ot

2012年1月18日水曜日

雑音には耳を貸さず、何が起きているかをみきわめる(ブランデス)

0 件のコメント:
ブランデス(Brandes Investment Partners)はアメリカの著名なファンドで、運用資産は2.5兆円(=329億ドル)にのぼります。日本株にも積極的に投資しています。そういえば、小野薬品工業の大株主になっていたのを覚えています。EDINETをみると、少し前に同社の持ち株比率を5%未満に下げていたようですね。

今回は日本株に対する彼らの見解(How have Brandes' Japan holdings performed since the earthquake and tsunami in March 2011?)をご紹介します。あっという間に終わる1分半の映像ですが、強気の姿勢です。

・地震と津波は日本にとって確かに大きな出来事でしたが、長期投資家としては雑音には耳を貸さず、何が起きているかをみきわめる必要があります。企業によって、それぞれ事情は異なっているからです。

・今回の地震と津波以後、日本の企業は以前よりも環境の変化に強くなっています。また、この2年間で日本企業の株価は世界中で最も割安になりました。

・いま日本株でお買い得なのは、世界規模で通用する企業なのに、どの評価基準からみても割安なものがあります。その生産能力や技術は、世界で通用するものです。また日経[平均銘柄]の半数以上はNet cashの金額で取引されています。財務状況はきわめて強固です。

(Net cash: 現預金 + 有価証券 - 有利子負債 - 退職引当金のことか?)

東日本大震災以降の日本は、一般の欧米人には危ない国だと思われているでしょうから、日本株を推奨するマネージャーはそれなりに大変でしょうね。

2012年1月17日火曜日

TOPIX Core30ひとかじり(3)信越化学工業

0 件のコメント:
株式市場で人気の高い企業だったのでこれまで近づかないでいました。昨年、書店で平積みになっていた金川会長の新刊を手にとる機会がありましたが、自信や義務感にあふれた言葉が連ねられていました。こうして当社の事業成績を振り返ってみると、それも納得できます。

さて、当社の有価証券報告書や事業報告書を一読して印象に残った点を挙げます。

1. 各事業部門がおしなべて高収益体質
当社の中核事業は5つで、塩化ビニル樹脂・化成品、半導体シリコン、シリコーン、機能性化学品(セルロースなど)、電子・機能材料ですが、おしなべて営業利益率が10%を超えています。2011年度の上半期では、鹿島工場が被災した塩ビ事業は8.3%と低調ですが、そのほかは順に17.0%, 24.7%, 16.6%, 24.5%となっています。各事業の年間売上規模は1,000-3,000億円であり、成長余地が残されています。

2. 赤字を出さない
下の図は1997年度からの一株当たり純利益と配当の推移を示したものです。それ以前の年度は、当社のWebサイトには掲載されていませんでした。一目瞭然ですが、景気後退の時期でも黒字を継続しています。しかもそれなりの水準を保っています。配当も増配基調です。ここ10年間では減配していません。








3. 10年以上前から事業が継続している
原材料に近い川上の産業では製品ライフサイクルが長いものですが、当社の中核事業も10年以上前からのもので、高収益を維持し続けています。1997年度の決算短信をみても、塩ビ、シリコーン、セルロース誘導体、半導体シリコン、合成石英製品、希土類磁石等のように、現在も主力の製品がならんでいます。それらの既存事業は、生産規模の拡大、企業買収、不採算事業からの撤退等によって収益を拡大してきました。なかでも塩ビ及びシリコン関連製品では原料部門を強化しており、垂直統合によって規模拡大と利益率維持をめざしているように見受けられます。

財務や事業内容を簡単にみた上で現時点の株価3,700円を判断すると、半額まではいかないにしても割安な水準だと感じます。10年チャートをみると昔の株価に戻っていますが、純資産はこの10年強で倍増しています。生産能力も増強されており、次の好況期に備えています。前回のテンプルトン卿の教え「優良企業の中から割安なものを選びなさい」がよくあてはまる企業の一つではないでしょうか。

2012年1月16日月曜日

投資で成功するための16のルール(ジョン・テンプルトン)

2 件のコメント:
ジョン・テンプルトン卿の投資スタイルは以前に取り上げた本に詳しいのですが、1993年にご本人が雑誌に寄稿した文章がありましたのでご紹介します。再掲ですが原文は、ミューチュアル・ファンドFranklin Templeton Investmentsここに掲載されています。(日本語は拙訳)

1. 総実質リターンを最大化することを投資の目標とせよ。
2. トレードや投機をするのではなく、投資をせよ。
3. 投資する対象については、柔軟かつ広く受け入れるよう心がけよ。
4. 安く買うこと。
5. 株式を買う際には、優良企業の中から割安なものを選びなさい。
6. 着目するのは[投資対象の]価値であって、市場動向や景気の見通しにふり回されないこと。
7. 分散せよ。株式や債券に投資する場合でも他の例と同じで、数があれば安全になる。
8. 自分で調べよ。そうでなければ賢明なる専門家の手助けを得よ。
9. 投資対象を注視せよ。[ほうっておかないこと]
10. 狼狽するな。
11. 自分の過ちから学びなさい。
12. 祈りと共に始めよ。
13. 市場[の成績]をしのぐのは困難だ。
14. なんでも答えられる投資家ほど、そもそもの問いかけをわかっていない。
15. ただで儲かると思うな。
16. あんまりびくびくしたり、弱気になるな。

