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2012年4月29日日曜日

最も信頼できるモデルとは(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーによる世知の続きです。一言で取り上げているものもありますが、今回は広い範囲にわたっています。本シリーズの先頭にあたる過去記事はこちらです。(日本語は拙訳)

さて、最も信頼できるモデルにはどのようなものがあるか、挙げていきましょう。当然ですが、純粋科学や工学の分野で培われたものがいちばん信頼できます。それから品質管理もそうです。これもフェルマーやパスカルの初歩的な数学に基づくものですが、私のようなプロの技術屋でない人は、少なくとも基本的な概念はおさえておきたいものです。

品質管理を学ぶにはそれなりに時間がかかります。でもそうしておけば、このモデルが示す考えからはみださなくなります。中学校でやる数学がわかっていれば大丈夫です。これの結実した一例が、デミングが日本にもたらした一連の品質管理手法ですね。

ふつうは、統計学を器用に使いこなせるレベルまで達する必要はないと思います。わたしなどは「Gaussian分布」[ガウス分布]をどう発音するのか、よくわからないぐらいです。ですが、それがどういう形に分布するもので、物事や世の中の多くの側面がその分布に従うことは理解しています。つまり、大雑把には計算できるというレベルですね。

一方、ガウス分布に従うものを小数点以下10桁まで計算しろといわれたら、これはお手上げです。習熟はしていないけれどうまくやれる程度にパスカルを学んだポーカー・プレイヤー、といったところです。

わたしぐらいには釣鐘曲線を理解しておく必要はありますが、それだけあれば十分うまくやれます。

先に進みます。工学上の概念としてバックアップ・システムや破断点がありますが、これらはとても強力なモデルです。物理学上の概念である臨界量も強力です。

こういったモデルは、日常的な物事をみつめる際にも、とても役に立ってくれます。それから費用便益分析もありました。これは中学レベルの代数がわかっていれば十分ですが、おおげさな専門用語で飾り立てられている感がありますね。

次に信頼できるモデルとしては生物学と生理学をあげたいと思います。というのは我々自身が遺伝を通じて、だいたい同じになるように仕組まれているからです。

Which models are the most reliable? Well, obviously, the models that come from hard science and engineering are the most reliable models on this Earth. And engineering quality control - at least the guts of it that matters to you and me and people who are not professional engineers - is very much based on the elementary mathematics of Fermat and Pascal.

It costs so much, and you get so much less likelihood of it breaking if you spend this much. It's all elementary high school mathematics. And an elaboration of that is what Deming brought to Japan for all of that quality-control stuff.

I don't think it's necessary for most people to be terribly facile in statistics. For example, I'm not sure that I can even pronounce the Gaussian distribution, although I know what it looks like and I know that events and huge aspects of reality end up distributed that way. So I can do a rough calculation.

But if you ask me to work out something involving a Gaussian distribution to ten decimal points, I can't sit down and do the math. I'm like a poker player who's learned to play pretty well without mastering Pascal.

And, by the way, that works well enough. But you have to understand that bell-shaped curve at least roughly as well as I do.

And, of course, the engineering idea of a backup system is a very powerful idea. The engineering idea of breakpoints - that's a very powerful model, too. The notion of a critical mass - that comes out of physics - is a very powerful model.

All of these things have great utility in looking at ordinary reality. And all of this cost-benefit analysis - hell, that's all elementary high school algebra. It's just been dolled up a little bit with fancy lingo.

I suppose the next most reliable models are from biology/physiology because, after all, all of us are programmed by our genetic makeup to be much the same.


2012年4月28日土曜日

ポートフォリオの流動性について(セス・クラーマン)

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今回は、ヘッジ・ファンドのマネージャーであるセス・クラーマンの著書『Margin Of Safety』から、流動性の大切さを説いた一節をご紹介します。(日本語は拙訳)

ポートフォリオが長期投資の視点で組まれていれば、流動性が大きな問題になることは、ほとんどないでしょう。いざというときには即座に現金化する必要があるので、完璧なまでに流動性を高くしておかなければならない、といった投資家は稀だと思います。ですが、唐突に現金化しなければならないこともあります。その場合、現金化できないことで払う機会費用は大きいので、流動性がまったくないポートフォリオというのも問題です。じっとこらえた末に十分に報われるのであれば流動性の悪い大きなポジションをとりつづけることもありますが、ほとんどの場合はバランスのとれたポートフォリオにするべきです。

Most of the time liquidity is not of great importance in managing a long-term-oriented investment portfolio. Few investors require a completely liquid portfolio that could be turned rapidly into cash. However, unexpected liquidity needs do occur. Because the opportunity cost of illiquidity is high, no investment portfolio should be completely illiquid either. Most portfolios should maintain a balance, opting for greater illiquidity when the market compensates investors well for bearing it.


