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2018年7月12日木曜日

2018年バークシャー株主総会(11)米国における医療費の問題について(前)

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バークシャー・ハサウェイ株主総会での質疑応答から、最近話題になっていたアマゾン社やJPモルガン社との提携話についてです。今回の質問者は、本題以外にも別の観点からの思いを込めて質問しています。しかしウォーレン・バフェットは脱線することなく、本題だけに集中して答えており、明快な捌きぶりだと感じました。なお、前回分の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)

15. アマゾン社及びJPモルガン社との医療費関連の提携

<ウォーレン・バフェット> 質問所4番のかた、どうぞ。

<質問者> チャーリーさん、ウォーレンさん、おはようございます。私は御二方の熱烈なファンで、チャーリーが書かれた認知上のバイアス25項目については特に気に入っています[過去記事一覧]。そのため、本題から若干はずれるとは思います。

私はワシントン州のシアトルから参りました。デジタル・マーケティングの会社を一人で運営しています。フェイスブック上の広告や電子メールを使ったマーケティングを専門としており、それらを多用しています。チャーリーが説明されたコカ・コーラに関する詳細は、実に信頼できるものと感じています[過去記事一覧]。

顧客の製品が持つ構造を理解したり宣伝したりする方法を見つける際に、[前述した認知上のバイアスを]参考情報として利用しています。ですからチャーリーの示された認知上のバイアスが、インターネット関連の企業においてうまく働くことは、明言できます。

さて、アマゾンやJPモルガンと医療関連で提携するとのことで是非ともお聞きしたいのですが、インターネット関連の企業に対して例のバイアスを適用する方法を、御二方は理解されはじめたのでしょうか。あるいは事業を理解しているとすれば、他の道具を使うことにしたのでしょうか。それというのも、「理解していない事業には投資しない」と度々発言してこられたものですから。

<ウォーレン> そうですね、わたしたちは医療関連の企業を設立するつもりはありませんし、必ずしも保険業のような会社をつくるわけでもありません。ただ単に、わたしが敬愛し信頼するリーダーの率いる3つの組織が存在するだけのことです。それら3つが互いにやりとりをしている、といったものです。

チャーリーは正しくも次のような発言をしていたと思います。「1960年にはGDP比で5パーセントだったのが、現在は18パーセント近くに達しているシステムを、なんらかの方法で変更することは、ほぼ不可能である」と。そのようなシステムに対して、わたしたちは何とかしたいと望んでいます。

米国のビジネスは他の国とくらべると、医療費の面が大きな足かせとなっています。かつて米国が5パーセントでやっていた時代に、米国のように5パーセント程度でやっていた国々がありました。しかし今では、かの国々が11パーセント越えないあたりでやっているところを、米国はなんとか18パーセントに抑えている状況です。

まさしく1960年には、米国における一人当たり医療費は170ドルでした。しかし今では1万ドル以上を費やしています。

「無い袖は振れぬ」わけですから、費用の問題が生じます。米国実業界とその競争力の面で、この問題は寄生虫であると言えます。

米国よりも少ない費用でうまくやっている諸国とくらべると、一人当たりの医者数が米国のほうが少なかったり、一人当たりの病床数や看護師数も少ない例があります。

医療システム全体が扱う金額は3兆3千億ドルに達しています。これは連邦政府の歳入とほぼ同じ金額です。3兆3千億ドルもの金額が、システムにかかわる云百万・云千万もの人たちに分配されるわけです。そのお金の1ドル1ドルが有権者へとつながっています。まさしく政治と言えるものです。

わたしたちのCEO探しは、現在取り組んでいるところですが、きっと果たせるでしょうから、遠からず発表できると思います。しかし、このことがカギとなります。

だれもが認めているように、医療システムの費用面は、ある種制御不能となっています。しかし往々にしてだれもが、他人の過失によるものだと考えています。果たしてCEOとなるその人物が想像力を抱き、さらに人々を支援することを通じて、種々の重大な改善をシステムにもたらせるでしょうか。やがては解が見つかるでしょうが、容易なことではないと思います。

(つづく)

15. Health care costs partnership with Amazon and JPMorgan

WARREN BUFFETT: OK. (Laughter) Station 4.

