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2012年8月31日金曜日

株価があちこちで下がってきたら思い出すこと

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株価があちこちで下がってくると、いろいろよそ見をしたくなります。そんな自分を戒める意味で、ウォーレン・バフェットの1989年「株主のみなさんへ」から引用します。以前にも同じことを書きましたが、何度も繰り返さないと忘れる性質なのです。

まあまあの企業を破格の値段で買うよりも、すばらしい企業をまあまあの値段で買うほうがずっとよい選択です。チャーリーは昔からこのことがわかっていましたが、わたしのほうは時間がかかってしまいました。ですが現在は、企業を買収したり株式を買うときには、最上の経営陣が率いる最高の企業を探すようにしています。

It's far better to buy a wonderful company at a fair price than a fair company at a wonderful price. Charlie understood this early; I was a slow learner. But now, when buying companies or common stocks, we look for first-class businesses accompanied by first-class managements.

過去記事はこちら、「長続きする競争優位性を見極める」です。

2012年8月29日水曜日

経営陣がなすべき責務(チャーリー・マンガー)

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前回に続いて経営者の話です。今回はチャーリー・マンガーがWescoの株主総会で語った内容から引用します。引用元はSeeking Alphaの以下の記事です。(日本語は拙訳)

2008 Wesco Shareholder Meeting: Detailed Notes (Seeking Alpha)

企業の経営陣がなすべき責務はただひとう、Moat[経済的な堀]を広げることです。それをめざして毎日のように力を尽くさなければなりません。競争上の優位を有している以上、Moatを築かなければならない。そうするのが難しい時期もあるでしょうが、Moatを広げることこそ、やるべき仕事なのです。世間では、それと違うことをやっている例がいくつもみられますが、自らの持つ競争優位を守れるようにMoatを広げることに集中すべきです。かつてイングランドのある将軍は、こう言いました。「きみらの父の息子に劣らぬ息子を残せ、それでこそ神は女王を守り給う」。ヒューレット・パッカードでは、自分の後任になれる人を育てあげることが要求されています。これは全然複雑なことではなくて、ちちんぷいぷいといったところでしょう。今日のテキサスでは、メソポタミアのころと同じやりかたでレンガをつくっています。大切なのは少しばかりのエートス、とくに工学上のエートスを体得することです。システム全体の観点から考え、安全余裕をとること。この予備用マイクのように、です。

The only duty of corporate executive is to widen the moat. We must make it wider. Every day is to widen the moat. We gave you a competitive advantage, and you must leave us the moat. There are times when it is too tough. But duty should be to widen the moat. I can see instance after instance where that isn’t what people do in business. One must keep their eye on ball of widening the moat, to be a steward of the competitive advantage that came to you. A General in England said, ‘Get you the sons your fathers got, and God will save the Queen.’ At Hewlett Packard, your responsibility is to train and deliver a subordinate who can succeed you. It is not all that complicated - all that mumbo jumbo. We make bricks in Texas which use the same process as in Mesopotamia. You need just a few bits of ethos, and particularly engineering ethos. Think through the system, and get a margin of safety. Like this backup microphone.

文中で登場する「予備用マイク」とは有線マイクのことです。当初使う予定だった無線のものが壊れたため、使うことになりました。ここでもチャーリーは教訓を引き出しています。「システムは複雑にしないこと」(有線のほうが信頼性が高い)、「バックアップを用意すること」。あえてもうひとつ加えるとしたら「バックアップには異なる種類のものを選ぶこと」でしょうか。

また工学については過去記事「最も信頼できるモデルとは(チャーリー・マンガー)」でも取り上げています。

なおイングランドの将軍の言葉の和訳は、以下の作品からお借りしました。
ハウスマン全詩集』「シュロプシァの若者 一番 1887年」森山泰夫・川口昌男 訳、沖積舎

2012年8月28日火曜日

経営者の能力をみるには(ウォーレン・バフェット)

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今回は、ウォーレン・バフェットが1991年にEmory Business Schoolで行ったスピーチから「経営者の能力をみわける方法」のくだりをご紹介します。この話題は「投資家が見極めるべき5項目」の2番目と関係するものです。『Seeking Wisdom』からの孫引きです。(日本語は拙訳)

経営者の力量があるかどうか判断するには、どんな発言をしているかではなく、過去の実績をしらべてみるのが一番です。バークシャー・ハサウェイではビジネスを買収しても引き続き経営をお願いしているので、平均打率は保証されたようなものです。例えばファニチャー・マートを経営するブラムキン夫人の場合、500ドルの元手から始めて50余年、今では税引前で1,800万ドルの利益をあげるようになりました。彼女が有能かどうかは一目瞭然ですね。つまりは過去の成績こそ一番あてになる、これに尽きるわけです。

The best judgment we can make about managerial competence does not depend on what people say, but simply what the record shows. At Berkshire Hathaway, when we buy a business we usually keep whoever has been running it, so we already have a batting average. Take the case of Mrs. B. who ran our Furniture Mart. Over a 50-year period, we'd seen her take $500 and turn it into a business that made $18 million pretax. So we knew she was competent...Clearly, the lesson here is that the past record is the best single guide.