個人的には、流動性が高くない銘柄ばかりのポートフォリオを組んでいるので、市場全体が大きく下落しているときにうまく売れることは期待していません。そのため、下落時に買い続けられる程度の資金は残すようにしています。状況によりますが、半年から9ヶ月ぐらい下がり続けることを想定して、買うペースや待機させておく資金を調整しています。下がっているときでないと買えないという性格なので、途中で株価が反騰しはじめて、思ったほど買えなかったことはよくあります。

2012年4月27日金曜日

自動車、航空機、テレビ。何が共通しますか(ウォーレン・バフェット)

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今回はウォーレン・バフェットによる2009年度「株主のみなさんへ」からの引用で、「自分たちが避けること」についてです。(日本語は拙訳)

チャーリーとわたしは、製品がどんなに魅力的でも将来がどうなるのか評価できないビジネスは、避けるようにしています。過去をふりかえってみると、自動車(1910年)、航空機(1930年)、テレビ(1950年)といった業界には、誰の目からみてもすばらしい成長が待っていました。しかし、その種の業界には激しい競争がつきもので、ほとんどの会社は競争に敗れ、消え去っていきました。生き残った会社のほうも傷を負ったものです。

業界が今後大きく成長するのが明らかだからといって、競合との覇権争いが繰り広げられるビジネスでは、利益率や資本収益率がどうなるのか判断できるわけではありません。あくまでもバークシャーが目を向けるのは、数十年先の利益がまずまず予測できるようなビジネスです。そうであっても、過ちは絶えないものですが。

Charlie and I avoid businesses whose futures we can’t evaluate, no matter how exciting their products may be. In the past, it required no brilliance for people to foresee the fabulous growth that awaited such industries as autos (in 1910), aircraft (in 1930) and television sets (in 1950). But the future then also included competitive dynamics that would decimate almost all of the companies entering those industries. Even the survivors tended to come away bleeding.

Just because Charlie and I can clearly see dramatic growth ahead for an industry does not mean we can judge what its profit margins and returns on capital will be as a host of competitors battle for supremacy. At Berkshire we will stick with businesses whose profit picture for decades to come seems reasonably predictable. Even then, we will make plenty of mistakes.

2012年4月25日水曜日

自分のやりかたで解く(リチャード・ファインマン)

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最近読んだ本『ファインマンさんの流儀』は、彼の業績や評判を軸に展開される伝記です。物理のことはだいたい忘れてますし、量子物理学の話にはほとんどついていけませんでしたが、ファインマンの天才ぶりはよくわかりました。

今回は同書からの引用で、ファインマンのやりかたについてです。チャーリー・マンガーは様々なモデルを使いこなすことの利点を説いていますが、なかでも基礎的な学問を重視しています(過去記事)。自分のやり方にこだわるファインマンが、その好例をみせてくれます。

実際、リヒスがほんとうにその会社、<シンキング・マシンズ>社を始めたとき、ファインマンは1983年の夏じゅう、ボストンで(カール[息子]と共に)過ごさせてくれと申し出た。ただし、ヒリスの願いに沿って自分の科学専門知識に基づいて、全般的で曖昧な「助言」をすることについては、そんなことは「でたらめの山」だからできないと言って拒否し、なにか「具体的な仕事」をくれと要求した。結局彼は、並行計算が実際にちゃんと行えるようにするために個々のルーターに必要なコンピュータ・チップの数は何個かという問題に対する解を導き出した。彼が導き出したこの解がすばらしかったのは、伝統的なコンピュータ・サイエンスの技法を一切使わず、その代わりに、熱力学や統計力学を含む物理学のさまざまな考え方を使って定式化されたものだったからだ。そして、なお重要なことに、その会社のほかのコンピュータ技術者たちが出した推定値とは一致しなかったけれども、実際にはファインマンのほうが正しかったのであった。(p.340)

2012年4月24日火曜日

ブラジルが一緒に詰めて輸出しているもの

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前回記事に続いて『食の終焉』からの引用の最終回です。今回は農業や畜産業で成長著しいブラジルについてです。

農家がいまだに分厚い表土の恩恵を受けているアメリカ中西部や黒海地方とは違い、南米の森林地帯の多くは表土が薄く、有機物の少ない強酸性の土壌であるため、開墾され作付けが行われても、ほかの地域で行われてきたような集約的農業に十分に耐えられない。そのような土地では、有機物の消失が急速に進み、それによって収穫量が徐々に落ち込み、表土流出の危険性が高まると、農家はその土地を放棄して新しい土地に移るしかないが、そのためにまた新たな森林伐採が必要となる。言ってみれば、ブラジルは輸出する大豆の袋や冷凍鶏肉の箱の中に、安い労働力やすでに逼迫している水資源や土資源を一緒に詰めて輸出しているようなものなのだ。

育種の専門家で、中南米で調査を行ったジョージア大学のチャールズ・ブラマー(Charles Brummer)教授は言う。「ブラジルが次の100年も作付け面積を増やせると考えるのは馬鹿げている。彼らは沼地を干拓したり、森林の伐採をさらに進めたりすることはできるだろう。しかし、それはすでに彼らが、延命措置によって生きていることを意味している」(p.399)

ブラジルはこれからの経済成長が期待されている大国として明るい面ばかりみていましたが、それなりの影がかくれているのですね。