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2013年2月13日水曜日

チェーンソーでバターを切る(エイモリー・B・ロビンス)

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エネルギー問題に正面からとりくんだ意欲作『新しい火の創造』を読み終えました。エネルギーや気候問題となると悲観的な予測がつきものです。しかし本書の著者は、あくまでも人間の知恵を頼りに総力戦で立ち向かうことで、希望のある未来を手にできる可能性を示しています。具体的には、エネルギー利用効率を大幅に改善させ、一方で再生可能エネルギーへの移行を政策面から推進するために、多岐にわたる手段やアプローチを提案しています。安全余裕をとりたいために、個人的にはものごとを悲観的にみることが多いのですが、著者の前向きな姿勢には随所で励まされました。本書で描いたシナリオのような楽観的な世界がそのまま実現するとは、著者自身も考えてはいないでしょう。ですが、それを承知で書き物にし、実現可能性の裏をとり、各界に働きかけていく行動力には、すなおに拍手をおくりたくなります。アメリカという国の、健全で壮健な一面をみせてくれる著作です。

本書には印象に残る文章がいくつもありますが、今回は株式投資の観点で直接参考になりそうな箇所を引用します。第4章「工業」からです。

ダウケミカル社は、数百トンものプラスチックから太陽電池の屋根用パネルまでの全てを製造するのに、途方もない量のエネルギーを使う。巨大な原子力発電所まるまる3基分に相当する3.7ギガワット(370万キロワット)を超える電力を必要とするのだ。これは、オランダが使う量を超えるほどの石油を燃やす。その結果として、効率を僅かでも向上させるだけで、最終利益に大きなプラスが出てくる。そこで、ダウ社はエネルギー消費削減策を執拗に追い求めている。同社は、テキサス州フリーポートにあるエチレン炉を取り替えたり、精製設備を効率の高いものにするという簡単なものや、アントワープでプロピレンオキサイド(ポリウレタン樹脂の原料)製造プロセスに、エネルギー消費が35%少ないまったく新しいプロセスを開発するという複雑なことを実施している。

数千件に上るこのようなプロジェクトを経て、ダウ社は1990年と2005年の間で、そのプロセスのエネルギー強度を38%引き下げ、効率と利益をともに押し上げている。同社は、1994年と2010年の間で、10億ドルを要したエネルギー効率向上策によって94億ドルを削減できたと計算している。2008年にエネルギー価格が急騰した時に、ダウ社は、効率のもっと低い競争相手に対して決定的なコスト優位性を示したのだった。

実のところ、エネルギー効率がダウ社にとってこれほど優れた事業戦略であることが実証されたため、さらに効率を上げようと懸命である。現在2015年までにエネルギー強度をさらに25%引き下げることを狙っているのだ。そして、2011年2月に、幹部は効率向上に向けた新しい活動をいくつも実施するのに、1億ドルを投資すると発表した。この投資プロジェクトは、並外れた財務的リターンをもたらしてくれると、ダウ社のエネルギーと気候変動担当副社長であるダグ・メイは述べている。

エネルギー効率に焦点を当てているのはダウ社に限ったものではない。もう一つのパイオニアは製造コングロマリットであるユナイテッド・テクノロジー社だ。エネルギー消費に狙いを定めて、2003年と2007年の間で、会社全体でのエネルギー強度を45%、2006年と2010年の間の地球温暖化ガス排出を62%切り下げている。その一方で、販売量は13%伸び、1株当たりの収益は28%上がり、1株当たりの配当は67%上昇した。また、保護フィルムやポストイット付箋など、全てにわたるイノベーターである3Mを検討してみよう。同社は、エネルギー効率を大きく改善したチームを認定するプログラムを開発することで、効率を22%上げ、2005年から2009年の間に1億ドルを超えるコスト削減を実現した。