AUDIENCE MEMBER: Good morning, Charlie and Warren. I know that seems a little bit out of order, but I’m a huge fan of yours, Charlie, mostly for your 25 Cognitive Biases.

I’m from Seattle, Washington. I run a one-person digital marketing firm that specializes in Facebook ads and email marketing. I use these a lot. I - your breakdown of Coca-Cola was really, really solid.

And I use that as reference when looking to how to understand the mechanics of my clients’ products and how to promote them. So I’m fairly certain that your cognitive biases work for internet-related companies.

Now that you’re partnering with Amazon [and JPMorgan] on health care, I’m curious, have you started to understand how to apply these biases to internet-related companies? Or is there another set of tools you use to decide if you understand a business? Because you guys talk a lot about not investing in businesses that you don’t understand.

WARREN BUFFETT: Well, health care is a - we don’t plan to start health care companies or, necessarily, insurers or anything. We simply have three organizations with leaders that I admire and trust. And we - mutually goes around all three.

And we hope to do something which Charlie correctly would probably say is almost impossible to change in some way a system which is - was taking 5 percent of GDP in 1960, and now is taking close to 18 percent.

And we have a hugely noncompetitive medical cost in American business, relating to any country in the world. The countries that - there were some countries that were around our 5 percent when we were at 5 percent. But we’ve managed to get to 18 without them going beyond 11 or so.

Literally, in 1960, we were spending $170 per capita on medical costs in the United States. And now we’re spending over 10,000.

And, you know, every dollar only has a hundred cents. So there is a cost problem. It is a tapeworm, in terms of American business and its competitiveness.

We don’t - we have fewer doctors per capita. We have fewer hospital beds per capita, fewer nurses per capita, than some of the other countries that are well below us.

And you’ve got a system that is delivering $3.3 trillion - that’s almost as much as the federal government raises - it’s delivering 3.3 trillion, or some number like that, to millions and millions and millions of people who are involved in the system. And every dollar has a constituency. It’s just like politics.

And whether we can find the chief executive, which we’re working on now, and which I would expect we would - we would be able to announce before too long - that - but that’s a key part of it.

And whether that person will have the imagination and support of people that will enable us to make any kinds of significant improvements in a system which everybody agrees is sort of out of control on cost, but what - but - but they all think it’s the other guy’s fault, generally - we’ll find out. It won’t be - it won’t be easy.

なお新会社のCEOは少し前に決定しています(6月20日付の公式発表[PDF])。選任されたのはアトゥール・ガワンデ氏、本ブログではチェックリストに関する過去記事で取り上げた人物です。チャーリー・マンガーごひいきの人物を選んだわけですね。

2018年7月8日日曜日

人類の未来が暗く思える理由(『進歩: 人類の未来が明るい10の理由』)

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以前にご紹介したマット・リドレーの著作『進化は万能である』では、さまざまな社会的側面が進化的に発展してきた現実を取りあげていました(過去記事)。最近は「社会における進歩を正しく見つめよう」とする気風が高まっているのでしょうか、ビル・ゲイツも少し前から「鮮度の高い事実」を的確に認識した上で、現代社会が果たしてきた進歩の実態を啓蒙しようとしているようです(その一例)。それと似たような趣旨の本を少し前に読んだので、印象に残った一連の文章をご紹介します。

同書の邦題は『進歩: 人類の未来が明るい10の理由』、黄色のカバーのポップなデザインからは軽い内容を予期させますが、実際の本文に浮わついたところはありません。参考文献から集めた事実を連ねて、社会がいかほどに発展してきたのか、いくつかのテーマに沿って堅実に文章を書き進めています。個人的には例によって100%鵜呑みにできるとは考えませんが、いくぶん割り引いたとしても、現代社会がどのような高みに位置するのかを把握するのにふさわしい一冊だと思います。

今回引用するのは、本書の「おわりに」に含まれている文章です。「なぜ人々は暗い未来を思い描いているのか」について説明しています。本来であれば巻頭で触れるべき内容だと思いますが、あえて後段に回したものと想像します。

