資家としては、その種の企業にできるだけたくさん投資したいだろう。「悪く見える損益計算書」の一方で「良好に見える貸借対照表」であり、その正体は「抜群の価値創造」を果たしていると思われる企業を。

これとは対照的に過去の世代においては、有形資産へ投資した結果が貸借対照表上に計上されていた。そのため当時は「良好に見える損益計算書」だが「悪く見える貸借対照表」だった。

別の言いかたをすると、2つの企業が同水準の投資をして同水準の投資収益をあげたとき、会計士が投資分をどこに仕分けするかによって、大きく異なった財務諸表がでてくることがある。我々が注視するフリー・キャッシュ・フローの金額は同じかもしれない。しかし、そこに至るまでには別の道のりを歩むわけだ。

Understanding the magnitude and return on investments is crucial. Investments have traditionally been in the form of tangible assets that show up on the balance sheet. Examples include increases in working capital or capital expenditures. But in recent decades investments have shifted in form to intangible assets, which are expensed on the income statement and are typically absent on the balance sheet (except for when one company acquires another).3

This is important because companies that invest heavily in intangible assets and have high returns on those investments often produce poor profits, or may even lose money. As an investor, you want that kind of company to invest as much as it can. The income statement looks bad, the balance sheet looks better, and the value creation looks great.

Contrast this to generations past when tangible investments were captured on the balance sheet. In those days, the income statement looked good but the balance sheet looked bad.

Saying this differently, two companies can have the same level of investment and return on investment but very different financial statements based on where accountants record investments. Free cash flow, the number we care about, may be the same but the path to get there is different.

この件は、わたし自身もときおり考えていました。たとえば、機械設備等の固定資産に資本投下する場合と、開発に携わる要員に人件費を払う場合を対比させて、その優劣を想像してみることがありました。また「悪く見える損益計算書」の点では、ウォーレン・バフェットが何度か触れていた「のれん償却費」を適宜調べるようにしています。 参考記事の一例を以下にあげておきます。

2013年度バフェットからの手紙 - 無形資産の償却費について

また企業会計の限界についてチャーリー・マンガーが触れた文章は、以下の過去記事で取り上げています。

これは最低だな(チャーリー・マンガー)

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