とは言うものの、これと同じ期間に、3Mは200億ドルを超える累積利益を計上しており、それからすると、同社のエネルギー効率化プロジェクトはまだ総投資額のほんの一部(約0.1%)でしかない。このギャップが示唆しているのは、3Mは効率向上機会の表面をちょっとこすっただけだということだ。しかし、3Mをはじめとする他の多くの起業家精神豊かな会社は、効率化の追求を急速に深めつつあり、エネルギーの削減量を増やすだけでなく、さらにもっと効率を上げる新技術を開発販売できることに気づき始めている。(p.283)


米国の経済社会では、ほんの13%ほどのエネルギー効率しかなく、世界の経済社会では大体10%ほどしかない。現在もっともエネルギー効率が高い工業プロセスですら、理論的に必要なエネルギーの2-3倍は消費している。従って、エネルギー節減の潜在可能量は、巨大なものとなる。

工業部門はなぜ理論的に必要なものよりもこのように大きなエネルギーを使うのだろうか。必要なものより高い温度や圧力で稼働させているからだ。低品質のエネルギーで十分間に合う時に高度な品質のエネルギーを使う--量的には100%使うが質的には6%だけになる--ため、ある建築家が表現したように、まるで"チェーンソーでバターを切るようなものだ"。多くのプロセスで同様なことが行われている工場がほとんどである。(p.309)


こちらはおまけです。第5章「電力」からの引用です。

よく引用される統計によると、90マイル四方の広さがあって、太陽電池パネルなり太陽光集光設備でそこを覆うとすれば、米国がいま必要としている年間総電力量を発電できるという。だが、それは全体の話の一面にすぎない。国立再生可能エネルギー研究所(NREL)と米国エネルギー省による研究では、米国は、豊かで地域的に広く分布した風力、バイオマス、水力、太陽、地熱に恵まれている。設備が置けて、そこそこの風が吹くところでの陸上風力発電だけで、米国が2010年に消費した電力の9.5倍を発電できる。全部合わせると、このような再生可能エネルギー資源は、現時点で商用化されている技術を使って、年に7万5000TWhの発電をする力がある。これは全米で2010年に消費された電力の20倍に相当する。(p.390)


文中にでてきた研究の報告書と思われるファイルが、Web上に公開されていました。

20% Wind Energy by 2030 (米国エネルギー省 国立再生可能エネルギー研究所)
(2030年までにエネルギー供給の20%を風力発電でまかなうシナリオの研究報告)

2013年2月8日金曜日

デイリージャーナル株主総会(チャーリー・マンガー)

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twitterではご案内しましたが、先日行われたデイリージャーナル社の株主総会で会長チャーリー・マンガーが発言した内容がWeb上にアップロードされています。ここでは興味を引いた箇所を引用します。質疑形式に脚色しています。(日本語は拙訳)

チャーリー・マンガー質疑応答(於デイリージャーナル株主総会2013/2/6) (togetter)

チャーリー「株を買えば誰でもすばらしい成果を手にできるなんて、そんな考えは根っこからイカれてますね。ポーカーだったら、そうは思わないでしょう」

質問「なぜ他の会社のCEOは、バークシャーの経営を真似しないのでしょうか?」
チャーリー「58歳でCEOになって、やめるのが63歳ですからね」

質問「ご自分のポートフォリオで、昨年に株式取引をしたのは何回ですか?」
チャーリー「ゼロ」

"I think the idea that everyone can have wonderful results from stocks is inherently crazy. Nobody expects everyone to succeed at poker."

"They came to power at 58 and they're gone at 63." -- Munger, on why other CEOs can't copy the $BRK operating model

"I made zero transactions in my PA last year." -- Munger

チャーリーが最近読んだ本で推薦するものとしては、次の2冊があげられていました。

The Outsiders: Eight Unconventional CEOs and Their Radically Rational Blueprint for Success (著者: William N. Thorndike, Jr.)