実績を重視するウォーレンの方針については、過去記事「かなりの世間知らずですね」でも取り上げています。

2012年8月27日月曜日

(映像)UCLA経済学部卒業生への祝辞(マイケル・バーリ)

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以前取り上げた投資家マイケル・バーリは、サブプライム・ローン危機を予想して大きな利益をあげたファンド・マネージャーです(過去記事)。学生時代にはメディカルを専攻していたその彼が、UCLA経済学部の2012年卒業生へ祝辞を述べていましたので、ご紹介します。

どこか初々しさの残る話しぶりに好感が持てましたが、14分ごろからの話題が特に印象に残っています。短くまとめると、金融当局が危機を未然に防げなかったことを指摘した記事をニューヨーク・タイムズに投稿したところ、まもなくFBIの捜査が入ったとのこと。その後の裁判で時間もお金も費やしたと付け加えています。


2012年8月25日土曜日

チャーリー・マンガーの自宅

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アメリカの経済誌Fortune(2012/8/22)にウォーレン・バフェットとチャーリー・マンガーの記事がありましたので、今回はチャーリーの部分をご紹介します。チャーリーの自宅を訪ねてのインタビューです。引用元の記事は以下の通りです。(日本語は拙訳)

Warren and Charlie and the chocolate factory(Fortune)
(ウォーレンとチャーリーとチョコレート工場)

チャーリー・マンガーに対して電子メールでインタビューを正式に依頼したところ、彼のアシスタントから次のような簡潔な返信があった。
「明日の8時半であれば、チャーリーはお会いできると申しております」

そうなるとは予想していなかったし、また私にとってはいささか早い時刻だった。L.A.の交通事情には慣れていない上、前日はずっとL.A.にあるシーズ・キャンディーの工場見学をしてきたので疲れてもいた。労力を要する仕事だったが、そういったものに立ち向かわなければならないライターもいるのだ。5月の水曜日の朝にL.A.の自宅で待っているとだけ伝えられて、全然形式張らないのだなと感じた。ウォーレン・バフェットとの約束はその次の日になっていたが、ずっと前から予定を組んでいたのだ。実のところ、その晩には飛行機でオマハへ移動するつもりだった。

水曜日の朝は7時に起きた。かばんに荷物をつめ、ホテルをチェックアウトし、レンタカーに飛び乗った。ハーツで借りた白の三菱ギャランだが、GPSは調子が悪かった。道は混んでいたものの、なんとか8時31分にはマンガー家の前に到着できた。彼の自宅は大きかった。大豪邸ではないが、カリフォルニアではよくある高級住宅だった。屋根は一面の赤色、車寄せにはヤシの木が並んでいた。玄関の前まで進むと、魔法のように扉が開いた。執事(兼給仕だろうか)が小さな読書室へ私を案内してくれた。そこには88歳になるマンガーが安楽椅子に腰かけていた。本業は弁護士だが、長きにわたるバフェットの同僚かつ投資上のパートナーでもある彼は、大きな虫眼鏡を手にハードカバーの本を読んでいた。彼は貪欲な読書家で、のちほどバフェットはこう語ってくれた。「私の知るかぎりでは、チャーリーほどたくさんの本を読んでいる人はいません。いまは88歳ですが、98歳になっても読んだことを全部覚えているでしょう。そこがわたしと違うことで、わたしは本を読んで楽しみますが、ささいなことは覚えていません」。

それからチャーリーと私は食堂へ移動した。そこで私は録音機のスイッチを入れ、時をおかずシーズ・キャンディーの話題を始めた。1972年に2500万ドルをだしてこの会社を買うようにバフェットを説きふせたのが彼なのだ。マンガーと話をしてすぐわかったのは、彼はビジネスに限らず、誰のことでも知っているし、どんなことでも覚えていた。本題と関係するような買収や破産の話題について、よく知られていない逸話をその都度詳しく思い出してくれた。例えば、ハーシーズがはじめてカナダに進出しようとしたことを話してくれた。またコダックの話に及ぶと、こう語った。「あの会社はまるごと失敗したものと考えて忘れていると思いますが、実は破産していなかったのです。イーストマン・ケミケルというスピンオフした会社のほうは、今も健在で成功をおさめていますよ」。P&Gの話題になるとこうだ。「P&Gはボディケア製品でいろいろうまくやっていますね。肌の具合がほんとうによくなるのであれば、そういうブランドは大当たりでしょう。その手のことになると、人はなかなかあきらめないですからね」。バフェットのようなわかりやすくて愉快なユーモアの感覚はないかもしれない。しかし、とことんドライで実際的な話題をするときでも笑わせてくれる能力を彼は持っている。