人々は一般に、私が本書で示したような希望に満ちた世界観を持っていないと考えてまちがいない。イギリス、オーストラリア、カナダ、アメリカの回答者の54パーセントは、今後100年でいまの生活様式が崩れる危険性は、50パーセント以上だと答えている。4分の1近くは、人類が絶滅する危険性が50パーセント以上だと述べている。(中略)

こうした想定は、しばしばメディアにより形成される。メディアは世界についてのある特定の見方を強調し、ドラマチックで驚くものばかりに注目する。そうした話はほぼまちがいなく戦争、殺人、自然災害といった悪いニュースだ。(中略)

多くのジャーナリストや編集者はこの傾向を知っている。アメリカの公共ラジオジャーナリストであるエリック・ワイナー曰く「正直いって、とんでもなく不幸な場所に暮らす、不幸な人々の話は人気が出るんです」。(p. 287)

たぶん、人は心配するようにできている。例外に関心がある。新しいこと、不思議なこと、予想外のことに気がつく。それが自然だ。通常の日常的な出来事は、いちいち説明して理解するまでもない。でも例外は理解する必要がある。(中略)

私たちが危険なものすべてにとても興味があるのは、それに興味を示さなかった人はとっくに死んでいるからだ。建物が火事なら、すぐにそれを知る必要がある。そしてその火事がテレビに映っているだけでも、多少は興味を惹く。幾重もの抽象化と感覚鈍化の下で、安全なソファにすわってテレビを見ているときでも、人の石器時代の脳が多少のストレスホルモンとアドレナリンを分泌するのだ。

スティーブン・ピンカーは、世界が実際よりひどいと思わせる心理的バイアスを3つ挙げている。(中略)

第3のバイアスは、人生がもっと単純でよかったされる黄金時代に対するノスタルジーだ。文化史家アーサー・ハーマンはこう洞察している。「過去も現在もほとんどあらゆる文化は、いまの男女は両親やご先祖の基準に達していないと信じている」。(中略)

私が人々に理想の時代について尋ね、世界史上で最も調和がとれて幸せだった時代はいつだと思うか尋ねると、驚くほど多くの人々は、自分が育った時代を挙げる。だからベビーブームの人々は、1950年代をなつかしがる。(p. 296)

現代に生きる人間にはそういったバイアスがあることを承知した上で、本題の内容をもう一か所引用します。「第4章 貧困」からの文章です。

なぜ貧困な人がいるのだろうか?
これは質問がまちがっている。
貧困についての説明は不要だ。というのもそれは万人の出発点だからだ。貧困は、富を創り出すまでの状態のことだ。最も豊かな国ですら、先祖たちの生活がいかに劣悪なものだったかを人々はつい忘れてしまう。フランスのような国で受け入れられていた貧困の定義はとても簡単だった。もう1日生き延びられるだけのパンを買えるなら、その人は貧困ではない。(中略)

アドリア海のぺスカラという、要塞と兵舎を持ち、特に貧しいというわけでもない町について、1564年に調査が行われている。それによると、町の世帯の4分の3は掘っ建て小屋に住んでいた。裕福なジェノアでは、貧民たちは冬ごとにガレー船の奴隷として自分を売った。パリでは最貧民たちは対になって鎖でつながれ、排水溝を掃除するというつらい仕事をやらされた。イギリスでは、貧困者は救済を受けるために作業小屋で働かざるを得ず、そこでは長時間労働をやらされ、ほとんど無賃だった。犬や馬や牛の骨を肥料用に砕く作業をやらされた人々もいるが、1845年に作業小屋の査察で、腹の減った貧民たちは腐りかけの骨をめぐって争い、その骨髄を吸い出そうとしていたことが示されている。(p. 95)

2018年7月4日水曜日

2018年バークシャー株主総会(10)チャーリー・マンガーの一刀両断

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バークシャー・ハサウェイ株主総会での質疑応答から、今回の話題は会計基準についてです。「会計に対する基本的な哲学」という意味で勉強になる文章ですが、チャーリー・マンガーが一言ですべてを片づける構図がおもしろいです。隣席のウォーレン・バフェットも、笑いがこぼれています。前回分の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)