レッグ・メイソンのマイケル・モーブッサンも賛辞を寄せていることから、投資に携わる人からは評価されている本なのでしょう。勝手な見立てですが、この本が翻訳される確率は5割未満とみました。

A Universe from Nothing (著者: Lawrence M. Krauss)

こちらの著者ローレンス・M. クラウス氏は、以前とりあげた『ファインマンさんの流儀』も書いた方です(過去記事)。訳書もいろいろ出ていますので、この本は翻訳されるだろうと思います。

上記のtweetとは別ですが、総会に参加した方のこちらのメモでは、過去に失敗した投資をチャーリーがふりかえった話がでています。投資先はベルリッジ・オイルで、以前にも本ブログでとりあげています(過去記事)。

Corner of Berkshire & Fairfax Message Board

(ふたつめの例) 楽勝だとわかっているのに、十分に投資しないでいること。チャーリーはベルリッジ・オイルへ投資したときのことを話した。株価は原油埋蔵量の20%に過ぎませんでしたが、持ち株を劇的に増やせる機会がやってきました。ですが、そうしませんでした。その後、同社の株は35倍になりました。教訓、臆病すぎでした。損が出る可能性はないと考えていたにも関わらず、[現在価値にして]何億円もの利益をみすみす見逃してしまいました。本当に楽勝な機会は、そうそうありません。そんなときに大きく勝負に出ないのは間違いですね。

Example 2 - Not investing enough when you know you have a no brainer. He spoke about his investment in Bell Ridge Oil, where "the stock price was 20% of the value of the oil in the ground" and he had a chance to significantly increase his position - and he did not. Subsequently Bell Ridge was a 35X bagger. Lesson was - he was too timid. He could see not possibility for a loss - and he left many, many millions on the table. The really no brainers don't come around very often - and you make a mistake by not hitting them hard.

ウォーレン・バフェットが書いていた文章で、「バットを振らなければストライクはとられない」という類のものがあったかと記憶しています。ここでチャーリーは「最高の絶好球ならば、見逃してはならない」と説いていますが、肝心なのは来た球が絶好球なのかどうか、きちんと判断できる見識です。上昇相場で投資機会がみつからないと嘆いているのではなく、次の好球必打を果たせるよう、「備えよ常に」の姿勢を忘れてはならない、と改めて感じました。

2013年2月6日水曜日

コカ・コーラを飲みたくさせる(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーの講話『実用的な考え方を実際に考えてみると?』の第4回目です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

そうとなれば次は、世界中にアピールするものをどうやって発明するかという問題を解決する必要があります。目の前には、互いに関連した2つの巨大な課題が立ちはだかっています。ひとつは、新たに立ち上がる飲料市場が150年のあいだに、全世界の水分摂取量の4分の1もの量に対応できるようになること。もうひとつは、この新市場の半分を我々の手中におさめ、残りの半分を競合他社でわけあってもらうよう、経営していくことです。これぞ、「とびっきりな」成果といえるものです。ですから、我々にとって有効に働くと思われる要因は総動員して、我らが問題と対峙しなければなりません。いいかえれば、我々が望むような「とびっきりの」結末をおこすには、多くの要因を固く結びつける必要があります。幸運なことに、初級レベルの教科の内容をきちんと覚えていれば、この関連しあう2つの問題は、そこそこ容易に解決できます。

それではまず、「強力な商標に頼らなければならない」とした、肝心でわかりきったことから取り組んだ理由をさぐってみます。この結論をふりかえる際に、基礎的な教科にでてくる用語を適切に使うと、我々の事業の本質がそのまま理解できます。入門レベルの心理学からみると、我々が携わる事業の本質は、条件反射を作り出して維持するものだと言うことができます。「コカ・コーラ」という商標名とイメージ商標[原文ではtrade dress]が人の感覚を刺激することで、我々の提供する飲料を買って飲みたいと思わせる、つまり反応させるわけです。

