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2020年5月25日月曜日

自分がわかっていないことをわかっていない人たち(ハワード・マークス)

ハワード・マークスのメモをもう少し取り上げます。今回のメモにおける2つ目のテーマとして、ハワードは「知的な意味での謙虚さ」がいかに重要であるかを説いています。自分が正しくない可能性を確率的に意識することで、自分の正しさを現実的な視点でとらえることができるとしています。一方、「謙虚さ」の逆に位置するのが「自信過剰」です。自信を持つことは大切ながらも、その強さは裏付けの程度にもとづくべきで、そうでない自信すなわち過信にいたるのは危険だとしています。過信はバイアスを生み、バイアスはあやまちにつながるからです。

今回ご紹介する文章は、別の人が「過信」について書いていた文章から、ハワードが引用してきた部分です。引用元の筆者は、実践哲学や行動経済学の専門家エリック・アングナー氏(Erik Angner)です。アカデミック寄りの文章だからか、直截的で辛辣とも受けとれる言葉がならんでいます。なお、前回分の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)

おのれの抱く自信を較正するのは、難儀なことかもしれない。ジャスティン・クルーガーとデイヴィッド・ダニングがかつて強調していたように、我々が備えている認知上の能力とメタ認知上の能力は、互いに関連している。ある作業を遂行する際に必要な認知上の能力を備えていない者は概して、自分があげた成果を評価する上で必要とされるメタ認知上の能力にも欠けている。それゆえに無能な人は、二重の不利をこうむっている。それは、能力が不足しているのみならず、おそらくそのことを認識できていないからだ(ガルブレイスの記した未来予測者がそうだ。「自分がわかっていないことをわかっていない人たち」[ハワードによる注釈。過去記事あり])。すなわちここでは早々に、素人疫学者たちのことをほのめかしている。高度な疫学的モデリングを構築するに足る各種能力を自身が有していないとすれば、「ガラクタを基にして優れたモデルを語ることはできない」と心に留めるべきなのだ。

Calibrating your confidence can be tricky. As Justin Kruger and David Dunning have emphasized, our cognitive and metacognitive skills are intertwined. People who lack the cognitive skills required to perform a task typically also lack the metacognitive skills required to assess their performance. Incompetent people are at a double disadvantage, since they are not only incompetent but also likely unaware of it [Galbraith’s forecasters “who don’t know they don’t know”!]. This has immediate implications for amateur epidemiologists. If you don’t have the skill set required to do advanced epidemiological modeling yourself, you should assume that you can’t tell good models from bad.

備考です。エリック・アングナー氏による原文は、以下のサイトで公開されています。

Epistemic Humility—Knowing Your Limits in a Pandemic (Behavioral Scientist)

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