ot

2013年3月28日木曜日

ピーターの法則(チャーリー・マンガー)

チャーリー・マンガーによるハーヴァード・ウェストレイク高校での講話、その8です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

概して、ゲームに参加しているのは大部分が男性というのが興味深い点です。すっかり熱をあげて損失のほとんどを被っているのは男性です。ウォール街に行ってトレーディング・ルームをみてください。電話に向かってどなっていたり、ストリップ・クラブに繰り出している女性はあまりいませんね。大量のテストステロン[男性ホルモンの一種]のおかげで、現在の我々は災厄に陥っています。昇進して偉くなっているのは、当然のことながら運動部の大会で好成績だったり、チームのキャプテンだった人です。みなさんは資産運用の業界で働いている人が多いでしょうから、どんな事情かはご存じでしょう。みんなから望まれる人というのは、他の人がそろって信頼を寄せ、だれからも好かれ、負けしらずで、物事をやり抜くことができる人、さきほど触れたようなチームのキャプテンになる人です。レイサム・アンド・ワトキンスという法律事務所ではそういう人だけを雇い、若干の例外を除けば他の人は相手にしませんでした。自分たちが何を求めているか自覚していたので、まあ彼らにとってはうまくいきました。しかし資産運用の仕事という観点では、この手の人はまったくもって不適切な性格のタイプです。営業部門ならいいかもしれませんが、運用部門には入れたくないものです。投資について意思決定をする上で役に立ってくれるのは、ここにお座りの方のようにちょっと変わった独特な人たちのほうです。これも人の世におけるもうひとつの問題ですね。「ピーターの法則」を見つけた人は正しかったのです。組織の階層を昇進していく様子をみると、高すぎる階層を占めている人はよくいますし、巨大なエゴやらを一式かかえた人がまるで検討されないまま地位につき、権力を手にしていることもしょっちゅうです。この真剣な問題に対して、いったい何ができるでしょうか。この問題はウォール街には関係ないと思う人は、主だった投資銀行のトップの人となりをみるとよいでしょう。スタン・オニールとかなんとかいう人がメリルリンチにいましたが、あれは風刺画ですね。

アンソニー・トロロープ[19世紀のイギリス人作家]がそのような人物を創造していたとしたら、こう言われたことでしょう。「極端すぎて、そういう人とはうまくやっていけっこない」。ばかばかしいと感じられるかもしれませんが、うまい皮肉とはみてもらえないと思います。このことは、いやというほど何度も繰り返されてきたことです。今こうして大きな面倒をかかえていることを不思議に感じるかもしれません。しかし非常に強力な力が解放され、つまり「無秩序」という名の極めて強大な力が広がるのを許されたことで、現在のひどい状況がもたらされたのです。資本主義や証券市場は常に周期的に変動するものと考えていたものの、そのような人たちを華々しく持ち上げ、また極端なまでに融資規制を緩和したことでひどく悪化した結果を招いてしまいました。

By and large, and it’s interesting to think about, it’s mostly a male game. The nuts who did most of this damage are male. You go into a trading room on Wall Street and you won’t find many women barking into the phones and going to the strip clubs. There is a lot of testosterone in our present troubles, and of course, the people that get promoted logically are sort of like the people that win our athletic contests and get to be captain of the teams. Many of you were in investment management and you know how it works. Everybody wants the guy that everybody else trusts, who can’t stand to lose, that everybody likes, and tends to get things done -- and I just described the captain of the team and so forth. There is a law firm in town, Latham and Watkins, that galloped past everyone else and that is all they would hire with some exceptions. They knew what they wanted and, boy, did it work for them. Of course, if you are in investment management, it’s exactly the wrong personality type. Maybe you want them in the sales department, but you don’t want them managing the money. It’s the cranky peculiar people like those sitting here who will better serve you in making these decisions. That is another problem with life. [The] guy who invented the Peter Principle is right: You know we all get promoted in hierarchies and, of course, half the time some guy gets one category too high and of course half the time you have someone who is utterly unqualified for this spot he is sitting in and yet he has the power. He’s got a big ego and everything else. What do you do about this? This is a serious problem. If you don’t think this is a problem with Wall Street, look at the personality profiles of the people that headed our main investment banks. They were caricatures. Stan O’Neal or whatever his name was at Merrill --

If [Anthony] Trollope invented a character like this, you would say, ‘It’s too extreme. I can’t get by with this one.’ It would be regarded as foolish, not as effective satire. That just happened again and again and again. And you are surprised we have this big mess on our hands. Some very powerful forces have been unleashed here. Some very powerful forces of unreason have been allowed to flourish. Of course we get a big mess. We always were going to have cyclical fluctuations in capitalism. We always [were] going to have cyclical fluctuations in securities markets. But to have them magnified so greatly, and to have such exacerbation of the result by this extremely liberal use of credit -


文中に出てくる「ピーターの法則」は、以下の本で詳しく書かれているようです。わたしは未読ですが、amazon.co.jpの書評をみると、どうやら楽しめる作品のようですね。

ピーターの法則 創造的無能のすすめ (著者:ローレンス・J・ピーター)

2 件のコメント:

ブロンコ さんのコメント...

== ピーターの法則 ==
ピーターの法則を知り、私は仕事で上を目指すのはやめようと思いました。
能力の限界まで出世してそこで無能になるくらいなら下っ端でも有能な方がよいと考えたわけです。
ピーターの法則と聞くと必ず思い出すのがリンチの法則です。
「ピーター・リンチが出世をすると株価が暴落する」ってやつです。
バフェットといいマンガーといい、優れた投資家は投資の才能だけでなくユーモアの才能も抜群ですね。
私もよく多才であると言われます・・・ただし私の場合は、汗クサイとかファッションがダサイの多サイですがね。

betseldom さんのコメント...

== ブロンコさん、ありがとうございます ==
ブロンコさん、おひさしぶりです。コメントをありがとうございます。
ブロンコさんのような方から実生活を踏まえたご意見を頂けるのは、今回のコメントに限りませんが、参考になるものが多く、ありがたく思っております。
著名な投資家たちの、ユーモアの才も含めた人のひきつけ方は、生来の独自な気質を基盤にした上で人生の中で磨かれたものかと想像しています。単なる錯覚なのかもしれませんが、クリーンな大投資家の腕とユーモアには因果関係を見出してしまいそうです。
ブロンコさんの多読ぶりには刺激を受けております。またよろしくお願いします。
それでは失礼致します。