では、どうやれば条件反射をつくりだし、そのまま維持できるでしょうか。心理学の教科書では2つの答えを示しています。ひとつは「オペラント条件づけ」によるもの。もうひとつは「古典的条件づけ」で、こちらは偉大なるロシアの科学者を讃えて「パブロフ型条件付け」ともよばれています。我々は「とびっきりな」結果を求めているので、どちらの条件付けテクニックも使うべきですし、より大きな効果を得るために考えられるあらゆるものを使うべきです。

That decided, we must next solve the problem of invention to create universal appeal. There are two intertwined challenges of large scale: First, over 150 years, we must cause a new-beverage market to assimilate about one-fourth of the world's water ingestion. Second, we must so operate that half the new market is ours while all our competitors combined are left to share the remaining half. These results are lollapalooza results. Accordingly, we must attack our problem by causing every favorable factor we can think of to work for us. Plainly, only a powerful combination of many factors is likely to cause the lollapalooza consequences we desire. Fortunately, the solution to these intertwined problems turns out to be fairly easy if one has stayed awake in all the freshman courses.

Let us start by exploring the consequences of our simplifying “no-brainer” decision that we must rely on a strong trademark. This conclusion automatically leads to an understanding of the essence of our business in proper elementary academic terms. We can see from the introductory course in psychology that, in essence, we are going into the business of creating and maintaining conditioned reflexes. The “Coca-Cola” trade name and trade dress will act as the stimuli, and purchase and ingestion of our beverage will be the desired responses.

And how does one create and maintain conditioned reflexes? Well, the psychology text gives two answers: (1) by operant conditioning and (2) by classical conditioning, often called Pavlovian conditioning to honor the great Russian scientist. And, since we want a lollapalooza result, we must use both conditioning techniques - and all we can invent to enhance effects from each technique.

2013年2月5日火曜日

中国における信用システムの危うい現状(GMO)

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新聞を読まないので、自分の興味からはずれた情報があまり入ってきません。最近になって中国の金融情勢に関するGMOのレターを読み、「もしかして相当に置いてきぼりか」と感じました。今回はそのレターから、印象に残った箇所を引用します。今回は、自分の浦島ぶりをご披露しただけかもしれません。なおGMOは、何度か取り上げてきた「慎重派」ファンド・マネージャーのジェレミー・グランサムが率いるファンド会社です。(日本語は拙訳)

Feeding the Dragon: Why China's Credit System Looks Vulnerable (GMO)

はじめは、問題視されている債務について。
2009年の中国の非金融部門における信用は巨大な津波といえるもので、前年のGDPの45%にまで達した。最近の信用拡大はそれに続くものである。その時以来、中国経済は信用漬けとなり、同じペースで成長し続けるために債務の額を増加させてきた。2007年から2012年には、対GDPでみた信用残高が60%増加し、190%超にのぼった。これは1980年代末の日本やリーマンショック前の米国とくらべても、相当大きな割合である。(図1参照)



ほとんどの中国の評論家は、中国における急激な信用増加は案ずるものではないと信じている。債務の主な担い手は国内の貯蓄であり、国外からの資金ではない、というのがその理由だ。しかし歴史をふりかえると、信用が急拡大している経済では、経常収支が赤字だからといって財政破たんの可能性が高まるわけではない(たとえば日本で1980年代におきた「バブル経済」は国内の資金で賄われていた)。

危惧するに足らないとする別の理由としては、中国の非金融部門における信用を合計してもGDPの200%程度で、米国や他の先進国経済と比較しても小さいことが指摘されている。しかし将来の問題を占う上で、信用の増加率ではなく総額をみるのは、あまり適切でない。そして、成熟した経済圏には債務に頼れるだけの大きな余力がある。経済学用語でいう「金融深化」とは、経済発展の度合いと互いに関連するものなのだ。

実際のところ、中国は他の新興国とくらべて大きく借入に依存しており、1980年代後半に日本が謳歌した債務と同じ程度になっている(ただし日本の一人当たりGDPは、図2に示されているようにずっと大きなものだった)。 (p.2)


The latest surge of credit follows the great tsunami of 2009, when China's non-financial credit expanded by the equivalent of 45% of the previous year's GDP. Since that date, China's economy has become a credit junkie, requiring increasing amounts of debt to generate the same unit of growth. Between 2007 and 2012, the ratio of credit to GDP climbed to more than 190%, an increase of 60 percentage points. China's recent expansion of credit relative to GDP is considerably larger than the credit booms experienced by either Japan in the late 1980s or the United States in the years before the Lehman bust (see Exhibit 1).