13. 収益勘定に事業価値を含めることは「とてつもなく偽装的である」

<ウォーレン・バフェット> 次はキャロルからお願いします。

<キャロル・ルーミス> ジャック・シゼルスキー氏という株主からの質問です。彼は会計の専門家として著名であり、「アカウンティング・オブザーバー」という業界誌を何年も前から執筆しています。

「今年の株主向けレターにおいてバフェット氏は、会計上の新規則が企業へ要求している要件、『保有投資資産に関する会計処理として時価(市場価格)方式を適用すること』に対して、次のような手厳しい見方を記しています。

『分析上の目的において、バークシャーの儲けは意味のないものになってしまう』と。[過去記事]

そのご意見に対して、私の見解を申し上げます。企業が収益を報告する際には、該当会計期間中に企業内外で生じたあらゆることに言及すべきではないでしょうか。

損益計算書においては、客観的に記述された新聞のようにあるべきではないでしょうか。株主価値を増加させるために経営陣が何をしたのか、また外部からの力がどのように影響する可能性があったのかを示しつつ、経営陣のもとで当該期間中に生じた事柄を株主へ周知させることで。

もし保有証券の価値が増加すれば、当然ながらその企業や株主の利益になるはずです。また証券の価値が減少すれば、反対に不利益となるはずです。

そういった変動は、ほぼまちがいなく現実のものです。つまり私の見解では、『リストラ関連の費用を素通りするようなやりかたで変動を無視する企業は、株主へ配布する新聞を検閲している』ことになります。

ですから、『私の発言に対して、どのようにお答えになりますか』というのが、私からの質問です」(笑)。

<ウォーレン・バフェット> 「質問の内容に対するわたしの答えがどうなるか」というご質問に対して、わたしからの次の質問が答えになります。「もしわたしたちが1,700億ドル分の市場価値になる企業各社を部分的に保有しており、それらは今後何十年間と保有し続けるつもりで、時間とともに価値が増していくことを期待し、当社の貸借対照表には市場価値ベースで反映されているとしましょう。そのとき、収益勘定を通じてそれらの増減を四半期ごとに計上するのは妥当でしょうか。その際には同時に、ほとんどの例でそうでしたが、保有した後にずっと大きな価値を持つようになった事業について、極端な例をあげるとガイコ社ですが、およそ5千万ドルで同社の半分を買いましたが、四半期ごとにその事業の価値増加分を収益勘定を通じて積み増したいものでしょうか」。

これは価値評価プロセスの問題になります。評価という意味では悪い点はありません。しかしそれは、純資産価値の増加あるいは減少と呼べるもので、クローズド・エンドあるいはオープン・エンドの投資信託がやっていることです。

しかし収益勘定を通じてそれを行う場合、もしわたしが60社から70社といった事業をみるとすれば、それらを四半期ごとに時価評価する際に、時間が経つにつれて購入時金額の10倍の価値に達した事業などが、当然ながら非常にたくさん存在することが考えられます。しかし四半期ごとの増加分を収益勘定に計上したとしても、投資家のうちの99パーセントの人は、1年間においてあげた経営成績という意味で、純利益の数字を意味あるものと受けとめるでしょう。ですから、それはとてつもなく偽装的なことだと思います。

つまり、[バークシャーの]今年の第1四半期の数字はさきほど見られたと思いますが、わたしからすれば営業利益と呼びたい数字は、過去最高の業績でした。一方、株式の評価額は60億ドル程度の下落でした。毎日の損得は収益勘定に記載するとなりますから、この金曜日にはおそらく25億ドルほど稼いだことになると言えます。もしも投資家や解説者やアナリストといった人たちに対して、「そのような純利益の数字をもとに行動せよ。四半期ごとや将来の収益予測を細かい数字まで出すように」と要求するのだとしたら、先ほどの数字を収益勘定に含めること自体が、多大なる害を及ぼすと思います。