1. Invest for maximum total real return
2. Invest - Don't trade or speculate
3. Remain flexible and open-minded about types of investment
4. Buy low
5. When buying stocks, search for bargains among quality stocks
6. Buy value, not market trends or the economic outlook
7. Diversify. In stocks and bonds, as in much else, there is safety in numbers
8. Do your homework or hire wise experts to help you
9. Aggressively monitor your investments
10. Don't panic
11. Learn from your mistakes
12. Begin with a prayer
13. Outperforming the market is a difficult task
14. An investor who has all the answers doesn't even understand all the questions
15. There’s no free lunch
16. Do not be fearful or negative too often


なんといっても、ルール16の説明文には励まされます。株価が低迷しているのをみて落ち込んだときには、ぜひ読んでみてください。

なお、今回の話題を取り上げたきっかけはGuru Focusの寄稿です。ご興味のある方はこちらのリンクをご参照ください。

2012年1月15日日曜日

誤判断の心理学(3)嫌悪・憎悪がもたらすもの(チャーリー・マンガー)

0 件のコメント:
今回は、前回の愛好/愛情傾向の裏返しで、おなじみのことわざ「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」の話題になります。

人間の心理学的傾向その3
嫌悪/憎悪の傾向
Disliking/Hating Tendency

愛好/愛情傾向にみられるように、生物として登場してまもない人類は、嫌悪したり憎む性質を持ってうまれついており、それは日常・非日常を問わず、ふとしたきっかけでひき起こされます。これは類人猿やサルと同じものです。

In a pattern observe to Liking/Loving Tendency, the newly arrived human is also "born to dislike and hate" as triggered by normal and abnormal triggering forces in its life. It is the same with apes and monkeys.


嫌悪/憎悪の傾向も[愛好/愛情傾向と同様に]、自身の行動を調節してしまうものです。
第一に、嫌悪する対象が持つ美点には目をくれません。第二に、嫌悪する対象と単に関係があるだけの人・モノ・行動に対しても、嫌悪感情を持つようになります。第三に、他の事実を曲げてでも、憎しみ続けようとします。

よくあるのですが、この手の曲解が極端になりすぎると、あきれるほどの見当違いをするものです。ワールド・トレード・センターが破壊されたときには、パキスタン人の多くは即座にインド人の仕業だと決めつけましたし、イスラム教徒はユダヤ人のせいにしました。そのような事実の曲解をやっているから、憎しみに凝り固まった敵同士が和解するのはきわめて難しいのです。イスラエル人とパレスチナ人がなかなか和解できないのは、双方が捉えている史実が相手側のものと全然合致していないからです。

Disliking/Hating Tendency also acts as a conditioning device that makes the disliker/hater tend to (1) ignore virtues in the object of dislike, (2) dislike people, products, and actions merely associated with the object of his dislike, and (3) distort other facts to facilitate hatred.

Distortion of that kind is often so extreme that miscognition is shockingly large. When the World Trade Center was destroyed, many Pakistanis immediately concluded that the Hindus did it, while many Muslims concluded that the Jews did it. Such factual distortions often make mediation between opponents locked in hatred either difficult or impossible. Mediations between Israelis and Palestinians are difficult because facts in one side's history overlap very little with facts from the other side's.

2012年1月14日土曜日

もはやサル社長ではない

0 件のコメント:
アメリカの経済紙Businessweekはよく知られている雑誌で、日本でいうところの東洋経済や週刊ダイヤモンドのようなものです。今週号の同誌の表紙ですが、なんと、マイクロソフトCEOのスティーブ・バルマーが登場していました。個人的にはマイクロソフト(MSFT)の株式を保有しているので気になる人物なのですが、世間的には悪役ムードの強い人です。彼の奇行(というか、パフォーマンス)をとりあげた映像もYouTubeにあります。最近の注目はアップルやグーグル、そしてIPO必至のフェースブックあたりですが、大衆経済紙がマイクロソフトに焦点をあてるのはなぜなのでしょうかね。












今回は同誌の記事から、マイクロソフトとバルマーの業績概要を引用します。(日本語は拙訳)

過去十数年にわたって、マイクロソフトの売上は3兆円から5.5兆円へと増加し[USドルベースでは2.8倍]、純利益は215%増の1兆8,000億円となった。その大半は、バルマー以前から続いているWindowsとOffice資産のおかげだ。彼自身の業績といえば、データセンタービジネスにおいて無名に等しかった同社を主要業者にまで押し上げたこと、またXboxもバルマーによるもので、エンターテインメント事業で7,000億円の売上をあげている。年次ベースの利益成長でいえば、バルマーの成績(16.4%)は、伝説的なCEOとされるGEのジャック・ウェルチ(11.2%)やIBMのルイス・ガースナー(2%)を超えている。

Over the past 10 years, Microsoft’s annual revenue has surged from $25 billion to $70 billion, while its net income has increased 215 percent to $23 billion. Much of these gains have come from the Windows and Office franchises Ballmer inherited. That said, he’s moved Microsoft from a virtual nonentity in data centers to a dominant player, building a business that brought in $6.6 billion in profit last year. The Xbox also came to life under Ballmer and anchors the company’s $8.9 billion entertainment and devices division. Measured by total annual profit growth, Ballmer’s performance (16.4 percent) surpasses those of such legendary CEOs as GE’s Jack Welch (11.2 percent) and IBM’s (IBM) Louis V. Gerstner Jr. (2 percent).

もしバルマーが会社の利益に大きく貢献しているのであれば、素晴らしい経営者に恵まれたマイクロソフトは買いでしょうし、そうでなければマイクロソフトは比類なきビジネス特性を持っているので、これまた買いだと思います。冗談ぽくみえるかもしれませんが、いちおうまじめです。同社は、私が投資するアメリカ企業3社のうちの1つなのです。