Most China commentators believe that rapid credit growth in China is not worrying because the debt is funded by domestic savings rather than by foreigners. The historical record, however, suggests that current account deficits don't increase the likelihood of a financial debacle in an economy where credit has been growing rapidly (for instance, Japan's "bubble economy" of the 1980s was funded domestically).

It has also been argued that China has nothing to fear because total non-financial credit, at roughly 200% of GDP, is relatively low by comparison with the U.S. and other developed economies. Yet the total stock of credit is less predictive of future problems than its rate of growth. Furthermore, mature economies appear to have a greater capacity to shoulder debt. In economists' parlance, "financial deepening" is correlated with the level of economic development.

In fact, China is rather heavily indebted relative to other emerging markets and has roughly the same amount of debt as Japan sported in the late 1980s (even though Japan's per capita income at the time was much higher, as shown in Exhibit 2).(p.2)

次の文章は、サブプライム危機を思い起こさせます。
ウェルスマネジメント商品(WMP)とは、高金利を求める中国の貯蓄者がえらぶ圧倒的に人気のある投資先である。これらの証券の平均的な利回りは、銀行預金より2%ほど高い。銀行では、低リスクの投資商品として個人投資家へ販売されている。格付け会社のフィッチによれば、WMPは2012年末までに13兆元[180兆円]分が発行された。前年比で50%以上増加している。

この商品の性質には、SIV(投資ヴィークル)やCDO(債務担保証券)と同様のものが含まれている。それらは、2008年以前に米国の銀行が貸出しをオフバランス化するために使ったものだ。この商品の特徴は、投資家の資金をひとまとめに集約させる組成をとっていることである。別々のWMPから集められた資金はいったん一つにプールされ、そこから異なるリスクの性格を持つ様々な資産購入に使われる。たとえば信託商品や前述したLGFV(地方政府債務ヴィークル)だったり、よりリスクの小さいインターバンク・ローンなどが挙げられる。(p.7)


Wealth management products (WMPs) have been by far the most popular investment for Chinese savers looking for higher returns. These securities yield on average around 2 percentage points more than bank deposits, and are sold by banks to retail investors as low-risk investments. Ratings agency Fitch estimated that around RMB 13 trillion of WMPs were outstanding by the end of 2012, an increase of over 50% on the year.

WMPs share some of the characteristics of both the Structured Investment Vehicles (SIVs) and Collateralized Debt Obligations (CDOs), which were used by U.S. banks before 2008 to keep loans off balance sheet. Central to the structure is the pooling of investor funds. Money raised from the sale of several different WMPs is aggregated into a general pool (see Exhibit 4). The general pool then funds a variety of assets, investing across the risk spectrum. Some money goes into trust products and LGFV bonds described earlier in this paper, and some is invested in less risky interbank loans. (p.7)

こちらもおなじみの、連鎖反応を生み出す構造です。
中国における信用慣行上のおもしろい点は、住宅バブルを焚き付けた様々な要素が、貸出しの担保とされていることだ。これには、鉄鋼や銅といったコモディティーや建設機械も含まれる。例を挙げると、銀行から運転資金を借入れしようとする生コン業者が、担保とするために、有利な信用供与条件のついた機械を買うよう示唆されている。操業に必要な台数以上の機械が購入されているわけだ。(p.9)