貸借対照表上に投資有価証券の項目があること自体は、市場価値という情報を示すわけですから、正しいことです。しかし保有する事業、たとえばBNSF鉄道の半分を売却した場合、もちろんそうするつもりはありませんが、その際に簿価以上の金額を受け取ったとしたら、その資金を有価証券へ替えることができますので、多額の儲けを一晩であげたかのようにみえるでしょう。あるいはそれを査定し、たとえば3か月ごとに評価額を増減させれば、あらゆる類の操作につながる恐れがあります。そのようなことは、平均的な投資家だけでなく、すべての投資家をすっかり混乱させてしまうだけです。

わたしならば、そのような形のデータを受け取りたいとは思いません。ですから、そのような出しかたもしたくないと考えています。

チャーリーはどうですか。

<チャーリー・マンガー> 私からすれば、差異が生じた理由を付記するのは当然ですが、今までどおり純資産の数値に反映させればいいだけです。

つまり質問者は、自分の稼業が何たるかをわかっていませんね(失笑そして拍手)。

そういう言い方をするつもりはなかったですが、ときにはうっかりしてしまうのですよ(笑)。

<ウォーレン> ときどき彼はそうやって、引導を渡すこともあります(笑)。

13. Putting business values in income account is “enormously deceptive”

WARREN BUFFETT: OK, Carol.

CAROL LOOMIS: … shareholder named Jack Ciesielski . He’s a well-known accounting expert, who for many years has written “The Accounting Observer .”

“Mr. Buffett, in this year’s shareholder letter you have harsh words for the new accounting rule that requires companies to use market value accounting for their investment holdings.

″‘For analytical purposes,’ you said, ‘Berkshire’s bottom-line will be useless.’

“I’d like to argue with you about that. Shouldn’t a company’s earnings report cite everything that happened to, and within, a company during an accounting period?

“Shouldn’t the income statement be like an objectively written newspaper informing shareholders of what happened under the management for that period, showing what management did to increase shareholder value and how outside forces may have affected the firm?

“If securities increased in value, surely the company and the shareholders are better off. And surely they’re worse off if securities decreased in value.

“Those changes are most certainly real. In my opinion, ignoring changes in the way that some companies ignore restructuring costs, is censoring the shareholders’ newspaper.

“So my question is, how would you answer what I say?” (Laughter)

WARREN BUFFETT: Well, my answer to the question that asks what my answer would be to what he said - the - I would ask Jack, if we’ve got $170 billion of partly-owned companies, which we intend to own for decades, and which we expect to become worth more money over time, and where we reflect the market value in our balance sheet, does it make sense to, every quarter, mark those up and down through the income account, when at the same time we own businesses that have become worth far more money, in most cases, and become, you know, since we bought - you name the company - take GEICO, an extreme case - we bought half the company for $50 million, roughly - do we want to be marking that up every quarter to the value - and having it run through the income account?

That becomes an appraisal process. There’s nothing wrong with doing that, in terms of evaluation. But in terms of - and you can call it gain in net asset value or loss in net asset value - that’s what a closed-end investment fund, or an open-investment fund would do.

But to run that through an income account - if I looked at our 60 or 70 businesses, or whatever number there might be, and every quarter we marked those to market, we would have, obviously, a great many, in certain cases, where over time we’d have them at 10 times what we paid, but how quarter-by-quarter we should mark those up and run it through the income account, where 99 percent of investors probably look at net income as being meaningful, in terms of what has been produced from operations during the year, I think would be - well, I can say it would be enormously deceptive.

I mean, in the first quarter of this year - you saw the figures earlier - where we had the best what I would call operating earnings in our history, and our securities went - were down six billion, or whatever it was, to keep running that through the income account every day you would say that we might have made on Friday, we probably made 2 1/2 billion dollars. Well, if you have investors and commentators and analysts and everybody else working off those net income numbers and trying to project earnings for quarters, and earnings for future years, to the penny, I think you’re doing a great disservice by running those through the income account.

