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2017年6月24日土曜日

2016年度バフェットからの手紙(7)あのサルのように運が良ければ

2016年度「バフェットからの手紙」から引用します。前回のつづきです。(日本語は拙訳)

上に記したわたしの主張を単純な方程式へ入れてみたいと思います。もし投資の世界全体がグループA(アクティブ投資家)とグループB(不動な投資家)で構成されているとしたら、グループBの費用控除前の成績は平均点そのものとなる定めにあります。これはグループAも同じです。つまり、費用の安いグループのほうが勝者となるわけです(理論的なこだわりがあってささいながらも触れておきたいのですが、この公式にはわずかに修正すべき点があります。詳細に触れるほどのものではありませんが)。グループAの費用が不当なほど高いとしたら、大幅に差をつけられてしまうでしょう。

もちろんですが、腕利きの人たちのなかにはS&Pをしのぐ成績を長期間にわたってあげることが明白な人もいるでしょう。ただしこれまでわたしが見てきたなかで、この難題を成し遂げるだろうと早い段階から期待できたプロは10名程度にとどまりました。

わたしが知らない人のなかには、わたしが見出したそのような人たちと同じ能力を持つ人が、数百人あるいはたぶん数千人にのぼるのは間違いないはずです。けっきょくは、不可能でも何でもない仕事だからです。ただし問題なのは、好成績をあげようとするマネージャーの大多数が失敗におわる点です。「資金を出してほしい」とみなさんへ要求する人はどうでしょうか。やはり、「うまくやり遂げられる例外的な人」ではない可能性がかなり高いと思います。ビル・ルーアン[=セコイア・ファンドの創業者]は実にすばらしい人物でした。それだけではなく、60年前に「まずまちがいなく長期間にわたって卓越した投資成績をもたらす」と思えた人物でした。その彼が、ここで取り上げている話題についてうまく言い表しています。「資産運用の世界では、ものごとは革新者から始まって、模倣者が引き継ぎ、やがてヘボの大群へと伝わっていくのだ」と。

「高給取りのマネージャーで、なおかつ報酬に見合った価値を提供してくれる」という稀な人物をさがす作業がなおさら複雑になるのは、「素人で起こるのとまさしく同じように、投資のプロにおいても短期的にみると運が良かっただけ」という事実があるからです。たとえば年のはじめに1,000人のマネージャーが市場の予測をしたとします。するとかなりの確率で、9年間連続して正解を出す人が少なくとも一人はいます。もちろんサルが1,000匹いても同じように、知恵をたたえた預言者のように見える1匹を輩出するでしょう。しかし違う点がひとつあります。幸運なサルのほうには、投資を任せようと列をなす者の姿がみられない点です。

最後になりますが、「投資で成功したがために失敗を産み出す」、そのような働きをする3つのつながり合った現実があります。はじめに「成績が良いと早々に資金の奔流を呼び集める点」です。次に「投資資金が山と積みあがることで、かならずや成績の重しとなる点」です。数百万ドルならばたやすくても、数十億ドルでは手を焼くようになります(涙)。3つめに「それにもかかわらず、ほとんどのマネージャーが新規の追加資金を求める点」です。これは彼ら個人の方程式のせいです。つまりは、「運用資産が増えれば、受取り手数料も増える」わけです。

わたしにしてみれば、その3点に何ら新しいところはありません。1966年1月に、わたしは4,400万ドルの資産を運用していました。そのときに有限責任パートナーに向けて次のように書きました。「規模が大きくなることは、今後の成績にとって有益ではなく有害になりやすい。そう強く感じています。わたし個人の成績ではそうならないかもしれませんが、みなさんの成績ではおそらくそうなるでしょう。そのようなわけで、バフェット・パートナーシップ・リミテッド(BPL)の新たなパートナーは今後は迎え入れないつもりです。妻のスージーにはすでに言ってあります。『次の子供ができたとしても、その子たち用のパートナーシップは他をあたってほしい』と」。