A curious feature of Chinese credit practices is that various inputs to the residential housing bubble - including commodities, such as steel and copper, and construction equipment - are often used as collateral to back loans. Concrete producers have been noted to purchase equipment on easy credit terms in order to use the machines as collateral against bank loans to finance their working capital. More machines have been purchased than were needed for purely operational reasons. (p.9)

2013年2月1日金曜日

白いものでも、黒に見える方法(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーによるハーヴァード・ウェストレイク高校での講話、その4です。前回はこちらです。今回の話題は、身に覚えのある人も少なくないかと思います。しかし話の聞き手として、高校生も参加しているのでしょうか。(日本語は拙訳)

経済学のことはいろいろ話しましたので、企業財務の話題に戻りましょう。こちらも、てんでお話になりません。価格変動の大きな株式を買えば、年間7%の超過利益が得られる。そんなことを信じている人には、こう聞いてみたいですね。子供のころに教えられた歯の妖精をいまだに信じているのですか、と[抜けた歯の始末のこと]。そのボクちゃんたちですが、7%を達成するために、それ以上精を出そうとしない。これではまるで[不思議の国のアリスの]「いかれ帽子屋のお茶会」です。しかし実際に、頭のいい人たちがたいそう馬鹿げたことをしているのです。その手の人たちの多くが、強力な慣習の下で働いていることも関係しているでしょう。法務に携わるろくでなしが、新グレシャムの法則に直面するのと同じです。同じような圧力に負けてアホなことをやらかしている例は、他でもみられます。よくあるのが学術界ですね。シカゴ大学の例をあげてみましょう。この学校では、自由市場を奉じるオーソドックスな経済学を教えています。ある友人の子供さんがその経済学部で先生をやっていますが、市場というものは大学が教えているほどには完璧ではない、と彼は信じていました。しかし、その見方は隠さざるを得ませんでした。わざとたわごとを信じているならばともかく、この高名な大学の経済学部で[音声不明]できるチャンスは皆無だったからです。たしかに雇用関係というのは、こういったことばかりですね。雇われて働くということは食い扶持のために必要なことですが、これは一般的にいって他のどんなものよりもお粗末な認識を招きかねない要因です。作家のアプトン・シンクレアによる発言が白眉です。「食っていくには黒だと信じなきゃならない人を、実は白なんだよと覆すのはすごくむずかしい」。こうなってしまうのは、潜在意識の段階で脳が自分自身をだまし、かわいい自分にとって良いことならば、それは信じるべきと考えてしまうからです。誤った認識を起こしているのは、人の心の中にある目には見えない現実であって、悪意があってやっているわけではありません。それゆえ、この問題は対処するのが非常に難しいのです。

Well, I've done enough for economics, let's go on. Corporate finance is beneath contempt. Believing just by buying volatile stocks you make an extra 7 percentage points per annum, I mean those people still believe in the tooth fairy and yet it is taught to the children. On the other hand, the children don't have to work very hard to get there so it's a Mad Hatter's tea party -- but this is the real world as [it] exists. You have these extremely dumb things being done by these smart people. But a lot of them are under big institutional pressure like the poor bastard in the law department who has to face the new Gresham's Law. Of course, that kind of pressure is on all these other people that are doing these dumb things, many in academia. I had a friend who had a child in the economics department at Chicago, very free market orthodox economics, and [the child] didn't believe the markets were quite as perfect as they thought at the University of Chicago and he had to hide his views. There wasn't the slightest chance he could do [audio unintelligible] at the economics department at a really great university unless he pretended to believe twaddle. Of course, employment is full of this sort of thing. Generally, the employment relationship - the need for money - causes more terrible cognition than any other single factor. Upton Sinclair said it best of all. He said, ‘It is very hard to get a man to believe non-X when his way of making a living requires him to believe X.' On a subconscious level, your brain plays tricks on you and you think [that] what is good for the true little me is what you should believe. Of course, it's very hard to deal with since it's not conscious malevolence that's causing the bad cognition -- it's the subconscious reality of the human mind.