I think it’s fine to have marketable securities on the balance sheet - the information available as to their market value - but we have businesses there - if we - we never would do it - but if we were to sell half, we’ll say, of the BNSF railroad, we would receive more than we carried - carried for them - we would turn - we could turn it into a marketable security and it would look like we made a ton of money overnight. Or if we were to appraise it, you know, appraise it every three months and write it up and down, A, it could lead to all kinds of manipulation, but B, and it would just lead to the average - to any investor - being totally confused.

I don’t want to receive data in that manner and therefore I don’t want to send it out in that manner.

Charlie?

CHARLIE MUNGER: Well, to me it’s obvious that the change in valuation should be noted, and it is and always has been - it goes right into the net worth figures.

So the questioner doesn’t understand his own profession. (Laughter and applause)

I’m not supposed to talk that way but it slips out once in a while. (Laughter)

WARREN BUFFETT: Sometimes he even gives it a push. (Laughter)

2018年6月28日木曜日

人間はコンピューターに勝てるか(ハワード・マークス)

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オークツリーのハワード・マークスが新しいメモを公開しています(6月18日付)。今回は「人間が介在しない投資」として、3つの話題をとりあげています。ETF等のパッシブ投資、クォンツ投資、AI投資です。パッシブ投資に関しては、すこし前のメモを拡充したような内容です。クォンツ投資については概要を説明していますが、AIについては触りだけで、展望や技術的な限界を述べるには至っていません。新著の仕上げに注力しているからか、全体的には「中休み」といった印象を受けました。今回は、その中でも記憶にとどめておきたい箇所を断片的に引用します。(日本語は拙訳)

Investing Without People [PDF] (Oaktree Capital Management)

はじめの引用はクォンツ投資の限界についてです。

繰り返しますが、ジョージ・ソロスは再帰性理論のなかで「市場参加者の行動が市場を変える」と説いています。それゆえ、永続的に勝ち続ける数式など存在しないのでしょう。私からすれば、数量的投資(クォンツ投資)によって優れた成果をあげるには、定期的かつ正確に数式を書き換える能力が不可欠になると思います。投資とは動的なものであるゆえ、クォンツ投資の基礎をなす規則も変わらざるを得ないからです。(p. 11)

To reiterate, George Soros’s Theory of Reflexivity says the behavior of market participants alters the market. Thus no formula will be a winner forever. For me, that means the achievement of superior returns through quantitative investing requires the ability to constantly and correctly update the formula. Since investing is dynamic, the rules relied on in quantitative investing have to be dynamic.

次の引用は、市場参加者のうちパッシブ投資が占める割合についての考察です。個人的にも、この問題について空想することが時折あります。

[適正]価格発見の面でどれだけの投資がパッシブになれば、価値に対して支払う金額を適正に保てなくなるでしょうか。それはだれにもわかりません。株式投資信託が現在保有する資産額のうち、およそ40%がパッシブに運用されています。機関投資家においても、その数字の方向へと進むかもしれません。ただしそれでは不十分だとは思います。[機関投資家の世界では]今もなおほとんどの資金がアクティブに運用されています。つまり現在はまだ、価格を探るさまざまな活動が実施されているわけです。たしかにパッシブ運用の割合が100%になれば十分です。しかし「株式の適正価値を評価したり、企業のことを調査する者がだれもいない世界」を思い描けるものでしょうか。そのような世界があるとしたら、ぜひとも「そこで精を出す唯一の投資家」でありたいと思います。しかし問題なのは、「価格が本源的価値から十分に乖離し始めてアクティブ運用に値するようになるのは、40%から100%の間のどこからか」という点です。今の私には判断できませんが、アクティブ投資の未来のためにいずれは見つけ出せるかもしれません。(p. 5)

How much of the investing that takes place has to be passive for price discovery to be insufficient to keep prices aligned with fair values? No one knows the answer to that. Right now about 40% of all equity mutual fund capital is invested passively, and the figure may be moving in that direction among institutions. That’s probably not enough; most money is still managed actively, meaning a lot of price discovery is still taking place. Certainly 100% passive investing would suffice: can you picture a world in which nobody’s studying companies or assessing their stocks’ fair value? I’d gladly be the only investor working in that world. But where between 40% and 100% will prices begin to diverge enough from intrinsic values for active investing to be worthwhile? That’s the question. I don’t know, but we may find out . . . to the benefit of active investing.

