<質問者> ネブラスカ州株式ファンドへ投資したのは1回限りのものですか。
<バフェット> ちがいます。そのファンドは1年ぐらい前に州知事か彼の関係する団体が設立したもので、この州の低所得者向け住宅を供給するための出資です。その種のファンドは国中にあり、わたしどもはそういった全国レベルのファンドに拠出してきました。それでネブラスカ州ファンドにも投資してくれないか、と州知事から依頼があったのです。そうですね、いずれ投資しましょうと答えました。そういった投資にはもっと広くから参加してほしいと思います。というのは、社会に貢献するだけでなく、完璧に合理的な投資だからです。その投資によって、われわれの出資分にはどんな犠牲も生じません。これはバークシャー・ハサウェイにとって経済的に理にかなったものです。この州の企業ならば、ぜひ参加してほしいと思います。ですから、この投資は一度きりのものではありません。
<質問者> 私のような若い起業家が開業用の資金を手に入れるにはどうしたらよいでしょうか。
<バフェット> 開業資金がほしいのですか。なかなかむずかしい質問ですね。複利とは坂をころがす雪玉のようなものです。小さな雪玉で始めても、かなり長い坂をころがせば(最初に株を買ったときからなので、わたしの坂は53年分になります)、そして雪の湿り気がうまい具合であれば、最後にはかなりの雪玉に育ちます。でも、こう質問されるかもしれません。「そのてっぺんで、小さな雪玉はどうやって手に入れたのか」と。収入を全部使わずにいくらか残すことしか、わたしの口からは申し上げられません。まあ、遺産をもらえる幸運な人なら別ですが。
ご存知と思いますが、わたしの場合は投資が好きだったので、6歳の時から貯金をしはじめました。学校を出るころにはそれが1万ドルになりました。もちろんですが、お金がたまりやすいのは家族を持つ前です。資金入手を果たす方法として常々感じていたのですが、すでに本業があり、また自分のニーズに合うのであれば(わたしの場合は新聞を配達することでした。1日のうちの数時間を要する仕事としては最高のものでした)、もうひとつ別の仕事をやるという手があります。その稼ぎを全部貯金するのです。タネ銭があって先んじられるのは、人生において非常に重要なことです。有利な場所でタマを込めた鉄砲をかまえていられるのは、すごくいいですよ。資金はほんとうにわずかな金額かもしれません。1万ドルというのはそれほど大金ではなく、たぶん現在の価値で10万ドルぐらいだと思います。ですが、その資金がわたしの強みになりました。それがなかったら、その後のことは果たせなかったと思います。資金をつくるには、収入以下で生活するしかありません。まだ若いときのほうが簡単にできます。特に家族ができる前はそうです。(PDFファイル12ページ目)
Q. Was your investment with the Equity Fund of Nebraska a one time offering?
A. No. About a year or so ago, the Governor, or a group connected with the Governor, organized a fund to sponsor low income, affordable housing in the State. These funds have existed around the country and we had participated in those national funds; so he asked if we would participate in the Nebraska fund. We said yes, and we will participate in the future. I hope that the participation becomes broad, because it not only has a good social purpose, but it's a perfectly intelligent investment. So, it is not like there is any sacrifice on our part in doing this. This is something that makes economic sense for Berkshire Hathaway. And, I would hope that other businesses around the State would join in. It's not a one-time thing.
Q. How would a young entrepreneur, like myself, get start-up cash for my business?
A. Get start-up capital? Well, that's a tough question because compound interest is a little bit like rolling a snowball down a hill. You can start with a small snowball and if it rolls down a long enough hill (and my hill's now 53 years long - that's when I bought my first stock), and the snow is mildly sticky, you'll have a real snowball at the end. And then, somebody says, "How do you get the small snowball at the top of the hill?" I don't know any way to do it except spending less than you earn and saving some money, unless you are lucky enough to inherit some.
In my own case, you know that I was always interested in investing, so I started saving when I was about six and by the time I got out of school, I had about $10,000. It is much easier to save money, obviously, before you have a family than after you have a family. I've always felt that one way to do it, if you've got a job and it's meeting your needs (in my own case, I delivered papers and that's an ideal job for a couple hours a day), is to take a second job and save all the money from that. Getting the initial stake, being ahead of the game, is enormously important in life. It is so much better to be working from a position of strength and have a loaded gun. That may be a fairly small amount of money. Ten thousand dollars doesn't sound so big, although it was probably the equivalent of close to $100,000 now. That was my edge. If I hadn't had that, I wouldn't have had anything to work with subsequently. There isn't really any way to get capital except to spend less than you earn. That's easier when you are very young than at any other time-certainly before you have a family.
2013年11月12日火曜日
53年分の坂道(ウォーレン・バフェット)
ウォーレン・バフェットが1994年にネブラスカ大学でおこなった講演その11です。今回は2件の質問に答えています。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)
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2 件のコメント:
== 単純明快ですよね ==
収入の範囲内で生活して余ったお金を投資する。
豊かになるための単純明快な方法ですよね。
単純なことだからこそ、優劣がはっきりでるように思います。
喋ることは誰にでもできますが、芸人さんのように分かりやすく面白く喋ることは誰にでもできることではありません。
将棋を指すことは誰にでもできますが、プロ棋士のように指すことはできません。
誰にでもできることを、誰よりも上手にやる。これが大事なような気がします。
== 誰にでもできることについて(遠藤さんへ) ==
遠藤たつやさん、こんにちは。興味深いコメントをありがとうございました。
「誰にでもできることを、誰よりも上手にやる」とのことですが、この表現にはウォーレン・バフェットやチャーリー・マンガーといった先人の説く言葉と近いものを感じます。
ウォーレンやチャーリー的な表現をすれば、投資の極意とは「すばらしい会社だけを見いだし」、「高値ではなく、安値のときに投資し」、「内外の状況が大きく変わらない限り、株を売らずに保有しつづける」といった単純な要点からなる単純な文章にまとめられます。そして、これを実践するには「IQよりも気質のほうが大切だ」としています。
投資家に要求される気質すなわち精神的能力には、たとえば次のようなものがあると思います。
・先人の叡智に学ぶこと。
・自分を批判的、客観的にみつめられ、その上で自分の判断を合理的に築けること。
・他人が浮かれている横で、いつまでも絶好機を待ちつづけられること。
・ここぞというときに行動できること。
・自分が正しい確率が高ければ、一時的な損失にたじろがないこと。
・自分の失敗を認め、そこから学べること。また他人の失敗から学べること。
・失敗してもあきらめないこと。
しかし、このような気質をことごとく備えている人は、ある種の「精神的超人」と言えるかと思います。肉体的な面で考えると、個人の身体能力には限界があるため、だれでも超人級になれるわけではありません。それと同じように、だれもが精神的な超人になれるわけではない、と個人的には考えています。ですから「誰にでもできることを、誰よりも上手にやる」のは、相当な能力を備えて体現している人物をさすものと感じました。
いつもお読みくださってありがとうございます。またよろしくお願いします。
それでは失礼致します。
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