家の中に案内してくれた男が、今度は朝食を出してくれた。スクランブル・エッグ、ポテトの炒め物、焼きたてのベーコンだ。マンガーは長年にわたるシーズの強さを話してくれた。彼の見立てでは、バークシャーが買収する前と同じようにその後もシーズは正しい方向へ進んできた。「箱詰めチョコの会社は数多くあります。この小さな一粒ずつが、いにしえから続く人間の欲求にこたえるものですからね」。しかし、シーズは自社製品同士が競合しないよう懸命に努めてきた。そして、いつも慎重にことを進める体質が長期にわたる成功に寄与してきた。彼はつけくわえた。「もちろん我々はシーズの業務に基本的には関わっていませんよ」。また彼はシーズ製品のギフトとしての重要性を指摘した。「大安売りをみつけた云々、と言って贈り物を渡したがる人なんていないですからね」

In response to a formal email about setting up a sit-down interview with Charlie Munger, his assistant simply wrote: "Charlie says to come over tomorrow at 8:30."

It wasn't what I had expected. And it was a bit early for me, being new to Los Angeles traffic and tired from the long previous day of touring the See's Candies plant in L.A. (it was a grueling task, but some intrepid writer had to do it.) Being told to simply show up at Munger's private home in Los Angeles on a Wednesday morning in May felt starkly casual compared to my meeting with Warren Buffett, which would be the next day and had been scheduled far in advance. I would be flying to Omaha for it that night.

got up at seven on Wednesday, stuffed my bag, checked out of the hotel and hopped into my rental car, a white Mitsubishi Gallant with dysfunctional Hertz GPS unit. Traffic was bad, but I made it, pulling up outside Munger's address at 8:31. His house is big, but not a mansion; it looks like your standard upscale California home, complete with red roof and a wealth of palm trees around the driveway. When I walked up to the door, it opened, as if by magic. A butler (or waiter, or maybe both) led me into a small reading room where the 88-year-old Munger, a lawyer by trade and longtime colleague and investing partner of Buffett, was seated in an easy chair, using a large magnifying glass to read a hardcover book. The man is a voracious reader. ("Charlie has read about as much as anybody I know, Buffett later told me. "He's 88 now, and when he's 98, he'll remember everything he read. That's the difference; I read it, and I enjoy it, but I don't remember a damn thing.")

Charlie and I went to his dining room, where, with my recorder on, we began talking immediately about See's Candies, the brand he convinced Buffett to buy in 1972 for $25 million. The first thing immediately apparent about Munger is that in business and beyond, he knows everyone and remembers everything. At each turn he is able to recall specific and obscure anecdotes about buyouts and bankruptcies that relate in some way to the subject at hand. He talked about when Hershey's (HSY) first tried to expand into Canada. He waxed about Kodak ("People think the whole thing failed, but they forget that Kodak didn't really go broke, because Eastman Chemical did survive as a prosperous company and they spun that off") and about P&G ("Procter & Gamble, they just make a fortune on some of the body products. Some of these brands, I mean, if you can make something that actually improves the skin, wow. That's the last thing people will give up"). He may not possess the obvious, gleeful sense of humor of Buffett, but Munger has the ability to make you laugh even as he's discussing something completely dry and practical.

As the same man who had led me into the house served up breakfast (scrambled eggs, home fries, and delicious bacon), Munger talked about the strengths of See's over the years. In his estimation, it has made all the right decisions, both before Berkshire got there and since. "There are a lot of boxed chocolate companies; it's an old human desire," he said. "People like those little pieces." But See's worked hard, he said, to prevent cannibalizing its own stores, and has always had a cautious nature that helped it succeed in the long run. "And of course," he added, "We haven't basically touched it at all." He pointed out the significance of See's as a gift item. "Who wants to give a gift that announces 'I'm a cheap ... ' You know."


俗物根性丸出しで恐縮ですが、チャーリーのご自宅の写真をはじめてみました。おそらくこちらの物件だと思います。あるいは航空写真ではGoogle Mapsのこちらの画像です。そういえばチャーリーは建築が好きな人でしたね。ちなみにチャーリー個人の純資産は10億ドル。日本円で約800億円です。