最後の引用は、今回のメモでの白眉と言える文章です。

卓越した投資家とは、定量的分析や会計や財務の面で必ずや他よりも勝っているわけではありません。彼らの強みは主として、「平均的投資家が見過ごしてしまう、定性的あるいは長期的観点における利点を見定める力」にあります。もし[AIのような]コンピューターが同じようにそういった過ちをおかすとすれば、上位数パーセントの傑出した投資家がほどなく引退することはないと思います。(p. 16)

The greatest investors aren’t necessarily better than others at arithmetic, accounting or finance; their main advantage is that they see merit in qualitative attributes and/or in the long run that average investors miss. And if computers miss them too, I doubt the best few percent of investors will be retired anytime soon.

2018年6月24日日曜日

妥当な価格で優良企業を買うためのチェックリスト(GuruFocus創業者)

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コメント欄でリュウジさんがご紹介くださった本『とびきり良い会社をほどよい価格で買う方法』を少し前に読みました。投資で利益をあげるにはさまざまなやりかたがあると思いますが、本書ではあくまでもひとつのやりかたにこだわっています。題名が示すように「とびきり良い会社をほどよい価格で買う」、これだけに焦点を当てて平均以上の成績をあげるための戦術論全般を説明しています。対象読者としては「株式投資中級者」を想定しているようです。チャーリー・マンガー的な信条をそのまま掲げている点には感心しましたが、あとは本書のやりかたで望む成果をあげられるかどうかですね。

さて本書から今回引用するのは、p. 197に掲載されている「妥当な価格で優良企業を買うためのチェックリスト」です。これは完全無欠なものではないですし、状況によって要否が変わることもあるでしょう。しかし「あくまでもひな形として参考にし、個々人が吟味発展させる」という意味では、役に立つと思います(たとえば日本企業を評価する場合には、このままでは適用しにくい)。なによりも明文化され、リスト化されていることに意義があります。

なお、訳語「優良企業」に対応する原語は"Good companies"のようです。妥当な訳出だと思いますが、念のため記しました。

妥当な価格で優良企業を買うためのチェックリスト

1. 私はこの事業を理解しているか。

2. 企業を守る経営上の堀があるおかげで、今後5年から10年間、同じか類似した製品を売り続けることができるか。

3. この業界は変化が激しいか。

4. この企業には多様な顧客基盤があるか。

5. 固定資産が少ない事業か。

6. 景気循環に大きく影響される業界か。

7. この企業にはまだ成長の余地があるか。

8. 過去10年間、好景気のときも不景気のときも常に利益を出し続けてきたか。

9. 営業利益率は安定して2桁を維持しているか。

10. 利益率は競合他社よりも高いか。

11. 15%以上のROIC(投下資本利益率)を過去10年にわたって維持しているか。

12. 一貫して2桁の成長率で、売上高と利益を伸ばしてきたか。

13. 財務基盤がしっかりしているか。

14. 経営陣は自社株をかなり保有しているか。

15. 経営陣の収入は似た規模の他社と比べてどうか。

16. インサイダーはこの企業の株式を買っているか。

17. 内在価値やPER(株価収益率)で測った株価は妥当か。

18. 歴史的に見て、現在のバリュエーションはどうか。

19. これまでの不況期に株価はどうだったか。

20. 自分の調査にどれくらいの自信があるか。

著者であるチャーリー・ティエン氏が触れているように、上記のリストには投資界の達人たちが示した教えが取り入れられているので、たとえばフィル・フィッシャーの15項目と似たものがあります。ただし上記のリストは定量化しやすい項目ばかりになっているのが特徴的です(本書内で解説あり)。もちろんそれは、著者が運営する投資サイトGuruFocusで定量的評価ツールを提供していることの裏返しでもあるでしょう。しかし、閾値を厳密に定める評価には長短があることを承知していれば、「達人の教えをなるべく定量的に実践試行しつづける」ことでも、相応の成果をあげられると思います。