締めくくりましょう。ウォール街の住人が何兆ドルもの資産を管理していて高額な手数料をとっているのであれば、とびぬけた利益を刈り取れるのはふつうはマネージャーのほうであって、顧客のほうではありません。規模が大きかろうが小さかろうが、どちらの投資家も低コストのインデックス・ファンド一筋でやったほうがいいと思います。

So that was my argument - and now let me put it into a simple equation. If Group A (active investors) and Group B (do-nothing investors) comprise the total investing universe, and B is destined to achieve average results before costs, so, too, must A. Whichever group has the lower costs will win. (The academic in me requires me to mention that there is a very minor point - not worth detailing - that slightly modifies this formulation.) And if Group A has exorbitant costs, its shortfall will be substantial.

There are, of course, some skilled individuals who are highly likely to out-perform the S&P over long stretches. In my lifetime, though, I’ve identified - early on - only ten or so professionals that I expected would accomplish this feat.

There are no doubt many hundreds of people - perhaps thousands - whom I have never met and whose abilities would equal those of the people I’ve identified. The job, after all, is not impossible. The problem simply is that the great majority of managers who attempt to over-perform will fail. The probability is also very high that the person soliciting your funds will not be the exception who does well. Bill Ruane - a truly wonderful human being and a man whom I identified 60 years ago as almost certain to deliver superior investment returns over the long haul - said it well: “In investment management, the progression is from the innovators to the imitators to the swarming incompetents.”

Further complicating the search for the rare high-fee manager who is worth his or her pay is the fact that some investment professionals, just as some amateurs, will be lucky over short periods. If 1,000 managers make a market prediction at the beginning of a year, it’s very likely that the calls of at least one will be correct for nine consecutive years. Of course, 1,000 monkeys would be just as likely to produce a seemingly all-wise prophet. But there would remain a difference: The lucky monkey would not find people standing in line to invest with him.

Finally, there are three connected realities that cause investing success to breed failure. First, a good record quickly attracts a torrent of money. Second, huge sums invariably act as an anchor on investment performance: What is easy with millions, struggles with billions (sob!). Third, most managers will nevertheless seek new money because of their personal equation - namely, the more funds they have under management, the more their fees.

These three points are hardly new ground for me: In January 1966, when I was managing $44 million, I wrote my limited partners: “I feel substantially greater size is more likely to harm future results than to help them. This might not be true for my own personal results, but it is likely to be true for your results. Therefore, . . . I intend to admit no additional partners to BPL. I have notified Susie that if we have any more children, it is up to her to find some other partnership for them.”

The bottom line: When trillions of dollars are managed by Wall Streeters charging high fees, it will usually be the managers who reap outsized profits, not the clients. Both large and small investors should stick with low-cost index funds.

2 件のコメント:

リュウジ さんのコメント...

お久しぶりです。またbetseldomさんの翻訳を拝読できることをうれしく思います。

さて、ウォーレンの親しみやすい語り口の中に突如織り込まれてくる一言の鋭さは健在ですね。特に「The job, after all, is not impossible.」にはしびれました。こういうとんでもないことをサラッと言えてしまうところに、投資家としての強烈な自信と自負を感じます。

betseldom さんのコメント...

リュウジさん、お久しぶりです。やっつけの訳文をお読みくださって恐縮です。一方で、原文にも目を通されているようで、そちらは一安心です。

ウォーレンは、客観的事実をもとにした合理的かつ確率的な思考判断をする人として知られています。それらプロセスの信頼性が高いほど、なおさら自信をもって結果の多寡について語れるのだろうと思います。また心理学や自他の経験にもとづいて人間の行動原理をよく理解していることも、いずれ好機がめぐってくると信じる礎石になっていると思います。

折に触れてコメントをくださり、ありがとうございます。またよろしくお願いします。